2017.07.13バイオメカニクス
vol.143:ピサ症候群と前屈症(腰曲がり)の歩行 パーキンソン病エビデンス論文
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!!
パーキンソン病に役立つ動画
カテゴリー
バイオメカニクス、歩行
タイトル
ピサ症候群と前屈症の歩行動力学:ストライド長の役割と股関節の運動学
Gait dynamics in Pisa syndrome and Camptocormia: The role of stride length and hip kinematics.
?pubmed Tramonti C, Gait Posture. 2017 Jun 10;57:130-135.
本論文を読むに至った思考・経緯
・臨床コースにてピサ症候群と基底核の障害の話があった。利用者様に同様の症状と歩行障害を呈している方がおり、この論文を読むことで治療に役立てられるのではと考え読むことにした。
論文内容
論文背景・目的
・パーキンソン病ではしばしば姿勢異常を呈することがある。異常姿勢の一つであるピサ症候群は10°以上の体幹側屈姿勢を呈し、臥位や他動の可動域練習で改善するものを指す。また、前屈症は胸腰椎で40-45°以上の体幹前屈を呈し、歩行で増悪、臥位で改善を示すものである。
・これらは体幹のジストニアと捉えられている。病因は多岐にわたり、一説では脊柱起立筋のミオパチーとされているが、主たる原因は大脳基底核の非対称性が姿勢筋の緊張を左右不均等にしていることだとされている。
・様々な説があるが、原因は特定されておらず、治療方法も確立されていない。
・パーキンソン病患者はこれらの姿勢異常から高い転倒リスクや不動、QOLの低下が予想される。しかし、ピサ症候群を呈するパーキンソン病患者の歩行を解析した論文は少ない。
・したがって、本論文では姿勢異常、ピサ症候群、前屈症を呈するパーキンソン病患者の歩行動力学を検証することを目的とする。
研究方法
・29名のピサ症候群もしくは前屈症を呈するパーキンソン病患者を3群に分けた。
・Group PS:ピサ症候群10名
・Group CC:前屈症9名
・Group PP:姿勢異常を呈さないパーキンソン病10名
・さらに対照群としてGroup CG:健常成人10名
・3次元動作解析装置にて歩行解析を行った。また、股、膝、足関節の運動学データを収集。
研究結果
・PS、CC、PP群はCG群に比べて歩行速度、ストライド長、ステップ長の低下が見られたが、ケーデンスには有意差がなかった。また、両脚支持期と片脚支持期両方とも延長がみられた。PS、CC、PP群には差がなかった。
・PS群ではCG群に比し、股関節伸展の減少(立脚中期)、膝関節屈曲の減少(遊脚期)に有意差が見られた。また、有意差はなかったが、PS群は立脚期の膝屈曲が増加していた。足関節に関しては両群に差はなかった。
・PS群はPP群に比し、股関節屈曲の増加(立脚期と遊脚期)が見られた。
・CC群ではCG群に比し、股関節屈曲と膝関節屈曲の増加(立脚期)がみられた。足関節には違いはなかった。
・CC群はPP群に比べ、股関節屈曲と膝関節屈曲の増加(立脚期)がみられた。
図:歩行時の各関節角度
Tramonti (2017)より引用
私見・明日への臨床アイデア
・結果より、PS群とCC群はPP群やCG群と比べて、歩行立脚期での股関節、膝関節屈曲が強く、遊脚期での膝屈曲が弱かった。また、足関節運動は各群に差が見られず、興味深い結果だった。体幹の崩れからより近位の股関節、膝関節に影響が及んでいると考える。
・グラフから、特に股関節では屈曲伸展ともに可動範囲が狭く、可動域の低下や固有受容器からの求心性情報の低下が予想される。股関節をターゲットにして歩容改善を図ると効果的だと考える。
職種 理学療法士
パーキンソン病に役立つ動画
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします