vol.117:履物の違いによる歩行への影響 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
目次
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タイトル
歩行における履物の違いによる影響 Effect of footwear on minimum foot clearance, heel slippage and spatiotemporal measures of gait in older women ?Pubmedへ Annette M ,Davis et al.(2015)
本論文を読むに至った思考・経緯
•基本的に必ず靴は履く物であり、姿勢制御にも直接関わる。靴の相談を受ける事も多い。靴やスリッパなど履物のメリット・デメリットを知っておくことはセラピストに求められる部分だと思い本論文に至る。
論文内容
研究背景・目的・方法
•靴(履物)は様々な種類、特徴があり転倒の要因にもなり得ます。スリッパや靴下での裸足の歩行は、転倒の可能性が高いとされています。特に女性の方の多くは、自宅でスリッパを着用しています。
•スリッパは、股関節骨折をされた高齢者95人を対象とした調査で最も使用された履物であり、その他16人はウォーキングシューズを着用していたが靴紐など甲側に固定のないタイプの靴を履かれていた。
•ほとんどのスリッパは、甲側の安定を備えておらず、足部を囲う素材も安定性の形態を有していない。
•本研究は、高齢者において「適切にフィットした靴(甲側固定あり)」、「スリッパ」および「裸足」の条件下で、足のクリアランス、踵の滑りおよび歩行特性を調べました。
結果
1)適切にフィットした靴(甲側固定あり):裸足やスリッパと比べて歩幅が長く、歩隔が狭く、二重支持期が延長し、足の床とのクリアランスが大きく、踵の滑りが少なかった。
•靴は、遠位縁部20mmつま先が上がっており、歩行中の靴の転がり効果を改善します。足趾が支持面から持ち上げられている為、クリアランスに寄与する可能性が高い。
•靴が緩んでいると、背中の固定があっても踵の滑りが大きくなりやすくなります。
2)スリッパ:靴と比較し、踵の滑りが19%増と優位に大きかった。
•平坦なソールを有し、つま先の上がりを有しておらず、遠位端は床と接触しており、これは潜在的に足のクリアランスの低下に寄与する。
•甲側の固定の欠如は踵がより自由に上方に移動し、踵の滑りが大きくなりやすくなります。踵の滑りが増加すると、バランスが不安定になり、下肢運動制御システムに対する要求が大きくなります。
3)裸足:靴と比較し、歩幅が短く、足の床とのクリアランスは小さく、歩行速度は遅くなった。
他論文より追記
•ミュールのストラップの有無において甲ストラップ有にて歩行時の前脛骨筋への負荷を消失することを示されている。(筋電図解析による流行靴ミュー ルを着用した歩行時の生体負担度の評価:大西ら2004)
•バランスシューズであるSkechersのShape UpsのAP方向のCOPの振る舞いが、裸足と比較して大幅に大きくなる。片足立ちにおいてReebok Easy Tone™では裸足と比べ、AP方向のCOPの振る舞いが有意に増加し、ML方向の累積分布率が起大きい結果が示された。その他下図のような結果がバランスシューズでは示されています。The effect of different unstable footwear constructions on centre of pressure motion during standing(W. Plom et al.2014)
私見・明日への臨床アイデア
•ローカットよりもハイカットの方が足関節周りが安定する事が示されていたり、靴底の変形も歩きづらさ(安定性・疲労・快適性)に繋がる。靴による姿勢制御への影響は大きく、靴の選定は大切である。
•靴の着脱の容易さ、見た目(好み・普段使いや冠婚葬祭等)、大きさ(全体・つま先側のゆとり)、踵の高さ、生地(ナイロン・皮等)、重量、値段、装具の有無、脚長差、雨の日など様々なことをトータルで考えよりベターな物を選択する必要がある。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)