日本版WMS-Rウエクスラー記憶検査|実施手順・5つの指標・点数の解釈と生活支援 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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日本版WMS-Rウエクスラー記憶検査|実施手順・5つの指標・点数の解釈と生活支援

STROKE LAB / ASSESSMENT GUIDE実施 → 解釈 → 生活支援

WMS-R

日本版ウエクスラー記憶検査

記憶のつまずきを、5つの指標から。

聞く、見る、覚える、思い出す。点数と反応から、生活で使える支援を考えます。

WMS-Rで話を聞き記憶を評価する場面
WMS-Rの個別検査を説明するイメージ。
16~74歳日本版の適用年齢
45~60分全体の実施時間の目安
5つの指標100は満点ではなく平均

対象:日本版WMS-R|情報確認:2026.10.24

01 / WMS-R

WMS-Rは、記憶の何を調べる検査?

「説明した直後は分かっているのに、少し時間がたつと抜けてしまう」「言葉の説明より、図を見た方が覚えやすい」。日本版WMS-Rは、こうした違いを言語性記憶・視覚性記憶・一般的記憶・注意/集中力・遅延再生の5つの指標から検討する検査です。[1]

同じ「覚えられない」でも、最初に聞き取れていないのか、情報を十分に取り込めないのか、時間を置くと思い出しにくくなるのかで、生活の工夫は変わります。WMS-Rはその仮説を整理する材料になります。点数と実施中の反応を合わせて、次に生活で何を確かめるかを決めます。

02 / WMS-R

対象年齢・時間と準備

項目 臨床で押さえること
適用年齢 16~74歳。75歳以上の方に74歳の換算値をそのまま適用し、「同年齢では正常」と説明しない。
全体の時間 45~60分が目安。面接、用具準備、採点、説明の時間も別に確保する。
短縮版 約30分。遅延再生の4課題を省く構成が示されている。任意の数項目だけ実施したものを、正式な短縮版や完全な5指標と呼ばない。
用具 正規の検査法、記録用紙、問題冊子、カード・フォルダー類、筆記具等。提示面と記録面を取り違えない。
実施者の準備 教示、提示時間、反復・中止条件、遅延課題へ移る時点、採点を事前に確認する。初回は用具を使って通し練習を行う。

年齢・実施時間・短縮版は出版社資料に基づきます。[1],[2]

検査前には、眼鏡や補聴器、視野、失語、半側空間無視、手の運動、疲労、睡眠、覚醒を確認します。図形を描けない原因が麻痺や構成面にある場合、その低得点をそのまま「視覚的に覚えられない」と読まないことが重要です。

75歳以上の論理的記憶については、日本の50人を対象にした研究があります。ただし、一部の下位検査の研究データがあることと、日本版全体の適用年齢が延長されたことは別です。使う基準の対象年齢・教育歴・条件を確認し、年齢範囲外であることを結果に明記します。[3]

03 / WMS-R

13の課題を、実施場面から理解する

出版社資料の構成に沿って整理します。「情報と見当識」は全般的な状態を把握する項目で、5指標の算出には用いません。Iは初回の学習・再生段階、IIは対応する遅延課題を表します。[2]

課題 何をするか 見るポイント
1 情報と見当識 本人や時間・場所などに関する質問に答える。 検査に取り組める状態か。記憶以外の理解の問題も考える。
2 精神統制 よく知る数字・文字の系列を扱う。 系列の抜け、規則の保持、速度と誤り。
3 図形の記憶 見た抽象的な模様を、候補から見分ける。 提示中に十分見ているか。見落としと誤選択を分ける。
4 論理的記憶I 短い物語を聞き、直後に内容を話す。 内容のまとまり、情報の抜け、付け加え。
5 視覚性対連合I 図形と色の組み合わせを学習し、図形から対応する色を選ぶ。 図形の区別と、組み合わせの学習。
6 言語性対連合I 単語の組を学習し、一方から対になる語を答える。 繰り返す中で学習できるか、別の組が混ざるか。
7 視覚性再生I 幾何学図形を見た後、図を隠して記憶から描く。 要素、位置関係。視覚認知・描画能力の影響。
8 数唱 数字の並びを、同じ順・逆の順で言う。 短い間の保持、順序の操作、聞き取り。
9 視覚性記憶範囲 カード上で触れられた位置を、同じ順・逆の順に触れて再現する。 位置と順序。見落とし・運動面も確認する。
10 論理的記憶II 時間を置いて、先ほどの物語を話す。 直後の再生と比べ、何が残るか。
11 視覚性対連合II 時間を置いて、図形に対応した色を答える。 学習した組み合わせが残っているか。
12 言語性対連合II 時間を置いて、一方の語から対になる語を答える。 手がかりから組み合わせを思い出せるか。
13 視覚性再生II 時間を置いて、先ほどの図形を記憶から描く。 初回に描けた要素や配置がどの程度残るか。
話を聞く場面と覚えた内容を話す場面
論理的記憶は、話を聞いた後に内容を話す課題です。書き写しや聞きながらのメモ取りを標準の実施に混ぜません。
図形を見た後、モデルを隠して記憶から描く場面
視覚性再生は、モデルを見たまま描く模写ではありません。再生時には図を隠します。
言葉同士や図形と色の組み合わせを覚える課題のイメージ
対連合は、二つの情報の結び付きを扱います。言語性と視覚性では、用いる材料や答え方が異なります。
平面カード上の位置と順序を覚え再現する場面
視覚性記憶範囲は、カード上の位置と順序を再現する課題です。図中の四角の数・配置は説明用で、正規刺激とは異なります。
04 / WMS-R

新人が迷わない、実施の流れ

ここでは業務の流れを示します。実際の教示・提示順・時間・採点は正規の検査法を使います。読者が覚えておきたいのは、提示の仕方をそろえる、最初の反応を残す、遅延課題の時点を管理するという3点です。

  1. 生活の疑問を一つ具体化する

    「物忘れがある」で終わらせず、「病棟で聞いた予定を、午後になると忘れる」「文章より実演の方が入りやすい」などを聞き取ります。家族の観察と本人の自覚が違えば、両方を残します。

  2. 説明して、必要な前提を整える

    静かな場所で実施し、聴力・視力・理解・姿勢を確認します。練習や確認は正式な手順の範囲で行い、検査者が独自に覚え方を教えることは避けます。

  3. 初回の反応を、その場で記録する

    たとえば物語を話す際、言い換え、抜け、順序の乱れ、元の話になかった付加を記録します。良かれと思って内容を補うと、本人が思い出した情報との区別ができません。

  4. 遅延課題までの条件を管理する

    対応する課題の終了時刻と再開時刻を記録します。途中の会話で物語を復習させたり、図形を見える場所に残したりしません。予定外の休憩・中断は明記します。

  5. 正式な換算を終えてから支援を試す

    得点を確定し、標準条件の結果を記録します。その後、生活上の別の情報を使って「短く説明するとどうか」「メモがあるとどうか」を試します。支援を加えた反応で検査得点を上書きしません。

05 / WMS-R

5つの指標と点数の読み方

指標得点の100は満点ではなく、平均を示す尺度の中心です。指標は平均100・標準偏差15の尺度で表されます。粗点の合計と指標得点を区別し、日本版の年齢換算を用います。[9]

指標 主な構成 説明するときの要点
言語性記憶 論理的記憶I・言語性対連合I 聞いた言語材料を学び再生する側面。失語や聴力の影響も考える。
視覚性記憶 図形の記憶・視覚性対連合I・視覚性再生I 視覚材料の記憶。見る・選ぶ・描くという異なる要求が含まれる。
一般的記憶 上記の言語性・視覚性の課題群 記憶の全体像。言語性・視覚性の指標得点を単純平均して作らない。
注意/集中力 精神統制・数唱・視覚性記憶範囲 記憶に関係する注意や短時間の保持。注意機能のすべてを網羅するわけではない。
遅延再生 4つのII課題 時間後の再生をまとめた指標。論理的記憶II一つの得点ではない。

課題と指標の対応は出版社資料によります。[2]

指標得点の例 尺度上の位置 その点だけでは言えないこと
100 平均に相当 生活で忘れることがない、という意味ではない。
85 平均より1標準偏差低い それだけで記憶障害の確定診断にはならない。
70 平均より2標準偏差低い 認知症の種類や、独居・復職の可否を決める点ではない。

この表は尺度の説明であり、日本版WMS-R共通の診断カットオフ表ではありません。疾患、年齢、教育歴、もともとの能力、検査条件、生活の変化で解釈が変わります。研究で用いられた論理的記憶の基準を、5指標全体や別の患者群に移して使わないでください。

指標間に差があれば、まず実施条件を確認し、次にマニュアルの差の検討資料を参照します。「差が15点なら必ず有意」と一律には決めません。複数の指標を見比べるほど偶然の低値も見つかるため、一番低い数字だけで診断名や病巣を決めないことが重要です。

06 / WMS-R

結果から何を予測し、何を確かめる?

結果・観察の組み合わせ 考える仮説 生活で確かめる場面
注意/集中力と初回の成績が低い 入力の段階で情報を十分に受け取れていない可能性。 静かな場所で一つずつ伝えると、理解・実行が変わるか。
言語性が低く、視覚性が相対的に高い 言語理解・聴覚入力の影響や、視覚情報が助けになる可能性。 口頭説明に見やすい写真・短い文字を添えると改善するか。
初回は比較的保たれ、遅延課題が低い 時間や途中の活動を挟むと再生が難しくなる可能性。 説明直後だけでなく、用事を行う時にメモを使えるか。
再認は比較的良く、描画再生は低い 想起に加え、描画・構成・運動の影響があり得る。 実物から選ぶ課題と、描いて表す課題で違いが出るか。
指標は平均付近だが、予定をよく忘れる 展望記憶、段取り、長い時間後の忘却、複数課題など検査外の負荷。 実際の予定を、自分で確認して実行できるか。RBMTや行動観察を追加する。

これらは次の評価や支援を選ぶ仮説です。「言語性が低いから左側頭葉」「視覚性が低いから右側頭葉」と、プロフィールだけで責任病巣は確定できません。初回から低い人の遅延低値を、すべて「忘却が速い」とするのも不適切です。最初にどれだけ学習できたかを併せて確認します。

数十分後の再生が保たれても、翌日以降の記憶まで保証されません。2025年の遅発性側頭葉てんかんの研究も、WMS-Rでは加速性長期忘却や遠隔の自伝的記憶を捉えられない点を挙げています。日をまたぐ困りごとは、家族への聞き取りや生活記録で別に確認します。[7]

07 / WMS-R

具体例:検査後に生活支援へつなぐ

検査後に生活で使える確認方法を本人と家族に説明する場面
検査後は、本人が実際に必要とする用事で支援を試します。「見れば分かる」だけでなく、「必要な場面で自分から見る」ことまで確認します。

例1|長い説明の前半が抜ける

架空例:Aさんは物語の直後再生で情報が少なく、注意の課題でも抜けが見られます。生活では予約の説明を「日付」「場所」「持ち物」に分け、一項目ずつ本人の言葉で確認します。予定は一枚にまとめ、説明後にどこを見るかを練習します。「何度説明したか」より、本人が正しい情報を確認できた回数と必要な援助を記録します。

例2|直後には言えるが、後で思い出せない

架空例:Bさんは説明直後には答えられますが、別の活動を挟むと内容が抜けます。用件をその場で予定帳に残し、通知を受けたら予定帳を開く動作を練習します。最初は必要な手助けを入れ、成功を確認してから減らします。通知に気づいた・予定を確認した・実行したを分けて、5機会中何回自力でできたかを記録します。

例3|視覚の方が良いので、写真を使う?

架空例:Cさんは視覚性が相対的に良好です。すぐに写真表を大量に渡さず、外出準備の持ち物2~3点で試します。写真を見つけられるか、実物と対応できるか、出発時に自分から確認できるかを見ます。写真表で混乱するなら、短い文字や実物配置に変えます。プロフィール上の強みが、そのまま最適な支援を決めるわけではありません。

外傷性脳損傷のINCOG 2.0では、外的補助手段とその使用練習、本人に意味のある課題、誤りを抑える学習などが扱われています。上の例はその考え方を生活支援へ応用した案であり、日本版WMS-Rの特定の得点から効果を予測する治療法ではありません。[8]

08 / WMS-R

RBMT・注意評価・知能検査との使い分け

評価 組み合わせる目的
RBMT 持ち物、用件、道順など生活に近い行動の評価を加える。WMS-Rの指標とRBMTの24点・12点を相互換算しない。
CAT-R等 注意のどの側面が入力や課題遂行を妨げるかを詳しく確認する。
WAIS 知能の全体像と認知特性を確認する。WMS-Rと目的・構造が異なり、異なる版のIQとの差を自己流の診断式にしない。
BADS・DEX 覚えている用件を、計画し、開始し、途中で確認して完了できるかを検討する。
EMC・家族面接・生活観察 検査室では見えない頻度、時間帯、環境、援助量を確かめる。

復職についての日本の研究では、高次脳機能障害者38人の就労群・非就労群を比較し、複数の認知課題の違いを報告しています。ただし対象は年齢や知能などで限定された集団です。WMS-R単独の点数から、誰でも使える復職可否を出す研究ではありません。仕事内容、支援、社会的条件を含めて評価します。[5]

09 / WMS-R

再評価と近年の研究:混同しやすい点

再検査で点数が上がっても、すべてが回復や介入効果とは限りません。1998年のWMS-R研究では、反復実施に伴う得点上昇が示され、最初の再検査で最も大きな上昇がみられました。実施間隔、以前の検査経験、同じ材料への接触を記録します。[4]

研究・資料 臨床に持ち帰る要点
Kawanoら、2013:75歳以上の論理的記憶 年齢と教育の影響を考える。50人のLMデータを、日本版5指標すべての高齢者基準として扱わない。[3]
Moriら、2025:手書き版論理的記憶の採点研究 780人の手書き直後再生を扱う研究。集団で録音を聞き、書いて答える研究上の方法と、標準的な個別の口頭再生を区別する。研究用手続きをそのまま臨床の標準法に変更しない。[6]
Hasegawaら、2025:遅発性側頭葉てんかん 17人の疾患特異的な研究。数十分の記憶課題で捉えられない長期の忘却があることを意識する。結果を脳卒中一般の診断・予後へ広げない。[7]
Theisenら、1998:反復実施 点数の変化に練習効果を考慮する。生活上の失敗と援助量も追跡する。[4]

新しい論文でも、WMS-R全体の再標準化や、新しい日本版カットオフを示しているとは限りません。この記事では2026年10月時点で検索し、手順・解釈に直接関係する研究を優先しました。万能な再検査間隔や、「何点上がれば臨床的に改善」という共通値は設定していません。

10 / WMS-R

PDF記録補助票と、実施前の最終確認

WMS-R臨床記録補助票をPDFで開く

実施前には、対象年齢、全版・短縮版の別、正規用具、教示・時間、記録方法を確認します。結果説明では「標準条件で何ができたか」「解釈に影響する条件」「生活で試す支援」を一つずつ伝えると、点数だけの説明になりません。

正規用具は日本文化科学社のWMS-R製品ページで確認できます。

11 / WMS-R

参考文献・確認範囲

  1. 日本文化科学社.WMS-Rウエクスラー記憶検査.適用年齢・時間・日本版の構成。
  2. 日本文化科学社.WMS-R製品説明資料(千葉テストセンター公開).課題内容・指標との対応。
  3. Kawano N, et al. Necessity of normative data on the Japanese version of the Wechsler Memory Scale-Revised Logical Memory subtest for old-old people. Geriatr Gerontol Int. 2013. DOI:10.1111/ggi.12007
  4. Theisen ME, et al. Effects of practice in repeated administrations of the Wechsler Memory Scale Revised in normal adults. Assessment. 1998;5(1):85–92.
  5. 用稲丈人ほか.脳損傷者の社会復帰状況と知能,注意,記憶,遂行機能検査との関係.高次脳機能研究.2008;28(4):416–425.
  6. Mori N, et al. Language Registration-Based Scoring System for Handwritten Logical Memory of Wechsler Memory Scale-Revised: Developed and Validated in the Tohoku Medical Megabank Project. Tohoku J Exp Med. 2025;267(1):59–69.
  7. Hasegawa N, et al. Features of cognitive dysfunction in late-onset temporal lobe epilepsy. Epileptic Disord. 2025;27(4):600–608.
  8. Velikonja D, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part V: Memory. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):83–102.
  9. Paving the Way for Memory Enhancement: Development and Examination of a Neurofeedback System Targeting the Medial Temporal Lobe. Biomedicines. 2023;11(8):2262. 日本版WMS-Rの尺度(平均100・標準偏差15)の記述を参照。

情報確認:2026年10月24日。出版社の製品情報・説明資料、日本語原著、PubMed等の公開抄録・本文を照合しました。正規マニュアル全ページの確認を代替するものではありません。正式な教示、刺激の提示条件、採点換算は、お手元の日本版検査法で確認してください。

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