11月7日 10:00 FAC 3
T字杖・短下肢装具を使用。平地20mは身体接触なしで歩行可能。方向転換時に足が交差しやすく、安全のため近接見守りと言語指示が必要。階段・坂・不整地は未確認。前回は方向転換時に骨盤への軽い接触が必要でFAC 2。今回は同じ補助具・環境で接触が不要となった。病棟では引き続き見守り歩行とし、担当者間で共有。
FAC(機能的歩行分類)の評価方法|0〜5の判定基準・評価用紙PDF
FACの評価方法必要な介助を見て、
歩行の自立度を伝える。
機能的歩行分類(Functional Ambulation Categories:FAC)は、歩行にどれだけ人の助けが必要かを0〜5の6段階で表す評価です。採点の境目、実施手順、記録方法をイラストと臨床例で整理します。
記事全体の目次
臨床例|歩けるのに「自立」ではない?
手は添えていない。でも、方向転換で声かけが必要。
AさんはT字杖と短下肢装具を使用し、廊下20mを身体接触なしで歩けます。ただし、方向転換で足が交差しやすく、安全のため近くで見守り、足の向きを声かけする必要があります。
この条件ならFAC 3に相当します。「杖で歩けた」「触れていない」だけでは、平地自立のFAC 4にはなりません。必要な見守りと声かけを具体的に残します。[2]
FACとは|何を測る評価か
FACは、Holdenらが報告した歩行分類です。歩く速さや見た目のきれいさではなく、他者の支援への依存を整理します。0が最も支援を要し、5が自立度の高い区分です。[1] [2]
歩行に必要な介助人数、体重支持、軽い接触、見守り・声かけ、環境による自立度の違い。
速度、持久力、歩容、痛み、転倒歴、交通場面への対応。FACだけでは十分に表せません。
補助具を使用していても、人の介助や見守りが不要であれば自立区分になり得ます。何を使って評価したかを併記し、再評価時の条件をそろえます。[2]
実施手順|条件をそろえて観察する
荷重制限、転倒リスク、体調、履物、杖・歩行器・装具を確認します。必要な介助者を確保し、施設の中止基準に沿って実施します。
直線歩行と方向転換を観察し、介助人数、体重支持、接触の頻度、声かけ・近接見守りの必要性を記録します。距離・場所も残します。
平地で自立している場合は、階段・坂・不整地での支援の必要性を確認します。危険な課題を無理に行わず、未確認の環境は明記します。
FAC、補助具・装具、歩行環境、必要な介助、未確認事項をまとめます。「できた距離」と「人の助け」は別々に残します。
転倒するか試して判定する評価ではありません。体調や安全上の理由で観察できなければ「未実施・判定保留」と理由を残します。未実施をFAC 0に置き換えません。
実施環境の例:平坦な廊下、方向転換できるスペース、必要に応じて安全な階段。2007年の研究では15m歩行の動画等を使用していますが、歩行距離だけでFACの区分を決めるものではありません。[2]
FAC 0〜5|判定基準を比較する
最初に人の身体介助が必要かを見て、不要なら見守り、さらに歩行環境へと確認を進めます。画像は各区分の一例であり、正確な判定は直下の文章と併せて行います。[2]
FAC 0・1・2|身体介助が必要な段階
歩行できない、または歩行に2人以上の介助を必要とする。
図は2人介助の例。歩行そのものができない場合も0に含まれます。
1人の持続的な身体介助が必要。バランス・協調の補助に加え、体重を支える。
「ずっと触っている」だけで1とは限りません。体重を支えているかが重要です。
1人がバランス・協調を助ける。接触は持続的または間欠的で、体重支持は不要。
接触が続いていても、体重支持がなく軽い補助なら2に該当し得ます。
FAC 3・4・5|見守りと環境で分かれる段階
平地を身体接触なしで歩けるが、安全のための待機・見守り、または言語指示が必要。
検査者が観察のために隣を歩くだけなら、必要な見守りとは区別します。
平地は他者の介助・見守りなしで歩ける。階段・坂・不整地では見守りや介助が必要。
階段などを調べていないだけでは、4と5の違いを確定できません。
平地に加え、階段・坂・不整地でも他者の介助・見守りなしで歩ける。
手すり・補助具の条件を残します。混雑や交通への対応まで保証する区分ではありません。
図中の短い言葉は観察の手がかりです。FAC 0の全条件など、画像に収めていない基準は本文に補足しています。手の位置は介助手技を指示するものではありません。
迷いやすい境目を整理する
体重を受け止めている?
持続的な体重支持が必要なら1。自分で体重を支え、バランス・協調への軽い接触で歩けるなら2。介助者の手の数では決めません。
触れる補助が必要?
ふらつきに対する軽い接触が必要なら2。身体接触が不要で、見守りや声かけのみが必要なら3。
平地をひとりで歩ける?
安全のために人の待機や言語指示が必要なら3。平地でそれらが不要なら4以上を検討します。
平地以外はどうか?
階段・坂・不整地で人の見守り・介助を要するなら4。これらも自立なら5。未確認なら確認範囲と判定の限界を残します。
病棟の運用上の付き添い、検査者の観察、患者に必要な見守りを区別します。一方、認知面の問題などで安全な歩行に声かけが必要なら、身体が支えられていなくても自立とはしません。
評価PDF|採点・経過記録
基準を確認し、
その場で記録する。
A4縦・2ページ/印刷・手書き用
01:0〜5の判定基準+当日の評価
02:3回分の経過比較+申し送り
1ページ目だけでも使用できます。説明を要約し、独自の記録欄を加えた編集版です。公式日本語版ではありません。
カルテ記載とチームへの共有
点数の後に、必要な支援を書く。
文字を選択してコピーできます。実際に確認した内容へ書き換えてください。
「平地は触れずに歩けますが、方向転換で声かけが必要です。FAC 3で、病棟は見守りを続けます」
再評価では、点数だけでなく同じ条件で何の支援が不要になったかを比べます。補助具や環境が変わった場合は、その違いも記録します。
信頼性・予後予測の読み方
2007年研究の対象。初回脳卒中後、発症30〜60日の歩行に介助を要する患者。
検査者間の一致度。歩行動画を複数の評価者が判定。
再評価の一致度。同じ動画を時間を置いて再採点。
Mehrholzらの研究では、高い評価者間・再評価の一致度が示されました。ただし、同じ動画の再採点による信頼性であり、別の日に患者を歩かせても同じ結果になることをそのまま意味しません。[2]
「FAC 4以上なら将来歩ける」の読み違いに注意
同研究では、リハビリ開始から4週後のFAC 4以上が、研究終了6か月後の地域歩行を感度100%・特異度78%で予測しました。対象集団と評価時期が限定された結果です。現在のFACだけで、個人の外出可否や回復の上限を断定しません。[2]
1→2と4→5を、同じ量の回復とは扱いません。「1段階上がったら誰でも同じ臨床的意味がある」とせず、実際に変わった支援内容と本人の生活目標を確認します。
評価をリハビリと生活につなぐ
次の表は、FACの区分そのものを治療法に結びつけた処方ではありません。実際の阻害要因を評価し、練習の焦点を考えるための例です。
| 観察した課題 | 次に検討すること |
|---|---|
| 体重支持が必要 | 立脚時の支持性、姿勢、補助具・装具、介助量を確認。安全な条件で反復練習。 |
| 接触があれば歩ける | ふらつく方向と場面を特定。直線・開始停止・方向転換を分けて観察。 |
| 声かけ・見守りが必要 | 注意、判断、方向転換、環境の影響を整理。必要な指示をチームで統一。 |
| 平地は自立 | 階段、坂、路面、疲労時の変化を確認。生活で必要な距離や時間も評価。 |
目的に応じて10m歩行テストや6分間歩行テストを併用。各検査の安全条件と手順に従います。
玄関の段差、屋外路面、混雑、信号、荷物、疲労を確認。訓練室での自立と生活場面の運用を分けて共有します。
よくある質問
FACは何点満点ですか?
0〜5の6段階です。複数項目を足す検査ではなく、歩行支援の必要性に合う1つの区分を選びます。
杖や装具を使うとFAC 5にはなりませんか?
使用だけでは除外されません。人の介助・見守りが不要か、平地以外も自立しているかで判断し、用具を併記します。
ずっと軽く触れていたらFAC 1ですか?
必ずしもそうではありません。体重支持がなく、バランス・協調への軽い接触なら、持続的でもFAC 2に該当し得ます。
階段を確認できない日はFAC 4でよいですか?
平地だけでは4と5の区別が確定しない場合があります。「平地は自立、階段等は未確認」と記録し、確認できた範囲を明らかにします。未確認を「できない」と扱いません。
FAC 0は、立てないという意味ですか?
いいえ。歩行不能、または歩行に2人以上の介助が必要な区分です。立位や移乗の能力は別に評価します。
FAC 5なら一人で外出してよいですか?
FACだけでは決められません。持久力、交通への注意、混雑や路面、認知面、疲労、転倒歴など、実際の外出条件を確認します。
STROKE LABへの相談
「家の中は歩けるが、外では不安」「家族がどこまで見守ればよいか分からない」。相談時には、FACの数字に加え、使っている杖・装具、困る場所、必要な介助を共有すると、目標を具体化しやすくなります。
どこまで、誰と、何のために歩きたいか。
支援が必要な理由と場面を実際の動作から確認。
練習内容、補助具、家族の支援を調整して変化を確認。
歩ける場所を、生活の中へ。
STROKE LABは自費リハビリ施設です。退院後の歩行や生活動作について、ご本人・ご家族からご相談いただけます。
無料相談の対象・実施方法は予約ページをご確認ください。急な麻痺の悪化など新しい症状は、リハビリ相談より先に医療機関へご連絡ください。
参考資料・原著論文
-
Holden MK, Gill KM, Magliozzi MR, Nathan J, Piehl-Baker L.
Clinical gait assessment in the neurologically impaired. Reliability and meaningfulness.
Phys Ther. 1984;64(1):35–40.
原著を確認 ↗ -
Mehrholz J, Wagner K, Rutte K, Meißner D, Pohl M.
Predictive validity and responsiveness of the functional ambulation category in hemiparetic patients after stroke.
Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(10):1314–1319.
原著を確認 ↗
(分類はAppendix 1を参照)
文献確認:2026年11月。分類の説明は原資料の要約です。図は説明用の生成イラスト、臨床例は架空です。PDFはSTROKE LAB編集版であり、公式日本語版ではありません。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)
