1歳前後の歩く準備|立つ・しゃがむ・一歩が出る前に見るポイント
最初の一歩は、立ち上がりや方向転換など複数の動きが積み重なった先に現れます
「1歳になったのに、まだ歩きません」「つかまり立ちはするけれど、一歩が出ません」。そんなとき、歩けるか・歩けないかだけを見ると、わが子の育っている力が見えにくくなります。最初の一歩の前には、立ち上がる、しゃがむ、戻る、左右へ体重を移す、支え方を変えるという準備があります。一歩を急がせるのではなく、今どの動きが増えているかを一緒に整理します。

1歳でまだ歩かないのは、遅いのでしょうか。
誕生日を迎える頃、同じ月齢の子が歩く姿を見ると、「何か練習が足りないのでは」と焦ることがあります。しかし、歩き始める時期には幅があり、1歳の時点でまだ独歩していない子どもは珍しくありません。
大切なのは、歩数だけを比べることではなく、立つ姿勢の中で、動きの選択肢が増えているかを見ることです。
こども家庭庁の令和5年乳幼児身体発育調査では、ひとり歩きができる割合は、11〜12か月未満で30.9%、1歳0〜1か月未満で47.9%、1歳1〜2か月未満で55.3%、1歳2〜3か月未満で83.0%でした。90%以上ができると回答した時期は、1歳4〜5か月未満です。これは集団の通過率であり、個々の子どもの締め切りではありません。
WHOの多国間研究でも、健康な子どものひとり歩きは8.2〜17.6か月という広い範囲で観察されました。早いほどよい、遅いほど問題という意味ではなく、発達にはもともと幅があることを示しています。
| 年・月齢 | ひとり歩き通過率 | 受け止め方 |
|---|---|---|
| 11〜12か月未満 | 30.9% | 歩いていない子の方が多い時期です |
| 1歳0〜1か月未満 | 47.9% | 約半数はまだ独歩前です |
| 1歳1〜2か月未満 | 55.3% | 獲得時期には引き続き幅があります |
| 1歳2〜3か月未満 | 83.0% | 独歩が増える一方、まだ個人差があります |
| 1歳4〜5か月未満 | 96.9% | 相談の目安を考える時期の一つです |
出典:こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査結果の概要」。通過率は診断基準ではなく、集団の傾向です。
最初の一歩は、いくつもの準備が重なった先に出ます。
歩行は、足を前へ出すだけの動作ではありません。床から立位へ移り、重心を足の上へ乗せ、必要に応じて手の支えを減らし、片方の足で体を支えながら、もう片方の足を動かします。さらに、揺れた体を立て直し、次の一歩へつなげます。
そのため、歩行前の観察では「何秒立てるか」だけでなく、姿勢を変えながら、支え方を選び直せるかが大切です。
両手で引き上がるだけでなく、片膝立ちやしゃがみを経て足の上へ体を移せるか
両手、片手、指先、体幹の接触など、状況に応じて支えを軽くできるか
体をゆっくり下げ、足の上に重心を残し、支えを使いながら戻れるか
玩具の位置に合わせて左右の足へ交互に体を預けられるか
手を離した瞬間ではなく、手を伸ばす、振り向く、方向を変える場面で戻れるか

「立てる」より、立位の中で何ができるかを見ます。
床から立つとき
家具へ両手をかけ、腕で体を引き上げることから始まる子もいます。次第に片膝を立てる、足裏を床へ置く、お尻を高くするなど、下半身を使う割合が増えてきます。左右どちらの脚を前にしても同じである必要はありませんが、いつも同じ側しか使わない、反対脚へ体重をかけると崩れる場合は、他の姿勢でも左右差が続くかを見ます。
立位で手を使うとき
両手で家具を強く握っていると、玩具を持つための手が空きません。最初は片手を離せなくても、前腕を家具に預ける、指先だけ触れる、片手で玩具を持つなど、支え方の種類が増えていれば準備が進んでいます。手を離した秒数より、支えを軽くしたときに足と体幹で姿勢を受け止められるかを見ます。
しゃがむとき
しゃがみは、床の玩具を取るための生活動作であり、歩行前の重要な姿勢変換です。股関節と膝を曲げ、足首の上で体を前後に調整しながら、ゆっくり高さを下げます。最初は途中で尻もちをついたり、両手を家具へ戻したりして構いません。深さより、下がる途中を調整し、再び立てる方法が増えているかを見ます。
一歩を出す前に、反対側の足で支える必要があります。
保護者は、前へ出ない足に注目しやすいものです。しかし、右足を動かすためには、先に左足へ体重を預け、右足を床から軽くする必要があります。つまり、一歩が出ないときは、動かす足だけでなく、支える側で体を受け止められるかが重要です。
家具に沿った横移動ではできても、正面にある別の家具へ移ると止まることがあります。横移動と前方への一歩では、視線、手の届く距離、重心を支持面の外へ移す量が違うためです。最初から大きな隙間を越えさせず、支えが近く、本人が「届きそう」と感じられる条件から始めます。
| 見える場面 | 先に見たいこと | 小さな変化 |
|---|---|---|
| 足が前へ出ない | 反対脚へ体重を移せるか | 片足が一瞬軽くなる、足の位置を変える |
| 家具から離れられない | 握る力を少し軽くできるか | 指先だけ触れる、片手で玩具を持つ |
| 一瞬立てるが座り込む | 揺れたあとに足を踏み替えられるか | 足幅を変える、家具へ手を戻す |
| 片方向だけ伝い歩きする | 左右それぞれの支持脚と視線 | 反対方向へ体を向ける、玩具に手を伸ばす |
研究でわかっていること。
WHOの多国間研究では、健康な子どものひとり歩きの1〜99パーセンタイルは8.2〜17.6か月でした。この範囲は診断の線引きではなく、正常な個人差を記述したものです。
CDCでは、1歳で「つかまり立ち」「家具につかまって歩く」、15か月で「数歩ひとりで歩く」、18か月で「何にもつかまらず歩く」を、保護者と医療者が共有する目安として示しています。チェックリストは標準化された発達検査の代わりではありません。
運動発達研究では、現在の身体能力、床や家具などの環境、玩具へ手を伸ばすといった課題が、子どもの動き方をつくると考えられています。家庭では歩数を増やすより、安全に多様な動きを試せる条件が重要です。
家庭では、歩かせるより「自分で試せる場所」をつくります。
体重をかけても倒れず、角や段差が少ない低い家具を選びます。キャスター付き家具や軽い箱は固定せず使いません。
胸の高さだけでなく、腰、膝、床に近い位置へ玩具を置き、立位の中で手を伸ばす、しゃがむ、戻る動きを引き出します。
最初は手を伸ばせば次の支えに届く距離にします。成功が増えたら、数センチずつ距離や方向を変えます。
歩行前でも、はいはい、座位、膝立ち、床から立つ動きは大切です。立位だけにせず、姿勢を行き来できる遊びを残します。
避けたい関わり
| 避けたいこと | 理由 | 代わりに |
|---|---|---|
| 両手を高く引き上げて歩かせ続ける | 大人の支持が強く、本人が重心を調整する課題が小さくなる | 低い家具で立つ、横へ移る、手を伸ばす遊び |
| 転んでも何度も立たせる | 疲労や怖さが強いと、動きを試す意欲が下がる | 疲れる前に終え、成功しやすい距離へ戻す |
| つま先や足の位置を毎回大人が直す | 本人の試行錯誤より修正が中心になる | 床、玩具、家具の位置を変え、自然な反応を見る |
| 立位だけを長く練習する | 床から立つ、しゃがむ、座るという姿勢変換が減る | 床遊びと立位遊びを行き来する |

月齢の達成表ではなく、増えてくる動きの目安として見ます。
以下は、歩行前後に見られやすい動きを広い範囲で整理したものです。全員が同じ順序をたどるわけではなく、できない項目が一つあるだけで異常とは判断できません。早産で生まれたお子さんは、原則として修正月齢も考慮します。
| おおよその時期 | 増えてくる動きの例 | 結果より見たい変化 |
|---|---|---|
| 9〜12か月頃 | 床からつかまり立ち、家具に沿った横移動、膝立ち | 立ち方、支持脚、手の支え方が少しずつ増えるか |
| 10〜14か月頃 | 片手で玩具を持つ、しゃがむ、家具間を移る、短い手放し | 揺れたあとに手や足を使って立て直せるか |
| 11〜16か月頃 | 数歩の独歩、立位から座位へ戻る、方向を変える | 歩数だけでなく、止まる、戻る、別の移動を選べるか |
| 12〜18か月頃 | 独歩の安定、物を持って歩く、段差へ近づく、しゃがんで立つ | 床や場所が変わっても、速度や支え方を調整できるか |
月齢は目安です。修正月齢、体調、経験、環境によって動きの現れ方は変わります。CDCは1歳、15か月、18か月で異なる運動マイルストーンを示していますが、チェックリストは標準化された発達検査の代わりではありません。
見守りやすい変化と、相談したい変化。
つかまり立ちや家具に沿った移動が増えている
片手で玩具を持つ、支えを指先へ軽くする場面がある
しゃがむ、尻もちで座る、再び立つ方法が増えている
はいはい、座位、立位など複数の移動を自分で選べる
1歳半頃にひとり歩きがなく、歩行前の動きも長く増えていない
片脚へほとんど体重をかけない、強い左右差が複数の姿勢で続く
足へ体重をかけると痛がる、腫れ、発熱、外傷後の変化がある
体が極端に硬い・柔らかいと感じ、日常動作にも困りがある
専門評価では、「歩かない」を観察できる動きへ分けます。
専門評価の目的は、1歳で歩いていないことを診断することではありません。どの条件なら立位が安定し、どの条件で動きが止まり、何を変えると本人の試行錯誤が増えるのかを整理します。
たとえば、両手を離せない子でも、家具の高さを少し下げると片手で玩具を持てることがあります。その場合、単純に「バランスがない」とまとめず、肩の高さ、視線、骨盤の位置、足裏への荷重、怖さなど、何が支えを強く必要とさせていたかを考えます。
歩行前準備を「脚の筋力が弱い」「怖がりだから」と一つに決めると、重要な変化を見逃します。立位では、足裏の接地、膝と股関節の調整、骨盤と胸郭の位置、視線、手の支持、玩具までの距離が同時に影響します。
私たちは、条件を一つずつ変え、その場で反応を確認します。家具を数センチ低くしたとき、玩具を斜め前へ置いたとき、靴下を脱いだとき、遊び始めと疲れたあとで、しゃがみ方や支持脚がどう変わるかを比べます。
変化が出た条件を家庭の遊びへ落とし込み、一定期間後に同じ動作で再評価します。目的は訓練室で一歩を出すことではなく、家の中で玩具へ移る、床から立つ、保護者の近くへ自分で近づくなど、生活の中で選べる動きを増やすことです。
| 観察される動き | 変えて比べる条件 | 臨床仮説として整理すること | 家庭で確認する変化 |
|---|---|---|---|
| 両手を離せず玩具を取れない | 家具の高さ、玩具の方向、片手課題 | 静止保持より、体重移動後の立て直しが難しい可能性 | 立位で片手に玩具を持つ場面が増えるか |
| しゃがむとすぐ尻もちになる | 玩具の高さ、足幅、手の支持位置 | 下がる制御と足の上へ重心を残す調整を分ける | 低い玩具を取り、支えを使って戻れるか |
| 片方向へしか伝い歩きしない | 左右で同じ家具配置、視線、玩具位置 | 動かす足より、反対側の支持と体幹回旋の左右差を見る | 反対方向へ向く、手を伸ばす場面が増えるか |
| 遊び後半につま先立ちや左右差が増える | 開始時と終了時、裸足と靴下、床面 | できる・できないではなく、疲労や感覚条件で崩れる時点を見る | 休憩後に戻るか、日内で同じ変化があるか |

健診や小児科での相談を大切にしながら、家庭で何を見ればよいか、どの条件なら動きやすいかを整理したい場合は、小児リハビリのページをご覧ください。
健診・相談前に整理したいこと。
歩かせるのではなく、歩行へ向かう条件を一緒に探します。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。乳幼児の発達相談では、「1歳で歩いていない」という結果だけで判断せず、床から立つ、手の支持を変える、しゃがむ、左右へ体重を移す、疲れたあとに動きが変わるといった過程を確認します。
診断・検査・医学的治療は主治医・小児科医の領域を尊重し、必要な医療・健診を優先します。そのうえで、生活の中で本人が試しやすい環境と、ご家族が無理なく見守れる観察点を整理します。
次に育つ動きの見方へ。

子どもの発達を見ていると、「できていない一つの動き」が大きく感じられることがあります。しかし、最初の一歩は、ある日突然ゼロから現れるものではありません。
立ち上がり、しゃがみ、支持の切り替え、左右への体重移動など、すでに育っている力を丁寧に見つけることで、必要な相談と、安心して見守れる変化を分けられます。
ご家庭だけでは見分けにくいときは、普段の動画や遊び場面をもとに整理します。医療・健診と連携しながら、お子さんに合う次の一歩へ併走します。
代表取締役 金子 唯史

動きを結果だけで捉えず、脳・身体・感覚・環境のつながりから考えるための専門書です。本記事も、この機能解剖と臨床推論の枠組みを基盤に構成しています。
本記事は、国内外の公的情報と運動発達研究、STROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、主治医・小児科医・乳幼児健診へご相談ください(最終確認日:2026年7月30日)。
1. こども家庭庁.令和5年乳幼児身体発育調査結果の概要.2024.原資料
2. WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: Windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95. WHO
3. Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones: 1 Year, 15 Months, 18 Months. Updated 2026. CDC
4. Adolph KE, Hoch JE. Motor Development: Embodied, Embedded, Enculturated, and Enabling. Annu Rev Psychol. 2019;70:141-164.
5. 金子唯史.脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院;2024.408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)