小児リハの初回相談で持っていくもの|動画・母子手帳・学校情報の整理
小児リハの初回相談で持っていくもの|動画・母子手帳・学校情報の整理
「何を持っていけばよいのか」「うまく説明できるだろうか」——初めての小児リハ相談では、準備そのものが負担になることがあります。けれど、すべての資料を完璧にそろえる必要はありません。大切なのは、いつ・どこで・何をすると困るのかが伝わる材料を、無理のない範囲で持っていくことです。家庭動画、母子健康手帳、学校情報をどう整理すると初回評価に役立つのか、専門家の視点で解説します。

完璧にそろえなくて、大丈夫です。
病院名、診断名、発達の経過、学校での困りごと。伝えたいことが多いほど、初回相談の前に頭がいっぱいになることがあります。動画を撮ろうとしても、お子さんがいつもの動きをしてくれないこともあります。
初回相談は、保護者が情報を完璧に説明する試験ではありません。分からないことを含めて、専門家と一緒に整理する時間です。
発達や運動の評価では、保護者の心配、これまでの発達経過、実際のお子さんの観察を組み合わせます。ひとつの書類や相談室での一回の動きだけで結論を出すのではなく、家庭、園・学校、療育、医療機関などで見える姿をつなぐことが重要です。
資料が不足していても、相談は始められます。まずは「今いちばん困っている場面」と「できるようになってほしいこと」をひとつずつ考えてみてください。それだけでも、初回評価の入口になります。
初回相談に持っていきたいもの。
優先度を「まず準備」「持っていれば役立つ」「なくても相談可能」の3段階に分けると、準備の負担が減ります。相談先によって必須書類は異なるため、予約時の案内がある場合はそちらを優先してください。
| 優先度 | 準備するもの | 何が分かるか |
|---|---|---|
| まず準備 | 家庭動画、母子健康手帳、困りごとのメモ、普段の装具・靴・補助具、服薬情報 | 現在の動き、発達の時間軸、安全面、日常で使用している条件 |
| 持っていれば役立つ | 紹介状、退院時サマリー、検査結果、過去のリハ評価、個別支援計画、連絡帳、ノート、プリント | 医学的背景、これまでの支援、学校での再現性、変化の経過 |
| なくても相談可能 | 確定診断名、すべての検査画像、専門用語でまとめた経過表、長時間の動画 | 分からない部分は初回で整理し、必要に応じて主治医や支援者との情報共有を検討 |

家庭動画は、「普段の条件」を伝える資料。
相談室では緊張して動かない子もいれば、反対に普段より頑張って動ける子もいます。家庭動画には、いつもの椅子、床、食器、靴、家族の声かけ、疲れる時間帯など、生活を支えている条件が映ります。
- 歩く、走る、方向を変える、階段を昇り降りする
- 床から立つ、椅子に座る、姿勢を保つ
- 食具を使う、コップで飲む、着替える、靴を履く
- 鉛筆、はさみ、定規、タブレットなどを使う
- 公園、体育、登下校など、家庭外で困る動作
- 午前はできるが午後に崩れるなど、疲労後の変化
撮影するときの6つのポイント
- 練習や撮り直しを重ねず、できるだけ普段どおりに撮る
- 動作の開始前から終了後まで入れる
- 可能なら頭から足まで全身が映る位置にする
- 困りごとごとに30秒から1分程度を目安に分ける
- 撮影日、時間帯、疲労、装具の有無、直前の活動をメモする
- 他のお子さんや個人情報が映らないようにし、園・学校では許可を確認する
動画は有用な補助資料ですが、角度、画質、撮影条件によって見え方が変わります。研究では、小児の運動評価を動画から採点できる可能性が示されていますが、すべての評価を家庭動画だけで代替できるわけではありません。対面で姿勢、筋緊張、感覚、安全性、環境条件を確認して初めて、介入の優先順位が整理できます。

母子健康手帳と医療情報から、時間軸をつくる。
母子健康手帳には、妊娠・出産、乳幼児健診、予防接種、身体発育曲線、保護者の記録などがまとまっています。こども家庭庁も、妊娠期から乳幼児期までの重要な健康情報を一冊で管理できることを、母子健康手帳の大切な意義としています。
| 確認する情報 | 初回評価での意味 |
|---|---|
| 妊娠・出産、新生児期 | 在胎週数、出生体重、入院歴、治療歴など、発達を考える背景 |
| 発達の経過 | 首すわり、寝返り、座位、移動、歩行、手の使い方がどの順序で育ったか |
| 健診・成長曲線 | いつ指摘があり、身体発育や生活面がどう変化したか |
| 医療・服薬情報 | 安全に運動するための注意点、発作、痛み、疲労、手術後の制限 |
| 保護者が気づいた時期 | 最初の違和感と現在の困りごとをつなぎ、変化を確認する起点 |
米国小児科学会は、発達を見守る基本要素として、保護者の心配を聞くこと、発達歴を確認すること、子どもを観察すること、記録を保つことなどを挙げています。つまり、母子健康手帳だけでも、その日の動きだけでも不十分で、複数の情報をつなぐことが大切です。
限界:発達スクリーニングやリハ評価は診断そのものではありません。病気の診断、画像検査、投薬、手術などの判断は主治医・医療機関が行います。
園・学校・療育の情報は、「環境差」を伝える。
家庭ではできるのに、学校では難しい。午前中は安定しているのに、午後は姿勢が崩れる。少人数では動けるのに、体育では参加できない。この違いは、本人の努力不足ではなく、机や椅子、時間制限、騒音、課題量、移動距離、周囲の援助など、環境条件の差から生じることがあります。
持っていれば役立つ学校・療育資料
- 個別の教育支援計画、個別支援計画
- 連絡帳、教員や支援者からのメモ
- ノート、作文、プリント、工作物
- 体育、給食、着替え、トイレ、校内移動の情報
- 学校で使用している椅子、机、補助具の写真
- 本人が嫌がる活動、得意な活動、休憩で回復するかの記録
大切なのは、資料の量ではありません。「家庭と学校で何が違うか」「どの時間帯に崩れるか」「誰のどんな援助で成功するか」が分かると、相談室で確認すべき条件が明確になります。
相談メモは、3つの質問で十分です。
困りごとを長い文章にまとめる必要はありません。スマートフォンのメモに、次の3つを書いておくと、初回の対話が進みやすくなります。
小児リハの目標は、検査数値だけで決めるものではありません。研究では、家族にとって意味のある目標を設定することが広く重視されている一方、目標と具体的な介入のつながりが十分に示されていない課題も報告されています。だからこそ、初回から「何を改善するか」だけでなく、生活のどの場面へ戻すのかを共有することが重要です。
初回評価では、資料を「動きの仮説」へ変換する。
専門家が見るのは、資料に書かれた診断名だけではありません。困りごとが、身体機能、動作の方法、課題の難しさ、環境、疲労、援助の入り方のどこで生じているかを分けます。
| 持参情報 | 考える仮説 | 初回で確認 | 生活目標 |
|---|---|---|---|
| 後半ほど字が乱れるノート | 手指だけでなく、姿勢保持、視線、筆圧、速度、疲労が影響 | 書き始めと数分後、机・椅子、課題量、休憩後の回復 | 授業後半も必要な量を読みやすく書く |
| 階段で不安定になる動画 | 筋力だけでなく、片脚支持、視線、足部、速度調整、手すり条件が影響 | 平地、段差、昇り、下り、荷物、疲労後を比較 | 校内階段を安全に移動する |
| 家ではできるが学校では難しい | 時間制限、騒音、道具、机・椅子、周囲の視線、援助方法が影響 | 静かな条件と時間制限下、援助あり・なしを比較 | 教室でも成功しやすい条件を共有する |
STROKE LABが初回で見る、二つの細かな違い
最初の一回ができても、反復すると肩が上がる、足が内側へ入る、視線が落ちる、筆圧が強くなることがあります。何回目から崩れるか、休憩で戻るか、翌日まで疲労が残るかを確認し、練習量と環境調整を考えます。
保護者が椅子を引く、食器を近づける、身体を軽く支える、次の動作を声で知らせる。その援助が成功の鍵であることがあります。援助を急に外すのではなく、何が効いているかを見つけ、本人が自分で選べる方法や学校で再現できる方法へ変換します。

STROKE LABの初回相談とセラピーの流れ。
STROKE LABでは、診断が確定していないお子さんも相談できます。初回は、現在の困りごとと医療・発達の経過を確認し、実際の動作を評価したうえで、その場で試せる関わりや家庭での観察点を整理します。
2026年7月時点では、無料相談20分と有料セラピー60分を組み合わせた計80分です。無料相談のみの利用は受け付けていません。料金や受付条件は変更される場合があるため、予約前に公式ページで最新情報をご確認ください。
初回相談より、医療機関を優先するサイン。
次のような急な変化がある場合は、家庭動画を準備したり予約日を待ったりせず、救急を含む医療機関へ相談してください。
- 急に片側の手足が動かしにくくなった、顔がゆがんだ
- けいれん、意識がぼんやりする、反応がいつもと違う
- 呼吸がおかしい、顔色が悪い、哺乳や水分摂取が急に難しい
- 強い頭痛、繰り返す嘔吐、急に立てない・歩けない
- 転倒や外傷後の強い痛み、腫れ、変形、荷重できない状態
- 発熱を伴い、ぐったりして急速に状態が変わっている
診断、画像検査、投薬、手術、装具の医学的処方は主治医・医療機関が担います。リハビリ施設は、医学的な安全が確認されたうえで、生活機能と運動発達の側から併走します。
よくある質問。
Q. 紹介状がなくても、小児リハの初回相談はできますか?
Q. 家庭で撮った動画は、どのくらいの長さがよいですか?
Q. 母子健康手帳のどこを見せればよいですか?
Q. 学校や療育の資料がなくても相談できますか?
Q. 装具や靴は持っていった方がよいですか?
Q. 急に手足が動かしにくくなった場合も、初回相談を予約すればよいですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LABでは、家庭動画や資料を確認するだけでなく、お子さんがどの姿勢なら動きやすいか、どの支えがあれば成功するか、疲労や速度で動きがどう変わるかを実際に評価します。病院・療育・学校で行われている支援を否定せず、生活上の目標と役割を整理しながら併走します。
予約時に、年齢、診断名または相談理由、困っている動作、来院・訪問の希望をお伝えください。急な症状がある場合は、先に医療機関へご相談ください。
次の一歩が見える相談へ。

初めての相談では、「この程度で相談してよいのか」「説明が足りなかったらどうしよう」と迷うことがあります。けれど、保護者が日常で感じている違和感は、評価の大切な出発点です。
私たちは、資料の多さではなく、お子さんが生活のどこで困り、どんな条件なら力を発揮できるかを一緒に見つけます。家庭動画、母子健康手帳、学校の情報を、次の動きと生活目標へつなげていきます。
診断が決まっていない場合や、病院・療育との使い分けに迷っている場合もご相談ください。医学的な判断は主治医を尊重し、私たちは動きと生活の側から整理します。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。目の前の動作を「できる・できない」で終わらせず、姿勢、感覚、運動、環境のつながりとして見る視点は、小児の初回評価にも共通する土台です。
- 小児の自費リハビリ|費用・頻度・初回の流れと保険リハとの使い分け
- 小児リハビリの対象・進め方・受け入れ実績
- 療育・病院リハ・自費リハの違いと使い分け|どれを選べばいい?
- 御茶ノ水・文京区で子どもの運動発達を相談したい方へ
本記事は、公的情報と小児リハビリテーション研究、STROKE LABの臨床経験をもとに構成しています。家庭動画や資料は評価を補う情報であり、診断・治療の代替ではありません。お子さんの医学的な判断は、主治医・小児科医にご相談ください(最終確認日:2026年7月14日)。
- こども家庭庁:母子健康手帳.妊娠期から乳幼児期までの健康情報を一冊で管理する意義。
- Lipkin PH, Macias MM, et al. Promoting Optimal Development: Identifying Infants and Young Children With Developmental Disorders Through Developmental Surveillance and Screening. Pediatrics. 2020;145(1):e20193449.
- Sorsdahl AB, Moe-Nilssen R, Strand LI. Observer reliability of the Gross Motor Performance Measure and the Quality of Upper Extremity Skills Test, based on video recordings. Dev Med Child Neurol. 2008;50(2):146-151.
- Pritchard-Wiart L, Phelan SK. Goal setting in paediatric rehabilitation for children with motor disabilities: a scoping review. Clin Rehabil. 2018;32(7):954-966.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)