【2026年版】ボディスキーマとボディイメージの違いとは?パーソナルスペース障害から学ぶ身体認識と脳卒中リハビリ – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
  1. HOME
  2. ブログ
  3. 医療者
  4. 【2026年版】ボディスキーマとボディイメージの違いとは?パーソナルスペース障害から学ぶ身体認識と脳卒中リハビリ
医療者

【2026年版】ボディスキーマとボディイメージの違いとは?パーソナルスペース障害から学ぶ身体認識と脳卒中リハビリ

Stroke Rehabilitation — Body Schema, Body Image & Peripersonal Space

身体図式と身体像の違いを、臨床判断に落とし込む。

「なぜその患者さんは動作を誤るのか」を正確に理解するには、身体図式(ボディースキーマ)と身体像(ボディーイメージ)の区別、そして3種の空間フレームの違いが鍵になります。神経基盤・評価・介入を新人臨床家のために体系的に解説します。

UPDATED2025
READ約15分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

Neglect Incidence
33%
右半球脳卒中後、約33%に半側空間無視(USN)が発生する。
(Halligan PW et al., Trends Cogn Sci, 2003)
Spontaneous Recovery
50%
発症後6週以内に約50%が自然改善するが、重症例や慢性期では残存しやすい。
(Kerkhoff G., Prog Neurobiol, 2001)
ADL Impact
2.5
USNを有する患者は、同程度の麻痺があってもADL自立に要する期間が約2.5倍長くなる。

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
身体図式(ボディースキーマ)は無意識の感覚運動表象(主に頭頂葉・運動野)。身体像(ボディーイメージ)は意識的な身体の知覚(頭頂葉・側頭葉・辺縁系)。臨床上の障害像が異なる。
02
ペリパーソナルスペース(手の届く範囲)はボディースキーマと連動し、ADL場面に直結する。パーソナル・ペリパーソナル・エクストラパーソナルの3層構造を押さえることが臨床の第一歩。
03
USN(半側空間無視:Unilateral Spatial Neglect)は空間タイプ別に症状が異なる。パーソナル・ペリパーソナル・エクストラパーソナルそれぞれで介入アプローチが変わる。
04
評価カットオフの目安:CBS ≥ 2点BIT従来版 < 129/146点線分二等分 偏位 > 10mmでUSNを疑う。複数の評価を組み合わせることが推奨される。
05
各空間の無視への介入で最も重要なのは「患者の代わりにやらない」こと。患者自身が無視側に気づき、自発的に使う機会を設計することが回復の鍵となる。

01
Clinical Encounter

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
70代男性、右中大脳動脈梗塞後3週目。左半身に麻痺はあるが、理解力は保たれている。

食事では左側のおかずを食べ残す。車椅子で廊下の左壁にぶつかる。左腕の袖が通せていないのに「できている」と言う。これは単なる麻痺の影響なのか?

このケースを理解するためには、身体図式・身体像・3種の空間という3つの概念の整理が欠かせません。それぞれの障害が重なると、このような複合的な症状が現れます。

新人のころ、「この患者さんはなぜ左側を使えないのか」と悩んだ経験はありませんか。麻痺の程度だけでは説明がつかないケースに出会ったとき、身体図式と身体像の概念が助けになります。

この記事では、脳卒中後のリハビリで頻繁に出会う「見えない障害」を神経科学の視点から整理します。評価・介入・多職種連携まで一気通貫で学べるように構成しました。

02
Definition & Epidemiology

身体図式と身体像の定義と疫学。

まず「身体図式」と「身体像」という用語を整理しましょう。この2つは混同されやすいですが、神経基盤も臨床的意義も異なります。

身体図式と身体像の本質的な違い。

項目 身体図式(ボディースキーマ) 身体像(ボディーイメージ)
定義 身体の協調運動と姿勢維持を助ける感覚運動表象 自身の身体の意識的な知覚とメンタルな表象(外見・大きさ・形)
認知プロセス 主に無意識で自動的 意識的で認知的
機能 動作・姿勢調整を導く 自尊心・身体の満足度・自己概念に影響
主な関与部位 頭頂葉・運動野(背側経路) 頭頂葉・側頭葉・後頭葉・辺縁系(腹側経路+辺縁系)
主な入力 筋収縮感覚(固有感覚)・触覚 視覚・触覚・筋収縮感覚+社会的・文化的要因
障害の例 失行症・身体無視・幻肢症候群 somatoparaphrenia・アノソグノジア・摂食障害

この2つの概念は相互に関連しています。身体図式は「動くための地図」であり、身体像は「自分の身体をどう感じているか」という主観的な認識です。脳卒中後は両者が同時に障害されることもあります。

Key Concept
ぺリパーソナルスペースとは何か。

ペリパーソナルスペース(peripersonal space)は、私たちの身体を取り囲む「直接の作業領域」です。腕を伸ばして物に届く範囲がこれにあたります。

この空間はボディースキーマと密接に連動しています。食事・整容・更衣といったADL動作はほぼすべてこの空間内で完結するため、臨床的に最も重要な空間フレームのひとつです。

STROKE LABでの無料相談の様子

— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします

Free Consultation
「なんだか動きがおかしい」そのご不安、
まず話を聞かせてください。

STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。身体図式障害・空間無視など、病院では十分に対応できなかった高次脳機能の問題にも、専門的なプログラムで向き合います。まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

無料相談を予約する

03
Neural Mechanism

神経メカニズムと責任病巣。

身体図式と身体像は、脳の異なる経路によって処理されます。この「2ルート」を知ると、患者さんの症状の読み方が変わります。

Clinical Metaphor
背側経路は「運転手」、腹側経路は「ナビゲーター」。

背側経路(where/how経路)は「今どこにあって、どう動かすか」を処理します。これが身体図式の神経基盤であり、頭頂葉・運動前野が中心的な役割を担います。

腹側経路(what経路)は「それが何で、自分にとってどんな意味があるか」を処理します。身体像・自己認識に関わり、側頭葉や辺縁系が関与します(Dijkerman & de Haan, 2007)。

右半球が空間処理を支配する理由。

空間処理には右半球が優位であることが知られています。右半球は両側の空間を処理しますが、左半球は主に右側だけを処理します。

そのため、右半球が損傷されると左側の空間への注意が著しく低下し、USN(半側空間無視)が生じます。左半球損傷でUSNが起きにくいのもこの非対称性のためです。

USNの責任病巣として特に重要なのは、頭頂側頭後頭接合部(TPJ:Temporoparietal Junction)です。注意の方向づけ・自己身体の認識・空間表象の統合に関与するとされています(Committeri et al., J Cogn Neurosci, 2004)。

EVIDENCE — Level B(観察研究・複数)
身体図式の神経基盤:感覚運動処理の2系統

Dijkerman & de Haan (2007): Behavioural Brain Sciences誌に掲載。感覚入力が「身体像」と「身体図式」の2つの経路に分岐する神経モデルを提示。背側・腹側経路の役割分担を解明した理論的根拠として現在も広く引用されている。

Committeri et al. (2004): Journal of Cognitive Neuroscience誌。空間認知における自己中心的・物体中心的・ランドマーク中心的の3つのフレームに異なる脳領域が関与することを示した。空間無視の多様性を理解する上での基礎的エビデンス。

04
Spatial Frames

3つの空間フレームの分類。

私たちを取り囲む空間は「3層構造」で理解できます。この分類は、USNの症状がどの空間で出ているかを判断し、介入の優先順位を決める際に非常に役立ちます。

用語 定義 臨床的機能・ADL例
パーソナルスペース 個人の周囲にある心理的・身体的境界。自分の体そのものを含む 整容・更衣・体位変換など自己身体へのケア
ペリパーソナルスペース 身体を取り囲む直接の領域(腕の届く範囲)。物体に届き・操作できる空間 食事・書字・物の操作・テーブル上の課題
エクストラパーソナルスペース ペリパーソナルを超えた空間。視覚・聴覚的知覚の限界まで広がる 歩行・車椅子操作・広い環境の移動・運転

健常者と脳卒中患者のペリパーソナルスペースのイメージ

図1 健常者と脳卒中患者のペリパーソナルスペースのイメージ
図引用:金子唯史:脳卒中の動作分析 医学書院より

ペリパーソナルスペースと身体図式の違い

図2 ペリパーソナルスペースと身体図式の関係
図引用:金子唯史:脳卒中の動作分析 医学書院より

ペリパーソナルスペースはボディースキーマに密接に連動する。この空間内での動作の失敗こそが、脳卒中後のADL障害の核心となることが多い。

パーソナル・ペリパーソナル・エクストラパーソナルスペースの図解

図3 3つの空間フレームの模式図

半側空間無視(USN)と3つの空間。

USN(半側空間無視:Unilateral Spatial Neglect)は、通常は右頭頂葉の損傷から生じる神経学的障害です。患者は左側の刺激に注意を向けることが著しく困難になります。

USNは3つの空間すべてに影響を及ぼす可能性があります。しかし重要なのは、どの空間でどの程度の無視が生じているかは患者ごとに異なるという点です。

USNの空間別症状
患者の行動から読む無視のタイプ
— 3空間ごとに異なる症状が現れる
パーソナル:左側の整容・更衣が不十分。左腕の存在を無視
ペリパーソナル:テーブル左の食事・物品を無視。線分二等分で偏位
エクストラパーソナル:歩行中に左の壁や人にぶつかる
ボディーイメージ障害の症状
意識的な身体知覚の歪み
— 脳卒中後に特有の症状
アノソグノジア:自身の麻痺を認識できない(病識欠如)
somatoparaphrenia:左腕が「自分のものではない」と感じる
幻肢:切断された肢体の知覚(身体図式の残像)

05
Assessment & Scoring

評価尺度と採点基準。

「どの空間でどの程度の無視があるか」を定量的に把握するために、複数の評価ツールを組み合わせることが推奨されます。ここでは主要な評価尺度の採点基準を完全に解説します。

CBS(Catherine Bergego Scale):ADL観察型評価。

SCORING CRITERIA — CBS完全版
Catherine Bergego Scale(CBS):10項目×各0〜3点、合計0〜30点

採点基準(各項目共通):0点=無視なし / 1点=軽度(時々見落とす)/ 2点=中等度(頻繁に見落とす)/ 3点=重度(常に無視)

評価項目(10項目):①左腕の使用 ②左足の使用 ③左側の整容 ④左側の着衣 ⑤食事中の左皿の食品 ⑥左側の障害物との衝突 ⑦左方向への注意 ⑧左側の人・物への反応 ⑨左空間での移動 ⑩左側からの音への反応

カットオフ:スコア ≥ 2点でUSNの臨床指標として有効。重症度:0点=無視なし、1〜10点=軽度、11〜20点=中等度、21〜30点=重度。(エビデンスレベル:観察研究複数)

BIT(Behavioural Inattention Test):標準化された机上検査。

SCORING CRITERIA — BIT完全版
Behavioural Inattention Test(BIT):従来版 + 行動版

従来版(6種類、146点満点)の構成:
①線分横断(35点)②文字取り消し(40点)③星印取り消し(54点)④図形模写(4点)⑤線分二等分(9点)⑥表象描画(4点)

カットオフ:従来版合計 129/146点未満でUSN疑い。感度 85%・特異度 90%(Wilson et al., 1987)。

行動版(9種類、81点満点)の構成:写真スキャン・電話ダイヤル・メニュー読み・記事読み・時計読み・コイン仕分け・住所転写・地図案内・トランプ仕分け。カットオフ:67/81点未満でUSN疑い。

線分二等分試験と星印取り消し試験。

線分二等分試験:200mmの水平線の中点をマークしてもらいます。正中から10mm以上の偏位があればUSNを疑います。右半球損傷では中点が右寄りになる(右偏位)のが典型的です。

星印取り消し試験(BIT内):56個の星印(大・小)が散在する用紙から、小さな星印だけを選んでもらいます。左半分の星印を見落とした数が多いほどUSNが重症です。

重要なのは、これらの検査だけでは「どの空間での無視か」が分かりにくい点です。CBSと組み合わせることで、ペリパーソナル(机上)とパーソナル(ADL)の無視の割合が見えてきます。

06
Intervention Strategy

空間タイプ別の介入戦略。

介入は「どの空間での無視か」によって戦略が異なります。以下に空間タイプ別のアプローチをまとめます。

01
パーソナルスペース無視への介入自己認識訓練(セルフアウェアネス)

整容・更衣・体位変換など、自己身体に関わるADLで「左側を意識する機会」を設計します。セラピストが代わりにやってしまわず、鏡を使った確認や声かけで患者自身の気づきを促します。パラメータ:毎日の更衣・整容場面で5〜10分、意識化の声かけを一貫して実施します。

02
ペリパーソナルスペース無視への介入視覚スキャン + 肢体活性化

視覚スキャントレーニングで患者に体系的に左側を探索する習慣をつけます。同時に、肢体活性化として患側上肢を積極的に使う課題を組み込みます。患側手を先に動かすこと自体が、左空間への注意を促す効果を持ちます。パラメータ:セッション30〜45分、週5回、4〜6週継続が推奨されます(エビデンスレベル:RCT複数)。

03
エクストラパーソナルスペース無視への介入空間探索訓練

廊下や病棟環境を使って、左側の障害物を認識しながら移動する練習を行います。障害物をすべて排除してしまうのは誤りです。安全な環境内で意図的に左側への注意を要する課題を設定します。歩行や車椅子操作の練習を通じて空間探索能力を高めていきます。

04
ADLへの統合課題指向型・転移練習

机上訓練で得られた「左を見る習慣」をADL場面に転移させます。食事・更衣・歩行などの実際の場面で、スキャン習慣と肢体活性化を統合していきます。病棟スタッフや家族にも同じ声かけ原則を共有し、24時間で一貫した介入環境を作ります。

EVIDENCE — RCT複数・強く推奨
視覚スキャントレーニングの有効性

Kerkhoff G. (2001): Progress in Neurobiology誌のレビュー。視覚スキャントレーニングは、机上課題の成績改善に一定の効果を示すが、ADLへの般化には追加的な戦略(肢体活性化・課題指向型練習)の組み合わせが重要であると結論づけた。

介入パラメータの推奨値:視覚スキャントレーニング 30〜45分/セッション × 週5回 × 4〜6週継続。肢体活性化は各ADLの開始前に患側上肢を3〜5回意識的に動かすことを繰り返します。

STROKE LAB代表 金子唯史

Message from CEO
「あきらめないで。脳は、回復しようとし続けています。」

身体図式や空間認知の問題は、「見えない障害」だからこそ見過ごされがちです。STROKE LABでは、脳神経科学と徒手技術を組み合わせた専門的なプログラムで、一人ひとりに合った回復の道筋を一緒に考えます。まずはご相談ください。

無料相談を予約する

07
Interprofessional Collaboration

多職種連携と環境調整。

身体図式障害・空間無視への介入は、リハビリの時間だけで完結しません。24時間の生活場面全体を通じて一貫したアプローチが求められます。

各職種の役割分担。

職種 主な役割 具体的なアクション例
PT(理学療法士) 移動・姿勢・空間移動訓練 歩行・車椅子での左空間探索練習、姿勢の左右対称性の確認
OT(作業療法士) ADL評価・机上課題・環境改変 CBSを使ったADL評価、視覚スキャントレーニング、環境の再配置
ST(言語聴覚士) 注意・認知機能の評価・介入 注意機能・遂行機能の評価、コミュニケーション支援、病識向上への介入
看護師 24時間の環境管理・安全確保 左側からの声かけ統一、ベッド配置の検討、転倒・衝突リスクの管理
医師 診断・病巣確認・処方 MRI所見の共有、合併症の管理、リハ処方の調整
MSW(医療ソーシャルワーカー) 退院調整・家族支援 在宅環境の評価・改修提案、家族への情報提供、介護保険申請支援

環境調整のポイント。

Clinical Insight — 環境調整

「ベッドの左側に窓がある配置では、患者が自然に左を向く機会が増えます。逆に、左側が壁だと無視を強化してしまうことがあります。」

「テレビやナースステーションを左側に配置することで、意識せずとも左方向への注意が促されます。環境そのものをリハビリのツールとして使いましょう。」

「チームで声かけの言葉を統一することが大切です。『左を見てください』の一言を全職種・家族が使うだけで介入効果が高まります。」

08
Pitfalls & Clinical Reasoning

Pitfallsと臨床判断のコツ。

新人のころは「患者さんのために」と思ってやることが、実は回復を妨げていることがあります。空間別の無視への対応で、特に陥りやすい3つの罠を紹介します。

Pitfalls — Don’t make these mistakes
新人臨床家が陥りやすい3つの罠。
!
パーソナル無視:代わりにやってしまう罠。更衣や整容を患者の参加なしにセラピストが完了させてしまうのは誤りです。「速く終わらせる」ことよりも「患者が左側に気づく機会を作る」ことが目的です。正しいアプローチは、声かけで患者自身が左側を確認・操作するよう促すことです。
!
ペリパーソナル無視:物品を全て健側に置く罠。食事や道具を患者の右側ばかりに配置するのは一見親切に見えますが、無視側への注意をさらに低下させ、無視を強化してしまいます。正しいアプローチは、重要な物品をあえて左側に配置し、視覚スキャンと肢体活性化を組み合わせることです。
!
エクストラパーソナル無視:障害物を全て排除する罠。左側の障害物をすべて取り除いて安全にすることは、転倒を防ぐことはできても、空間探索能力の回復を妨げます。正しいアプローチは、安全な範囲で障害物を意図的に配置し、左側を意識しながら環境を移動する練習を行うことです。

臨床判断の分岐点:どの空間での無視かを見極める。

Mentor’s Voice — 判断のコツ

「まず食事場面を見てください。テーブル上の左半分の料理を残すかどうかで、ペリパーソナル無視の程度がつかめます。」

「更衣で左袖を通すのに介助が必要なのか、気づかないのかを区別することが大切です。気づかないのであればパーソナル無視です。」

「CBSの10項目を観察するだけで、どの空間のどのADLが最も困難かが一目でわかります。初期評価として必ず使いましょう。」

介入の原則はシンプルです。「患者自身が無視側に気づき、使う機会を設計する」こと。これが身体図式・空間無視リハビリの核心です。

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

USNや身体図式障害の予後は、損傷部位・重症度・発症からの時期によって大きく異なります。患者・家族への説明とゴール設定に役立てましょう。

Prognosis Overview
自然経過と回復のタイムライン。

発症後6週以内は自然回復が期待できる時期です。約50%は軽度〜中等度のUSNから自然に改善します(Kerkhoff G., 2001)。しかし重症例や、発症6ヶ月を超えた慢性期では無視が残存することも多くあります。

予後不良因子として、損傷が大きい(右中大脳動脈全域梗塞など)、アノソグノジアを合併している、発症前から認知機能が低下している、などが挙げられます。一方で、適切な早期介入は自然経過よりも良好な結果をもたらすとされています。

ゴール設定では、「無視をなくす」ことを最終目標にするのではなく、「無視があっても安全にADLを遂行できる戦略を身につける」という視点が現実的です。特に慢性期では代償戦略の定着に焦点を当てます。

ゴール設定の例として、「食事場面で左側を確認する視覚スキャンを自発的に行える」「更衣時に鏡を使って左側の確認ができる」「車椅子操作で左壁への衝突が週1回未満になる」などが挙げられます。

「早期から介入するほど効果が大きい」という原則は、身体図式・空間無視のリハビリにも変わらず当てはまります。入院期間の限られた中でも、方向性を早めに定めることが重要です。

10
FAQ

よくある質問。

Q. ボディースキーマとボディーイメージの違いを一言で教えてください。
A.

ボディースキーマは動作を無意識に導く感覚運動的な身体の地図です。ボディーイメージは自分の身体の見た目や大きさを意識的に認識したものです。

前者は主に頭頂葉・運動野が担い、後者は頭頂葉・側頭葉・辺縁系など多領域が関与します。臨床では「動作の失敗」はボディースキーマ、「自己認識の歪み」はボディーイメージの問題と考えて整理すると見通しがよくなります。

Q. ペリパーソナルスペースとはどのような概念ですか?
A.

ペリパーソナルスペースとは、自分の体を取り囲む「手の届く範囲」の空間のことです。物体に手を伸ばし、つかみ、操作する行動はこの空間内で行われます。

ボディースキーマと密接に連動しており、食事・更衣・書字などのADLはほぼすべてこの空間内で完結します。脳卒中後の無視症状はこの空間内でも生じることがあり、臨床上最も重要な空間フレームのひとつです。

Q. 半側空間無視(USN)とボディースキーマの障害はどう違うのですか?
A.

半側空間無視(USN)は右半球損傷後に左側の空間刺激への注意が著しく低下する状態です。一方、ボディースキーマの障害は自己身体の感覚運動表象の異常で、失行症や幻肢症候群として現れます。

USNには身体図式障害の要素が重複することもあります。特に「パーソナルスペース無視」はボディースキーマ障害と密接に関連しており、両者を切り離して考えることが難しいケースも多くあります。

Q. 身体図式・空間無視の評価には何を使えばよいですか?
A.

USNの標準評価には、BIT(Behavioural Inattention Test)とCBS(Catherine Bergego Scale)の組み合わせが推奨されます。

BITの従来版カットオフは129/146点未満でUSN疑い、CBSはスコア2点以上が無視の目安です。線分二等分試験も有用で、偏位10mm超でUSNを疑います。CBSはADL場面での無視を、BITは机上での無視をそれぞれ反映するため、両方を使うことで空間タイプ別の評価ができます。

Q. 各空間タイプの無視(パーソナル・ペリパーソナル・エクストラパーソナル)にどうアプローチすればよいですか?
A.

パーソナルスペース無視には自己認識訓練を使い、患者が身体の左側に自ら気づく機会を設けます。鏡や言語的フィードバックを活用します。

ペリパーソナル無視には視覚スキャントレーニング(週5回×30〜45分)と肢体活性化を組み合わせます。エクストラパーソナル無視には、安全な環境での左側障害物を意識した移動練習を行います。いずれも「代わりにやらない」原則を守ることが最重要です。

Q. ボディーイメージの歪みは脳卒中後にも起こりますか?
A.

はい、脳卒中後にもボディーイメージの歪みは起こります。右半球損傷後に左腕が「自分のものではない」と感じる身体所有感の喪失(somatoparaphrenia:身体異属症)がその代表例です。

また、自分の麻痺を認識できないアノソグノジア(病識欠如)も脳卒中後に見られるボディーイメージ障害のひとつです。これらはボディーイメージとボディースキーマの両方が関与する複合的な障害です。リハビリへの動機づけを大きく妨げるため、早期に把握することが重要です。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは脳神経科学と徒手技術に特化した自費リハビリ施設です。身体図式障害・半側空間無視など、高次脳機能の問題を含む脳神経系の障害に対して、エビデンスに基づいた専門的なプログラムを提供しています。

STROKE LABの強み
脳神経系の専門知識と個別対応
— 見えない障害を見える化する
脳神経科学に特化したセラピストによる専門評価
身体図式・空間知覚を含む高次脳機能への系統的アプローチ
マンツーマンでの集中的・個別化されたセッション
ご家族・介護者へのホームプログラム指導
取り組める内容
日常生活の回復に向けて
— こんなお悩みに対応します
食事・更衣・整容で左側が気になる
歩行や車椅子で左にぶつかる
麻痺を認識しているが動かす感覚がわからない
退院後の回復が止まっている・もっとよくなりたい

— STROKE LABでのリハビリの実際の様子です。

Voice from Mentors

「身体図式と身体像の概念を知ってから、患者さんの動作観察が格段に変わりました。単に”左が動かない”ではなく、”左を認識できていない”という視点を持てるようになって、ADLへのアプローチが根本から変わりました。」— 作業療法士・臨床経験12年・高次脳機能専門

「3つの空間フレームを意識するようになってから、カンファレンスでの情報共有がとてもスムーズになりました。看護師に”ペリパーソナル無視が強いので食事は左側に物を置いて”と伝えるだけで、24時間の介入が一貫してきます。」— 理学療法士・臨床経験8年・脳卒中リハビリ専門

Message from CEO
「見えない障害」にも、
できることは必ずあります。
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

脳卒中の後、「動かない」「気づかない」「なぜかぶつかる」。それが身体図式や空間認知の問題だと気づかれないまま、多くの方が困り続けています。

脳は適切な刺激があれば、回復しようとし続けます。それがSTROKE LABの確信であり、日々の臨床で実感していることです。

「病院のリハビリは終わった。でも、まだよくなりたい」そのお気持ちに、私たちは全力で向き合います。まずはお気軽にご相談ください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

参考文献。

01Dijkerman HC, de Haan EH. Somatosensory processes subserving perception and action. Behav Brain Sci. 2007;30(2):189-201. doi:10.1017/S0140525X07001392
02Kerkhoff G. Spatial hemineglect in humans. Prog Neurobiol. 2001;63(1):1-27. doi:10.1016/S0301-0082(00)00028-9
03Halligan PW, Fink GR, Marshall JC, Vallar G. Spatial cognition: evidence from visual neglect. Trends Cogn Sci. 2003;7(3):125-133. doi:10.1016/S1364-6613(03)00003-7
04Committeri G, Galati G, Paradis AL, et al. Reference frames for spatial cognition: different brain areas are involved in viewer-, object-, and landmark-centred judgements about object location. J Cogn Neurosci. 2004;16(9):1517-1535.
05Gallace A, Spence C. The science of interpersonal touch: an overview. Neurosci Biobehav Rev. 2010;34(2):246-259. doi:10.1016/j.neubiorev.2008.10.004
06Bisiach E, Vallar G. Unilateral neglect in humans. In: Boller F, Grafman J, eds. Handbook of Neuropsychology. Vol 1. 2nd ed. Amsterdam: Elsevier; 2000:459-502.
07Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98-102.
08Bergego C, Azouvi P, Samuel C, et al. Validation d’une échelle d’évaluation fonctionnelle de l’héminégligence dans la vie quotidienne: l’échelle CBS. Ann Réadapt Méd Phys. 1995;38(4):183-189.
09Rossetti Y, Rode G, Pisella L, et al. Prism adaptation to a rightward optical deviation rehabilitates left hemispatial neglect. Nature. 1998;395(6698):166-169.
10金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.

CATEGORY

 

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

FOLLOW US

STROKE LABの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしてください。

CATEGORY

関連記事

Social Media フォロー↓↓↓
誠心誠意の機能向上に向けたリハビリ支援
脳卒中・パーキンソン病に特化した個別リハビリ支援。
病院で培った機能をつなぎ、可能性を広げる施設です。
〒113-0033 東京都文京区本郷2-8-1 寿山堂ビル3階・5階
03-6887-5263
〒158-0082 東京都世田谷区等々力7-2-31 The Room 等々力West 201号 2026.3 OPEN
03-6887-5263
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満6-3-16 梅田ステートビル202号
06-7220-4733
ACCESS