パーキンソン病で訪問リハと通所リハの選び方|原因と対策・自宅でできる工夫
正解は、ひとつじゃない。その人の生活が正解です。
パーキンソン病のリハビリには、自宅に来てもらう訪問リハビリと、施設に通う通所リハビリがあります。どちらが良い・悪いではなく、症状の出方と生活のかたちによって、合う選び方が変わります。原因を整理しながら、選び方と自宅での工夫を一緒に見ていきましょう。

「うちはどっち?」と、迷う。
通所リハに行くと本人は疲れてしまう。でも訪問リハだけで、ちゃんと運動量は足りているのだろうか。他の利用者さんと過ごす時間も本当は必要なのでは——。ケアマネジャーに「どちらにしますか」と聞かれても、判断材料がないまま決めてしまった、というご家族の声をよく耳にします。
実は、今どの症状がいちばん生活を困らせているかを整理すると、選ぶための軸がはっきり見えてきます。
パーキンソン病のリハビリには、療法士が自宅を訪れる訪問リハビリと、施設に通って行う通所リハビリ(デイケア)があります。どちらか一方が優れているわけではなく、症状の出方、体力、生活環境によって向き不向きが変わるのが実際のところです。まずは、なぜリハビリが必要になるのか、その原因を整理するところから始めましょう。
リハビリが必要になる、原因を知る。
パーキンソン病は、脳の中でドパミンという神経伝達物質が減っていくことで、運動をなめらかにコントロールする働きが弱くなる病気です。ただし、生活のしづらさをつくる原因は、運動症状だけでなく、非運動症状も大きく関わっています。この両方を知っておくと、どちらのリハビリが合うか判断しやすくなります。
| 分類 | 具体的な症状と生活への影響 |
|---|---|
| 無動・寡動 | 動作の開始が遅れ、量も小さくなる。着替えや立ち上がりに時間がかかる |
| 筋固縮 | 関節や筋肉がこわばり、寝返りや衣服の着脱がしづらくなる |
| 姿勢反射障害・すくみ足 | バランスを崩しやすく転倒リスクが高い。方向転換や狭い場所で足が出なくなる |
| 自律神経症状 | 起立性低血圧でめまい・立ちくらみ、便秘、発汗異常などが起こる |
| 認知機能・気分の変化 | 意欲の低下(アパシー)、うつ、注意や段取りの苦手さがみられることがある |
| 日内変動・薬の効き目のむら | 薬の効いている時間とそうでない時間で、できることに差が出る(ウェアリングオフ) |
大切なのは、これらの原因がひとりの方の中で複数重なって現れるということです。すくみ足がある方が、同時に外出への意欲低下も抱えている、といった具合です。だからこそ、リハビリの場所を選ぶときも「歩行だけ」「運動だけ」で判断せず、生活全体を見て考える必要があります。全体的なリハビリの考え方はリハビリ完全ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。

訪問リハと通所リハ、何が違うのか。
まずは基本の違いを整理します。どちらも介護保険・医療保険の対象になり得るサービスですが、「どこで」「誰と」「どんな環境で」練習するかが大きく異なります。

| 訪問リハビリ | 通所リハビリ |
|---|---|
| 療法士が自宅に来て、実際の生活動線(玄関・トイレ・階段など)で練習できる | 平行棒・自転車エルゴメーターなど、自宅にない機器や広い訓練スペースを使える |
| 外出の負担がなく、体調や日内変動に合わせて時間を選びやすい | 他の利用者との交流や集団体操があり、社会的な刺激・張り合いになりやすい |
| 基本はマンツーマンで、その人だけの生活課題に時間を使える | 送迎があり、家族の見守り負担が一時的に軽くなる(レスパイトの側面) |
| 1回の訓練時間や頻度に制約があり、大がかりな運動負荷はかけにくい | 移動そのものが体力的・時間的な負担になり、待ち時間や集団の中で疲れやすい方もいる |
こうして並べると、一方の強みが、もう一方の弱みを補っていることがわかります。次の章では、この違いを「原因別・症状別」の選び方に落とし込んでいきます。
STROKE LABの視点:原因別・症状別の選び方。
「今、いちばん生活を困らせている原因は何か」を軸に考えると、選び方が具体的になります。代表的な5つのパターンで見てみましょう。

① すくみ足・転倒不安が強く、外出自体が負担になっている。まずは訪問リハで、自宅の玄関・廊下・トイレなど「実際につまずく場所」を安全な範囲で練習し、外出の自信がついてきたら通所も検討する、という段階的な流れが合いやすいです。
② 意欲の低下やアパシーがあり、家に閉じこもりがちになっている。他者との関わりや決まった外出の予定が生活のリズムを作ることがあるため、通所リハで人と接する機会を持つことが、気分や活動性の面でプラスに働く場合があります。
③ 日内変動が大きく、調子の良い時間が読みにくい。通所の決まった時間に合わせるのが難しいことがあるため、体調の良いタイミングを選びやすい訪問リハのほうが、無理なく継続しやすい場合があります。
④ 筋固縮や体力低下が進み、集団体操では負荷が合わなくなってきた。個別に時間を使える訪問リハで、その人の状態に合わせた強度や姿勢の工夫を丁寧に行うほうが、無理なく続けられることがあります。
⑤ 起立性低血圧やめまいがあり、長時間の座位や移動に不安がある。訪問リハで体調を見ながら短時間から始め、慣れてきたら通所の時間を短く設定する、といった併用の仕方も選択肢になります。
ここで大切なのは、一度決めたら固定ではない</span、という考え方です。パーキンソン病は症状の出方が変化していく病気なので、数か月ごとに「今の困りごとは何か」を見直し、訪問と通所の比率を調整していくのが現実的です。判断に迷うときは、主治医・ケアマネジャー・リハビリ担当者に、今の生活で困っている具体的な場面を伝えて相談してみてください。
理学療法・運動療法に関する複数の研究をまとめたレビューでは、継続的な運動療法によって歩行速度やバランス、生活動作の指標に改善がみられたと報告されています。場所が自宅であれ施設であれ、「続けられる形」で運動を継続することが、機能を保つうえで重要だと考えられています。
限界:研究ごとに対象者の重症度や運動の種類が異なり、効果の大きさには幅があります。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動療法は薬物治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
自宅でできる、工夫。
訪問リハでも通所リハでも、リハビリの時間は生活全体からするとごく一部です。残りの時間をどう過ごすかが、実は大きな差につながります。原因別に、自宅でできる工夫を整理します。
すくみ足への工夫:床に等間隔のテープを貼る、一定のリズムで「いち・に」と声に出す、メトロノームアプリを使うなど、視覚・聴覚の目印(キュー)を足すと足が出やすくなることがあります。狭い通路や曲がり角で特に出やすいので、家具の配置を見直すのも有効です。
筋固縮への工夫:朝、体がこわばりやすい時間帯に、ゆっくり大きく手足を伸ばすストレッチを取り入れます。お風呂上がりなど体が温まっているときに行うと、動かしやすいことが多いです。
起立性低血圧への工夫:急に立ち上がらず、座った状態で一呼吸おいてから立つ、水分をこまめにとる、といった生活上の工夫でめまいの頻度を減らせることがあります。気になる症状は主治医に相談してください。
意欲低下への工夫:「何時に何をする」という一日の予定を紙に書いて見える場所に貼ると、行動のきっかけになりやすいです。家族が声をかけるタイミングを決めておくのも助けになります。
全身を使った体操や自主トレーニングのメニューは体操・自主トレ大全にまとめています。訪問・通所どちらを選んでいても、無理のない範囲で毎日の習慣として組み込んでみてください。

脳リハ.comのYouTubeでは、自宅でできる全身の体操を配信しています。訪問・通所の合間の習慣として、無理のない範囲で取り入れてみてください。
専門リハで、さらにできること。
訪問・通所いずれの保険サービスも、時間や頻度に制約があります。原因ごとに、もう一段踏み込んだアプローチが必要な場面もあり、そこを補うのが専門的な自費リハビリという選択肢です。原因別に、どのような働きかけが考えられるかを整理します。

1. すくみ足・姿勢反射障害への集中的なキューイング訓練。視覚・聴覚・体性感覚など複数の手がかりを比較し、その人にいちばん効くキューを見極めたうえで、実際の生活場面(曲がり角、狭い通路、人混みを想定した環境)で繰り返し練習します。
2. 大きく動く運動学習による姿勢・動作の立て直し。無動・寡動によって縮んでしまった動きの幅を、意識的に大きな運動を繰り返すことで引き出し、歩行や立ち上がりなどの基本動作全体に広げていきます。
3. 体幹・姿勢の土台づくり。筋固縮や姿勢異常(前かがみ・体幹の傾き)に対して、呼吸や体幹の使い方から見直し、動作全体が崩れにくい身体の下地を整えます。
4. 非運動症状を踏まえた生活設計。日内変動や自律神経症状、意欲の変化を踏まえ、一日の中でどの時間にどんな活動を配置するか、家族の関わり方も含めて具体的に組み立てます。
STROKE LABでは、保険の訪問・通所リハビリと並行しながら、原因を一つひとつ切り分けて対策を組み立てることを大切にしています。薬の調整は主治医の役割であり、私たちは動作・生活の側から支えます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。費用や施設選びの詳細は自費リハビリの費用・施設の選び方をご覧ください。
オランダで展開されている、パーキンソン病の専門知識を持つ理学療法士・作業療法士などが地域で連携するネットワーク型のケアモデルに関する研究では、専門的な知識を持つ療法士による介入が、通常のケアと比べて機能や生活の質の指標に良い影響を示したとの報告があります。場所(訪問か通所か)だけでなく、担当者がパーキンソン病に精通しているかどうかも、結果に関わる要素と考えられています。
限界:海外の医療・介護制度の中での研究であり、日本の制度にそのまま当てはまるとは限りません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。専門的なケアは薬物治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
よくある質問。
Q. パーキンソン病では、訪問リハと通所リハ、どちらを選べばよいですか?
Q. 症状が進行してきたら、通所から訪問に切り替えるべきですか?

Q. 訪問リハと通所リハを、両方利用することはできますか?
Q. すくみ足があるのですが、リハビリの場所によって効果は変わりますか?
Q. 認知機能の低下や気分の落ち込みがあるとき、リハビリの選び方は変わりますか?
Q. 訪問リハと通所リハで、費用の違いはありますか?
選び方の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。訪問リハ・通所リハのどちらを選ぶべきかという段階から、実際に困っている生活場面まで、一緒に整理しながら伺います。保険の訪問・通所リハビリとの併用も歓迎しており、薬の調整は主治医を尊重したうえで、動作と生活の側から支えます。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
原因を選んでほしい。

「訪問と通所、どちらがいいですか」というご相談を、これまで数え切れないほど受けてきました。そのたびにお伝えしているのは、場所そのものよりも先に、今いちばん困っている原因を見つけましょう、ということです。
すくみ足なのか、意欲の低下なのか、体力なのか。原因が見えれば、訪問と通所のどちらが合うか、あるいは両方を組み合わせるべきか、自然と答えが見えてきます。そして、その答えは進行とともに変わっていくものです。
どちらを選んだらいいかわからない、というご相談こそ、私たちが力になれる領域です。どうぞ一度、今の生活の様子をお聞かせください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。サービスの利用可否・費用は制度や地域により異なります。詳しくは主治医・ケアマネジャー・各事業所にご相談ください(最終確認日:2026年9月4日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 厚生労働省:介護保険サービス(訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)に関する情報
- Tomlinson CL, et al. Physiotherapy versus placebo or no intervention in Parkinson’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013.(継続的な運動療法による機能面の改善を報告。第4章エビデンスボックスの出典)
- Bloem BR, Munneke M. Revolutionising management of chronic disease: the ParkinsonNet approach. BMJ. 2014;348:g1838.(専門知識を持つ療法士による地域連携ケアモデルに関する報告。第6章エビデンスボックスの出典)
- Keus SH, et al. Evidence-based analysis of physical therapy in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2007.(パーキンソン病における理学療法のエビデンスに関する分析。第6章エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)