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子どもの脳卒中の原因|脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常を知る

 

PEDIATRIC STROKE ETIOLOGY

子どもの脳卒中の原因|脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常を知る

「原因がはっきりしないと言われた」「脳動静脈奇形とは何ですか」「血液が固まりやすい体質とリハビリは関係しますか」——子どもの脳卒中では、保護者の不安が原因名に集中しやすくなります。けれど大切なのは、病名を並べることだけではありません。原因疾患、傷ついた脳の場所、今の動き、生活での困りごとをつなげて見ることが、リハビリと学校生活の見通しにつながります。

UPDATED2026
READ約13分
FOR診断後の保護者へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。医療・健診が先、私たちは併走です。診断、検査、薬、手術、再発予防は主治医の領域です。STROKE LABは、その方針を尊重しながら、生活と動きの側からお子さんの可能性を一緒に見ていきます。

脳卒中の原因説明

Quick Reference
原因を知るときに、まず押さえたい5つのこと。
01
子どもの脳卒中は、大人の動脈硬化とは違う原因で起こることが多いです
02
脳出血では脳動静脈奇形、脳梗塞では血管の壁の異常・心疾患・凝固異常などが重要です
03
原因は一つとは限らず、複数の要因が重なることもあります
04
リハビリでは、原因名だけでなく「どこが傷つき、どの動きに出ているか」を見ます
05
急な片麻痺、顔のゆがみ、けいれん、呼吸や意識の異常は医療優先です
01
Start From Anxiety

「なぜ起きたのか」を知りたい。その不安は自然です。

A Parent’s Voice
原因名がわかっても、生活の不安はすぐには消えません。

「脳動静脈奇形と言われた」「血管炎の可能性がある」「凝固異常の検査をすると言われた」。診断後の説明では、聞き慣れない言葉が一度に出てきます。保護者の方が、原因を調べたくなるのは当然です。

ただ、原因名だけでは、お子さんのこれからの動きや生活は決まりません。大切なのは、原因、損傷部位、現在の動作をつなげて見続けることです。

子どもの脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血があります。原因は、大人でよく聞く動脈硬化とは異なります。血管の形、血管の壁、炎症、心臓、血液の固まりやすさなど、いくつもの要因が関わります。

この記事では、保護者の方が混乱しやすい原因疾患を、医学的な分類だけでなく、リハビリで見える生活上の困りごとへつなげて整理します。急な片麻痺、顔のゆがみ、呼吸や意識の異常、けいれん様の動き、強い頭痛や繰り返す嘔吐、哺乳不良がある場合は、リハビリ相談より先に医療機関へ相談してください。

02
Different From Adult Stroke

子どもの脳卒中は、大人と原因が違います。

大人の脳梗塞では、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙などによる動脈硬化が背景にあることが多くあります。しかし、子どもではこの説明だけでは不十分です。小児では、血管の壁の異常、心疾患、血液が固まりやすい体質、感染や炎症のあと、外傷に伴う動脈解離などが関わります。

また、原因が一つに決まらないこともあります。たとえば、もともと血管が細くなりやすい背景に、脱水、感染、手術、長時間の安静、血液の固まりやすさなどが重なることもあります。だからこそ、原因の精査は主治医チームが行い、リハビリでは医療情報を共有しながら安全に進めます。

Evidence Note
研究でわかっていること

AHA/ASAの小児脳卒中ステートメントでは、子どもの脳卒中は新生児期から小児期まで起こり、原因として心疾患、動脈症、血栓性素因、鎌状赤血球症、全身性疾患などを系統的に評価する必要があると整理されています。

限界注記:原因、年齢、損傷部位、治療経過、発達段階によって症状は大きく異なります。この記事は診断・治療の代替ではありません。診断、薬、手術、再発予防は主治医の判断に従ってください。出典:Ferriero DM, et al. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.

子どもと大人の脳卒中の違い

03
Cause Map

原因マップ:脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常だけではありません。

子どもの脳卒中の原因は、脳梗塞と脳出血で重なる部分もあれば、違う部分もあります。保護者の方には、まず「どのグループの原因なのか」を整理しておくと理解しやすくなります。

原因のグループ 主に関わるタイプ 保護者が知っておきたい見方
脳動静脈奇形 主に脳出血・くも膜下出血 出血した場所によって、片麻痺、視野、感覚、言葉、てんかん後の疲労が変わる
血管の壁の異常・動脈症 主に脳梗塞 もやもや病、巣状脳動脈症、動脈解離など。症状が一時的に見えることもある
血管炎・感染後の変化 主に脳梗塞 感染や炎症のあとに血管が狭くなり、時間差で症状が出ることがある
凝固異常・血栓性素因 脳梗塞・脳静脈洞血栓症 血液が固まりやすい背景。治療や薬の判断は主治医の領域
心臓の病気 主に脳梗塞 心臓から血のかたまりが脳へ移動することがある。循環器との連携が大切

このように、原因のグループによって、検査、治療、再発予防の考え方は変わります。一方で、リハビリの現場では「その原因だから同じ練習」という単純な決め方はしません。原因を理解したうえで、脳のどの場所が影響を受け、いま何に困っているかを見ていきます。

子どもの脳卒中の原因マップ

04
Cerebral AVM

脳動静脈奇形:小児の脳出血で知っておきたい原因。

脳動静脈奇形は、脳の中で動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながっている状態です。異常な血管のかたまりをナイダスと呼びます。血液の流れが通常と違うため、破れると脳出血やくも膜下出血の原因になります。

小児慢性特定疾病情報センターでは、脳動静脈奇形について、出血で発症する例、てんかん発作で発症する例、頭痛や局所症状で見つかる例、画像で偶然見つかる例があると整理しています。保護者にとって重要なのは、出血した場所によって、生活上の困りごとが変わるという点です。

How It Appears
同じ「脳動静脈奇形」でも、見える症状は違います。

運動野や内包に近い出血では、手足の麻痺が目立ちやすくなります。感覚野に近い場合は、触った感じや手足の位置のわかりにくさが残ることがあります。視覚に関わる場所では、見えている範囲や目線の使い方が変わることもあります。

そのためリハビリでは、筋力だけでなく、感覚、視線、姿勢、バランス、疲れやすさ、学校生活での困りごとを組み合わせて見ます。

脳動静脈奇形とは

05
Vasculitis And Coagulation

血管炎・感染後の変化・凝固異常をどう考えるか。

血管炎や感染後の血管変化では、脳の血管が狭くなったり、血流が不安定になったりします。症状が一時的に見えたり、時間差で現れたりすることもあります。突然の片側の脱力、顔のゆがみ、言葉の出にくさ、けいれん、意識の変化がある場合は、症状が戻ったように見えても医療機関へ相談してください。

凝固異常や血栓性素因は、血液が固まりやすい背景を指します。プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンなどの不足や機能低下が関わることがあります。薬の調整、抗凝固療法、検査の頻度、再発予防は主治医の領域です。リハビリでは、医療上の注意点を確認したうえで、活動量、疲労、転倒、学校での安全を見ていきます。

Safety First
リハビリより先に医療へつなぐサイン

急な片麻痺、顔色や呼吸の異常、意識がぼんやりする、けいれん様の動き、強い頭痛、繰り返す嘔吐、哺乳不良、突然言葉が出ない、歩けていた子が急に歩けない。こうした変化は医療優先です。夜間や休日で判断に迷う場合も、地域の救急相談や医療機関へ相談してください。

06
STROKE LAB Perspective

STROKE LABの視点:原因名より「どの動きに出ているか」を見る。

同じ「子どもの脳卒中」でも、脳動静脈奇形による出血、血管炎による脳梗塞、凝固異常による血栓、心疾患に伴う塞栓では、医療上の管理が異なります。しかし、リハビリで大切なのは、原因名だけで練習を決めないことです。

STROKE LABでは、原因疾患、損傷部位、出やすい症状、現在の動作をつなげて見ます。手が使いにくいのは筋力だけの問題なのか、感覚が入りにくいのか、視線や体幹の向きが崩れているのか、疲労や注意の使い方が影響しているのか。ここを丁寧に見分けることで、家庭や学校で続けられる支援に変えやすくなります。リハビリ場面

多職種連携とゴール設定

07
What We Work On

専門リハで取り組めること。

Bridge
診断・治療・薬・手術・再発予防は主治医の領域です。STROKE LABは、その方針を尊重しながら、生活と動きの側から併走します。
What We Work On — At STROKE LAB
原因疾患を、動きと生活に翻訳します。

小児脳卒中後のリハビリでは、原因名を知るだけでなく、今のお子さんに必要な支援へつなげることが重要です。STROKE LABでは、以下の3本柱で評価と介入を組み立てます。

1. 原因と損傷部位を踏まえた動作分析

脳動静脈奇形、血管炎、凝固異常、心疾患など、原因が違っても、動作の中で何が起きているかを見ます。手足、体幹、視線、感覚、姿勢の連鎖を観察します。

2. 片麻痺・感覚・視野・バランスの組み合わせを見る

片麻痺だけでなく、触った感じのわかりにくさ、見え方、注意、疲れやすさが生活に影響することがあります。運動だけに閉じず、学習や学校生活も含めて見ます。

3. 家庭・学校で続けられる関わりに翻訳する

医療上の注意点を守りながら、遊び、学習、体育、移動、持ち物、休憩の取り方へ落とし込みます。保護者と学校が同じ見方で関われるよう、言葉をそろえます。

効果や経過には個人差があり、発達や治療経過によって変動します。診断、投薬、ボツリヌス療法、手術、抗凝固療法、再発予防などの医学的判断は主治医が行います。私たちは、その方針を尊重しながら、生活と動きの側から併走します。

Evidence For Rehabilitation

小児の片側性運動障害では、使いにくい手を引き出す練習、両手を使う練習、生活目標に沿った課題練習が重要とされています。原因疾患が何であっても、目標と動作を具体化して、家庭や学校へつなげる視点が大切です。

限界注記:このエビデンスは主に一側性脳性麻痺や小児運動障害の上肢介入研究に基づきます。小児脳卒中の原因疾患すべてに同じ効果を保証するものではありません。出典:Sakzewski L, et al. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204. Novak I, et al. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.

原因名だけではなく、いまの動きと生活を一緒に整理したい方へ。

STROKE LABでは、主治医の方針を尊重しながら、お子さんの動作・姿勢・手の使い方・学校生活を専門的に評価します。

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08
FAQ

よくある質問。

Q. 子どもの脳梗塞や脳出血は、何が原因で起こるのですか?

大人では動脈硬化が関わることが多い一方、子どもでは血管の壁の異常、脳動静脈奇形、もやもや病、血管炎、血液が固まりやすい体質、心臓の病気、動脈解離などが関わることがあります。原因が一つではなく、複数重なることもあります。原因の診断や再発予防は医療機関で行います。

Q. 脳動静脈奇形とは何ですか?

脳の中で、動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながっている血管の形の異常です。異常な血管のかたまりをナイダスと呼び、破れると脳出血やくも膜下出血の原因になります。けいれん発作や頭痛で見つかることもあります。治療方針は部位や大きさ、出血歴などを踏まえて主治医が判断します。

Q. 血管炎や感染のあとに脳梗塞が起こることはありますか?

あります。感染や炎症のあとに脳の血管が狭くなったり、血流が不安定になったりして、脳梗塞につながることがあります。水痘などの感染後に問題になることもあります。手足の脱力、顔のゆがみ、言葉の出にくさ、けいれん、意識の変化がある場合は、症状が戻っても自己判断せず医療機関へ相談してください。

Q. 凝固異常と言われました。リハビリでは何が変わりますか?

凝固異常そのものの治療や薬の調整は主治医の領域です。リハビリでは、運動量、疲労、転倒リスク、学校生活での安全、麻痺や感覚障害の出方を確認しながら、できる活動を増やしていきます。医療上の注意点を共有したうえで、家庭や学校で続けやすい関わりに翻訳することが大切です。

Q. 原因によって後遺症や回復の見通しは変わりますか?

変わることがあります。ただし原因名だけで決まるのではなく、傷ついた脳の場所、範囲、年齢、治療経過、発達段階、生活環境によって見え方が変わります。そのため、原因名を知ることに加えて、手、足、姿勢、感覚、視野、注意、疲れやすさが生活の中でどう出ているかを継続して見ることが大切です。

Q. STROKE LABでは、原因疾患に対して何を見ますか?

診断や薬、手術、再発予防は主治医の領域です。STROKE LABでは、その方針を尊重しながら、原因疾患、損傷部位、現在の動作をつなげて見ます。片麻痺、感覚、視野、バランス、疲労、学校生活での困りごとを確認し、家庭や学校で続けられる練習や環境調整に落とし込みます。
09
STROKE LAB

STROKE LABの小児リハ。

原因名だけで終わらせず、
お子さんの「いまの動き」を一緒に見ます。

STROKE LABでは、脳卒中後のお子さんに対して、主治医の診断や治療方針を尊重しながら、動作分析、姿勢、手の使い方、歩行、学校生活の困りごとを評価します。医療・健診が先、私たちは併走です。

Book
脳の機能解剖から、動きの回復を考える。

脳のどの場所が、どの動きや生活機能に関わるのか。STROKE LABでは、書籍で整理している機能解剖の視点を、臨床の評価と介入へつなげています。

原因疾患と運動の見方を、専門家と一緒に整理したい方へ。

主治医の方針を尊重しながら、リハビリで見えること、家庭でできること、学校へ伝えることを整理します。

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References
  1. Ferriero DM, Fullerton HJ, Bernard TJ, et al. Management of Stroke in Neonates and Children: A Scientific Statement From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.
  2. 小児慢性特定疾病情報センター. 脳動静脈奇形. 更新日:2019年7月1日. 文責:日本小児神経学会.
  3. Sakzewski L, Ziviani J, Boyd RN. Efficacy of upper limb therapies for unilateral cerebral palsy: a meta-analysis. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204.
  4. Novak I, Morgan C, Fahey M, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children With Cerebral Palsy. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.
  5. 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.
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