2016.09.16脳科学系
vol.38:ニューロネットワークからみる歩行と高次脳機能の関係性:脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,高次脳機能,歩行
タイトル
歩行における高次認知機能の役割:アルツハイマー病の転倒の恐れの原因となる遂行機能障害 The role of higher-level cognitive function in gait: executive dysfunction contributes to fall risk in Alzheimer’s disease?PubMedへ Sheridan PL et al:Dement Geriatr Cogn Disord. 2007;24(2):125-37
内 容
概 要
●アルツハイマー病は一般に,認知機能に主に影響する一方で運動機能に少なからず影響すると理解されている(少なくとも疾患の後期までは)
●過去10年の研究報告では,アルツハイマー病の患者は同年齢の普通の高齢者より も3倍転倒の恐れがあると報告されている
●また,アルツハイマー病の患者では歩行時の不安定性を特徴とするような異なる歩行パターン持つ
●近年の認知神経科学は完全なモーターコントロールには,とりわけ実行(遂行)機能の正常な認知機能が必要なことを表している
●我々はパズルの一部を一緒に置いたり,現在の歩行と認知の知識状態を調査し,転倒するアルツハイマー病の歩行障害と認知症との関連を調査した
●また,簡単なアルツハイマー病における最近の歩行不安定性の治療や,エクササイズを調査し,認知をターゲットにした新たなアプローチを提案する
ポイント
Fig.1:随意運動とオートマチックな運動行動のネットワーク
●意識的な経路は連続的に太い矢印,オートマチックは点線で表示
●後頭葉は感覚統合と記憶を含み,前頭葉は初期プランと運動と行動の順序と組織化を行う
●基底核は小脳がコントロールするタイミングでの長期記憶
●モーターコントロールの解剖学的なネットワークは,高次認知機能のネットワーク(取り分け実行(遂行)機能)に連結し,背外側前頭前野・帯状回・補足運動野・頭頂連合野・上側頭回・基底核と側頭葉内側部(海馬と海馬傍野)を含んでいる
明日への臨床アイデア
●アルツハイマー病における歩行障害には主に実行(遂行)機能障害と,注意の障害である事を調査・情報収集をしている文献
●臨床ではよく遭遇することの多いケースのように思うが,実際アプローチとなると単に歩行訓練を繰り返してみたり,筋力強化をしてみたりと,認知・高次脳機能との関連を全く鑑みない介入も多く見受けられるように思う
●「認知・高次脳はOT・STだから…」という,形式ばかりのチームアプローチが認知症高齢者等のアクシデントを生んでいる可能性は少なからずあるように思う
●机上での認知・高次処理が,Locomotion場面でそのままそっくり生きるか否かの明確な根拠はないかもしれないが,現在の見地から「モーターコントロールと高次認知機能ネットワークは連結している」という事実(強烈に関係しあっているか否かは別として)は存在するわけなので,Locomotionの場面での遂行・注意の処理の程度を評価・Reasoning(歩行の不安定性が高次処理を阻害しているのか?高次処理の影響が歩行の不安定性を誘発しているのか?など)していくことは必要不可欠であると考える
所属 訪問リハビリセンター
職種 理学療法士