脚が開きにくい赤ちゃん|おむつ替えで気づく筋緊張のサイン
無理に広げるのではなく、左右差や抵抗感、体全体が緊張する条件を記録しましょう
おむつ替えで脚を開こうとすると、片側だけ止まる。両脚に力を入れて閉じてしまう。「股関節が硬いの?」「筋緊張が高いの?」と心配になる場面です。けれど、脚の開きにくさは、泣いた時の力み、頭や骨盤の向き、股関節の発育、全身の運動パターンなど、いくつかの理由で起こります。脚が開きにくいことだけで原因を決めず、どの条件で・どちらが・ほかに何を伴うかを整理することが大切です。

脚が開きにくい理由は、一つではありません。
おむつ替えで見える「脚が開きにくい」という様子は、医学的には一つの病名ではありません。赤ちゃんが泣いて全身に力を入れている場合もあれば、頭と骨盤の向きによって片脚が開きにくく見える場合、股関節そのものの動きに制限がある場合、下肢の筋緊張や運動パターンが関係する場合もあります。
大切なのは、筋肉が硬いと決めつける前に、関節・姿勢条件・全身運動・痛みの有無を分けることです。特に片側の開きにくさが続く場合は、発育性股関節形成不全などを医療機関で確認する必要があります。
泣く、寒い、眠い、空腹、急に触られた時など。落ち着くと開き方が変わることがあります。
頭の向き、体幹のねじれ、骨盤の傾き、寝具の沈み込みにより片脚が開きにくく見えます。
片側だけ持続する場合などは、股関節の発育を健診や医療機関で確認します。
両脚の交差、つま先の伸び、全身の反り返り、自然なキックの左右差などを組み合わせて見ます。

月齢だけで、正常・異常を決めません。
生まれて間もない赤ちゃんは、股関節と膝を曲げた姿勢をとりやすく、覚醒状態や泣き方によって脚の力の入り方も変化します。その後、足を持ち上げる、左右に動かす、足同士を近づけるなど、自分から試す動きが少しずつ増えていきます。ただし、月齢ごとの姿勢には幅があり、特定の形にならないことだけで異常とは判断できません。
| 月齢の目安 | 見え方の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 出生〜2か月 | 脚を曲げた姿勢が多く、泣きや驚きで一時的に全身へ力が入ります。 | 左右の自然なキック、痛がり、片脚だけ動かさない様子がないか。 |
| 3〜4か月 | 落ち着いた仰向けで、脚の曲げ伸ばしや左右への動きが見やすくなります。 | 乳幼児健診では股関節の開排制限、姿勢、筋緊張なども確認されます。 |
| 5〜6か月 | 足を高く持ち上げる、足へ手を伸ばすなど、下肢と体幹の連動が増えることがあります。 | 片側だけ動きが少ない、両脚が交差しやすい、全身が反るなどが続かないか。 |
| 7〜12か月 | 座位、四つ這い、立位準備の中で股関節の使い方が広がります。 | 乳児期前半から続く左右差が未評価の場合は、月齢を待たず相談します。 |
月齢は目安であり、達成の締め切りではありません。早産のお子さんは修正月齢も参考にします。ただし、片側の開きにくさ、痛み、脚を動かさない様子は、修正月齢にかかわらず医療機関へ相談してください。
「どこまで開くか」より、動きの条件を見ます。
家庭では脚を押し開いて確かめたくなりますが、角度だけでは原因を分けられません。療法士が動きを見るときは、赤ちゃんが落ち着いているか、頭と骨盤がどちらへ向いているか、膝が自然に曲がるか、足首までどのようにつながっているかを確認します。
さらに重要なのが、大人が動かした時の抵抗より、赤ちゃん自身がどのように脚を動かしているかです。自然なキック、両膝をお腹へ近づける動き、片脚だけ伸び続けないか、手や体幹にも左右差がないかを組み合わせると、関節の問題、姿勢条件、筋緊張・運動パターンを分けやすくなります。
専門家が組み合わせて見る5つの観察点

研究と健診で分かっていること。
発育性股関節形成不全は、乳児期に症状が乏しいことがあるため、健診での診察と継続的な確認が重要です。泣かないから股関節に問題がない、とは判断できません。
こども家庭庁の改訂2版マニュアルでは、3〜4か月児健診で股関節の開排制限を診察項目とし、皮膚溝の左右差、家族歴、女児、骨盤位分娩なども組み合わせて判断します。家庭で角度を測るための基準ではありません。
早期評価では、病歴、標準化された神経学的評価、自然な運動の評価、必要に応じた画像情報など、複数の所見が一致するかを確認します。気になる様子を早めに共有することは、診断を決めつけることではなく、必要な評価へつなぐ行動です。
限界:これらは健診・診断・早期評価に関する情報であり、おむつ替えの見え方だけから原因や予後を判定するものではありません。対象月齢、背景疾患、早産、発達経過により評価は異なります。本記事は医師の診察や画像検査の代わりにはなりません。
片側の開きにくさが続く、脚の長さや膝の高さが違って見える、急に脚を動かさなくなった、触れると強く泣く場合は、家庭で動きを増やす前に健診・小児科へ相談してください。診断・画像検査・治療は医療機関が担い、STROKE LABは必要に応じて生活と動きの観察を整理する側から併走します。
家庭では、開く練習より安全なおむつ替えを。
家庭でできることは、股関節を柔らかくすることではなく、赤ちゃんが余計に力まなくてよい条件を整え、自然な動きを妨げないことです。部屋を暖かくし、声をかけてから触れ、泣いて強く力を入れている時はいったん落ち着くのを待ちます。
| 行ってよいこと | 避けたいこと |
|---|---|
| 暖かく、安定した平らな場所で交換する | 泣いて閉じている脚を押さえつけて開く |
| 足首ではなく、お尻・太もも・膝裏をやさしく支える | 両足首を強く引き上げて、お尻を高く持ち上げる |
| 自然な脚の曲げ伸ばしを妨げない衣服・おむつを選ぶ | 厚いおむつや衣服で、脚を外へ固定する |
| いつ・どちらが・何と一緒に起こるかを短く記録する | 角度を測るために何度も開く、強くストレッチする |
| 自然なおむつ替えの様子を短い動画で残す | 動画のために症状を再現させる、痛がる動きを繰り返す |

医療機関で股関節や痛みを確認したうえで、姿勢条件、自然な全身運動、左右差を整理したい場合は、小児リハビリの評価についてご相談いただけます。
様子を記録する場合と、相談を優先する場合。
| 落ち着いた場面でもう一度確認し、健診で共有 | 早めに医療機関へ相談 |
|---|---|
| 泣いている時だけ両脚に力が入り、落ち着くと自然に動く | 落ち着いていても片側だけ毎回開きにくい |
| 頭位や寝かせ方で脚の位置が変わる | 脚の長さ、膝の高さ、皮膚のしわに明らかな左右差がある |
| 左右とも自然なキックがあり、痛がる様子がない | 足の交差、つま先の強い伸び、全身の反り返り、手足の左右差が続く |
| 一時的な変化で、機嫌・哺乳・睡眠が普段どおり | 女児、骨盤位分娩、股関節疾患の家族歴などがあり、開きにくさも気になる |
急に片脚を動かさなくなった、おむつ替えで強く痛がる、発熱、腫れ、赤み、機嫌不良、哺乳不良、転落や外傷後の変化がある場合は、感染や外傷などを含めて早めの診察が必要です。乳児では、関節の感染が発熱を伴わず、抱き上げやおむつ替えで強く泣く形で現れることもあります。
顔色や呼吸がおかしい、反応が乏しい、けいれん様の動きがある場合は、脚の症状にかかわらず救急要請を含めて緊急対応を優先してください。
健診・受診時に伝える7項目
評価では「関節・姿勢・筋緊張」を分けます。
専門的な評価の価値は、脚をたくさん動かすことではなく、不安を次の三つへ分けることにあります。
医療機関で股関節の発育、左右差、痛み、必要な画像評価を確認します。
頭位、胸郭、骨盤、床面、抱き方で脚の開き方がどう変わるかを見ます。
自然なキック、脚の交差、足首、体幹、手、視線、発達経過を組み合わせます。
股関節の病気が除外された後も左右差や全身の動きが気になる場合は、その場で脚が開いたかだけで終えず、おむつ替え、抱っこ、床遊びで同じ傾向が再現するかを見ます。評価は診断名を急いでつけるためではなく、医療で確認すべきことと、生活の中で観察すべきことを分けるために行います。
よくある質問。
脚が開きにくいことだけで、筋緊張の高さや特定の病気とは判断できません。一方で、片側の開きにくさが続く場合は、股関節の発育を確認する大切なサインになります。家庭では角度を測らず、自然なおむつ替えの様子、痛みの有無、左右のキックを記録し、健診・小児科へ共有してください。医療で股関節や痛みを確認した後も動きの左右差が気になるときは、姿勢と全身運動を分けて評価することが役立ちます。
安全な確認と次の一歩へ。

おむつ替えで感じた小さな左右差は、保護者だからこそ気づける大切な情報です。ただし、その一場面だけで原因を決める必要はありません。
私たちは、関節の確認が必要なサインと、姿勢や全身運動として整理できるサインを混同しないことを大切にしています。医療機関での診察を尊重しながら、家庭で見える動きを分かりやすい観察へ変えていきます。
股関節の病気が除外された後も、脚・体幹・手の左右差や発達全体が気になる場合は、ご相談ください。お子さんの今の動きに合わせて、一緒に整理します。
代表取締役 金子 唯史

動きを「硬い・柔らかい」だけで終わらせず、姿勢、感覚、運動の連鎖から考えるための専門書です。乳児の脚の開きにくさも、一つの関節だけでなく、頭・体幹・骨盤・下肢のつながりとして見る視点が土台になります。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 体が硬い赤ちゃん|手足の突っ張りと筋緊張の見方
- 足をクロスする赤ちゃん|股関節・筋緊張・姿勢の見方
- おむつ替えで足が突っ張る赤ちゃん|下肢伸展と姿勢の見方
本記事は、国内外の公的資料・臨床報告と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・検査・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、乳幼児健診、かかりつけ小児科、小児整形外科などへご相談ください(最終確認日:2026年7月30日)。
- こども家庭庁.改訂2版乳幼児健康診査 身体診察マニュアル.3〜4か月児健診における股関節開排制限、筋緊張、姿勢の確認。
- 日本小児整形外科学会.股関節脱臼.発育性股関節形成不全の気づきと検査。
- Shaw BA, Segal LS. Evaluation and Referral for Developmental Dysplasia of the Hip in Infants. Pediatrics. 2016;138(6):e20163107.
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907.
- The Royal Children’s Hospital Melbourne. Clinical Practice Guidelines: Bone and joint infection. 乳児の発熱、痛み、患肢を使わない様子、おむつ替え時の強い不機嫌に関する受診判断。
- 金子唯史.脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院;2024.408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)