Vol.519.高齢者における歩行速度とMCIおよび認知症のリスクの関係性
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タイトル
●高齢者における歩行速度とMCIおよび認知症のリスクの関係性
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●認知症の患者は確実に増えている。MCIの段階で予防していくことが重要となっている。MCIの状態から進行を防ぐために、早期に認知症状に気づく必要がある。
内 容
背景
●認知機能低下と認知症は、高齢者の生活の質に大きな影響を与える加齢に伴う障害の一つです。医療費の増加に加え、認知機能の低下と認知症は、患者の家族に多大な肉体的および精神的圧力をもたらす可能性があります。
●歩行変数は、高齢者のメンタルヘルスに関連する重要な要因と見なされてきました。過去10年間で、歩行変数と認知機能低下または認知症との関連を評価することを目的とした多くの研究がありました。
●歩行速度と認知機能低下および認知症のリスクとの長期的な関連に関するデータは一貫性がなく、決定的ではありません。したがって、前向きコホート研究のメタアナリシスを実施して、歩行のペースと高齢者の認知機能低下および認知症リスクとの関連を定量的に評価しました。
方法
●研究は、2016年4月22日までPubMedとEMBASEで検索されました。追加情報は、Google Scholarまたは関連する研究からの参照リストの手作業によるレビューを通じて、取得されました。
結果
●一連のエビデンスは、歩行のペースが筋力と有意に関連しており、筋の喪失が認知機能障害に関連すると言われる炎症、酸化ストレスおよび性コルチコステロイドレベルと高度に相関していることを示唆している。
●歩行の速度が360 m / h減少するごとに、認知症のリスクは13%増加しました。
●歩行が自動活動としてだけでなく、運動、感覚、小脳活動を含むいくつかの神経系のシームレスな調整を必要とする活動としても考慮されていることを示しています。したがって、歩行ペースは、将来の認知機能に関連する現在の認知機能の指標となる可能性があります。
●歩行ペースが遅い人は、認知機能障害のリスクが高く、後年に認知症や認知機能低下を引き起こす可能性があります。さらに、身体能力の低下の要素としての歩行ペースの遅さは、身体的不活動の一因となる可能性があり、その結果、認知機能低下または認知症のリスクを高めます。
私見・明日への臨床アイデア
●歩行速度が遅くなると認知機能が低下しやすいことが示唆された。退院時の歩行速度はどうでしょうか?歩行速度が遅いまま帰宅すると、歩行に十分に自信が持てず不活動となり認知症や転倒リスクが徐々に増える可能性が予測されます。退院後の生活が十分に自立して過ごせる能力を有しているのか目標をしっかり見直して臨床に挑みたいところです。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)