落ち着きがなく動き回る子|感覚を「求めている」動きの読み解き方
落ち着きがなく動き回る子|感覚を「求めている」動きの読み解き方
走る、登る、ジャンプする、体をぶつける、椅子で揺れる——その動きは、単なる「落ち着きのなさ」ではなく、体が必要な感覚を探しているサインかもしれません。感覚を満たすことで、かえって座る・聞く・切り替える力が育つことがあります。

こんな場面で、困ります。
家の中ではソファからジャンプし、園では椅子に座っていられず、並んでいるときに友だちにぶつかってしまう。注意すると一瞬止まるけれど、すぐまた動き始める。
「落ち着きがない」「わざとやっている」「何度言っても聞かない」と見られがちですが、実は体の中で必要な感覚入力が足りていないために、動きで補おうとしている場合があります。
子どもが動き回る理由は一つではありません。年齢相応の活動性、睡眠不足、環境の刺激、注意の切り替えの難しさ、不安、ADHD、自閉スペクトラム症、発達性協調運動症など、さまざまな背景があります。その中の一つに、「感覚を求めている動き」があります。
たとえば、ジャンプすると体に強い衝撃が入ります。壁を押すと筋肉や関節に力が入り、自分の体の位置が分かりやすくなります。回る・揺れると、頭の中のバランスのセンサーが刺激されます。こうした感覚入力によって、子どもは「自分の体がここにある」「今、体が目覚めた」「落ち着いて座る準備ができた」と感じやすくなることがあります。
感覚を「求めている」動きとは。
感覚を求めている動きとは、体を動かしたり、物に触れたり、圧を加えたりすることで、脳が必要としている感覚入力を得ようとする行動です。専門的には「感覚探索」「感覚欲求」「sensory seeking」と呼ばれることがあります。
子どもは大人のように「今、体が落ち着かないから関節に力を入れたい」「揺れの感覚が足りないから動きたい」と言葉で説明できません。そのため、走る、回る、ぶつかる、登る、押す、噛む、触るなどの行動として現れます。

| 見られる動き | 求めている可能性がある感覚 | 大人の見方 |
|---|---|---|
| ジャンプを繰り返す | 足裏・関節・筋肉への強い入力 | 体に「入った」感じを得て、姿勢を整えようとしている |
| 走る・登る | スピード感・バランス感覚・筋活動 | 体を目覚めさせ、覚醒を上げようとしている |
| 回る・揺れる | 前庭覚への入力 | 頭や体の動きの感覚を強く感じたい |
| 人や物にぶつかる | 深い圧・衝撃・体の輪郭 | 自分の体の境界が分かりにくい可能性がある |
| 狭い場所に入る・包まれたがる | 触覚・圧刺激・安心感 | 外からの刺激を減らし、体を落ち着かせている |
本人は困らせるために動いているのではなく、体の中の落ち着かなさを調整しようとしている可能性があります。危険な行動は止める必要がありますが、行動そのものを悪いものとして扱うのではなく、安全な形に置き換える視点が大切です。
前庭覚・固有受容覚・触覚を知る。
落ち着きがなく動き回る子を見るとき、特に大切になるのが、前庭覚、固有受容覚、触覚です。これらは、目に見える学習や会話の前に、体を安定させるための土台になります。
軽く触られるのは苦手なのに、ぎゅっと抱きしめられるのは好き。服のタグは嫌がるのに、布団にくるまると落ち着く。こうした反応は、触覚の受け取り方に偏りがあるときに見られることがあります。

行動を分解して見る。
同じ「動き回る」でも、どのタイミングで、どんな動きが増えるのかによって、必要な支援は変わります。行動そのものを見るだけでなく、前後の状況を一緒に見ていくことが大切です。
| 場面 | 行動 | 読み解き | 支援の方向 |
|---|---|---|---|
| 朝の準備前 | 走る、ジャンプする | 体を目覚めさせたい | 壁押し、荷物運び、短いジャンプ活動 |
| 座る活動の途中 | 椅子を揺らす、姿勢が崩れる | 姿勢保持の感覚が足りない | 足台、短い休憩、手で押す活動 |
| 人が多い場所 | 走り出す、ふざける | 刺激が多く調整しにくい | 静かな場所、見通し、先に体を動かす |
| 切り替え場面 | 寝転ぶ、逃げる、ぶつかる | 終わりの予測が難しい・不安定 | タイマー、次の活動の提示、深い圧の活動 |
いつ起こるのか、何をしているのか、その後どう落ち着くのか。この3点を見ていくと、単なる困った行動ではなく、体が求めている感覚や、避けたい刺激が見えてくることがあります。


— 動きの背景を、感覚と姿勢の両面から確認します
STROKE LABでは、感覚を求める動き、姿勢保持、バランス、体幹、運動計画、生活場面での困りごとを合わせて評価します。ご家庭や園・学校で実践しやすい支援方法も一緒に整理します。
ADHD・ASDとの違い。
落ち着きがなく動き回ると、「ADHDでは?」「発達障害では?」と心配になる保護者の方は少なくありません。たしかに、ADHDでは多動性や衝動性として、そわそわする、座っていられない、走る・登る動きが多いなどの様子が見られることがあります。また、自閉スペクトラム症では、感覚刺激に対して強く反応したり、特定の感覚を求めたりすることがあります。
ただし、動き回ることだけでADHDやASDと判断することはできません。睡眠不足、運動不足、環境刺激の多さ、緊張、不安、言葉で伝えられない困りごと、体幹や姿勢の不安定さでも、似た行動が出ることがあります。
「ADHDかどうか」「ASDかどうか」を家庭だけで判断する必要はありません。まずは、どの場面で困るのか、どの感覚活動の後に落ち着くのか、危険があるのか、園や学校で参加しづらいのかを整理することが、支援につながります。
家庭でできる支援。
家庭での支援は、「動きをなくす」ことではありません。安全な形で必要な感覚を入れ、最後に落ち着く活動へつなげることです。ポイントは、強すぎる刺激を長く続けないこと、終わり方を決めること、活動後に座る・聞く・食べるなどの目的活動へつなげることです。

走り回る前に、壁を10秒押す、洗濯物を運ぶ、クッションをぎゅっと押すなど、筋肉と関節に力が入る活動を入れてみましょう。
ジャンプをする場合は、布団やマットなど安全な場所を決め、回数や時間を見える形にします。「10回ジャンプしたら水を飲む」など、終わり方をセットにします。
回る・揺れる動きは興奮が上がりやすい子もいます。活動後に目が合いにくくなる、話が入りにくくなる場合は、短くして、最後に深い圧や静かな活動へ移りましょう。
両手で壁を押し、足で床を踏みます。10秒を2〜3回。体に力が入り、姿勢の土台を作りやすくなります。
本、タオル、軽い買い物袋などを運びます。重さは安全な範囲で、本人が成功できる量にします。
布団や大きなクッションで体をやさしく包む、押す、挟む遊びです。苦しさや恐怖が出ないよう、必ず本人の表情を見ながら行います。
活動後は、水を飲む、深呼吸、手を膝に置く、絵本を見るなど、落ち着く動作を決めます。刺激を入れて終わりにしないことが大切です。
園・学校での支援。
園や学校では、「座っていること」「並んで待つこと」「静かに聞くこと」が求められる場面が増えます。感覚を求める子にとって、ただ我慢することは大きな負担になることがあります。支援のポイントは、動いてよい時間と場所を用意し、座る前に体を整えることです。

| 困りごと | 環境調整 | 育てたい力 |
|---|---|---|
| 椅子で揺れる | 足台を置く、短い運動休憩を入れる | 足底接地、姿勢保持、座る準備 |
| 並んで待てない | 待つ位置を決める、持つ役割を与える | 見通し、体の境界、役割意識 |
| 友だちにぶつかる | 人に当たらない押す活動を用意する | 力加減、距離感、社会参加 |
| 活動の切り替えが苦手 | タイマー、写真カード、終わりの動作を決める | 予測、安心、切り替え |
感覚を求める子は、座る前に体が整っていないことがあります。短い壁押し、荷物運び、ジャンプ、深い圧の活動を先に行うことで、次の活動に入りやすくなる場合があります。
相談の目安。
動きが多いこと自体は、子どもらしい発達の一部でもあります。特に幼児期は、体を動かしながら学ぶ時期です。一方で、生活や安全、園・学校での参加に影響している場合は、早めに相談することで、子どもに合った支援方法を見つけやすくなります。
相談先としては、まずかかりつけの小児科、自治体の発達相談、園や学校の先生、必要に応じて作業療法士・理学療法士などが挙げられます。相談時には、行動が出る場面、直前の状況、行動後に落ち着く方法をメモしておくと、支援方針が立てやすくなります。
STROKE LABの小児リハの視点。
STROKE LABは、脳卒中をはじめとする神経リハビリで培った運動分析の視点をもとに、小児の姿勢・感覚・運動発達の支援も行っています。動き回る行動を「困った行動」として見るだけでなく、体幹、肩甲帯、股関節、足部、バランス、感覚入力、運動計画、生活環境まで含めて整理します。

あわせて読みたい:小児(脳性麻痺児/発達障害など)のリハビリ — STROKE LAB
よくある質問。
動き回ることだけでADHDと判断することはできません。年齢、睡眠、環境、感覚を求める行動、不安、発達特性などを合わせて見る必要があります。家庭・園・学校など複数場面で困りごとが続く場合は相談しましょう。
感覚活動で落ち着きやすくなる子もいますが、すべての子に同じ方法が合うわけではありません。ジャンプで落ち着く子もいれば、興奮が上がる子もいます。反応を見ながら、短時間で安全に行うことが大切です。
危険な行動は止める必要があります。ただし、叱るだけでは必要な感覚が満たされず、行動が繰り返されることがあります。「ここでは走らない。代わりに壁を押そう」など、安全な行動に置き換えることが大切です。
壁押し、重い物運び、クッション押しなど、筋肉や関節に力が入る活動から始めやすいです。時間を短くし、終わったら水を飲む・深呼吸・座るなど、落ち着く流れを作るとよいでしょう。
「いつ、どこで、どんな動きが出るか」「何をすると落ち着くか」「園や学校で何に困っているか」を伝えると、評価が進めやすくなります。可能であれば短い動画やメモを用意するとよいでしょう。
関わり方が変わります。

落ち着きがなく動き回る子どもを前にすると、保護者の方は「どう止めたらよいのか」と悩まれると思います。
しかし、動きの背景には、感覚を求めている、姿勢を保ちにくい、環境刺激が多い、切り替えが難しいなど、さまざまな理由があります。
私たちは、子どもの動きを神経・感覚・運動のしくみから丁寧に読み解き、ご家庭で続けやすい支援へつなげます。
代表取締役 金子 唯史
参考と注意書き。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず小児科医、発達相談、作業療法士・理学療法士などの専門職にご相談ください。感覚統合・感覚処理に関する支援は、目標を明確にし、生活上の変化を確認しながら進めることが大切です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)