つま先立ちが多い赤ちゃん|足裏を使いにくい理由と相談目安
うれしい時だけなのか、立つたびに続くのかで動きの意味は大きく変わります
「つかまり立ちをすると、いつも踵が浮きます」「片足だけつま先になり、脳性麻痺や発達障害ではないか心配です」。つま先立ちは、踵だけを見ても背景が分かりません。支持物の高さ、体の重心、膝と足首の使い方、左右への体重移動によって見え方が変わります。大切なのは、つま先になる回数より、どの条件なら踵が下りるかを丁寧に見ることです。

つかまり立ちで踵が浮くと、不安になります。
検索すると、癖、感覚、自閉スペクトラム症、脳性麻痺、足首の硬さなど、さまざまな言葉が出てきます。見た目が同じでも、背景は一つではありません。
まず知ってほしいのは、つま先立ちだけで病名を判断することはできないということです。保護者の不安を、観察できる動きへ分けていきましょう。
米国整形外科学会は、歩行を学び始めた子どもにつま先歩きが見られることは珍しくなく、多くは2歳以降に踵から足先へ体重を移す歩き方へ変わると説明しています。ただし、これは独歩中の「つま先歩き」の説明であり、家具につかまって立つ乳児の姿勢を直接調べた資料ではありません。
そのため、「何か月なら普通」と断定せず、いつも同じか、左右差があるか、条件によって踵が下りるか、ほかの動きが増えているかを中心に整理します。
「つま先立ち」と「つま先歩き」は分けて考えます。
家具や大人につかまって立つときに、踵が床から浮いている状態。支持物の高さ、体との距離、膝の曲がり、玩具の位置で変化しやすい場面です。
伝い歩きや独歩で、踵の接地が少なく前足部を中心に移動する状態。持続期間、頻度、踵を下ろして歩けるか、左右差を確認します。
つかまり立ちの初期は、手で家具を強く引き、体を前へ預け、膝を伸ばして立つことがあります。その結果として踵が浮く場合があります。一方、支持条件を変えても踵が下りない、片側だけ一貫して浮く場合は、立ち方だけでなく足首の動きや左右差も確認します。
足裏全体をつけにくく見える、5つの理由。
腕を上へ伸ばし、体を前へ預けると、重心が前足部へ集まりやすくなります
体を安定させるため、脚全体を一本の棒のように突っ張る立ち方を選ぶことがあります
両足へ均等に力を入れ続け、片側で支える準備が少ないと、前足部で踏ん張ることがあります
条件を変えても踵が下りにくい場合は、足首の可動域や筋の硬さを確認します
床の感触や温度、靴、疲れ、急いだ場面だけで頻度が変わることがあります
「足裏を使えていない」という言葉は、原因を示す診断名ではありません。実際には、足裏全体を床へつける姿勢条件が整いにくい、または踵を接地する必要の少ない立ち方を選んでいるなど、複数の可能性があります。

踵が浮くことより、「踵が下りる条件」を見ます。
1.静止した立位だけで判断しない
同じ子どもでも、家具を低くする、体へ近づける、玩具を床へ置く、膝を少し曲げる場面をつくると、踵の位置が変わることがあります。踵が下りたかだけでなく、肩の力が抜けたか、手の握りが軽くなったか、表情や呼吸が楽になったかも確認します。
2.浮いている足より、反対側の支持脚を見る
伝い歩きで右足がつま先になるとき、右足だけが問題とは限りません。左脚へ十分に体重を移せないため、右足を軽くできず、両足で前足部を踏ん張っている場合があります。右へ進むときと左へ進むとき、玩具の方向を変えたときの違いを見ます。
3.「下ろせない」と「普段は下ろしていない」を分ける
支持条件や膝の角度を変えても踵が下りない場合は、足首の可動性や筋緊張など身体側の制限を丁寧に確認します。一方、条件によって踵が下りる場合は、環境と姿勢戦略を含めて考えます。この違いは、相談先や家庭で観察する内容を決めるうえで重要です。

研究と公式資料から、言えること・言えないこと。
家庭では、踵を押すより環境を変えて観察します。
| 試す条件 | 見る変化 | 目的 |
|---|---|---|
| 安定した低めの家具へ変える | 踵、膝、手の握り、体の前傾 | 支持位置による姿勢変化を確認する |
| 家具を体へ少し近づける | 体を家具へ預けすぎないか | 重心が前へ出る条件を減らす |
| 低い玩具へ手を伸ばす | 膝を曲げてしゃがみ、踵が下りるか | 立位の高さを変える調整を見る |
| 玩具を左右へ置く | 左右の支持脚と踵の違い | 荷重移動の左右差を確認する |
| 遊び始めと終了前を撮影する | 疲労で頻度・左右差が増えるか | できる・できないではなく崩れる条件を見る |
月齢だけでなく、立位と歩行の流れを見ます。
CDCの発達チェックリストでは、1歳で「つかまり立ち」「家具につかまって歩く」、15か月で「ひとりで数歩歩く」、18か月で「支えなしで歩く」が、多くの子どもに見られる動作として示されています。これは診断の締め切りではなく、相談のきっかけを整理する資料です。
| おおよその月齢帯 | 動きの観察例 | つま先立ちを見るポイント |
|---|---|---|
| 9〜12か月頃 | つかまり立ち、家具沿いの移動が広がる | 支持物の高さ・距離で踵が変わるか |
| 12〜15か月頃 | しゃがみ、立ち直り、数歩の独歩が増える | 左右差、踵を下ろせる場面、脚の突っ張り |
| 15〜18か月頃 | 支えなしの歩行が広がる | 日常の何割程度か、踵をつけて歩けるか、転倒 |
| 18か月以降 | 歩行の安定、方向転換、段差などへ広がる | 持続、生活への影響、踵が下りない、左右差 |
月齢はあくまで目安です。早産のお子さんは修正月齢を確認します。9〜12か月などの幅は観察を整理する便宜上の区分で、全員が同じ順序・時期をたどる意味ではありません。CDCのチェックリストは標準化された発達検査の代わりではありません。
様子を見やすい変化と、相談したい変化。
- つかまり立ちを始めたばかり
- 両側性で、ときどき踵が下りる
- しゃがむと足裏全体がつく
- 支持物を低くすると姿勢が変わる
- 左右へ同じように体重を移せる
- 痛みや強い嫌がりがない
- 立つ・しゃがむ・伝い歩きが増えている
- 片側だけ一貫して踵が浮く
- 条件を変えても踵が全く下りない
- 足首が硬く、足裏全体をつけにくい
- 脚の強い突っ張りや交差がある
- ふくらはぎや脚の使い方に左右差がある
- 座る・立つ・移動する発達全体も気になる
- できていた動きが減った、または消えた
- 急な痛み、発熱、体重をかけられない状態
Royal Children’s Hospital Melbourneの脳性麻痺ガイドラインでは、修正月齢を考慮し、12か月以降も一貫した左右非対称またはつま先歩きがある場合を、ほかの運動所見と合わせて紹介を検討する目安の一つとしています。これは、12か月でつま先立ちがあれば脳性麻痺という意味ではありません。一貫性・左右差・随伴する発達所見を合わせて見るという考え方です。

専門評価では、「足裏を使えない」を観察できる所見へ分けます。
モードAの記事であるため、ここでは特定の治療をすすめるのではなく、評価で何を整理できるかを示します。専門評価の価値は、つま先立ちを見た目だけで直すことではなく、どの条件が姿勢を変え、どの所見が医療相談の必要性を高めるかを分けることにあります。
| 観察される様子 | 変える条件 | 考える仮説 | 生活で確認する変化 |
|---|---|---|---|
| 高い家具で両踵が浮く | 高さ・距離・手の位置 | 重心の前方偏位と手への依存 | 自宅の低い家具でも踵が下りるか |
| 膝を伸ばして突っ張る | 低い玩具・しゃがみ | 脚全体をまとめて伸ばす安定戦略 | 膝を曲げて玩具を取り、戻れるか |
| 片側だけ踵が浮く | 進行方向・玩具の方向 | 支持脚、可動域、筋緊張の左右差 | 方向を変えても同じ側に差が残るか |
| 疲労後につま先が増える | 時間・休憩・床環境 | 姿勢保持の負担と環境依存 | 朝夕・遊び前後の動画で再現するか |
評価室で踵が下りたことを、そのまま改善と判断しません。家庭の家具、床、靴、疲労のある場面でも同じ変化が見られるかを確認し、再び同じ立位・伝い歩きで見直します。医療的な評価が必要な所見があれば、健診・小児科・小児整形外科などへつなぎます。

健診で伝えることを、短く整理しておきましょう。
不安を「観察できる動き」に変えるところから始めます。
STROKE LABでは、踵の位置だけでなく、支持条件、左右の荷重、しゃがみ、足首の可動性、疲労、家庭環境を整理します。診断や医学的治療は医療機関の領域です。私たちは、健診・医療と連携しながら、家庭で観察しやすい条件と次に確認する動きを一緒に組み立てます。

子どもが姿勢を選び直せる条件を見つけます。
つま先立ちは、足先だけの現象ではありません。支持物へ手を伸ばす位置、骨盤の向き、左右の支持、膝の曲がり、足首の動きが重なって見えます。一つの条件を変えたときの小さな反応から、その子に合う見守り方を整理します。

1. Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 1 Year; Milestones by 15 Months; Milestones by 18 Months. Updated May 15, 2026. https://www.cdc.gov/act-early/milestones/
2. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Toe Walking. OrthoInfo. https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/toe-walking/
3. Royal Children’s Hospital Melbourne. Orthopaedics: Toe walking. https://www.rch.org.au/ortho/for_health_professionals/Toe_walking/
4. Royal Children’s Hospital Melbourne. Clinical Practice Guidelines: Cerebral palsy; The limping or non-weight bearing child. https://www.rch.org.au/clinicalguide/
5. Engström P, Tedroff K. Idiopathic Toe-Walking: Prevalence and Natural History from Birth to Ten Years of Age. J Bone Joint Surg Am. 2018;100(8):640-647. doi:10.2106/JBJS.17.00851.
6. 金子唯史.脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院;2024.408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)