【2026年版】ローテーターカフ(回旋筋腱板)の役割、痛みに対するリハビリ・トレーニングについて
腱板(ローテーターカフ)の機能・損傷・評価・介入を、新人セラピストのために体系化する。
ローテーターカフ(RC)は4筋からなる深層筋群で、肩甲上腕関節の動的安定を担う。解剖・機能・損傷分類から診断クラスターテスト、保存療法の段階的プログラムまで、臨床判断の根拠となる知識を一本に整理した、新人PT・OT向けの完全ガイドです。
— STROKE LABによる肩関節へのアプローチ解説。腱板の機能と介入の基本的な考え方を確認できます。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
このような訴えは病院・施設・訪問リハビリを問わず日常的に遭遇します。「肩が痛い」という主訴の背景には、腱板(RC)の機能不全が隠れていることが非常に多いです。
RC損傷は無症状でも存在しうることを頭に置いておくと、アセスメントの精度が上がります。訴えの有無だけで判断しないことが重要です。
肩の痛みは脳卒中後の麻痺側肩関節でも頻発します。RC機能不全がある場合、正常な上肢の動きが阻害され、ADL訓練の障壁になります。肩複合体の評価と介入は、PT・OTどちらにとっても必須のスキルです。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
そのお悩み、一緒に解決しましょう。
STROKE LABは脳神経系リハビリの専門施設です。脳卒中後の肩関節痛や上肢機能の問題に、科学的なアプローチで向き合います。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
定義・解剖・疫学。
ローテーターカフ(RC:Rotator Cuff / 腱板)は、4筋とその腱からなるグループの通称で、肩複合体の運動に強度と安定性を提供する深層筋群です。棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の頭文字をとってSITS筋とも呼ばれます。
4筋はすべて肩甲骨に起始し、上腕骨頸部に停止します。肩甲上腕関節(GH関節:Glenohumeral joint)の周囲をカフ(袖口)のように取り囲み、上腕骨頭を関節窩に引き付ける役割を担っています。
| 筋名 | 肩甲骨上の起始部 | 上腕骨上の停止部 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| 棘上筋 Supraspinatus |
棘上窩 | 大結節上面 | 外転(特に初期0〜30°) |
| 棘下筋 Infraspinatus |
棘下筋窩 | 大結節中面 | 外旋(主力) |
| 小円筋 Teres minor |
肩甲骨外側縁 | 大結節下面 | 外旋(補助) |
| 肩甲下筋 Subscapularis |
肩甲下窩 | 小結節・上腕骨頸部 | 内旋・前方安定 |
— 図引用:VISIBLE BODY
腱板の頭頂部には、筋肉と腱が周囲の骨に密着しているため、それを覆って保護するための滑液包(bursa)が存在します。肩峰下滑液包が最も重要で、インピンジメント症候群の主役になります。
4筋がバランスよく機能することで、小さな関節窩に大きな上腕骨頭を安定させるという力学的な「奇跡」が成立しています。
神経筋制御とメカニズム。
RC筋は屈曲・外転・内旋・外旋などほぼすべての肩運動で必要とされます。単なる「動力源」ではなく、上腕骨頭を関節窩の中で精密に「微調整(fine-tuning)」する役割が核心です。これにより生体力学的インピンジメントが回避されます。
深層筋の活性化こそが肩リハビリの起点である。
フィードフォワード制御と先行活性化。
対象・方法:19名(男10・女9、平均22.2歳)。棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・前後三角筋に筋電図を装着。肩甲上腕関節への内外旋方向の予測的/非予測的摂動を加えた。
結果①:3つの腱板筋はすべて、三角筋より先行して活性化(フィードフォワード制御)。肩甲下筋・棘下筋の先行性が最も顕著でした。
結果②:肩甲下筋は外旋摂動に対して37% MVICで活性化。棘下筋は内旋摂動に対して28% MVICで応答。主働筋でないときは10% MVIC未満に留まりました。
臨床的含意:肩の動的安定化にはRC筋のフィードフォワード的な筋活性化が必要。介入では、深層のRC筋を先に活性化・知覚させてから、三角筋などの表在筋を促通する順序が重要です。
— 図引用:金子唯史『脳卒中の動作分析』医学書院
RC機能不全があると、上腕骨頭が関節窩内で正しい位置に保てず、肩峰下腔の軟部組織への異常なストレスが生じます。これが肩の疼痛・可動域制限・筋力低下の連鎖を引き起こします。
損傷分類と鑑別。
腱板損傷は年齢を問わず生じ得ます。若年層では外傷やオーバーユース(バレーボール・テニス・投球などのオーバーヘッドスポーツ)が主因です。高齢者では加齢による腱の変性・脆弱化が主因となり、無症状の変性・断裂も多く存在します。
腱板の4大損傷分類。
筋肉や腱のミクロ〜マクロな断裂。部分断裂と完全断裂に分類されます。完全断裂は外科的修復の適応になる場合があります。無症状のことも多く、画像診断との照合が重要です。
RC軟部組織の急性炎症。発症から数日〜数週間の時期。炎症が強い急性期に過負荷をかけると症状を遷延させます。安静と抗炎症処置が優先されます。
RC軟部組織の慢性炎症・変性。繰り返しのオーバーユースや不良姿勢が蓄積した結果として生じます。腱の線維構造が変性しており、回復には時間がかかります。
肩関節複合体の生体力学的機能不全による肩峰下腔での軟部組織の異常な摩耗・挟み込み。姿勢不良(例:GH関節の前方変位)がリスク因子です。
症状の特徴。
RC損傷は常に痛みを伴うわけではない点が重要です。無症状でも短期間で症状を発症する可能性もあります。主な症状は以下の通りです。
評価・診断クラスターテスト。
腱板病変の評価には病歴・身体検査・臨床検査・画像診断の4要素があります。特にセラピストが行う臨床検査は、クラスターテストの組み合わせで精度を高めることが鍵です。
病歴聴取の要点。
① 年齢・性別・糖尿病・喫煙・以前の肩/頸部痛の既往
② スポーツ参加(コンタクト/オーバーヘッド)・職業上の反復動作
③ 受傷機転:急性(FOOSH: Fall on Outstretched Hand=伸ばした手に倒れる外傷)/反復性ストレス
④ 考えられる交絡因子:年齢、慢性化の有無、労災認定状況
診断クラスターテスト(Roy et al. 2015)。
以下の5テストを組み合わせて使う(クラスター戦略)ことで、単一テストより感度・特異度が向上します。単独の陽性/陰性で結論を出さないことが重要です。
| テスト名 | 主な対象 | 陽性の基準 |
|---|---|---|
| ホーキンス・ケネディテスト | 肩峰下インピンジメント | 疼痛の誘発 |
| ニアテスト | 肩峰下インピンジメント | 疼痛の誘発 |
| 有痛性アーク徴候 | 腱板病変全般 | 外転60〜120°での疼痛 |
| エンプティキャンテスト | 棘上筋損傷 | 疼痛・筋力低下 |
| 外旋時の疼痛・脱力 | 棘下筋・小円筋損傷 | 外旋抵抗での疼痛/脱力 |
— STROKE LABによる肩の評価・クラスターテストの解説動画。臨床手順の確認に活用してください。
画像診断の使い分け。
MRI(ゴールドスタンダード):断裂・炎症の検出に最優秀。断裂のサイズ・特性を把握し、治療プロトコル確立に貢献します。軟部組織の可視化に最適です。
超音波(US, エビデンスレベル2a):診断精度が高く、費用対効果・即時性に優れます。動態評価も可能。MRI代替として現場での使用頻度が増加しています。
X線:腱板(軟部組織)の直接評価には不向き。剥離骨折・石灰化・関節炎・骨変形の除外目的で使用します。
保存療法・介入の段階。
腱板損傷の保存療法は多くの部分断裂・腱板腱症に有効です。コルチコステロイド(またはヒアルロン酸ナトリウム)の肩峰下腔注射と、残存筋力増加・肩こり改善を目的とした運動療法を組み合わせます。
安静・アイシング・NSAIDs(中程度の強さで推奨)。痛みが著しく強い場合はコルチコステロイド注射を考慮。この時期に運動負荷をかけると炎症を遷延させます。痛みが増強しない範囲で、極めて低負荷の振り子運動(コドマン体操)から開始します。
疼痛が軽減したら徐々に可動域を拡大します。姿勢修正(肩甲骨・体幹のアライメント)を行ったうえで、ROM訓練を実施。小さな可動域でも血流改善・拘縮予防に有効です。1日2〜3回、10〜15分を目安にします。
低負荷・高反復の腱板強化運動を実施。外旋(棘下筋・小円筋)・内旋(肩甲下筋)を中心に。セラバンドを用いた抵抗運動から開始し、1〜2週ごとに負荷を漸増します。セット数:3×15〜20回、週3〜5回が基本的な目安です。
ADL・スポーツ動作への機能統合。肩甲帯全体の安定化訓練、体幹との協調運動を組み込みます。再発予防のためのホームプログラム指導が重要です。
① 疼痛増強なし:痛みが増強しない範囲・負荷で開始。運動後の疼痛悪化を毎回確認しながら進めます。
② 段階的可動域拡大:小さな範囲から徐々に広げます。少量でも動かすことで血流改善・拘縮予防につながります。
③ 姿勢修正+低負荷反復:体幹前傾・肩甲骨の位置不良は筋負荷を偏らせ、痛みを増悪します。アライメントを整えた状態で無理のない運動を繰り返します。

STROKE LABでは、脳神経系の専門知識を背景に、肩関節の機能回復に向けた個別プログラムを提供しています。まずは現状をお聞かせください。一緒に解決策を考えます。
多職種連携と環境調整。
腱板損傷のリハビリは理学療法士が中心になることが多いですが、脳卒中後の肩関節問題では作業療法士・看護師・医師との連携が不可欠です。
| 職種 | 主な役割 | 連携ポイント |
|---|---|---|
| PT(理学療法士) | ROM・筋力・姿勢評価、運動療法 | 介入段階の共有、運動負荷調整 |
| OT(作業療法士) | ADL分析、上肢機能訓練、自助具選定 | 着替え・入浴動作の環境調整 |
| 医師(整形外科) | 画像診断・注射・外科的判断 | 断裂サイズと治療方針の確認 |
| 看護師 | 日常的なポジショニング、疼痛観察 | 睡眠時の肩ポジション指導の共有 |
「訓練室ではうまくできても、病棟で看護師が介助するときの持ち方が悪いと、せっかくの訓練が無駄になることがある。ポジショニングと介助方法の共有は必ずやろう。」
「脳卒中後の麻痺側肩は、無意識に力が抜けた状態で吊り下げられている。このポジションが続くだけで腱板に微小な損傷が蓄積する。早期からのポジショニングが肩関節亜脱臼・痛みの予防に直結する。」
「患者さんの生活環境も確認しよう。寝返り時に患側を下にしていると夜間痛が出やすい。環境調整のアドバイスを1つ伝えるだけで患者さんの満足度が大きく変わる。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
腱板リハビリは基本的な概念が理解できても、臨床判断の分岐点では先輩も迷います。新人のうちは特に以下の3つの罠に注意してください。
臨床判断の分岐点。
「クラスターテストは1つが陽性でも診断はできない。複数組み合わせた時のパターンで考えることを習慣にしよう。」
「肩の痛みが頸部や胸椎からの放散痛の場合もある。頸椎・胸椎のスクリーニングを先に行って、肩以外の原因を除外することが大切だ。」
「運動後24時間以内に痛みが悪化するようなら、負荷が高すぎるサイン。プログラムを一段階落として様子を見よう。」
予後とゴール設定。
腱板損傷の予後は、損傷の種類・サイズ・慢性化の有無・患者の年齢・併存疾患(糖尿病・喫煙)によって大きく異なります。一般的に部分断裂・腱板腱症は保存療法で75%前後が改善しますが、完全断裂・大断裂は外科的修復が必要な場合があります。
📌 予後不良因子:高齢・大断裂・慢性化・糖尿病・喫煙・筋腱ユニットの高度変性
📌 手術適応の目安:完全断裂・保存療法6ヵ月以上無効・若年者の急性断裂
📌 高齢者の大断裂外科治療:慢性化・高齢では再断裂率が高く、改善率も低い。代替治療(反転型肩関節全置換術・関節包再建など)を医師と相談。
よくある質問。
棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋で構成されており、頭文字をとってSITS筋とも呼ばれます。
すべて肩甲骨に起始し上腕骨頸部に停止して、肩甲上腕関節の動的安定に不可欠な役割を担っています。
MRIが腱板病変のゴールドスタンダードです。断裂・炎症を検出し、サイズや特性を把握して治療方針決定に役立ちます。
超音波(US)はエビデンスレベル2aで診断精度が高く、費用対効果・利便性から現場でも多用されています。
Roy et al.(2015)によるクラスターテストとして、ホーキンス・ケネディテスト、ニアテスト、有痛性アーク徴候、エンプティキャンテスト、外旋時の疼痛・脱力の5つが代表的です。
単一テストよりもクラスター(複数組み合わせ)で感度・特異度を高めることが推奨されています。
疼痛が増強しない範囲での運動から開始し、徐々に可動域と負荷を拡大します。
NSAIDsは中程度の強さで推奨されており、肩峰下へのコルチコステロイド注射と残存筋力の増加を目的とした運動療法の組み合わせが多くの腱板損傷に有効とされています。
はい。Day et al.(2012)の研究では、腱板筋(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)は外的摂動に対して前・後三角筋よりも先行して活性化することが示されています。
腱板筋が肩の動的安定化においてフィードフォワード制御を担うことが明らかにされており、介入では深層筋から先に活性化を促す手順が重要です。
①痛みが増強しない範囲・負荷で開始すること、②徐々に可動域を拡大すること、③姿勢アライメント(肩甲骨・体幹)を可能な限り修正した状態で低負荷反復運動を行うことが重要です。
炎症期に過負荷をかけると症状を遷延させるため、運動後の疼痛変化を必ず確認してください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは脳神経系・神経筋機能の回復に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の肩関節痛・上肢機能低下に対して、最新の神経科学と徒手療法を組み合わせた個別プログラムを提供しています。
— STROKE LABでの肩・上肢リハビリの実際の様子です。
「腱板の問題は、実は姿勢と体幹のコントロールと切り離せない。STROKE LABでは『肩単体』ではなく、体全体のアライメントを整えながら介入するから、患者さんの変化が早い。」— 理学療法士・経験10年・脳神経リハビリ専門
「脳卒中後の肩は、麻痺・疼痛・認知の問題が複合して現れる。PT・OTが情報を共有しながら介入することで、初めて本当のゴール達成に近づける。チームで動くことの大切さを実感している。」— 作業療法士・経験8年・上肢機能・ADL専門
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諦めないでください。

「肩が上がらない」「着替えが大変」「夜も痛みで眠れない」——そうしたお悩みを抱えながら、どこに相談したらいいかわからず一人で悩んでいる方が多くいます。
STROKE LABでは、脳卒中後の上肢・肩関節の問題を専門とするセラピストが最新のエビデンスと丁寧な個別対応で、機能回復を一緒に目指します。
まずは無料相談で現状をお聞かせください。どんな小さなことでも構いません。あなたの「できるようになりたい」を、全力でサポートします。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)