【2026年版】複合性局所疼痛症候群(CRPS)リハビリと治療/ 線維筋痛症と違うの?
CRPSの痛みを、脳から解き明かす。
怪我や手術の後から始まった、消えない焼けるような痛み。触れるだけで激痛が走り、手足の色や温度まで変わる——それは「気のせい」ではありません。CRPSは脳と神経の異常な反応が引き起こす、実在する疾患です。正しく知ることが、回復への第一歩になります。
— CRPSの病態・診断・リハビリアプローチをわかりやすく解説しています。
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こんなお悩みはありませんか?
骨折や手術の後、傷は治ったはずなのに、痛みだけが残り続ける——そんな経験をされていませんか。しかも、触れるだけで飛び上がるほど痛い。手足の色が変わる。「これはおかしい」とご家族も不安になりながら、病院を何カ所もまわっても「異常なし」と言われてしまう。
そのような経験をされている方が、CRPSのことを知らずに過ごしてしまうケースは少なくありません。CRPSは、正式な検査や診断基準が存在する、れっきとした医学的疾患です。
この記事では、患者さん・ご家族が「何が起きているのか」を理解し、次の一歩を踏み出せるよう、CRPSの基礎から最新の治療アプローチまでをわかりやすくお伝えします。
CRPSとは。
CRPS(複合性局所疼痛症候群)は、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)とも呼ばれる慢性疼痛疾患です。主に四肢(手・腕・足・脚)の一部に、けがや手術の後から激しい痛みが発生し、その痛みが原因となった外傷に不釣り合いなほど強く、長く続きます。
痛みだけでなく、皮膚の色や温度の変化、腫れ、発汗異常、関節のこわばりなど、自律神経(じりつしんけい:体温・血流・発汗などを調整する神経)に関わる多様な症状を伴うことが特徴です。脳卒中後にCRPSが起こることもあります。
CRPSの痛みは、通常の外傷から予測されるレベルをはるかに超えます。「傷は治ったのに大げさ」という周囲の言葉が、患者さんの孤立感と症状の悪化を招くことがあります。
まずご家族が「その痛みは本物だ」と信じることが、回復への大切な第一歩です。
CRPSのタイプ:I型とII型
患肢の神経を直接損傷していない外傷・病気(骨折・手術・脳卒中など)の後に発症します。脳卒中後のCRPSはこのI型に分類されることが多いです。
末梢神経(まっしょうしんけい:脳・脊髄から伸びる体の各部位の神経)の直接損傷後に発症します。I型と症状は類似しますが、神経損傷の証拠が確認されています。
交感神経系の過亢進:交感神経系の異常な活性化が血流・皮膚温・発汗調節に関与し、局所組織の炎症と痛みの増幅ループを形成します。
神経原性炎症:損傷を受けたC線維からサブスタンスPやCGRPが放出され、局所の血管拡張・浮腫・発赤を引き起こします。
中枢性感作とコルチカルリマッピング:慢性化したCRPSでは脳内のsomatosensory cortex(体性感覚野)における身体地図の歪みが確認されており、これがGMIの治療ターゲットとなります(Moseley GL, 2004)。
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そのお気持ち、まずお話しください。
STROKE LABは脳神経科学に特化した自費リハビリ施設です。CRPSの痛みのメカニズムを理解したセラピストが、現在の状態と目標を丁寧にヒアリングし、最適なプログラムをご提案します。無料相談はオンラインでも対応しています。
なぜ起こるのか。
火事が消えた後も、火災報知器が誤作動し続けるイメージです。CRPSでは、最初の怪我が治った後も、脳や脊髄の痛みを感知するシステムが過剰に反応し続けます。これを「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」と呼びます。
このため、軽い刺激(風・衣服の接触)でも強い痛みとして感じられます。脳が「危険」と誤認識し続けている状態です。
心理的な要因も関係します。
CRPSの慢性化には、心理・社会的な要因も深く関わっています。ストレスが続くと、交感神経(こうかんしんけい:緊張・興奮時に働く神経)の活動が高まり、症状が悪化することがあります。また、不安・うつ・外傷体験(トラウマ)は、痛みへの感受性をさらに高めます。
これは「気持ちの問題」ではなく、脳内の神経可塑性(しんけいかそせい:神経回路が環境に応じて変化する性質)が変化した結果です。身体的・心理的な両面からのアプローチが回復に欠かせません。
中枢性感作(Central Sensitization):持続する痛み刺激により、脊髄後角のニューロンが感作され、通常なら痛みを引き起こさない刺激(Aβ線維活動)にも反応するようになります。
コルチカルリマッピング:CRPSでは一次体性感覚野(S1)において患肢に対応する皮質代表域が縮小・歪曲することが示されています。この変化がGMIのターゲットです。
Fear-Avoidance Model:痛みへの恐怖から動きを避けることが不動化(immobilization)を生み、さらにCRPS症状を悪化させる悪循環を形成します(Vlaeyen JWS, 2016)。
線維筋痛症との違い。
CRPSとよく混同される疾患に「線維筋痛症(せんいきんつうしょう:Fibromyalgia)」があります。どちらも慢性的な痛みを伴いますが、痛みの範囲・原因・自律神経症状の有無などで大きく異なります。正確な診断が治療選択に直結するため、違いを知ることが重要です。
| 特徴 | CRPS | 線維筋痛症 |
|---|---|---|
| 痛みの範囲 | 主に四肢の局所的な痛み | 全身の広範な痛み |
| 発症の誘因 | 外傷・手術・脳卒中後に多い | 明確な誘因なし(中枢神経系の過敏が主因) |
| 自律神経症状 | 皮膚色変化・温度差・発汗異常・浮腫が顕著 | 自律神経症状は通常目立たない |
| 付随症状 | 関節拘縮・骨萎縮・運動障害 | 疲労・睡眠障害・認知機能低下(フィブロフォグ) |
| 診断方法 | ブダペスト基準+MRI・骨シンチ・神経ブロック | 臨床診断(圧痛点評価・排他的診断) |
| 主な治療 | GMI・ミラーセラピー・脱感作・薬物療法 | 薬物療法・認知行動療法・運動療法 |
診断基準(ブダペスト基準)。
CRPSの診断には「ブダペスト基準」が世界的に使用されています。患者さん自身が訴える症状と、医師が診察で確認できる所見の両方を4つのカテゴリーで評価します。
各1症状以上
各1所見以上
MRI:関節周囲の炎症・骨髄浮腫・関節液貯留を評価します。CRPSの確定診断には使えませんが、他疾患の除外に役立ちます。
骨シンチグラフィー:骨の代謝異常や血流変化を評価します。三相骨シンチで患肢への血流増加が確認されることがあります。
交感神経ブロック試験:交感神経ブロックを行い、痛みが軽減するかを確認することで、交感神経の関与を評価します。ただし、この反応がないからといってCRPSを否定するものではありません。
時間的変動性:CRPSの症状は時間とともに変化するため、ある時点での評価が異なる結果を示すことがあります。単一時点の評価では見逃しが起こりやすいため、経時的な観察が重要です。
研究用診断基準:研究目的では4カテゴリー全てに症状、かつ2カテゴリー以上に所見が必要で、臨床基準より厳格です(Harden RN et al., Pain, 2010)。
回復への道のり。
CRPSの治療は多角的なアプローチが基本です。「脳のリハビリ(神経可塑性を活用した療法)」「痛みの管理(薬物・神経ブロック)」「心理的サポート」の3つの柱を組み合わせます。発症後1年以内の早期からの積極的な理学療法が推奨されています。
中心的なリハビリアプローチとして注目されているのが、GMI(段階的運動イメージ療法:Graded Motor Imagery)です。身体を実際に動かす前に、脳に「安全に動ける」という再学習をさせます。
GMI(段階的運動イメージ療法)の3ステップ
フラッシュカードや専用アプリを使い、手・足の画像が「左か右か」を素早く判別する練習です。実際に動かさないため、痛みを感じずに脳の神経回路を再活性化できます。この段階を飛ばして次に進むと、治療効果が下がることが知られています。
実際には動かさずに、患部を動かすシーンを頭の中で鮮明にイメージします。研究により、運動イメージは実際の動作と同じ脳領域を活性化することが示されています(Moseley GL, 2004)。目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えながら行います。
鏡を正中線に置き、健側の手(痛みのない側)を動かしながら鏡を見ます。脳は「患側の手が痛みなく動いている」と錯覚し、痛みの軽減と運動回復を促します。GMIの3段階の中で、最後に行うステップです。
その他の主な治療法。
柔らかい素材から始め、徐々に異なる質感・温度の刺激を患部に与えることで、触覚過敏(アロディニア:触れるだけで痛む状態)を段階的に和らげます。進行が速すぎると症状が悪化するため、必ず専門家の指導のもとで行います。
抗うつ薬(中枢性疼痛の軽減)、抗てんかん薬(神経障害性疼痛への作用)、ステロイド(炎症抑制)、ビスホスフォネート(骨萎縮抑制)などが使用されます。交感神経ブロックにより痛みが軽減する場合もあります。薬物療法は必ず専門医の指示のもとで行います。

CRPSは、正しいアプローチと段階的な関わりで、確実に変化をつくれる疾患です。「もう無理かもしれない」と感じているご本人・ご家族に、STROKE LABは専門的な視点とエビデンスに基づくリハビリをご提供します。
ご家族ができるサポート。
まず「痛みを信じる」こと。
CRPSの痛みは目に見えません。検査で「異常なし」と言われることも多く、ご家族も半信半疑になることがあります。しかし、患者さんにとって「大げさだよ」「気持ちの問題じゃないの?」という言葉が、孤立感と心理的ストレスを生み、症状を悪化させることがあります。
声かけの例。
「すごく痛そうだね。無理しなくていいよ。今日は一緒にゆっくりしよう。」
「昨日より少し動けたね。それだけで十分だよ。」
「触ってほしい時は教えて。あなたのペースに合わせるから。」
治療法の選択について。
| 治療の種類 | ご家族の関わり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| GMI・ミラーセラピー | 練習中は静かに見守る。邪魔しない環境づくり。 | 無理に進めない。痛みが出たら即中止。 |
| 脱感作療法 | セラピストの指示した素材・手順を守って一緒に練習。 | 自己判断で硬い素材を使わない。 |
| 心理的サポート | 「あなたの話を聞く」姿勢を続ける。 | 解決策を押しつけず、まず共感する。 |
在宅復帰と公的支援制度。
CRPSによって生活が制限されている場合、さまざまな公的支援制度を活用できる可能性があります。治療やリハビリを継続しながら、制度を上手に使うことで、在宅生活の質を維持・向上させることができます。
在宅復帰チェックリスト
主な公的支援制度
| 制度名 | 内容・対象 | 窓口 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 肢体不自由・日常生活に著しい制限がある場合。税控除・交通費助成・福祉サービスの利用が可能。 | 市区町村の福祉担当窓口 |
| 介護保険 | 40歳以上で要介護・要支援認定を受けた場合。訪問リハビリ・デイケア・福祉用具貸与などが利用可能。 | 市区町村の介護保険担当窓口 |
| 障害福祉サービス | 居宅介護・重度訪問介護・自立訓練など。身体障害者手帳または自治体の障害支援区分認定が必要。 | 市区町村の障害福祉担当窓口 |
| 高額療養費制度 | 医療費が月の自己負担限度額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度。 | 加入している健康保険の窓口 |
| 障害年金 | CRPSによる障害が一定以上の場合、障害基礎年金・障害厚生年金の請求が可能。 | 近くの年金事務所・市区町村の国民年金窓口 |
回復までの期間と予後。
CRPSの回復期間は、個人差が非常に大きい疾患です。数ヶ月で症状が大きく改善する方もいれば、数年にわたって治療を続ける方もいます。しかし、「回復しない」わけではありません。
最も重要なのは、発症後1年以内に積極的なリハビリを開始することです。この時期に適切な介入を行うことが、その後の回復軌跡に大きく影響します。
良好な予後に関わる要因:発症後早期からの介入、段階的なリハビリの継続、多職種(医師・理学療法士・心理士)によるチーム医療、ご家族のサポート。
慢性化しやすい要因:長期の不動(患部を動かさない状態)、治療開始の遅れ、強いストレス・うつ・不安障害の合併、痛みに対する恐怖(痛みを避けるための過度な回避行動)。
GMIの効果:Moseleyらの無作為化比較試験(RCT)では、GMIが長期にわたるCRPS患者の疼痛と機能改善に有効であることが示されています(Moseley, Pain 2004; Neurology 2006)。
よくあるご質問。
CRPSの回復期間は個人差が非常に大きく、数ヶ月で大きく改善する方から数年にわたって治療を継続する方まで様々です。
発症後1年以内に適切な治療を開始することが、回復の可能性を大きく高めます。早期からの理学療法・作業療法と多角的な疼痛管理が鍵です。
CRPSの診断は主にブダペスト基準という臨床診断基準に基づきます。感覚・血管運動・皮膚運動・運動萎縮の4カテゴリーから症状と所見を評価します。
補助的にMRI、骨シンチグラフィー、交感神経ブロック試験が用いられることがあります。一つの検査だけで確定診断はできないため、専門医への相談をお勧めします。
はい、ただし身体を直接動かす前に「脳のリハビリ」から始めることが重要です。GMI(段階的運動イメージ療法)では、まず左右識別訓練から始め、実際の動作を伴わずに脳に運動パターンを再学習させます。
痛みを増悪させない段階的なアプローチが鍵です。アイシング(冷却)は神経系を刺激し症状を悪化させる可能性があるため、CRPSには基本的に使用しません。
CRPSの痛みは目に見えにくいため、まず「本当に痛い」という事実を信じることが最初のサポートです。
痛みを最小化する言葉や無理な動作の促しは逆効果になることがあります。日常生活の環境整備と精神的なサポートが回復を後押しします。
CRPSは主に外傷や手術後に特定の四肢に局所的に発症する疼痛症候群です。皮膚の色・温度変化など自律神経症状が特徴的です。
一方、線維筋痛症は全身の広範な筋骨格系の痛みと疲労・睡眠障害を伴う慢性疾患で、明確な外傷誘因がなく、自律神経症状も目立ちません。治療アプローチが異なるため、正確な診断が重要です。
STROKE LABでは、脳神経科学に基づいたアプローチを中心に、GMI(段階的運動イメージ療法)、ミラーセラピー、脱感作療法、徒手療法を組み合わせた個別プログラムをご提供しています。
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STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経科学・徒手技術に特化した自費リハビリ施設です。CRPSに対して、GMI(段階的運動イメージ療法)、ミラーセラピー、脱感作療法、徒手療法を組み合わせた個別プログラムで支援します。一人ひとりの状態・生活目標に合わせ、脳の可塑性(へんかできる力)を最大限に引き出すアプローチをとります。
— STROKE LABでのリハビリアプローチの実際をご紹介しています。

「6ヶ月間、誰にも信じてもらえなかった痛みが、STROKE LABのリハビリを始めてから少しずつ楽になりました。先生が『その痛みは本物です』と言ってくれた言葉が、一番の支えでした。」— 50代 女性・CRPS Type I・リハビリ開始後4ヶ月
「手術後から右腕が焼けるように痛く、何もできない日が続きました。段階的なイメージトレーニングから始めたことで、無理なく少しずつ動かせるようになっています。」— 40代 男性・CRPS・リハビリ開始後3ヶ月
あわせて読みたい:STROKE LABの脳卒中リハビリテーションを徹底解説
諦めないでください。

CRPSは、適切な知識と段階的なリハビリによって、確実に変化をつくれる疾患です。「どこに行けばいいかわからない」「もうあきらめかけている」というご家族・患者さんのそばに、私たちはいます。
脳は変わる力を持っています。それが、私たちの仕事の出発点です。一度だけ、話を聞かせてください。
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代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)