【2024年版】パーキンソン病のすくみ足・突進歩行に対する治療法・リハビリは?Stop&Go!
質問が届いています。
今回の内容はYouTube動画で視聴できます
Stop&Goウォーキングの具体的な展開例
シーン1:ウォーミングアップ
場面: 明るいリハビリテーションルーム。自宅でも可能。
登場人物: パーキンソン病の患者さん(60代の男性、名前は田中さん)と療法士(30代の女性、名前は佐藤さん)。
佐藤さん:「田中さん、今日はStop&Goウォーキングをやってみましょう。これから少しウォーミングアップをして、体をほぐしましょう。」
田中さんは頷き、佐藤さんの指示に従って軽いストレッチを始める。
シーン2:直線歩行
場面: 広い廊下。床には目立つ色で線が引かれている。
ストーリー: 佐藤さんは田中さんに向かって、「今から直線を歩きます。私が『ストップ』と言ったら、その場で止まってください。」と説明する。
田中さんは廊下の始点に立ち、佐藤さんの合図を待つ。
佐藤さん:「では、始めましょう。歩いてください。」
田中さんはゆっくりと歩き始める。数歩進んだところで、佐藤さんが「ストップ!」と合図を出す。
田中さんはすぐに足を止め、その場に留まる。佐藤さんは「とても良いですね。そのまま少し止まっていてください。」と声をかける。
シーン3:方向転換
場面: 廊下の途中にテープでマークされたポイント。
ストーリー: 佐藤さんは田中さんに、「今度は次のポイントで方向転換します。『ターン』と言ったら、90度右に曲がってください。」と説明する。
田中さんは歩き始め、マークされたポイントに近づく。
佐藤さん:「ターン!」
田中さんは慎重に右に90度曲がり、新しい方向に向かって歩き始める。
シーン4:停止からの再開
場面: 廊下の終点。
ストーリー: 佐藤さんは田中さんに、「最後にもう一度ストップ&ゴーをやります。今度は少し早く歩いてみましょう。」と伝える。
田中さんは少し緊張しながらも、佐藤さんの指示に従い、早歩きを始める。
佐藤さん:「ストップ!」
田中さんはすぐに止まり、その場で数秒間静止する。
佐藤さん:「今度は歩き始めてください。」
田中さんは再び歩き始める。
シーン5:総括
場面: リハビリテーションルームの休憩スペース。
ストーリー: 佐藤さんと田中さんはリハビリテーションルームに戻り、椅子に座る。
佐藤さん:「田中さん、今日の練習はとても良かったですね。特に方向転換の部分が素晴らしかったです。これからも続けていきましょう。」
田中さんは笑顔で頷き、達成感を感じながら、「ありがとうございます。次回も頑張ります。」と答える。
このように、具体的なシーンを描くことで、Stop&Goウォーキングの練習風景をよりリアルにイメージできるかと思います。バリエーションとして、速度の変更や方向転換を取り入れることで、運動の制御をさらに強化することができます。
Stop&Goウォーキングトレーニングの脳科学的意義
Stop&Goウォーキングトレーニングは、パーキンソン病の患者にとって非常に重要なリハビリテーション方法です。このトレーニングの脳科学的意義について詳しく解説します。
1. 運動の開始と停止の制御
パーキンソン病は、基底核の異常によって運動制御に問題が生じます。特に、動き始める(開始)ことや動きを止める(停止)ことが困難です。Stop&Goウォーキングトレーニングは、この運動開始と停止の制御を強化します。
- 脳の役割: 基底核、特に線条体(尾状核と被殻など)は、運動の開始と停止に重要な役割を果たします。このトレーニングにより、線条体の活性化が促進され、運動の制御能力が向上します。
2. フリーズ現象の軽減
パーキンソン病の患者は、突然歩行が止まってしまう「フリーズ現象・すくみ足」に悩まされることがあります。Stop&Goウォーキングは、このフリーズ現象を軽減する効果があります。
- 脳の役割: フリーズ現象は、脳の運動制御ネットワークの異常が原因とされています。特に、基底核と補足運動野(SMA)の連携が重要です。トレーニングにより、このネットワークの機能が改善され、フリーズ現象が減少します。
3. 認知機能の向上
Stop&Goウォーキングは、注意力や反応時間などの認知機能の向上にも寄与します。合図に反応して動きを止めることは、注意力の集中と迅速な意思決定を必要とします。
- 脳の役割: 前頭前野は、注意力や意思決定に関与する重要な領域です。このトレーニングにより、前頭前野の機能が強化され、認知機能全般の向上が期待できます。
4. バランスと姿勢の改善
運動の開始と停止を繰り返すことで、バランス能力と姿勢制御が改善されます。これは、転倒リスクの軽減にもつながります。
- 脳の役割: 小脳と前庭系は、バランスと姿勢の維持に重要です。このトレーニングにより、小脳の可塑性が促進され、バランス能力が向上します。
5. 神経可塑性の促進
パーキンソン病のリハビリテーションにおいて、神経可塑性の促進が重要です。新しい動きを繰り返すことで、脳内の新しい神経回路が形成され、運動能力が回復します。
- 脳の役割: トレーニングにより、シナプスの可塑性が向上し、新しい神経回路の形成が促進されます。特に、ドーパミン作動性神経回路の再編成が期待されます。
結論
Stop&Goウォーキングトレーニングは、パーキンソン病の患者にとって運動制御、認知機能、バランス能力など多岐にわたる改善効果が期待できる重要なリハビリテーション方法です。脳科学的な観点からも、基底核、前頭前野、小脳などの脳領域の機能改善に寄与し、患者の生活の質の向上に大きく貢献します。
すくみ足の治療はほかにありますか?
以下のように足が出にくい場面はリラックスすることや、リズムに合わせた足踏み練習も効果的です。
すくみ足の自宅でできる練習:
ウォーミングアップ
佐藤さん:「田中さん、今日はすくみ足を改善する練習をしてみましょう。まずはウォーミングアップをしましょう。」
田中さんは頷き、佐藤さんの指示に従って軽いストレッチを始める。肩を回したり、足を伸ばしたりして体をほぐす。
足踏み練習
ストーリー: 佐藤さんは田中さんに向かって、「まず、足踏みをしてみましょう。私がリズムを取りますので、一緒にやってみましょう。」と説明する。
佐藤さん:「では、始めます。1、2、1、2…」
田中さんは佐藤さんのリズムに合わせて足踏みを始める。ゆっくりとしたペースから始め、徐々にリズムを速くする。
佐藤さん:「とても良いですね。少しずつペースを上げていきましょう。」
合図に反応する練習
場面: リビングルーム。佐藤さんは床に目立つ色のテープを貼り、それをまたぐようにしながら、開始と停止を繰り返します。
ストーリー: 佐藤さんは田中さんに、「最後に、私が合図を出したらその場で止まってください。そして新しい合図で再び歩き始めましょう。」と説明する。
佐藤さん:「では、始めましょう。歩いてください。」
田中さんは歩き始める。数歩進んだところで、佐藤さんが「ストップ!」と合図を出す。
田中さんはすぐに止まり、その場に留まる。
佐藤さん:「今度は歩き始めてください。」
田中さんは再び歩き始める。
薬物療法
- ドーパミン補充療法: レボドパ(L-DOPA)やカビドパなどのドーパミン補充薬を使用して、脳内のドーパミンレベルを増加させます。
- MAO-B阻害薬: セレギリンやラサギリンなどの薬剤は、ドーパミンの分解を防ぎ、ドーパミンの作用を持続させます。
- COMT阻害薬: エンタカポンなどは、ドーパミンの代謝を遅らせ、その効果を延長します。
リハビリテーション
- 物理療法: バランス訓練や歩行訓練を含む理学療法が行われます。特に歩行パターンの改善やバランス強化に焦点を当てます。
- 作業療法: 日常生活動作(ADL)の改善を目指し、具体的な動作練習や適応機器の使用を指導します。
- 姿勢訓練: 正しい姿勢を維持するための訓練を行い、歩行の安定性を向上させます。
デバイスとテクノロジー
- 歩行補助具: ステッキやウォーカーなどの使用は、バランスをサポートし、すくみ足を軽減するのに役立ちます。
- 音響や視覚のキュー: 音楽のリズムや視覚的なマーカーを使用して、歩行のリズムを整えます。メトロノームや専用のアプリも使用されます。
- 振動デバイス: 振動を与えるデバイスを装着し、歩行時に振動刺激を加えることで、すくみ足を緩和します。
手術療法
- 深部脳刺激療法(DBS): 脳内の特定の部位に電極を挿入し、電気刺激を与えることで症状を改善します。特に薬物療法が効果を示さない場合に適応されることが多いです。
行動療法
- 運動習慣の導入: 定期的な運動(ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど)が筋力とバランスの維持に役立ちます。
- 環境調整: 家の中や職場の環境を整理し、安全で移動しやすい空間を作ることが重要です。たとえば、滑りやすい床を防止するマットの使用や、手すりの設置などです。
これらの治療法を組み合わせることで、すくみ足の症状を緩和し、生活の質を向上させることができます。各患者の症状や状況に応じて最適な治療法を選択することが重要です。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)