Vol.534.パーキンソン病患者の座位の不安定性と体幹の姿勢制御
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カテゴリー
タイトル
●パーキンソン病患者の座位の不安定性と体幹の姿勢制御
●原著はPostural control of the trunk during unstable sitting in Parkinson’s diseaseこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床において、ここ数週間で数名のパーキンソン病患者様と関わり、十分にその姿勢制御のメカニズムを理解できていない部分があったと思い、学習の一助として本論文に至る。
内 容
背景
●姿勢の不安定性と転倒は、パーキンソン病(PD)の主要な可動性の問題であり、生活の質に大きな影響を及ぼします。 PD患者の最大70%が毎年転倒しており、13%が週に1回以上転倒すると推定されています。特に上半身は総体重の3分の2を占めるため、体幹の動きを適切に制御することは、姿勢の安定にとって非常に重要です。
●PD患者の動作能力の低下の約75%は、振り返る、立ち上がる、前屈するなどの日常生活動作の実行中に体の質量を制御できないために発生することが示唆されています。追加のエビデンスが動的体幹制御がPD患者で変化することを示唆しているので、最近の転倒の有無にかかわらず、PD患者の下肢を姿勢制御への関与から分離し動的体幹制御を研究することが決定されました。
方法
●パーキンソン病(PD)でよく見られる姿勢の不安定性と転倒は、体幹制御の変化に関連しています。この研究では、5回の試行で最大15秒間、半球体が取り付けられた不安定座面でバランスをとる動的な体幹制御を調査しました。
●転倒歴のある8人のPD患者、転倒歴のない8人、および一致した8人の健康な被験者を比較しました。
結果
●バランスを取り始めから課題を遂行できた試験数とバランスを崩すまでの時間は、健康対照群と比較しPD患者で有意に低かったが、転倒歴のあるPD患者は転倒歴のない患者よりも有意に成績が低かった。
●COP特に内外側の振幅の少なさ・遂行可能時間は健常者>転倒歴なし患者>転倒歴ありであった。パーキンソン病患者は動揺は多きかったが、COPの動きと体幹の動きの両方が小さかった。
●結果は、体幹制御がPDで影響を受けることを示しており、これらの変化が姿勢の不安定性と転倒リスクに関連している可能性があることを示唆しています。
私見・明日への臨床アイデア
●パーキンソン病患者では背筋(伸筋)よりも屈筋が働きやすく、多裂筋など深層背面筋の知覚・活動は乏しくなりやすく、姿勢反射障害と併せてバランスを取る際の体幹筋の参加は減少しやすい。また不動・固縮等により身体の動きの幅や俊敏性は損なわれやすい。それに伴い、不活動を生じ廃用も作られやすい。パーキンソン病患者の障害を十分に理解した上で、運動療法・環境整備・サービス調整など臨床では関わっていきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)