Vol.493.考えさせすぎてませんか?脳卒中患者の運動学習の方法の違いがバランスに及ぼす影響
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カテゴリー
タイトル
●頭の使いすぎ?脳卒中患者の運動学習の方法の違いがバランスに及ぼす影響
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●特に脳卒中患者においては重症度・高次脳・認知面の差が大きく運動学習を進めるにあたっての手法に悩むことが多い。様々な運動学習を学ぶことで引き出しを増やそうと思い本論文に至る。
内 容
背景
●脳卒中後、しばしば自分の行動を意識的に制御しようとするが、これは逆に運動の再学習を阻害し(同時の認知課題負荷による)最適なパフォーマンスを混乱させる可能性がある。
●頭で考える事を最小限に抑える学習戦略は、意識的に運動行動を制御する試みを回避し、それによってより良いパフォーマンスをもたらす可能性があります。この研究の目的は、2つの運動学習戦略(エラーレス学習と発見学習)の1つを使用して、脳卒中後の動的バランス作業の暗黙の学習の効果を検討することでした。
●補足:誤りをさせない学習法(エラーレス学習)とは,いったん間違えると誤反応が残り,修正が難しいという特性から,新しいことを記憶する場合に誤反応を避け,最初から正反応を導く方法である。一方、発見学習とは,問題解決の方法を指導者が明示するのではなく,学習者自身が主体的に考えながら発見することを目指す学習方法である。
方法
●脳卒中後の成人10人と同年齢の高齢者12人が、重心動揺計(左右に傾く)上で単一課題(バランスのみ)および同時処理課題の条件下で動的バランス課題を練習しました。脳卒中および対照群の参加者は、4つの群のうちの1つにランダムに割り当てられました。エラーレス学習は重心動揺計が傾かない、発見学習は重心動揺計を水平に保つようにしなければならない。
(1)エラーレス学習脳卒中グループ
(2)エラーレス学習コントロールグループ
(3)発見学習脳卒中グループ
(4)発見学習コントロールグループ
重心動揺計を用いてバランスパフォーマンスを評価しました。
結果
● 脳卒中後の発見学習者(明示的)のバランスのパフォーマンスは、同時認知課題負荷によって損なわれました。 対照的に、エラーレス学習者と発見学習のコントロール群のパフォーマンスは損なわれませんでした。
●リハビリ中の明示的な情報の提供は、脳卒中の一部の人々の運動能力の学習/再学習および実行に有害である可能性があります。リハビリテーションの設定で暗黙の運動学習技術を適用すると有益な場合があります。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では運動だけでも制御するのが大変な方も多く、さらに何かを意識させるという負荷はキャパをオーバーし、運動を制御させるための意識を阻害させてしまう可能性がある。よかれと思い、様々な口頭指示を出すことがあるかもしれないが、患者によっては手法を再検討する必要性があることが示唆された。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)