足の裏を床につけたがらない赤ちゃん|感覚・筋緊張・立位の見方
足首の硬さだけではなく、接触への敏感さや体重を預ける不安も考える必要があります
「床へ下ろすと足を引っ込める」「つかまり立ちはするけれど、いつもつま先だけ」。足裏をつけない様子を見ると、感覚過敏や筋肉の突っ張り、発達の遅れが心配になるかもしれません。けれど、足底接地は足裏だけの問題ではありません。足が床へ触れる、体重を受け入れる、接地したまま重心を動かすという段階に分け、床面、姿勢、支持量、足首、左右差を一緒に見ます。

足裏をつけない様子だけで、異常とは判断できません。
抱っこから床へ下ろしたときに足を浮かせる、つま先だけで支える、足指を強く曲げる。こうした姿を見ると、「足裏の感覚が苦手なのでは」「筋肉が硬いのでは」と心配になります。
しかし、同じ反応は、床の冷たさ、靴下の滑り、急に体重がかかった驚き、手で支えられない怖さ、痛みでも起こり得ます。一つの見た目から原因を決めず、条件による変化を見ます。
CDCの1歳の運動発達項目は「つかまり立ちをする」「家具につかまって歩く」であり、足裏全体やかかとの接地は独立した項目ではありません。WHOも、座位、つかまり立ち、支え歩き、ひとり立ち、独歩などを幅のある発達として扱っています。
そのため、「何か月なら足裏全体をつけるべき」という期限は設定しません。月齢に加えて、足へ体重を預けられる時間が増えているか、片側だけ避けていないか、床や姿勢を変えると接地が広がるかを確認します。
足底接地を、3つの段階に分けます。
足裏が床へ触れることと、その足へ体重を預けることは同じではありません。さらに、体重を預けたまま玩具へ手を伸ばしたり、左右へ移動したりするには、足・膝・股関節・骨盤・体幹の協調が必要です。
| 段階 | 家庭で見える反応 | 見ている機能 |
|---|---|---|
| 1 接触 | 足裏が床へ触れる。触れた瞬間に引く、足指を曲げることもある | 床面への反応、驚き、痛み、触覚条件 |
| 2 荷重受容 | 足は触れるが、手や脇へぶら下がらず足へ体重を預けられる | 足関節、膝、股関節、骨盤、姿勢の安定 |
| 3 重心移動 | 接地を保ったまま玩具へ手を伸ばす、左右へ体重を動かす | 足底圧の変化、支持脚、体幹の立ち直り、目的動作 |

「何が原因か」より先に、「どの条件なら変わるか」を見ます。
足裏をつけない状態を「感覚過敏」と単純化すると、体重がかかったときだけ嫌がる反応や、骨盤が足の上へ移れない姿勢、足首の硬さ、痛みを見落とします。反対に、つま先立ちをすべて筋緊張の問題と捉えると、冷たい床や滑る靴下、怖さによる変化を見落とします。
STROKE LABでは、床材、温度、支え方、荷重速度、骨盤位置、玩具位置を一つずつ変え、足裏が広がる条件を探します。変化した条件は診断ではありませんが、何を医療機関へ伝え、家庭でどの環境を整えるかを具体化します。
研究でわかっていることと、まだ言えないこと。
1 公的な発達項目:CDCの1歳項目は、つかまり立ちと家具につかまった歩行です。足裏全体やかかとの接地は独立した項目ではありません。
2 課題条件:立ち始めた乳児の研究では、玩具を持つ課題で立位時間が長くなり、体の揺れが小さくなりました。立ち方は意欲や課題条件でも変わります。
3 感覚との関係:歩行獲得後の特発性つま先歩きの系統的レビューでは、感覚処理の違いを示す子どもはいますが、全員ではありません。つま先接地だけで感覚過敏とは断定できません。
限界:乳児の「足裏を床につけたがらない状態」を直接調べた研究は限られます。玩具課題の研究は立位安定性、つま先歩きの研究は主に歩行獲得後の子どもが対象であり、乳児の診断基準にはできません。月齢、早産時の修正月齢、診断、重症度、痛み、環境、個人差を含めて評価します。本記事は医学的診察や治療の代わりではありません。
家庭では、足裏を押すより「自分から置ける条件」をつくります。
目標は、かかとを強制的に床へつけることではありません。赤ちゃんが安心して足を置き、短時間でも体重を預け、遊びへ手を使えることです。最初から立位にこだわらず、保護者の太ももや低い段差へ足を置くところから始めても構いません。
避けたい関わり。
| 避けたいこと | 理由 |
|---|---|
| 足裏を床へ強く押しつける | 痛みや怖さが増え、足をさらに引くことがあります |
| かかとを手で無理に下げる | 足首の硬さや痛みがある場合に負担となります |
| 脇を抱えて長時間立たせる | 手や体幹で支える経験を減らし、脚を突っ張る反応が強く見えることがあります |
| 突起の強いマットを我慢させる | 刺激を増やせば改善するとは限らず、嫌悪や痛みにつながります |
| 嫌がっても繰り返す | 疲労、怖さ、痛み、全身状態の変化を見逃す可能性があります |

医療機関での確認を優先しながら、家庭で見える姿勢や条件差を整理したい方へ、小児リハビリの考え方をご案内しています。
様子見と相談の分かれ目。
| 経過を見ながら関われることが多い様子 | 健診・小児科へ相談したい様子 |
|---|---|
| 床や姿勢を変えると足裏がつく | どの条件でも足へほとんど体重をかけない |
| 最初はつま先でも、少しずつ接地面が広がる | 片側の足だけを持続的に床へつけない |
| 左右の足を同じように使う | 足首が硬く、姿勢を変えてもかかとが下がりにくい |
| 床遊びや移動が活発で、痛がらない | 強い突っ張り、脚の交差、足部の強い傾きが続く |
| 数週間の中で足へ体重をかける時間が増えている | 痛み・腫れ・赤み・熱感・変形、発達の後戻りがある |
急に片足を使わなくなった、足を触ると強く泣く、腫れ・赤み・熱感がある場合は早めに受診してください。顔色や呼吸の異常、ぐったり、哺乳不良、けいれんのような動き、意識の変化を伴う場合は、家庭で刺激や立位練習をせず速やかに医療機関へ相談してください。
相談時に伝えると役立つ7項目。
月齢は、足底接地の期限ではなく立位発達の幅として見ます。
月齢は目安です。早産の場合は修正月齢を考慮します。下表はWHOの健康な乳幼児における粗大運動マイルストーンの達成幅であり、足裏全体やかかとの接地時期を示すものではありません。
| 関連する粗大運動 | WHOの達成幅 | 足底接地で観察すること |
|---|---|---|
| 支えありで立つ | 4.8〜11.4か月 | 足へ触れる、体重を受け入れる、手や胸への依存 |
| 支えありで歩く | 6.0〜13.7か月 | 左右への荷重、足の踏み替え、接地面の変化 |
| ひとり立ち | 6.9〜16.9か月 | 足底接地を保ちながら姿勢を調整できるか |
| ひとり歩き | 8.2〜17.6か月 | 歩行後も強いつま先接地が固定していないか |
評価では、「足裏をつけない」を条件と反応へ分けます。
モードAの記事であるため、私たちは足裏刺激や立位練習を一律に勧めません。評価の役割は、感覚、筋緊張、姿勢、関節、痛みの可能性を見た目だけで決めず、医療相談で伝えるべき所見と、家庭で安全に観察できる条件を整理することです。
| 変える条件 | 確認する反応 | 次の判断 |
|---|---|---|
| 裸足・靴下・床材 | 足を引く、足指を曲げる、泣く反応が変わるか | 接触条件の影響と一貫性を整理 |
| 支持物の高さ・手の支持 | 胸への依存、手の握り、足へ預ける体重が変わるか | 姿勢と支持量の影響を整理 |
| 骨盤を足の上へ移す | かかとや足裏の接地面が広がるか | 重心位置と足関節の関係を整理 |
| ゆっくり・速く荷重する | 脚全体の突っ張りや足の引き方が変わるか | 速度依存の反応を医療者へ共有 |
| 膝を軽く曲げる | 足首の動き、かかとの下がり方、足部の傾きが変わるか | 下肢全体の連鎖と関節所見を整理 |
| 玩具の位置 | 足底接地を保ったまま前後左右へ重心を動かせるか | 接地を生活の遊びへつなげられる条件を整理 |
条件を変えて反応を見ることは、感覚過敏、高緊張、脳性麻痺、整形外科疾患などを診断する検査ではありません。痛み、関節の硬さ、神経学的な左右差、発達の後戻りが疑われる場合は、小児科・整形外科・発達を診る医療機関での評価を優先します。
よくある質問。
Q. 赤ちゃんが足の裏を床につけないのは発達が遅いからですか?
Q. つかまり立ちで、いつもつま先立ちになるのは大丈夫ですか?
Q. 足裏を嫌がるのは感覚過敏ですか?
Q. 足をピーンと突っ張るのは筋緊張が強いからですか?
Q. かかとを手で押して床につけてもよいですか?
Q. どのような場合に健診や小児科へ相談すべきですか?
床へ触れられた、短く体重を預けられた、玩具へ手を伸ばしても接地を保てた。こうした小さな変化も立位発達です。家庭では安全な条件で自分から試せる機会をつくり、片側だけ、痛み、硬さ、強い突っ張り、発達の後戻りがある場合は、健診や医療機関へ相談してください。
体重を受け入れる全身の条件を見ます。

赤ちゃんの足裏が床につかないとき、足裏の感覚だけを刺激すればよいとは限りません。足が床へ触れる瞬間、体重が乗る瞬間、骨盤が足の上へ移る過程を分けることで、姿勢、関節、筋緊張、痛み、環境条件のどこを優先して確認するかが見えてきます。
STROKE LABでは、一度の見た目で決めず、条件を一つずつ変えた反応と経過を重ねながら、今どの条件なら足へ体重を受け入れられるかを整理します。診断や医学的確認は健診・医療機関を優先し、私たちは家庭で見える動きを観察可能な情報へ翻訳する立場で併走します。
代表取締役 金子 唯史

小児記事の基盤となる、機能解剖と動作分析の視点をまとめた書籍です。本記事の「足裏の接触だけでなく、足関節・膝・骨盤・体幹・支持環境まで連鎖で見る」という考え方にもつながっています。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る — 運動発達全体を確認したい場合
- つかまり立ち・伝い歩きが遅い子|足・体幹・バランスの見方 — 立位と移動の全体像を確認する
- 子どものつま先歩き|原因・家庭対応・相談目安 — 歩行獲得後もつま先歩きが続く場合
- 9か月でつかまり立ちしない赤ちゃん|足裏・股関節・体幹の見方
本記事は、国内外の公的情報と研究、STROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。乳児の足底接地そのものを期限化する公的基準や、見た目だけで原因を分ける直接的研究は確認されていません。診断や治療に代わるものではありません(最終確認日:2026年7月30日)。
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 1 Year. Learn the Signs. Act Early. Updated May 15, 2026. 原資料
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: Windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95. WHO資料
- American Academy of Pediatrics. Movement Milestones in Babies 8 to 12 Months Old. HealthyChildren.org. 原資料
- Claxton LJ, Haddad JM, Ponto KC, Ryu JH, Newcomer SC. Newly standing infants increase postural stability when performing a supra-postural task. PLoS One. 2013;8(8):e71288. doi:10.1371/journal.pone.0071288. PubMed
- Donne JH, et al. Some children with idiopathic toe walking display sensory processing difficulties but not all: A systematic review. Acta Paediatr. 2023;112(8):1620-1632. PubMed
- Novak I, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907. doi:10.1001/jamapediatrics.2017.1689. PubMed
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)