子どもの脳卒中の原因|脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常を知る
子どもの脳卒中の原因|脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常を知る
「原因がはっきりしないと言われた」「脳動静脈奇形とは何ですか」「血液が固まりやすい体質とリハビリは関係しますか」——子どもの脳卒中では、保護者の不安が原因名に集中しやすくなります。けれど大切なのは、病名を並べることだけではありません。原因疾患、傷ついた脳の場所、今の動き、生活での困りごとをつなげて見ることが、リハビリと学校生活の見通しにつながります。

「なぜ起きたのか」を知りたい。その不安は自然です。
「脳動静脈奇形と言われた」「血管炎の可能性がある」「凝固異常の検査をすると言われた」。診断後の説明では、聞き慣れない言葉が一度に出てきます。保護者の方が、原因を調べたくなるのは当然です。
ただ、原因名だけでは、お子さんのこれからの動きや生活は決まりません。大切なのは、原因、損傷部位、現在の動作をつなげて見続けることです。
子どもの脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血があります。原因は、大人でよく聞く動脈硬化とは異なります。血管の形、血管の壁、炎症、心臓、血液の固まりやすさなど、いくつもの要因が関わります。
この記事では、保護者の方が混乱しやすい原因疾患を、医学的な分類だけでなく、リハビリで見える生活上の困りごとへつなげて整理します。急な片麻痺、顔のゆがみ、呼吸や意識の異常、けいれん様の動き、強い頭痛や繰り返す嘔吐、哺乳不良がある場合は、リハビリ相談より先に医療機関へ相談してください。
子どもの脳卒中は、大人と原因が違います。
大人の脳梗塞では、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙などによる動脈硬化が背景にあることが多くあります。しかし、子どもではこの説明だけでは不十分です。小児では、血管の壁の異常、心疾患、血液が固まりやすい体質、感染や炎症のあと、外傷に伴う動脈解離などが関わります。
また、原因が一つに決まらないこともあります。たとえば、もともと血管が細くなりやすい背景に、脱水、感染、手術、長時間の安静、血液の固まりやすさなどが重なることもあります。だからこそ、原因の精査は主治医チームが行い、リハビリでは医療情報を共有しながら安全に進めます。
AHA/ASAの小児脳卒中ステートメントでは、子どもの脳卒中は新生児期から小児期まで起こり、原因として心疾患、動脈症、血栓性素因、鎌状赤血球症、全身性疾患などを系統的に評価する必要があると整理されています。
限界注記:原因、年齢、損傷部位、治療経過、発達段階によって症状は大きく異なります。この記事は診断・治療の代替ではありません。診断、薬、手術、再発予防は主治医の判断に従ってください。出典:Ferriero DM, et al. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.

原因マップ:脳動静脈奇形・血管炎・凝固異常だけではありません。
子どもの脳卒中の原因は、脳梗塞と脳出血で重なる部分もあれば、違う部分もあります。保護者の方には、まず「どのグループの原因なのか」を整理しておくと理解しやすくなります。
| 原因のグループ | 主に関わるタイプ | 保護者が知っておきたい見方 |
|---|---|---|
| 脳動静脈奇形 | 主に脳出血・くも膜下出血 | 出血した場所によって、片麻痺、視野、感覚、言葉、てんかん後の疲労が変わる |
| 血管の壁の異常・動脈症 | 主に脳梗塞 | もやもや病、巣状脳動脈症、動脈解離など。症状が一時的に見えることもある |
| 血管炎・感染後の変化 | 主に脳梗塞 | 感染や炎症のあとに血管が狭くなり、時間差で症状が出ることがある |
| 凝固異常・血栓性素因 | 脳梗塞・脳静脈洞血栓症 | 血液が固まりやすい背景。治療や薬の判断は主治医の領域 |
| 心臓の病気 | 主に脳梗塞 | 心臓から血のかたまりが脳へ移動することがある。循環器との連携が大切 |
このように、原因のグループによって、検査、治療、再発予防の考え方は変わります。一方で、リハビリの現場では「その原因だから同じ練習」という単純な決め方はしません。原因を理解したうえで、脳のどの場所が影響を受け、いま何に困っているかを見ていきます。

脳動静脈奇形:小児の脳出血で知っておきたい原因。
脳動静脈奇形は、脳の中で動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながっている状態です。異常な血管のかたまりをナイダスと呼びます。血液の流れが通常と違うため、破れると脳出血やくも膜下出血の原因になります。
小児慢性特定疾病情報センターでは、脳動静脈奇形について、出血で発症する例、てんかん発作で発症する例、頭痛や局所症状で見つかる例、画像で偶然見つかる例があると整理しています。保護者にとって重要なのは、出血した場所によって、生活上の困りごとが変わるという点です。
運動野や内包に近い出血では、手足の麻痺が目立ちやすくなります。感覚野に近い場合は、触った感じや手足の位置のわかりにくさが残ることがあります。視覚に関わる場所では、見えている範囲や目線の使い方が変わることもあります。
そのためリハビリでは、筋力だけでなく、感覚、視線、姿勢、バランス、疲れやすさ、学校生活での困りごとを組み合わせて見ます。

血管炎・感染後の変化・凝固異常をどう考えるか。
血管炎や感染後の血管変化では、脳の血管が狭くなったり、血流が不安定になったりします。症状が一時的に見えたり、時間差で現れたりすることもあります。突然の片側の脱力、顔のゆがみ、言葉の出にくさ、けいれん、意識の変化がある場合は、症状が戻ったように見えても医療機関へ相談してください。
凝固異常や血栓性素因は、血液が固まりやすい背景を指します。プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンなどの不足や機能低下が関わることがあります。薬の調整、抗凝固療法、検査の頻度、再発予防は主治医の領域です。リハビリでは、医療上の注意点を確認したうえで、活動量、疲労、転倒、学校での安全を見ていきます。
急な片麻痺、顔色や呼吸の異常、意識がぼんやりする、けいれん様の動き、強い頭痛、繰り返す嘔吐、哺乳不良、突然言葉が出ない、歩けていた子が急に歩けない。こうした変化は医療優先です。夜間や休日で判断に迷う場合も、地域の救急相談や医療機関へ相談してください。
STROKE LABの視点:原因名より「どの動きに出ているか」を見る。
同じ「子どもの脳卒中」でも、脳動静脈奇形による出血、血管炎による脳梗塞、凝固異常による血栓、心疾患に伴う塞栓では、医療上の管理が異なります。しかし、リハビリで大切なのは、原因名だけで練習を決めないことです。
STROKE LABでは、原因疾患、損傷部位、出やすい症状、現在の動作をつなげて見ます。手が使いにくいのは筋力だけの問題なのか、感覚が入りにくいのか、視線や体幹の向きが崩れているのか、疲労や注意の使い方が影響しているのか。ここを丁寧に見分けることで、家庭や学校で続けられる支援に変えやすくなります。

専門リハで取り組めること。
小児脳卒中後のリハビリでは、原因名を知るだけでなく、今のお子さんに必要な支援へつなげることが重要です。STROKE LABでは、以下の3本柱で評価と介入を組み立てます。
脳動静脈奇形、血管炎、凝固異常、心疾患など、原因が違っても、動作の中で何が起きているかを見ます。手足、体幹、視線、感覚、姿勢の連鎖を観察します。
片麻痺だけでなく、触った感じのわかりにくさ、見え方、注意、疲れやすさが生活に影響することがあります。運動だけに閉じず、学習や学校生活も含めて見ます。
医療上の注意点を守りながら、遊び、学習、体育、移動、持ち物、休憩の取り方へ落とし込みます。保護者と学校が同じ見方で関われるよう、言葉をそろえます。
効果や経過には個人差があり、発達や治療経過によって変動します。診断、投薬、ボツリヌス療法、手術、抗凝固療法、再発予防などの医学的判断は主治医が行います。私たちは、その方針を尊重しながら、生活と動きの側から併走します。
小児の片側性運動障害では、使いにくい手を引き出す練習、両手を使う練習、生活目標に沿った課題練習が重要とされています。原因疾患が何であっても、目標と動作を具体化して、家庭や学校へつなげる視点が大切です。
限界注記:このエビデンスは主に一側性脳性麻痺や小児運動障害の上肢介入研究に基づきます。小児脳卒中の原因疾患すべてに同じ効果を保証するものではありません。出典:Sakzewski L, et al. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204. Novak I, et al. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.
STROKE LABでは、主治医の方針を尊重しながら、お子さんの動作・姿勢・手の使い方・学校生活を専門的に評価します。
よくある質問。
Q. 子どもの脳梗塞や脳出血は、何が原因で起こるのですか?
Q. 脳動静脈奇形とは何ですか?
Q. 血管炎や感染のあとに脳梗塞が起こることはありますか?
Q. 凝固異常と言われました。リハビリでは何が変わりますか?
Q. 原因によって後遺症や回復の見通しは変わりますか?
Q. STROKE LABでは、原因疾患に対して何を見ますか?
STROKE LABの小児リハ。

お子さんの「いまの動き」を一緒に見ます。
STROKE LABでは、脳卒中後のお子さんに対して、主治医の診断や治療方針を尊重しながら、動作分析、姿勢、手の使い方、歩行、学校生活の困りごとを評価します。医療・健診が先、私たちは併走です。

脳のどの場所が、どの動きや生活機能に関わるのか。STROKE LABでは、書籍で整理している機能解剖の視点を、臨床の評価と介入へつなげています。
- Ferriero DM, Fullerton HJ, Bernard TJ, et al. Management of Stroke in Neonates and Children: A Scientific Statement From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.
- 小児慢性特定疾病情報センター. 脳動静脈奇形. 更新日:2019年7月1日. 文責:日本小児神経学会.
- Sakzewski L, Ziviani J, Boyd RN. Efficacy of upper limb therapies for unilateral cerebral palsy: a meta-analysis. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204.
- Novak I, Morgan C, Fahey M, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children With Cerebral Palsy. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)