音が大きい場所で動けなくなる子|感覚過敏と運動参加の支援
音への対応に力が入りすぎると、姿勢調整や周囲への注意が難しくなることがあります
「静かな場所なら動けるのに、体育館へ入ると固まる」「笛が鳴ると耳をふさぎ、その後の動きが止まる」。音が大きい場所での運動は、音を聞くだけの課題ではありません。身体を落ち着かせ、必要な合図を選び、一歩目を出し、休みながら参加を続けるという複数の調整が重なります。音を我慢させる前に、お子さんが動ける条件を一緒に整理します。

医療・健診で耳や発達を確認したうえで、STROKE LABは、実際の遊び・体育・外出で「どの条件なら動けるか」を生活機能の側から評価します。
動かないのではなく、「動ける条件」が失われています。
先生の話を聞いていないように見える。運動が嫌いになったように見える。けれども、体育館では笛、足音、他児の声、反響音が重なり、身体を動かす前に処理しなければならない情報が急に増えます。
まず必要なのは、我慢を増やすことではありません。どの音条件で、どの段階から動きが止まるのかを分けることです。
「音が苦手」という言葉には、日常音が実際より大きい、または痛いと感じる聴覚過敏、特定の音への恐怖、特定音への強い嫌悪、突然の刺激への不安、多数の音から必要な声を選びにくい状態などが含まれます。中耳炎や滲出性中耳炎のあと、聞こえ方が変わった時期に音がつらくなる子もいます。
そのため、耳をふさぐ反応だけから「感覚統合の問題」「自閉スペクトラム症」と決めることはできません。米国小児科学会も、感覚に関する困りごとがある場合には、発達、注意、協調運動、不安などを含めた包括的な評価を行い、感覚ベースの支援は具体的な生活目標と期間を決めて効果を確認するよう求めています。
音の直後に息を止めたのか、肩を上げたのか、出口を探したのか、先生の声を見失ったのか、合図は分かったが一歩目が出なかったのか。反応の時間順序が分かると、音を下げる、視覚情報を足す、休憩場所を作る、運動開始を練習するといった支援の選択が変わります。
音を聞いてから一歩目が出るまで、6つの段階があります。

3〜5歳の自閉スペクトラム症児40名と定型発達児40名を比較した横断研究では、自閉スペクトラム症児は遊び、身体活動、社会活動への参加の多様性が低く、感覚処理の特徴も大きい傾向が報告されました。自閉スペクトラム症児では、感覚プロファイルの得点と社会活動への参加に関連も認められました。
苦手なのは音量か、突然さか、反響かを比べます。
| 比べる条件 | 家庭で見るポイント | 支援選択につながる仮説 |
|---|---|---|
| 音量 | 小さい音から大きい音へ、どこで表情・姿勢・動きが変わるか | 苦痛が強い場合は聴覚評価と安全確保を優先 |
| 突然さ | 同じ音でも予告あり・なしで違うか | 見通しと開始前の準備を増やす |
| 反響 | 屋外と体育館、入口と中央で違うか | 立ち位置、壁からの距離、参加場所を調整 |
| 音の重なり | 音源が一つの時と、声・笛・足音が重なる時を比較 | 言語指示を減らし、視覚提示へ置き換える |
| 制御可能性 | 自分で鳴らす・止める音では反応が軽いか | 本人の選択と予測可能性を増やす |
| 疲労 | 朝と夕方、活動前と後で回復時間が変わるか | 参加時間、休憩、次の予定を調整 |
言葉だけ、療法士の見本、指さし、写真カード、床の目印を同じ音環境で比較します。視覚提示で開始が早くなるなら、音を下げるだけでなく、騒音下で必要な情報を選べるようにする支援が重要です。
別室やイヤーマフで落ち着くことは安全確保として大切です。専門的には、何分で回復したか、見学へ戻れたか、最後の一課題だけ参加できたか、本人が戻る時機を選べたかまで確認します。

地域から集めた2〜5歳児917名を含む前向き研究では、就学前の感覚過反応が6歳時の不安症状を予測しました。感覚過反応のある就学前児の43%に、生活へ影響する不安障害が同時に認められたと報告されています。
家では音を消すより、逃げ道と見通しをつくります。
非常に騒がしい場面で短期的に使う、本人が装着と取り外しを選ぶ、活動の一部だけ使う、静かな場所へ移動したら必要性を確認する、といった使い方があります。
一日中すべての音を遮ることや、音を完全に避け続けることは勧められません。警告音や先生の声が聞きにくくなることがあり、音への敏感さが強まる可能性もあります。ただし、聴覚保護が必要な危険な大音量では、感覚過敏とは別に適切な防音具を使います。
| 避けたい関わり | 代わりに行うこと |
|---|---|
| 泣いても大きな音の場に残し、慣れさせる | 離れられる場所と戻る手順を作る |
| 「怖くない」「気にしすぎ」と感覚を否定する | どの音が、どのようにつらいかを行動から整理する |
| 騒音下で長い説明を繰り返す | 一つの言葉と視覚的な見本にする |
| イヤーマフを常時装着し、外す機会を作らない | 場所・時間・本人の選択で使い分ける |
| 音量、人数、課題、時間を一度に増やす | 一つの条件だけ変え、反応を確認する |
耳の問題と、発達・不安の問題を分けて相談します。
- 日常音を痛がる
- 片耳だけを押さえる
- 耳痛、耳鳴り、聞こえにくさ、めまいがある
- 突然、音に敏感になった
- 大きな音や頭部外傷のあとに始まった
- 中耳炎や滲出性中耳炎の経過中・回復後に変化した
- 園、学校、外出への参加が大きく制限される
- 触覚、光、におい、動きにも強い反応がある
- 運動、注意、言葉、対人面にも困りごとがある
- 強い不安、睡眠、食事、かんしゃくが重なる
- 家族や園だけでは環境調整が難しい
- できていた活動への参加が後退している
急な聴覚過敏、耳の痛み、聴力低下、めまい、強い頭痛、意識や神経症状の変化がある場合は、リハビリや家庭練習より医療機関を優先してください。診断、投薬、医学的な聴覚治療は主治医・耳鼻科の領域です。
- 苦手な音の種類と場所
- 突然鳴る場合と予告した場合の違い
- 片耳・両耳、痛み、聞こえにくさ、耳鳴りの有無
- 音直後の呼吸、姿勢、視線、耳をふさぐ反応
- 一歩目までの時間と参加できた長さ
- 退出後の回復時間と再参加の有無
- 安全な範囲で撮影した短い動画
専門施設では、静かな部屋の成功を体育館へ運びます。
ここまでは家庭で苦痛と失敗を減らす工夫です。専門施設では、音の特徴、耳の状態、身体反応、合図の選択、運動開始、回復、環境を分け、静かな場所でできる力を、実際の体育・集団遊びで使える力へつなげます。耳の診断・医学的治療は主治医・耳鼻科が担い、リハビリは生活機能を併走します。
専門施設で目指すのは、「音を平気にすること」だけではありません。
正常化や我慢を唯一の目標にせず、本人と家族が選んだ生活目標を中心にします。たとえば「体育館へ入る」「笛のあと見本を見て動く」「自分で休憩を伝える」「落ち着いたら最後の一課題へ戻る」です。回復を狙う部分、遮音や視覚提示で補う部分、環境を変える部分を分けます。
困りごとを、7つの領域に分けて評価します。
| 評価領域 | 確認すること | 介入選択がどう変わるか |
|---|---|---|
| 音の特徴 | 音量、突然さ、反響、音源数、距離、持続 | 立ち位置、予告、参加場所、遮音の条件を選ぶ |
| 耳・聴覚 | 痛み、左右差、聞こえ、耳歴、医療評価 | 医療優先か、生活支援を並行できるかを判断 |
| 身体反応 | 呼吸、肩・体幹の緊張、耳ふさぎ、逃避 | 休憩、姿勢、開始前ルーティンを設計 |
| 指示選択 | 言葉、見本、指さし、カードでの反応差 | 視覚情報と指示量を個別化 |
| 運動開始 | 一歩目までの時間、開始姿勢、必要介助 | 開始合図、目標物、全課題練習を選ぶ |
| 回復・疲労 | 退出前のサイン、回復時間、再参加、翌日 | 活動量、休憩、終了条件を調整 |
| 環境・参加 | 家庭、園、体育館、外出での差 | 実際の生活場面で再現する条件を決める |
評価所見から、介入を4系統に分けます。
臨床推論マップ
| 困りごと | 仮説 | 評価 | 介入 | 調整 | 生活の変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| 体育館へ入ると止まる | 反響、予測不能、出口不明 | 入口・端・中央、呼吸、開始時間 | 予告、見学位置、退出経路 | 無人→少人数→集団 | 自分で安全な位置を選ぶ |
| 笛で耳をふさぎ動けない | 突発音、痛み、開始合図の混同 | 距離、予告、自分で鳴らす条件 | 視覚合図、距離、短期遮音 | 予告あり→実場面 | 笛のあと見本で開始 |
| 声が重なると指示に反応しない | 情報選択・注意分配 | 言葉・見本・カードの差 | 視覚提示、立ち位置 | 音源一つ→複数 | 集団内で次へ移れる |
| 数分で退出する | 覚醒上昇、疲労、自己調整不足 | 継続時間、退出前サイン、回復 | 休憩申告、再参加手順 | 短い成功を反復 | 休憩後に戻れる |
| イヤーマフを外せない | 安全感、恐怖、外す時機不明 | 場所別の必要性と外した反応 | 本人選択、距離、短時間使用 | 静かな場面で使い分け | 必要時だけ自分で選ぶ |
静かな部屋で落ち着いたことは大切な所見ですが、それだけでは体育館で動けるとは限りません。音による身体緊張が主なボトルネックなのか、騒音下で指示を選べないのか、一歩目を開始できないのか、疲労で継続できないのかを分けます。
最初に安全な立ち位置と退出経路を作り、同じ音の中で言語指示と視覚提示を比較します。視覚提示で一歩目が早くなるなら、次は音をさらに小さくするのではなく、見本を少しずつ減らし、実際の集団内で開始できるかを確認します。身体緊張が強い場合は、開始前の呼吸・姿勢・予告を整え、短い一課題で反応を再評価します。
難易度は、失敗が続きすぎず、本人が選択でき、休憩後に再参加できる範囲で上げます。練習室の成功率だけでなく、園で体育館へ入るまでの時間、先生の声かけ回数、参加時間、自分で休憩を伝えた回数、戻れた場面を一定期間後に同じ条件で再評価します。
感覚処理の特徴と活動参加には関連が報告されていますが、「大きな音で動けなくなる子」だけを対象に、特定の運動支援を比較した研究は限られています。疾患特異的な効果を強く断定しません。
AAPは感覚ベースの支援を包括的な計画の一部として、明確な生活目標と試行期間を設け、効果を記録するよう示しています。NICEは、騒音などの感覚環境への配慮と、本人に合う視覚支援を推奨しています。
2025年の系統的レビューでは、保護者・支援者が感覚方略を学び、自然な生活場面で用いる支援に強いエビデンスが示されました。一方、感覚環境の変更だけの効果は研究不足でした。環境調整を行いながら、具体的な参加の変化を測る必要があります。
生活・園・学校で確認するアウトカム
- 体育館へ入るまでの時間
- 言葉の指示から一歩目までの時間
- 参加できた活動の種類と長さ
- 自分から休憩を伝えられた回数
- 退出後に見学・一課題へ戻れた場面
- 先生・保護者の声かけや身体介助の量
- 外出後・翌日まで残る疲労や不安
保護者コーチングは、親が療法士になることではありません。短い予告、一つの視覚提示、本人が選べる休憩、戻る課題を日常に実装し、親子関係を壊さず続けられる方法を選びます。

音への敏感さと運動参加について、よくある質問。
大きな音で耳をふさぐのは、感覚過敏なのでしょうか?
静かな場所では動けるのに、体育館で動けないのはなぜですか?
イヤーマフは使い続けても大丈夫ですか?
苦手な音には少しずつ慣れさせた方がよいですか?
どのような場合に耳鼻科や発達相談を受けるべきですか?
専門施設では音環境と運動参加をどのように評価しますか?
自分で調整しながら参加できる方法へ。

大きな音の場所で動けないと、「運動が嫌い」「集団行動が苦手」と見られやすくなります。しかし、静かな場所でできる動きがあるなら、その力を生活で使うための条件が整っていない可能性があります。
私たちは、音の特徴、身体反応、指示選択、一歩目、休憩、再参加を時間順にほどきます。そして、練習室でできた調整を、体育館、運動会、体操教室、家族外出の「参加したい」へつなげます。
耳鼻科や小児科での確認を土台に、音環境と運動参加の関係、家庭・園での工夫を整理したい方はご相談ください。お子さんが我慢し続けるのではなく、自分で選び、休み、戻れる参加方法を一緒に組み立てます。
代表取締役 金子 唯史

行動を感覚だけ、注意だけ、運動だけに分断せず、入力、身体反応、情報選択、運動出力の連鎖として捉える視点は、音環境での運動参加を分析する土台にもなります。
- STROKE LABの小児リハビリ
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 感覚過敏の子への関わり方|音・触覚・生活環境を整理する
- 集団遊びに入りにくい子|ルール・感覚・運動参加の見方
本記事は、公的情報、ガイドライン、一次研究、系統的レビュー、STROKE LABの臨床経験をもとに構成しています。音への反応だけで診断を行うことはできず、内容は聴覚評価・診断・治療の代わりではありません。お子さんの状態についての判断は、耳鼻科医、小児科医、発達支援の専門職へご相談ください(最終確認日:2026年8月6日)。
- National Health Service. Noise sensitivity (hyperacusis). Updated May 2026.
- American Academy of Pediatrics. Sensory Integration Therapies for Children With Developmental and Behavioral Disorders. Pediatrics. 2012;129(6):1186-1189. doi:10.1542/peds.2012-0876.
- National Institute for Health and Care Excellence. Autism spectrum disorder in under 19s: support and management. CG170.
- 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター.感覚過敏に対する指導・支援.
- 厚生労働省.発達障害者支援施策の概要:感覚の問題に対する評価と支援.
- Lin LY. Activity Participation and Sensory Processing Patterns of Preschool-Age Children With Autism Spectrum Disorder. Am J Occup Ther. 2020;74(6):7406345010. doi:10.5014/ajot.2020.039297.
- Carpenter KLH, Baranek GT, Copeland WE, et al. Sensory Over-Responsivity: An Early Risk Factor for Anxiety and Behavioral Challenges in Young Children. J Abnorm Child Psychol. 2019;47(6):1075-1088. doi:10.1007/s10802-018-0502-y.
- Piller A, McHugh Conlin J, Glennon TJ, et al. Systematic review of sensory-based interventions for children and youth (2015-2024). Front Pediatr. 2025;13:1720179. doi:10.3389/fped.2025.1720179.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)