習い事(体操・スイミング)が続かない子|「向いてない」の前に見ること
習い事(体操・スイミング)が続かない子|「向いてない」の前に見ること
「体操教室に行く前になると泣く」「スイミングだけは毎回嫌がる」——その背景は、単なる気分や根性の問題ではないかもしれません。姿勢・感覚・運動計画・不安・集団のペースを分けて見ると、続かない理由と支援の方向性が見えてきます。

こんな場面で、悩みます。
体操教室に入ると固まってしまう。スイミングの前日は「お腹が痛い」と言う。最初は楽しみにしていたのに、数回通っただけで行き渋りが強くなった。
周りの子は楽しそうに参加しているのに、わが子だけ泣いているように見えると、保護者の方は「この子には向いていないのかな」「続けさせるべきか、やめるべきか」と悩みやすくなります。
習い事が続かないとき、よく聞かれる言葉があります。「うちの子には向いていなかったのかもしれません」。もちろん、好き・嫌い、相性、先生との関係、教室の雰囲気は大切です。しかし、体操やスイミングのような運動系の習い事では、子どもの体の使い方や感覚の受け取り方が、続けやすさに大きく関わります。
特に園児〜小学生の時期は、体幹、バランス、ジャンプ、左右の協調、目と体の連動、指示理解、集団の中での見通しなどが発達の途中です。できないことが続くと、本人は「楽しくない」ではなく、怖い・分からない・体が思うように動かないと感じていることがあります。
「向いてない」の前に見ること。
運動系の習い事は、子どもの発達にとってよい経験になります。走る、跳ぶ、回る、浮く、潜る、真似する、順番を待つ、先生の指示を聞く。こうした経験は、体だけでなく、注意、見通し、社会性、自信にもつながります。
一方で、習い事は「発達に合った段階」よりも先に進みやすい環境でもあります。体操教室では、前転、鉄棒、跳び箱、片足バランスなどが連続して求められます。スイミングでは、水に入る、顔をつける、浮く、息を止める、手足をリズムよく動かすことが同時に求められます。
大人から見ると簡単そうな活動でも、子どもにとっては、姿勢を保つ、揺れに耐える、順番を覚える、先生の声を聞く、周囲と同じペースで動く、失敗しても再挑戦する、という複数の課題が重なっています。
体操でつまずく理由。
体操教室で求められる動きは、見た目以上に複雑です。前転では、頭を入れる、背中を丸める、手で床を押す、体重を前へ移す、回転の怖さに耐える必要があります。鉄棒では、握る、腕で支える、体を引きつける、逆さになる感覚を受け入れる必要があります。

| 活動 | 必要な力 | つまずきやすい様子 |
|---|---|---|
| 前転・マット運動 | 背中を丸める、手で床を押す、回転感覚を受け入れる | 頭を入れられない、怖くて止まる、回った後に泣く |
| 鉄棒 | 握る、肩で支える、体を引きつける、逆さの感覚 | すぐ手を離す、ぶら下がれない、逆さを強く怖がる |
| 跳び箱・ジャンプ | 助走、踏み切り、両手支持、タイミング | タイミングが合わない、足が止まる、手をつけない |
| 平均台・片足立ち | 体幹の安定、足裏感覚、視線、バランス反応 | ふらつく、下ばかり見る、すぐ降りたがる |
前転や跳び箱をすぐ練習するよりも、四つ這い、動物歩き、手押し車、線の上歩き、低い段差ジャンプ、転がる遊びなどで、体幹・肩・股関節・バランスの土台を育てる方が近道になる場合があります。
スイミングでつまずく理由。
スイミングが続かない子の中には、「泳げない」以前の段階でつまずいている子がいます。水の冷たさ、音の反響、塩素のにおい、顔に水がかかる感覚、耳に水が入る感覚、足が床から離れる不安。これらは、大人が思う以上に強いストレスになることがあります。

| 水泳の場面 | 背景として考えたいこと | 支援の方向性 |
|---|---|---|
| 顔をつけられない | 水が顔にかかる感覚、息を止める不安 | 手で水を触る、口で泡を吹く、頬だけ濡らす |
| 浮くのを怖がる | 床から足が離れる感覚、体の位置が分からない不安 | 壁を持つ、補助具を使う、浅い水深から始める |
| バタ足が続かない | 体幹の安定、股関節の動き、リズムの維持 | 陸上で足を交互に動かす練習、水中では短い距離から |
| 教室に入る前から嫌がる | 過去の怖い経験、音・におい・更衣室の負担 | 見学、短時間参加、先生との事前共有で安心を作る |
家庭や施設で水遊びを行う場合は、必ず大人がそばで見守り、年齢・発達段階に合った安全な環境で行ってください。怖さが強い子に無理やり顔をつけさせることは、苦手意識を強める可能性があります。

— 習い事で困る背景を、動作と感覚から整理します
STROKE LABでは、体操やスイミングでつまずく背景を、姿勢・バランス・感覚・運動計画・不安の観点から評価します。習い事を続けるかどうかの前に、お子さんに合った運動経験を一緒に整理します。
続かない理由を、5つに分解する。
習い事が続かないときは、「嫌い」「甘え」「根性がない」といった言葉でまとめるのではなく、次の5つに分けて見ると整理しやすくなります。

座る・立つ・跳ぶ・浮く・回るには、体幹で姿勢を保つ力が必要です。土台が不安定だと、手足を動かす前に疲れたり怖くなったりします。
揺れ、回転、水、音、におい、床の感触、服の濡れた感覚などが苦手だと、活動そのものより環境がつらくなります。
「どこに手をつくか」「どの順番で動くか」「次に何をするか」を頭の中で組み立てる力です。見本を見ても真似できない子は、ここでつまずいていることがあります。
一度怖い思いをした、笑われた、できないまま急かされた経験があると、体が固まりやすくなります。心理的な安全は、運動学習の土台です。
先生の説明が速い、人数が多い、待ち時間が長い、周囲の音が大きいなど、環境が合わないことで参加しづらくなることがあります。
観察ポイント。
続けるか、休むか、教室を変えるかを考える前に、まずはお子さんの様子を具体的に観察してみましょう。大切なのは、「嫌がる」ではなく、どの場面で嫌がるのかを分けることです。
| 観察する場面 | 見たいポイント | 考えられる支援 |
|---|---|---|
| 出発前 | 前日から不安か、直前に不安か、体調不良を訴えるか | 見通しカード、予定の確認、見学だけの日を作る |
| 教室に入る瞬間 | 音、人の多さ、先生との距離、更衣室やプールのにおい | 少人数、静かな時間帯、先生との事前あいさつ |
| 活動中 | どの課題で止まるか、怖がるか、順番が分からないか | 課題を小さく分ける、先生に合図や補助を依頼する |
| 帰宅後 | 疲れすぎるか、荒れるか、達成感があるか | 時間・頻度・レベルを下げる、成功した点を言葉にする |
DCD・発達特性との関係。
体操やスイミングが続かない背景には、発達性協調運動症、いわゆるDCDが関係していることがあります。DCDは、知的な理解とは別に、体の動かし方や新しい運動技能の学習が難しく、遊びや学校生活、スポーツ参加に影響が出る状態です。
ただし、習い事が続かないことだけでDCDや発達障害と判断することはできません。教室の雰囲気、先生との相性、経験不足、怖い体験、感覚の過敏さ、不安の強さなど、さまざまな要因が関係します。必要なのは、診断名を探すことではなく、日常で何に困っているのかを具体的にすることです。
毎週「できなかった」「また泣いた」「自分だけ違う」と感じ続けると、子どもは運動そのものを避けやすくなります。運動経験は大切ですが、失敗体験だけが積み重なる形は避けたいところです。
家庭でできる準備。
家庭でできることは、習い事そのものを完璧に練習することではありません。鉄棒、跳び箱、泳ぎをそのまま反復するよりも、その前に必要な体の土台や感覚の慣れを、遊びの中で経験することが大切です。

体操が苦手な子には、四つ這い、クマ歩き、カエルジャンプ、線の上歩き、布団の上で転がる遊びなどがおすすめです。これらは体幹・肩・股関節・バランスの土台を育てます。
スイミングが苦手な子には、まず水に慣れる段階を小さくします。手で水を触る、頬に水をつける、口で泡を吹く、シャワーの音に慣れるなど、泳ぐ前の準備が大切です。
どちらの場合も、「できた・できない」ではなく、「今日はここまでできた」と工程を細かく分けることが、次の挑戦につながります。
「練習しよう」よりも、「動物になって歩こう」「線から落ちないゲームにしよう」の方が、子どもは参加しやすくなります。
高い平均台ではなく床の線、深いプールではなく足だけ、前転ではなく横に転がるなど、成功しやすい入口を作ります。
「今日は見学→足だけ→終わり」など、最初と最後が分かると不安が下がります。写真や簡単な絵で予定を見せるのも有効です。
「プールに入れたね」「マットに手をつけたね」「先生の話を聞けたね」と、行動を具体的に認めることで、次の挑戦につながります。
習い事の選び方・変え方。
習い事を続けるかやめるかは、簡単に決められるものではありません。大切なのは、「やめる=逃げる」「続ける=頑張る」と考えないことです。子どもに合った環境に変えることも、立派な支援です。
同じ体操やスイミングでも、少人数、個別、見学可能、先生がゆっくり説明してくれる、できた部分を認めてくれる、難易度を調整してくれる教室では、子どもの参加しやすさが大きく変わります。
| 状態 | 考えたい選択 | 大切な視点 |
|---|---|---|
| 少し嫌がるが、終わると達成感がある | 頻度や課題を調整しながら継続 | 成功体験を言葉にして残す |
| 毎回強く泣く・眠れないほど不安 | 一時休止、見学、個別への変更 | 不安が強い状態での反復は避ける |
| 集団のペースだけが合わない | 少人数・個別・ゆっくり進む教室へ | 能力ではなく環境の相性を見る |
| 体を動かすこと自体は好き | 外遊び、親子運動、リハ的な運動遊びへ | 競争よりも楽しく体を使う経験を優先 |
相談の目安。
習い事が続かないこと自体は、必ずしも問題ではありません。子どもにも相性があります。ただし、複数の活動で強く困っている場合や、日常生活にも影響している場合は、専門家に相談することで、子どもに合った運動経験を見つけやすくなります。
相談先としては、小児科、自治体の発達相談、園や学校の先生、必要に応じて理学療法士・作業療法士などが挙げられます。相談の際には、どの習い事が続かなかったかだけでなく、どの場面で嫌がったか、どの活動なら楽しめたかをメモしておくと、支援方針が立てやすくなります。
よくある質問と、STROKE LABの支援。
向いていないと決める前に、姿勢、バランス、感覚、運動の順序立て、集団のペース、不安の強さなどを分けて見ることが大切です。環境や難易度を調整すると、参加しやすくなる子もいます。
強い不安や失敗体験が続いている場合は、一度休むことも選択肢です。ただし、ただやめるだけではなく、何が難しかったのかを整理し、別の形で体を使う経験を残すことが大切です。
水に入る前に、顔に水がかかる、耳に水が入る、浮く感覚、音の反響など、どの感覚が苦手かを観察します。いきなり泳がせるのではなく、シャワー、足だけ、口で泡を吹くなど段階を小さくします。
鉄棒や跳び箱をすぐ練習するより、四つ這い、動物歩き、片足立ち、線の上歩き、ジャンプ、転がる遊びなどで、体幹・肩・股関節・バランスの土台を育てることが役立ちます。
姿勢、体幹、肩・股関節、バランス、足裏感覚、前庭感覚、運動計画、手先の使い方、生活場面での困りごとを確認します。習い事そのものだけでなく、家庭や園・学校での参加しやすさも含めて支援方法を考えます。
STROKE LABは、脳卒中をはじめとする神経リハビリで培った動作分析の視点をもとに、小児の姿勢・運動・生活動作の支援も行っています。運動の習い事でつまずく場面も、体の土台と感覚の視点から見ることで、お子さんに合った関わり方が見つかりやすくなります。

次の一歩を選びやすくなります。

体操やスイミングが続かないとき、子ども本人も「またできなかった」と感じ、挑戦する前から不安になってしまうことがあります。
私たちは、習い事を続けるかどうかだけでなく、その子が安心して体を使える経験をどう増やすかを大切にしています。
お子さんの運動の苦手さや習い事での困りごとがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
参考と注意書き。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。習い事が続かない理由は、お子さんの発達、環境、心理状態、教室との相性によって異なります。強い不安、生活上の困りごと、運動発達の遅れが気になる場合は、小児科、発達相談、理学療法士・作業療法士などの専門職にご相談ください。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)