片麻痺の子が麻痺側を使わない|学習性不使用と家庭での関わり – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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片麻痺の子が麻痺側を使わない|学習性不使用と家庭での関わり

PEDIATRIC HEMIPLEGIA

使わない手を責めず、使いやすい経験を少しずつ増やす

「声をかければ使うけれど、気づくといつも反対の手だけで済ませている」。片麻痺のあるお子さんでは、このような場面がよくあります。これは本人の怠けや、保護者の声かけ不足だけではありません。使いにくい経験が重なると、子どもは自然に使いやすい手を選びやすくなります。大切なのは、麻痺側を無理に使わせることではなく、麻痺側が参加しやすい条件を整えることです。

UPDATED2026
READ約13分
FOR診断後のお子さんの保護者へ
MODE確定診断・介入型
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。医療・健診・主治医の判断が先であり、STROKE LABは生活動作と運動学習の側から併走します。診断、投薬、ボツリヌス療法、手術などの医学的判断は主治医にご相談ください。

訓練場面

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
麻痺側を使わないのは、本人のやる気だけの問題ではありません
02
使いにくい経験が重なると、使いやすい手だけで済ませる習慣が強まりやすくなります
03
「麻痺手を使って」と繰り返すより、姿勢・物の配置・成功体験を整えることが大切です
04
CI療法や両手練習は有効性が検討されていますが、方法と量は専門家と調整します
05
急な片麻痺、顔色や呼吸の異常、けいれん様の動きは、リハビリより医療を優先します
01
Not Laziness

「使わない」のは怠けではない。

A Parent’s Voice
「使って」と言うほど、本人も親もつらくなる。

片麻痺のあるお子さんは、生活の中で自然に使いやすい手を選びます。食事、着替え、遊び、勉強。早く終わらせたい場面ほど、麻痺側の手は置きっぱなしになりやすくなります。

ここで大切なのは、「どうして使わないの」と責めることではありません。使いにくい手でも参加できるように、姿勢、物の位置、課題の難しさを整えることです。

片麻痺のあるお子さんにとって、麻痺側の手を使うことは、ただ「力を入れる」だけではありません。体幹で姿勢を保ち、肩甲骨を安定させ、目で物を確認し、手の感覚を受け取りながら、タイミングよく動かす必要があります。少し難しいだけで、子どもはすぐに成功しやすい方法を選びます。

その選択は、とても自然なものです。だからこそ支援では、麻痺側の手を「使わせる」のではなく、使ってみたらうまくいったという経験を、生活の中に増やすことを目指します。

02
Developmental Disregard

学習性不使用・発達性不使用とは。

大人の脳卒中リハビリでは、「使わないことで、さらに使いにくくなる」現象を学習性不使用と呼ぶことがあります。小児片麻痺では、発達の途中で使う経験が偏り、麻痺側の手に残っている力や感覚に気づきにくくなることがあります。研究では、このような状態を developmental disregard と呼ぶことがあります。

保護者向けに言い換えると、麻痺側の手を使う経験が少ないため、本人の中で「その手を使う選択肢」が育ちにくい状態です。だから、声かけだけで変えようとすると、本人も保護者も疲れてしまいます。

使わない悪循環が続いてしまう

Key Point
「使う量」より先に、「使える条件」を見る。

麻痺側の手を使う時間を増やすことは大切ですが、姿勢が崩れたまま、届きにくい位置で、難しすぎる課題を続けても、成功体験にはなりにくいです。まずは、届く、触れる、支える、押さえる、離すなど、小さな役割から始めます。

03
Daily Signs

家庭で見えるサイン。

学習性不使用は、検査室だけで分かるものではありません。むしろ、食事、着替え、遊び、学習、外出の中にヒントがあります。以下のような様子がある場合、麻痺側の手が「能力として全く使えない」のではなく、「生活の中で使うチャンスが少ない」可能性があります。

生活場面 見られやすいサイン
食事 皿や器を押さえず、片手だけで食べようとする。こぼれるとすぐ反対の手に切り替える
遊び ブロックやカードを片手だけで操作し、麻痺側の手は膝や机の上に置いたままになる
着替え 袖を通す、服を押さえる、裾を引く役割が少なく、保護者が全部介助しやすい
学習 紙を押さえない、ノートがずれる、道具を持ち替えると姿勢が崩れる
外出 荷物を片側だけで持つ、転びそうな場面で麻痺側を支えに使いにくい

ただし、急に片側の手足が動かしにくくなった、顔のゆがみが出た、けいれん様の動きがある、意識や呼吸、顔色がいつもと違う場合は、家庭練習ではなく医療機関への相談を優先してください。

04
STROKE LAB View

STROKE LABの視点:手だけを見ない。

麻痺側の手を使わないとき、手指の細かい動きだけを見てしまうと、関わりが狭くなります。STROKE LABでは、麻痺側の手が参加できるかを、姿勢、物の配置、成功体験の3つで見ます。

1. Posture
体幹・肩甲帯の土台

座位が崩れると、手は細かく動かしにくくなります。背中、骨盤、足底の支えを整えます。

2. Setting
物の位置と役割

麻痺側に届きやすい位置、支える役割、押さえる役割をつくると、参加しやすくなります。

3. Feedback
できた結果を感じる

「使って」より、「押さえたから切れたね」のように、結果が分かる言葉を使います。

自宅での訓練

小児片麻痺の全体像は、親記事「子どもの片麻痺|成人とは違う小児のリハビリの考え方」で詳しく扱います。この記事では、麻痺側を使わないことに焦点を絞ります。
05
Evidence

研究でわかっていること。

Research Translation
「使わない」は、残っている力に気づきにくくなる現象として説明されます。

一側性脳性麻痺の子どもでは、麻痺側の上肢に残っている能力への気づきが弱くなり、生活でその手を使いにくくなる developmental disregard が報告されています。これは、やる気の問題ではなく、発達の中で使う経験が少なくなることと関係します。

出典:Zielinski IM, et al. BMC Neurology. 2014;14:6. Zielinski IM, et al. BMC Neurology. 2014;14:221.

限界注記:研究対象、年齢、麻痺の程度、認知・感覚、家庭環境によって結果は変わります。この記事は診断や治療の代替ではありません。診断・投薬・ボツリヌス療法・手術などの医学的判断は主治医にご相談ください。
Upper Limb Therapy
CI療法や両手練習は、麻痺側の使用と両手動作を増やす目的で検討されています。

一側性脳性麻痺の上肢リハビリでは、CIMT、両手訓練、目標志向の練習などが研究されています。大切なのは、麻痺側だけを根性で動かすことではなく、子どもと家族にとって意味のある課題を選び、生活で使う経験へつなぐことです。

出典:Sakzewski L, et al. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204. Hoare BJ, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019;4:CD004149. Jackman M, et al. Developmental Medicine & Child Neurology. 2022;64(5):536-549.

限界注記:CIMTの方法や量は、年齢、理解、感覚、麻痺の程度、疲れやすさによって調整が必要です。使いやすい手を制限する方法を家庭だけで強く行うことは避け、専門職と相談してください。
06
What We Work On

専門リハで取り組めること。

診断・急性期治療・薬・手術などの医学的判断は主治医が担います。STROKE LABは、生活の中で麻痺側が参加しやすい動きと環境を一緒に組み立てる併走役です。
What We Work On — At STROKE LAB
「使わないクセ」を、使える条件の設計へ変える。

麻痺側を使う練習は、手指だけの問題ではありません。座る姿勢、見る位置、物の大きさ、手を出す角度、成功が分かるフィードバックまで含めて設計します。

1. 目標志向の課題ベース練習

食べる、遊ぶ、書く、着替えるなど、本人の生活にある「したい」を起点にします。

2. 使いにくい手を引き出す練習と両手の協力

麻痺側を主役にする場面と、両手で協力する場面を、年齢と能力に合わせて選びます。

3. 家庭・学校プログラムと保護者コーチング

練習室でできた動きを、食事・遊び・学習・学校生活へつなぐ方法を一緒に整理します。

効果や進み方には個人差があり、成長や疲労、感覚、認知、学校環境によって変動します。医療機関での治療と矛盾しないよう、主治医や地域の療育・学校支援と連携しながら進めます。

坐位机上課題

CI療法・両手動作の具体的な考え方は、関連記事「片麻痺の子どもの手を育てる|CI療法・両手動作の家庭での考え方」で詳しく扱います。
07
Home Support

家庭でできる関わり。

家庭で大切なのは、長い練習を無理に続けることではありません。生活の中に、麻痺側が少し参加しやすい場面を作ることです。最初は「支える」「押さえる」「触る」「離す」のような小さな役割で十分です。

家庭での工夫 具体例
物の位置を少し変える 玩具や食器を、麻痺側の手が届きやすい少し前方に置く。遠すぎる位置にはしない
麻痺側に小さな役割を作る 紙を押さえる、箱を支える、服の裾を持つ、コップに軽く触れるなど
声かけを短くする 「押して」「支えて」「離して」など、動きに直結する短い言葉にする
結果を伝える 「押さえたから切れたね」「両手で持てたね」のように、手を使った結果を共有する
動画を残す うまくいった場面と難しかった場面を短く撮影し、療育やリハビリで相談する

子供の手の使い方を引き出す関わり方

Avoid
避けたい関わり。
01
毎回「麻痺手を使って」と言い続け、本人が声かけに依存してしまう関わり
02
手を持って動かすことだけが中心になり、本人が自分で修正する経験が少ない関わり
03
疲れている時間帯に難しい課題を続け、麻痺側を使うことが嫌な経験になる関わり
04
医療的な変化があるのに、家庭練習で様子を見る関わり

診断前の左右差が気になる場合はNo.65、歩き方や装具も気になる場合はNo.82へ内部リンクを設置します。
08
FAQ

よくある質問。

Q. 麻痺側の手を使わないのは、本人のやる気の問題ですか?

やる気だけの問題とは考えません。片麻痺の子どもでは、使いにくい経験が重なることで、自然に使いやすい手を選びやすくなります。叱って使わせるより、姿勢、物の置き方、課題の難しさ、成功が分かる声かけを整えることが大切です。

Q. 家庭では、麻痺側の手をどのくらい使わせればよいですか?

時間だけで決めるより、成功しやすい短い場面を毎日の生活に入れることが大切です。食事で器を支える、遊びで箱を押さえる、着替えで袖を引くなど、麻痺側が補助手として参加しやすい場面から始めます。疲れや痛み、嫌がりが強いときは無理をせず、担当の専門職に相談してください。

Q. 麻痺側の手を持って動かしてもよいですか?

安全のために支えることはありますが、毎回手を持って動かすだけでは、子ども自身が考えて動く経験になりにくいことがあります。見本を見せる、物の位置を変える、短い言葉で促す、できた結果を一緒に確認するなど、自分から動きやすい条件づくりを優先します。

Q. CI療法や両手練習は家庭でもできますか?

考え方の一部は家庭にも取り入れられますが、方法や量は子どもの年齢、理解、感覚、麻痺の程度、疲れやすさで変わります。CI療法のように使いやすい手を制限する方法は、専門職の評価と計画のもとで行うことが安全です。家庭では、両手で遊ぶ場面を増やすことから始めるとよいでしょう。

Q. 学校や園には、どのように伝えればよいですか?

できないことだけでなく、どんな条件なら参加しやすいかを伝えると共有しやすくなります。例えば、机上の物の位置、持ち物の重さ、着替えの順番、体育での安全、疲れたときの休み方などです。必要に応じて主治医、療育、学校の先生と連携し、本人の参加を中心に調整します。

Q. 急いで医療機関に相談すべきサインはありますか?

急に片側の手足が動かしにくくなった、顔のゆがみが出た、けいれん様の動きがある、意識がぼんやりする、呼吸や顔色がいつもと違う、強い頭痛や嘔吐がある場合は、リハビリより医療機関への相談を優先してください。症状が一時的に戻ったように見えても、自己判断せず相談することが安全です。
09
STROKE LAB

STROKE LABの小児リハビリ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。小児片麻痺のお子さんに対しても、機能解剖と動作分析の視点から、生活の中で麻痺側が参加しやすい条件を一緒に整理します。

「使わないから練習する」ではなく、「どんな条件なら使えるか」を見つけること。医療・健診・主治医の判断を尊重しながら、家庭・学校で続けられる形へ落とし込むこと。ここが、私たちが大切にしている関わりです。

Message & Clinical Backbone
使わない不安を、
使える条件づくりへ。
STROKE LAB代表 金子唯史

片麻痺のあるお子さんが麻痺側の手を使わないとき、保護者の方は「このままで大丈夫なのか」と不安になります。けれど、その背景には、姿勢、感覚、成功経験、課題の難しさが関係しています。

医療機関での治療とあわせて、家庭・学校での関わりを整理したい方は、一度ご相談ください。お子さんの育ちに寄り添いながら、一緒に組み立てます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史
書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408頁|脳の領域別からリハビリテーション方法を提案する専門書

本記事の背景には、脳の機能解剖、運動学習、生活動作分析の視点があります。専門的な知見を、保護者の方が家庭で観察しやすい言葉に翻訳してお伝えします。

書籍を見る

片麻痺の手の使い方を、生活に合わせて見直したい方へ。

評価では、手だけでなく、姿勢、肩甲帯、感覚、物の配置、家庭・学校での使い方まで確認します。

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References
1. Zielinski IM, Jongsma MLA, Baas CM, Aarts PBM, Steenbergen B. Unravelling developmental disregard in children with unilateral cerebral palsy by measuring event-related potentials during a simple and complex task. BMC Neurology. 2014;14:6.
2. Zielinski IM, Steenbergen B, Baas CM, Aarts PBM, Jongsma MLA. Neglect-like characteristics of developmental disregard in children with cerebral palsy revealed by event related potentials. BMC Neurology. 2014;14:221.
3. Hoare BJ, Wallen MA, Thorley MN, Jackman ML, Carey LM, Imms C. Constraint-induced movement therapy in children with unilateral cerebral palsy. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019;4:CD004149.
4. Sakzewski L, Ziviani J, Boyd RN. Efficacy of upper limb therapies for unilateral cerebral palsy: a meta-analysis. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204.
5. Jackman M, Novak I, Lannin N, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Developmental Medicine & Child Neurology. 2022;64(5):536-549.
6. Centers for Disease Control and Prevention. Treatment and Intervention for Cerebral Palsy. Updated 2026.
7. CanChild. How to recognize and refer children with hemiplegic unilateral cerebral palsy.
8. 一般社団法人日本小児理学療法学会ほか. 小児片麻痺のための上肢集中リハビリテーションプログラム実施マニュアル. 2023.
9. 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.
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