ジャングルジムに登れない子|手足の協調と空間認知の見方
ジャングルジムに登れない子|手足の協調と「次の一手」の見方
「近づくけれど、最初の一手が出ない」「途中までは行けるのに、そこで止まる」「上には登れるのに、自分で降りられない」――ジャングルジムの苦手さは、腕の力だけでは説明できません。大切なのは、どこまで登れたかより、どの場面で動きが止まるかを見ることです。この記事では、登る動作を分けて見ながら、家庭での関わりと相談目安、そして専門施設でできる支援まで整理します。

「怖がり」「腕力不足」だけで説明しない。
ジャングルジムに登れないとき、つい「まだ怖いだけかな」「握る力が弱いのかな」と考えたくなります。もちろん、怖さや支持する力は関係します。ただ、登る動作はそれだけではありません。次にどの棒を使うか見つけること、手足を同時に離さず順番に動かすこと、反対側へ重心を移すこと、身体の向きを変えながら格子の中を通ること、そして自分で降りることまで、いくつもの要素が重なっています。
だからこそ、「できる・できない」を一つで見ないことが大切です。最初の一歩が出ないのか、途中で止まるのか、上には行けるのに下りで止まるのかで、見立てと関わり方は変わります。
STROKE LABは、登る動作を「止まる場面」から見ます。
特に、「上れるのに下りられない」「目印があると進める」「少し支えると足が出る」といった反応の違いは、とても大切な情報です。単純に回数を増やすより、条件を少し変えたときに何が変わるかを見ることで、次の関わり方が見えてきます。

家庭で見たい、登る動作の6つの場面。
| 場面 | 見たいポイント |
|---|---|
| ① 近づく・始める | 遊具へ近づけるか、最初の手足を自分で選べるか。 |
| ② 支える | 手足のうち3点を残して、身体を支えられるか。 |
| ③ 重心を移す | 一方の手足を動かすために、反対側へ体重を預けられるか。 |
| ④ 次の棒を探す | 手や足をどこに置くか見つけられるか。特に足場探索に注目。 |
| ⑤ 身体の向きを変える | 格子を通るときに、胸や骨盤を回して向きを変えられるか。 |
| ⑥ 降りる | 下の足場を探しながら、順番を逆にして自分で降りられるか。 |
動画を撮るときは、正面と斜め横の両方があると見やすくなります。特に、どこで止まったか、誰が声をかけたときに動いたか、どのくらい支えたかがわかると、相談のときにも役立ちます。
研究でわかっていること。
様子見と、相談が安心なサイン。
| 様子を見ながら工夫しやすいこと | 相談が安心なこと |
|---|---|
| 低い場所では少し試せるが、高さが出ると止まる | 痛がる、握る・体重をかけるのを嫌がる |
| 初めての遊具では止まるが、慣れると少し進める | 片側の手足ばかり使う、明らかな左右差がある |
| 目印や短い声かけで動きやすくなる | 以前できていたのに、急にできなくなった |
| 公園以外では大きな困りが目立たない | 走る、跳ぶ、階段、着替えなど、他の場面にも困りが広がっている |
| 降り方を練習すると少し改善する | 落下や転倒が多い、遊び参加を大きく避ける |
- どの遊具で、どの高さなら試せるか
- 最初の一手が出ないのか、途中で止まるのか、降りられないのか
- 片側ばかり使っていないか
- 痛み、疲れやすさ、転倒の多さはないか
- 走る・跳ぶ・階段・着替え・食具操作など、ほかの困りはあるか
- 園や学校で、遊び参加に影響しているか
- スマートフォンで10〜20秒ほどの動画を正面と斜め横から撮れそうか
家庭でできる工夫。
家庭では、「登れるようにさせる」よりも、失敗を増やさず、次の一手が出やすい条件をつくることを目指します。遊具に無理やり乗せるより、低い段差、室内の安定した足場、短い時間での反復など、難しさを下げて経験を積む方が役立つことがあります。
- 最初の2〜3手だけを目標にする
- 足場や手の位置に目印をつける
- 「右手、次は左足」ではなく、「次はどこに行く?」と短く聞く
- 上る練習だけでなく、低い位置で降りる練習も入れる
- 人が少ない時間帯に、公園で落ち着いて試す
- 大人が持ち上げて完成させてしまう
- 高い場所で繰り返し挑戦させる
- 連続で細かい指示を出しすぎる
- 怖がっているのに「できるはず」と急かす
- 上れたかどうかだけで評価する
遊具遊びには、成長に必要な挑戦もありますが、破損や高さ、周囲の混雑など、大人が管理すべき危険もあります。安全確認を前提にしながら、子どもの「やってみたい」を守ることが大切です。
専門施設では、困りごとの仕組みを分けて評価し、育てたい機能と生活参加の両方へ働きかけます。診断、画像、投薬、手術などの医学的判断は主治医の領域です。リハビリでは、遊びや生活の中で「使える力」に変えていく設計を担います。
専門施設で、さらに期待できること。
専門施設の役割は、単に「たくさん練習する場所」ではありません。ジャングルジムに登れない理由を、身体・感覚と知覚・運動の順序・環境・疲労や不安などに分けて見ていくことに価値があります。家庭では同じように見える「登れない」でも、止まっている仕組みが違えば、必要な介入も変わります。
目標は「高く登れること」だけではありません。自分で次の手足を選べること、途中で止まっても戻り方を考えられること、安全に降りられること、友だちの遊びに参加できることまで含めて考えます。回復を狙う部分、代わりの方法を使う部分、環境を変える部分を分けて設計するのが専門施設の特徴です。
| 評価領域 | 何を見るか | その所見で何が変わるか |
|---|---|---|
| 身体・運動 | 3点支持、重心移動、片手片足を離す順番、身体の向きの切り替え | 支持づくりが先か、課題分解より実動作の反復が先かを決めます |
| 感覚・知覚 | 次の足場の探索、距離の見積もり、下を見るときの反応 | 目印や視覚情報を使うのか、身体感覚を高める課題を入れるのかが変わります |
| 運動計画・注意 | どちらから動かすか決められるか、指示が多いと混乱しないか | 言葉の量、課題の単位、成功率の設定を調整します |
| 環境・参加 | 公園と訓練室の差、混雑、他児の存在、疲労の影響 | 般化の順番と、家庭・園で確認する目標が変わります |
ジャングルジムに登れない子を、「腕の力が弱い子」とまとめてしまうと、支援は浅くなります。実際には、握れるのに足が出ない、上りはできるのに下りで止まる、訓練室ではできるのに公園では止まる、といった差があります。ここにこそ、臨床的な見立ての価値があります。
たとえば、足場に目印をつけると進めるなら、経路選択や視覚的な整理が手がかりかもしれません。骨盤をほんの少し支えると足が出るなら、支持側への重心移動がボトルネックかもしれません。高さを下げると動き出すなら、恐怖と姿勢制御の関係を考えます。条件を一つ変え、その場で反応を見ることが、介入の順番を決める鍵になります。
また、私たちは「上れるか」だけで終えません。友だちがいると急に手足が早くなって同時に離してしまうのか、午後になると疲れて下降で止まりやすいのか、といった生活に近い条件も観察します。そして一定期間後に、同じ目標動作をもう一度見て、家庭や園で実際に使える形へつながっているかを再評価します。
この領域では、単に「たくさんやる」より、成功率を保てる難易度が大切です。失敗が続きすぎる高さや間隔ではなく、少しがんばれば届く課題から始めます。言葉が多すぎると動きが止まる子には、指示を短くし、子ども自身が次を選ぶ余地を残します。
親御さんには「療法士のように教える」ことを求めません。短い時間で、失敗を減らし、親子関係を壊さず続けられる実装が大切です。たとえば、公園で1回だけ試す、降り方だけを見る、園の先生と「最初の一手が出たか」を共有するなど、続けやすい単位へ翻訳します。

家庭では生活を守る工夫を。専門施設では、評価にもとづいて複数の方法を組み合わせ、できる力を遊びや参加で使える力へつないでいきます。家庭と専門施設は対立するものではなく、連続した支援の一部です。
よくある質問。
STROKE LABでは、動きの困りを「できる・できない」だけでなく、どの場面で止まり、何が変わると動けるかという視点で評価します。小児リハビリについては、下記ページもご覧ください。


脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。姿勢・感覚・運動を別々にせず、課題の中でどのように連鎖するかを見る視点は、子どもの遊びを分析する際にも土台となります。
関連親記事・比較記事・地域CV記事のURLは、公開状況に合わせて差し替えてください。
- Blank R, et al. European Academy for Childhood Disability (EACD): recommendations on the definition, diagnosis and intervention of developmental coordination disorder. Dev Med Child Neurol. 2019;61(3):242-285.
- Jackman M, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, et al. Occupational therapy for children with developmental conditions: top 10 research priorities and state of the evidence. Occup Ther Int. 2019;2019:7057084.
- 厚生労働省. 発達性協調運動症(DCD)に関する支援資料.
- Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones.
- 国土交通省. 都市公園における遊具の安全確保に関する指針.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院; 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)