寝る前に動き回る子|感覚調整と生活リズムの整え方
「眠いのに動く」を、どう読み解く?|就寝前の覚醒を整える視点
布団に入ると走る、跳ねる、何度も起き上がる。「体力が余っているのかな」「感覚の問題?」と心配になることがあります。けれど、就寝前の動きは一つの原因だけでは説明できません。睡眠圧・体内時計・昼寝・夜の光・活動から休息への切り替え・感覚環境を一緒に見ることで、その子が眠りへ移りやすい条件を整理しやすくなります。

寝る前に急に元気になるのは、珍しいことではない。
幼児期は、眠気を感じたら自分で活動量を落とし、静かに布団へ入るという切り替えがまだ安定していません。興奮する遊び、家族とのやり取り、夜の光、昼寝の影響などが重なると、「眠い」と「動きたい」が同時に見えることがあります。大切なのは、行動だけを止めることではなく、その時間に覚醒が下がりにくい条件を探すことです。
「走っているから眠くない」とも、「眠いのに興奮している」とも、行動だけでは決められません。まず見るのは、布団に入れた時刻ではなく、実際に眠る時刻が毎日どのあたりに集まっているかです。たとえば20時に就床しても、ほぼ毎日21時前後まで眠らないのであれば、20時台の動きだけを「問題行動」として扱う前に、昼寝や一日の活動、光環境、本人の眠気が高まる時刻を確認する価値があります。
「体力が余っている」だけでは説明できない、5つの条件。
睡眠は、夜の寝かしつけだけで決まるものではありません。厚生労働省の「こどものためのGood Sleepガイド」でも、起床後の光、日中の運動、夜の光やデジタル機器、寝室環境まで、一日の流れで整える考え方が示されています。そこで、寝る前の動きを次の5つに分けて見ます。
昼寝の終了時刻、昼寝の長さ、日中の活動、実際の入眠時刻を確認します。必要以上に長い昼寝は、夜の睡眠を妨げることがあります。
起床時刻、朝の光、夕方以降の明るさ、休日のずれを見ます。夜だけを早めるのではなく、朝から整える視点が大切です。
遊びを急に終了した時だけ走るのか、予告があると変わるのか、順序が一定だと落ち着くのかを見ます。
照明、テレビ音、家族の会話、寝具の触感などを一度に変えず、一つずつ変えて反応を比較します。
夕食、入浴、きょうだいの就寝、保護者の帰宅など、本人だけでは変えにくい生活条件も含めて考えます。

感覚は「原因」ではなく、眠りやすさを左右する条件の一つ。
光がまぶしい、生活音が気になる、パジャマや布団の触感が気になる。反対に、身体を動かすことで落ち着きをつくっているように見える。こうした感覚の違いは、就寝場面で無視できないことがあります。実際、幼児を対象にした研究では、視覚・触覚・聴覚の感受性と寝つくまでの時間との関連が報告されています。
研究が示しているのは、感覚の反応性と睡眠の困りごとに関連がありうることです。特定の感覚刺激を加えれば眠れる、という因果関係まで確立しているわけではありません。だから臨床では、感覚だけを単独で見るのではなく、睡眠時刻・昼寝・光・行動の切り替え・家庭環境と一緒に評価します。
家庭では、「止める」より眠る準備を整える。
家庭で最初に行いたいのは、子どもを疲れさせることでも、動きを強く制止することでもありません。「朝は起きる、昼は動く、夜は少しずつ刺激を減らす」という一日のメリハリをつくり、そのうえで就寝前の流れを短く、予測しやすくします。
| 見直す場面 | 家庭で試すこと | 見るポイント |
|---|---|---|
| 朝 | 起床時刻を大きくずらしすぎず、起きたら明るい光を取り入れる | 休日だけ大幅に遅くなっていないか |
| 日中 | 年齢・体調に合わせて十分に身体を動かし、屋外で過ごす時間もつくる | 「寝る直前に疲れさせる」方針になっていないか |
| 昼寝 | 終了時刻と長さを記録し、夜の入眠との関係を見る | 昼寝が長い日だけ入眠が遅れていないか |
| 就寝前 | 毎日似た順序で、照明・遊び・会話の強度を少しずつ下げる | どの段階で走り始めるか |
| デジタル機器 | 寝る前・寝床でのテレビ、ゲーム、スマートフォンの使用を控える | 使用しない日の方が切り替えやすいか |
| 感覚環境 | 光・音・寝具などを一度に全部変えず、一条件ずつ試す | 何を変えると落ち着きやすいか |
7〜36か月の乳幼児405組を対象にしたランダム化比較試験では、一貫した就寝ルーティンを導入した群で、睡眠開始までの時間や夜間覚醒などの改善が報告されました。ここから言えるのは、特定の商品や一つの寝かしつけ方法が正解ということではなく、予測可能な流れを繰り返すことが、睡眠への移行を助ける可能性です。
限界:対象は7〜36か月で、家庭環境や発達特性が異なるすべての幼児へ同じ効果を保証する研究ではありません。また企業支援を受けた研究であるため、結果の一般化には注意が必要です。
3日記録で、「寝る前」ではなく一日の流れを見る。
一晩だけでは、たまたま疲れていた日なのか、毎日同じ条件で起きているのかを分けにくくなります。まずは3日程度、無理のない範囲で次の項目をメモしてみてください。正確な分単位でなくても構いません。
| 記録すること | なぜ見るのか | 気づきの例 |
|---|---|---|
| 起床時刻 | 体内時計の基準になるため | 休日だけ2時間遅い |
| 昼寝の開始・終了 | 夜の眠気の高まり方に影響するため | 15時以降まで寝た日に入眠が遅い |
| 夕方〜夜の活動 | 覚醒が上がる活動との関係を見るため | 激しい追いかけ遊びの後だけ切り替えに時間がかかる |
| 寝室に入った時刻 | 就床設定と眠気のタイミングを分けるため | 20時に寝室へ入るが毎日21時頃に眠る |
| 実際に眠った時刻 | 本人の睡眠リズムを捉えるため | 入眠時刻は意外と一定 |
| 動き回る時刻・回数 | どの条件の直後に増えるかを見るため | 消灯直後より「遊びを終えた直後」に多い |
照明を落とすと変わるのか。予告を増やすと変わるのか。遊びの終了時刻を少し早めると変わるのか。身体を止めようとしたとき、落ち着くのか、かえって興奮するのか。こうした反応の差から、次に試す条件を絞っていきます。
いびき・呼吸・脚の違和感は、「寝かしつけ」と分けて考える。
こども家庭庁が掲載する「未就学児の睡眠指針」では、子どもにも睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群などの睡眠の病気があり、気になる症状があればかかりつけ医へ相談することが示されています。動き回りをすべて発達や感覚の問題として扱わないことが重要です。
| 見逃したくない様子 | 考え方 | 優先する行動 |
|---|---|---|
| 大きないびき、息が止まる、引っかかるような呼吸 | 睡眠中の呼吸障害を含め、医学的な評価が必要なことがあります | かかりつけ医へ相談 |
| 寝苦しそうで何度も目を覚ます | 単なる寝かしつけ以外の睡眠問題も確認します | 動画が撮れれば受診時に共有 |
| 夕方〜夜、脚を動かさずにいられず、動くと楽そう | むずむず脚症候群などとの鑑別が必要な場合があります | 自己判断で感覚刺激を増やさず医療相談 |
| 日中の極端な眠気、園生活への大きな影響 | 睡眠時間だけでなく睡眠の質も確認します | 睡眠記録を持って相談 |

研究でわかっていることと、まだ言い切れないこと。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」と、こども向けGood Sleepガイドでは、年齢に合った睡眠時間、朝〜日中の光、日中の運動、夜の光を抑えること、寝床でのデジタル機器を避けることなどが整理されています。
この資料から言える範囲:寝る直前だけを変えるのではなく、24時間の生活リズムと睡眠環境を一緒に整えることが基本です。
典型発達の乳幼児160名を追った観察研究では、2.5歳時点の視覚・触覚の感受性や、縦断的には聴覚の感受性と寝つくまでの時間との関連が報告されました。感覚条件を確認する価値はありますが、これは関連を示した研究であり、原因を証明したものではありません。
さらに、2026年の自閉スペクトラム症児・青年を対象とした系統的レビュー(16研究)でも、睡眠の問題と感覚処理の違いには関連がみられましたが、研究の多くが保護者報告で、因果関係を判断するには根拠が不足すると整理されています。
研究で関連があるからといって、すべての子に同じ感覚刺激、同じ寝具、同じルーティンを当てはめることはできません。研究は候補を教えてくれます。臨床では、本人の生活と反応を見ながら、どの条件を変えると意味のある変化が起きるかを確かめます。
専門施設では、「寝かせ方」ではなく“眠れない条件”を分けて見る。
専門施設で最初に行うのは、感覚刺激を加えることではありません。まず、「いつ」「何の直後に」「どの環境で」「どれくらい」動きが増えるかを分けます。就床時刻と実際の入眠時刻、昼寝、夜の光、遊びの終了方法、保護者の声かけ、音や触覚への反応、園の日と休日の差まで確認します。
次に、一度に多くを変えず、仮説に合わせて条件を一つずつ調整します。照明を少し落とす、活動の終了を予告する、就寝前の順序を固定する、刺激の強い遊びを少し前へ移す、本人が選べる静かな活動を用意する、といった方法です。重要なのは、その場で静かになったかだけでなく、入眠までの時間、離床回数、必要な声かけ、翌朝の起きやすさがどう変わるかを見ることです。
| 観察される困りごと | 考えるボトルネック | 専門施設で確認すること | 介入の組み立て | 家庭で再評価する変化 |
|---|---|---|---|---|
| 布団に入ると毎日走り回る | 眠気が高まる時刻と就床設定のずれ | 起床・昼寝・就床・実入眠の時刻、休日差 | 24時間のリズムを見直し、就床設定を調整 | 入眠までの時間、離床回数 |
| 遊びを止めると急に走る・泣く | 活動から休息への切り替え負荷 | 予告の有無、選択肢、終了方法、声かけ回数 | 短い予告、順序の固定、本人が選べる静かな活動 | 必要な声かけ、切り替えに要する時間 |
| 暗くしても音や接触で興奮する | 感覚刺激が覚醒を保つ可能性 | 光・音・寝具・触れられ方を一条件ずつ比較 | 本人の反応に合わせて刺激条件を調整 | 落ち着くまでの時間、避ける行動の減少 |
| 園の日と休日で大きく違う | 昼寝・活動・刺激量・時刻の環境差 | 園と家庭の一日を並べて比較 | 差が大きい条件から一つずつ整える | 園日と休日の入眠差 |
| 横になると脚を動かし続け、動くと楽そう | 睡眠関連運動異常症の可能性 | 時刻、安静時との関係、本人の訴え | 施設内介入より医療評価を優先 | 医療機関との情報共有後に再設計 |
就寝前の多動を、筋力や感覚探求だけに単純化しません。まず睡眠圧と体内時計の条件を確認し、そこに切り替え・感覚・家庭環境がどの程度重なっているかを考えます。
臨床で特に見るのは、同じ子でも条件を変えた瞬間に何が変わるかです。たとえば光を変えても反応が同じなら、次に終了の予告や活動強度を見ます。逆に、布団へ入る時刻を少し調整しただけで離床が減るなら、感覚刺激を追加する必要はないかもしれません。
そして、施設内で静かにできたことを成功とはしません。家庭で同じ条件を試し、数日後に同じ指標で再評価します。評価→条件を一つ変える→家庭で試す→再評価→難易度を調整するという循環そのものが、専門的な支援の中心です。
生活リズム:公的ガイドでは、朝〜日中の光、身体活動、夜の光やデジタル機器、寝室環境を含めた調整が推奨されています。
就寝ルーティン:乳幼児のRCTでは、一貫した就寝前ルーティンによる睡眠指標の改善が報告されています。
感覚:感覚反応性と睡眠の関連は報告されていますが、感覚刺激を中心とした睡眠介入の直接的な根拠は限定的です。
限界:年齢、発達特性、家庭環境、昼寝、介入量が研究ごとに異なります。特定の方法がすべてのお子さんに有効とは言えません。睡眠障害の診断、投薬、医学的治療は医師の役割であり、本セクションはその代替ではありません。

STROKE LABでは、お子さんの発達・感覚・動作だけでなく、実際の生活時間、家庭での切り替え、園との環境差まで含めて確認します。睡眠の病気が疑われる場合は医療機関を優先し、生活と発達の側から支援できる部分を整理します。
よくある質問。
Q. 眠そうなのに、寝る前だけ走り回るのはなぜですか?
Q. 体力が余っているなら、寝る直前まで運動させた方がよいですか?
Q. 寝る前に動き回るのは、感覚過敏や感覚を求めることが原因ですか?
Q. 寝る前のテレビ・動画・スマホは、どのように見直せばよいですか?
Q. 家庭で工夫しても寝つきにくいときは、いつ相談すればよいですか?
Q. どんな症状があるときは、専門施設より先に医療機関へ相談すべきですか?
STROKE LABの小児セラピー。
STROKE LAB(東京・大阪)では、お子さんの発達や生活上の困りごとを、機能解剖・感覚・動作分析・生活環境の視点から整理します。就寝前の動きについても、「感覚の問題」と一つに決めず、睡眠と覚醒のリズム、活動から休息への切り替え、家庭で再現できる条件まで確認します。睡眠障害が疑われる症状がある場合は医療機関を優先し、診断・投薬などの医学的判断は主治医を尊重します。
その子が眠りへ移りやすい条件を探す。

寝る前に動き回ると、「もっと疲れさせた方がいいのか」「発達の問題なのか」と、原因を一つに決めたくなることがあります。しかし、子どもの行動は、身体・感覚・時間・環境が重なって現れます。
私たちが大切にしているのは、行動を止めることより、条件を変えたときの反応から「なぜ」を探すことです。必要な医療評価は医療機関へつなぎ、生活の中で整えられる部分を一緒に見つけます。
家庭で何を試せばよいか迷っている方は、現在の一日の流れや動画があればお持ちください。できるだけ親子の負担を増やさず、続けられる形へ整理します。
代表取締役 金子 唯史

脳の働きを、症状名だけでなく姿勢・感覚・運動のつながりから考える専門書です。就寝前の行動も、一つの要因で決めつけず、子どもの反応と生活条件を分けて考える姿勢につながります。
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 子どもの感覚過敏・感覚探求|生活で困る場面をどう整理するか
- 幼児の生活リズム|朝・昼寝・夜の整え方
- 小児セラピーの初回相談|何を見て、どう支援方針を考えるか
本記事は、公的な睡眠資料と査読研究、STROKE LABの臨床的な評価枠組みを分けて構成しています。感覚特性と睡眠には関連研究がありますが、特定の感覚刺激が幼児の入眠を改善すると断定できる段階ではありません。診断・治療は医療機関で行われます。
- 厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023/Good Sleepガイド こども版
- こども家庭庁:未就学児の睡眠指針
- Mindell JA, Telofski LS, Wiegand B, Kurtz ES. A nightly bedtime routine: impact on sleep in young children and maternal mood. Sleep. 2009;32(5):599-606.
- Appleyard K, et al. Sleep and Sensory Processing in Infants and Toddlers: A Cross-Sectional and Longitudinal Study. Am J Occup Ther. 2020;74(6):7406205010p1-7406205010p12.
- Lane SJ, Leão MA, Spielmann V. Sleep, Sensory Integration/Processing, and Autism: A Scoping Review. Front Psychol. 2022;13:877527.
- Mammarella V, Breda M, De Gennaro L, Bruni O. Sleep disturbances and sensory processing and integration in children and adolescents with autism spectrum disorder: a systematic review. Sleep Med Rev. 2026;88:102302.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)