【2026年版】第6頚髄損傷(C6) リハビリテーション/ 評価・治療・脊髄損傷・できることは? – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】第6頚髄損傷(C6) リハビリテーション/ 評価・治療・脊髄損傷・できることは?

「手首は動くのに、物が掴めない」「退院したけど、この先どこまで回復するの?」
第6頚髄(C6)損傷は、残存する機能を正確に活かし、
脳の再学習と生活の再設計を同時に進める専門リハビリで、生活の質が大きく変わります。

この記事のポイント

C6損傷は「何ができないか」より「何ができるか」が鍵

第6頚髄損傷は四肢麻痺のなかでも手首の背屈が保たれるという大きな強みを持つレベルです。この「手首を反らす動き」を活用したテノデーシス・グリップを習得することで、食事・更衣・排泄管理など日常生活の多くの場面で自立を目指せます。さらに脳の可塑性(学習・変化する力)を利用した最新のリハビリアプローチで、慢性期に入ってからも機能回復の可能性は残されています。



退院後、こんな壁にぶつかっていませんか?

🤲

手首は動くのに、物が掴めない

C6損傷では手首を反らす動きは残るのに、指が思うように動かない——そのギャップが日常生活を直撃します。コップを持つ、スマホを操作する、箸を使う。「もう少しでできそう」なのに届かない、そのもどかしさが毎日続く。

🚿

トイレ・入浴の自立が見えない

「C6レベルなら自立できるはず」と言われる一方、体幹の不安定さや手指の使いにくさが、排泄や入浴での自立を遠ざける。「どうすればできるようになるか」を具体的に教えてくれる場所が少ない。

😔

「これ以上は回復しない」と言われたけれど

主治医から「現状がほぼ最終形」と告げられた。でも本当にそうなのか。脳の可塑性を活かした専門リハビリで、まだ眠っている機能を引き出せる可能性はないのか——その問いに向き合えている施設が見つからない。

これらはすべて、C6損傷の病態を知り抜いた専門リハビリで改善・適応できる課題です。
残存機能の正確な活用法から脳の再学習まで、
脊髄損傷に精通したセラピストの介入が回復の幅を大きく変えます。



第6頚髄(C6)損傷とは ― 知っておくべき基礎知識

脊髄は脳とともに中枢神経系を担う構造で、脳からの運動指令を全身に伝え、体の感覚情報を脳に届ける「情報の高速道路」です。首の部分の脊髄(頚髄)はC1〜C8の8節に分かれており、第6頚髄(C6)は上から6番目にあたります。

わかりやすく言えば、「首の真ん中あたりで高速道路が部分的に断絶した状態」です。断絶した場所より下の信号が届きにくくなるため、手・腕・体幹・下肢の動きや感覚に影響が出ます。ただし損傷の深さによって残る機能は大きく異なり、「C6だから必ずこうなる」という一律の予後はありません

頚髄損傷の分かりやすい動画解説

頚髄損傷 動画解説

C6の解剖学 ― どの筋肉が動いて、どこが動かないのか

C6損傷を理解するうえで最も大切なのは、「何が保たれるか」と「何が失われるか」の境界線をはっきり知ることです。これが自立度の予測とリハビリ目標の設定に直結します。

✅ C6で保たれる主な機能

「手首の背屈」が最大の武器

  • 肩の上げ・外転・回転
  • 肘の屈曲(曲げる)
  • 前腕の回外(手のひらを上に向ける)
  • 手首の背屈(手首を反らす)← これが最重要
  • 上腕二頭筋・腕橈骨筋など肘を曲げる筋群
⚠ C6で障害される主な機能

指・肘伸展・体幹の制御が課題

  • 手首の掌屈(手首を曲げる)
  • 手指の屈曲・伸展(指を握る・開く)
  • 母指の対立(ものをつまむ)
  • 肘の伸展(上腕三頭筋はC7支配)
  • 体幹の安定筋(腹筋・背筋)
  • 下肢全体の随意運動
C6損傷を知るうえで最重要のポイント

「手首が動く」ことが自立のカギになる

手首を反らすと指が受動的に閉じる——この「テノデーシス(腱固定)現象」を利用したテノデーシス・グリップが、C6損傷リハビリの中心テーマです。「指が動かないから物は掴めない」ではなく、「手首の動きで指を代わりに動かす」という発想の転換が、日常生活の自立度を根本から変えます。詳しくは後述のセクションで解説します。

完全損傷と不完全損傷 ― 予後を左右する最大の分かれ道

C6損傷と診断されても、損傷の深さによって回復の見通しはまったく異なります。この分類がリハビリの方向性を根本的に決めるため、主治医や担当セラピストに確認しておくことが重要です。

完全損傷(ASIA-A)

損傷レベル以下の機能が完全に消失

損傷した脊髄のレベルより下に、運動も感覚もまったく残っていない状態。統計的には損傷レベル以下の機能回復は限定的で、リハビリの主眼は「残存機能の最大活用」と「代償戦略の確立」に置かれます。ただし受傷直後は「脊髄ショック」により一時的に完全損傷に見えるケースもあるため、初期評価だけで予後を確定するのは早計です(詳細は診断セクションで解説)。

不完全損傷(ASIA B〜D)

損傷レベル以下に何らかの機能が残存

脊髄損傷の中でも特に回復の可能性が高いタイプ。残存する感覚や運動のパターンにより、いくつかの種類があります。中心性脊髄損傷はC6レベルで最多で、下肢より手の機能障害が重い特徴的なパターン。不完全損傷では、脳の可塑性を活かした集中的リハビリで機能回復が期待できます。

📋 損傷の重さを測る国際標準「ASIA評価」とは

脊髄損傷の重さを世界共通の基準で測るのがASIA(アジア)評価です。各部位の筋力テストと感覚検査をもとに、A(完全損傷)〜E(正常)の5段階で分類します。C6のKey Muscleは「手首の背屈筋」、感覚チェックポイントは「母指の背側」です。受傷後72時間と1年後のASIA評価の変化が、長期的な機能予後の最も重要な指標とされています。



症状と注意すべき合併症

C6損傷は四肢の運動・感覚だけでなく、体幹の安定性・排泄機能・体温調節・自律神経にまで影響します。「見えにくい症状」ほど対処を誤りやすく、リハビリの進行にも直結するため、正確に把握しておくことが重要です。

1
上肢の運動障害 ― 「手首は動く、でも指が使えない」

C6完全損傷では、肘を曲げて食べ物を口に運べるのに、手で物を掴めないという特徴的なパターンが現れます。この「できそうでできない」ギャップの解決策こそが、後述のテノデーシス・グリップです。また、上腕三頭筋(肘を伸ばす筋)はC7支配のため障害され、物を押す・体を支えるといった動作も難しくなります。

2
体幹の不安定性 ― 「座っているだけで疲れる」

腹筋・背筋などの体幹安定筋が機能しないため、座位バランスが著しく低下します。リーチ動作や車椅子からの移乗が難しくなるだけでなく、長時間の座位そのものが疲労を招きます。体幹の安定性は、上肢の全動作の「土台」でもあるため、リハビリの最優先課題の一つです。

3
感覚障害と神経障害性疼痛 ― 「痛みもしびれも特別な種類」

前腕の外側〜母指・示指にかけての感覚鈍麻・消失が生じます。さらに約40〜50%の方に神経障害性疼痛(灼熱感・電撃痛・ジンジンする痛みなど)が出現し、QOLに大きな影響を与えます。一般的な鎮痛薬では効きにくく、専門的な対処が必要です。

4
排泄障害 ― 「膀胱・腸の自己管理が新しいスキルに」

膀胱の随意的コントロールが失われ、「神経因性膀胱」となります。放置すると尿路感染や腎障害につながるため、清潔間欠自己導尿(CIC)の習得がC6リハビリの重要目標の一つです。C6レベルではテノデーシスを活用してCICを自力で行えるようになる方も多くいます。

⚠ 生命に関わる「自律神経過反射」を知っておいてください

C6損傷者に特有の危険な合併症が自律神経過反射(AD)です。膀胱の膨張・便秘・褥瘡・きつい衣服などの刺激をきっかけに、損傷レベル以下の交感神経が過剰反応し、急激な血圧上昇・激しい頭痛・顔面の紅潮・大量発汗を引き起こします。脳出血のリスクがある医学的緊急事態です。

  • 対処法の基本:すぐに座位をとって血圧を下げ、誘因(カテーテルの閉塞、膀胱の膨張、衣服の締め付けなど)を取り除く
  • 症状が改善しない・繰り返す場合はすぐに医療機関へ
  • リハビリ中に突然の頭痛・顔のほてり・大量発汗が出たら、その場で対応を
呼吸機能

横隔膜は動くが、咳が弱くなる

C6では横隔膜(C3〜C5支配)が保たれるため人工呼吸器は不要です。しかし肋間筋・腹筋の機能低下により咳嗽力(咳の力)が弱まり、痰が出しにくくなります。肺炎のリスクが高まるため、呼吸リハビリと適切な咳嗽補助が重要です。

体温調節

「汗をかけない体」という課題

損傷レベル以下の発汗機能が失われ、体温調節が困難になります。夏の熱中症・冬の低体温、どちらのリスクも高まります。室温管理・衣服の調節・水分補給など、意識的な体温管理が日常的に必要になります。



診断と評価の流れ

C6損傷の診断は、画像検査で損傷の場所と程度を確認しながら、神経学的評価で「何がどの程度残っているか」を定量化するプロセスです。リハビリのゴール設定はこの評価結果を出発点に組み立てられます。

検査の種類 何がわかるか・役割
X線(単純レントゲン) 骨折・脱臼の有無、脊椎のアライメント(骨の並び方)を迅速に確認。初期スクリーニングとして有用だが、脊髄本体の状態は見えない
MRI(磁気共鳴画像) 脊髄自体への圧迫・浮腫・出血・断裂を詳細に描出。損傷の深さと範囲の評価、予後予測に不可欠。T2画像での脊髄内出血の範囲が特に予後と相関する
CT(コンピュータ断層撮影) 骨の微細な骨折・脱臼、骨片が脊柱管に入り込んでいないかを3Dで確認。手術の計画に欠かせない
ASIA評価(神経学的分類) 損傷レベルと重症度(A〜E)を国際標準で定量化。リハビリの方向性・ゴール設定の基盤。定期的な再評価で回復の経過を確認
SCIM(脊髄損傷自立度評価) セルフケア・排泄管理・移動の自立度を100点満点で評価。脊髄損傷に特化した生活機能の評価尺度で、リハビリ効果の確認に有効

🏥 GRASSP ― 「手の機能」を細かく測るC6専用の評価

C6レベルで特に重要なのがGRASSP(グラスプ)という上肢機能評価です。筋力・感覚・つかむ動作(把握)の3領域を詳細に定量化し、わずかな機能変化も捉えられます。「テノデーシス・グリップがどこまで使えているか」「感覚はどの程度残っているか」を数値で追うことで、リハビリの効果が見える化され、次の目標設定に活かせます。

評価後に知っておきたいこと

「完全損傷」と言われても、最初の数週間は本当の評価が難しい

受傷直後は「脊髄ショック」という状態が続くことがあります。この期間中は損傷レベル以下の全反射が一時的に消失し、本来「不完全損傷」であっても「完全損傷」のように見えることがあります。脊髄ショックが回復(球海綿体反射の再出現で確認)してからの評価が、真の損傷程度を示します。早期の「もう回復しない」という判断を鵜呑みにせず、数週間後の再評価を必ず受けてください。



治療法の選択肢

急性期 ― 最初の数日で予後が変わる

緊急対応と全身管理

脊髄への「二次的ダメージ」を最小化する

受傷直後に最も重要なのは、脊髄への圧迫除去と血圧・酸素の安定的な維持です。脊髄損傷後は交感神経の機能低下により血圧が下がりやすくなる(神経原性ショック)ため、平均動脈圧(MAP)を85〜90mmHg以上に保つことが二次損傷の予防に重要とされています(国際ガイドライン推奨)。救急対応の質が、その後の回復を大きく左右します。

手術(減圧+固定)

「早期手術」が回復の幅を広げる

手術の目的は、骨折した骨片や飛び出した椎間板が脊髄を圧迫している状態を解除(減圧)し、不安定な脊椎を金属で固定することです。大規模な研究(STASCIS試験)では、受傷後24時間以内の早期手術が遅延手術と比較して6か月後の神経学的回復を改善することが示されています。手術を受けるタイミングは予後を大きく左右するため、専門医療機関への早期搬送が非常に重要です。

腱移行術(Tendon Transfer)

「別の筋肉の力を手指に付け替える」外科的手術

残存している強い筋肉の腱を、麻痺した筋肉の腱に縫い付け直すことで、失われた機能を再建する手術です。C6レベルでは上腕二頭筋の腱を上腕三頭筋に移行して肘の伸展を再建したり、手首背屈筋の腱を指屈筋に移行して能動的な把握を再建するケースがあります。適切なタイミングで行い、術後に集中的なリハビリを続けることで、劇的な機能改善が得られる場合があります

治療の最前線 ― 世界で進む研究

臨床試験段階

硬膜外電気刺激(EES)

脊髄の外側に電極を置き、電気刺激で神経回路を再活性化する手法。完全損傷と診断された患者での歩行再建が報告され、上肢機能回復への応用も研究中。「壊れた道路」を直すのではなく、「別のルートを開通させる」イメージです。

臨床試験段階

神経再生・幹細胞療法

iPS細胞由来の神経前駆細胞移植(慶應義塾大学グループ主導)をはじめ、複数の再生医療アプローチが日本国内でも臨床試験段階にあります。日本は脊髄損傷の再生医療研究を世界でリードする国の一つです。



テノデーシス・グリップ ― C6リハビリの要

テノデーシス・グリップは、C6損傷のリハビリで最も習得すべき重要な技術です。「指が動かなくても、手首の動きで物を掴める」——この発想の転換が、日常生活の自立度を根本から変えます。

🤲 仕組みをざっくり理解する

手首を反らす(背屈)と……指の屈筋腱が引っ張られて、指が自然に閉じる(物が掴める)

手首を曲げる(掌屈)と……指の伸筋腱が引っ張られて、指が自然に開く(物を離せる)

C6では手首背屈筋(ECRL/ECRB)が随意的に動かせるため、「手首の背屈→指が閉じる→物を掴む」「手首を緩める→指が開く→物を離す」という動作サイクルが可能になります。腱を固定子として利用するため「腱固定(テノデーシス)グリップ」と呼ばれます。

⚠ テノデーシスを「壊す」3つの行為 ― 絶対に避けること

テノデーシス・グリップの効果は、指の屈筋腱が適度に短縮した状態(タイトネス)に依存しています。以下の行為はこのバランスを崩し、患者さんの自立度を不可逆的に低下させる危険があります。

  • ① 手首を反らした状態で指を強制的に伸ばすストレッチ——手首と指を同時に伸展方向に引っ張る複合ストレッチは絶対禁忌
  • ② 「拘縮予防」を名目にした過剰な手指ROM訓練——C6では「適度な屈筋のタイトネス」を守ることが最優先。やみくもに伸ばすのは逆効果
  • ③ 長時間の伸展位スプリント装着——屈筋腱を伸張し続けるため、装着角度と時間の管理が必要

これはC6損傷に関わる全スタッフとご家族が知っておくべき重要な知識です。「親切心でのストレッチ」が回復の妨げになることがあります。

テノデーシスは練習すればするほど精度が上がります。最初は大きな物しか掴めなくても、感覚入力とフィードバックを繰り返すうちに、コインや薬の錠剤といった小さな物も扱えるようになっていきます。正しいパターンを繰り返すことで「脳が手首と指の協調動作を学習する」プロセスですので、専門家の指導のもとで根気よく続けることが、回復への最短ルートです。



リハビリテーションの実践アプローチ

C6損傷のリハビリは「痛みを取って終わり」ではありません。残存機能の活用法を学び直し、失われた機能を代償し、脳の運動プログラムを再構築するプロセスです。フェーズ別に何を目標にするかを整理します。

急性期(受傷直後〜6週間)

「守り」のリハビリ ― 二次障害の予防と基盤づくり

この時期の最優先は拘縮予防・褥瘡予防・呼吸機能の維持・DVT(深部静脈血栓症)の予防です。関節を柔軟に保つROM訓練を行いますが、前述のとおりテノデーシスを損なわない範囲で実施することが絶対条件。手関節をやや背屈位・手指をやや屈曲位に保つポジショニングが自立度の土台をつくります。

急性期から心理的サポートも導入します。突然の四肢麻痺という衝撃的な体験に対するケアは、その後のリハビリへの主体的な参加に直結します。

回復期(6週間〜6か月)

「構築」のリハビリ ― ADL自立に向けた集中的介入

テノデーシス・グリップの習得、車椅子操作の自立、移乗動作の習得、CICの習得、ADL全般の自立度向上がこの時期の主要目標です。機能回復が最も進むのがこの時期であり、リハビリの密度と質が長期的な自立度を大きく左右します

不完全損傷では、この時期に顕著な神経学的回復が見られることがあり、ゴールを上方修正しながら進めていきます。

生活期(退院後〜長期)

「深化」のリハビリ ― 社会復帰と長期的な健康管理

退院後のリハビリは、入院中に習得したスキルの実生活への応用と、長期的な健康管理が中心です。職場復帰に向けた環境調整、車の手動運転装置の評価・訓練、アダプティブスポーツへの参加、肩関節の過使用障害予防——「生活を広げていく」フェーズです。

C6の機能回復は受傷後1年以内に大きく進みますが、特に不完全損傷では2年目以降も上肢機能の改善が報告されており、長期的なリハビリの継続には意義があります。

理学療法(PT)― 移動と体幹を取り戻す

1
座位バランス訓練 ― すべての動作の「土台」

体幹筋が機能しないC6損傷者にとって、安定した座位は全ての上肢動作の基盤です。静的な姿勢保持から、リーチ動作中のバランス制御、外からの揺れへの反応まで段階的に難易度を上げ、「体が揺れても倒れない体」を脳に学習させます。

2
移乗動作訓練 ― 安全に・省エネで移動する

C6では上腕三頭筋が機能しないため、通常のプッシュアップ移乗が困難です。頭を移乗先と逆方向に傾けて重心を移動させる「head-hips relationship」の技術や、スライドボードを活用した方法を習得します。ベッド⇔車椅子⇔トイレ⇔車と、段階的に応用場面を増やしていきます。

3
車椅子スキル訓練 ― 「移動の自由」を広げる

手首背屈を利用した効率的な駆動テクニックから始め、坂道・段差・ウィリー(前輪を持ち上げての段差越え)へと技術を発展させます。屋外の不整地や公共交通機関の利用まで想定した実践的訓練が、社会参加の幅を大きく広げます。

4
呼吸リハビリ ― 肺炎から身を守る

肋間筋・腹筋の機能低下で咳の力が弱まるため、痰が出しにくくなります。腹帯を使った補助的な咳嗽練習、呼気筋トレーニング、適切な姿勢での呼吸を組み合わせて、肺炎リスクを継続的に下げます。

作業療法(OT)― 手の機能と暮らしの再建

ADL項目 C6レベルで目指せる自立度・アプローチ
食事 ユニバーサルカフ(手のひらに固定する装具)にスプーン・フォークを差し込んで自力摂食が可能。テノデーシスの熟練に伴い、自助具なしでの操作に移行するケースもある
更衣 上衣は前開きを活用し、テノデーシスとフックで自立可能。下衣は仰臥位での着脱テクニックを習得すれば自立を目指せる。ボタンフックやベルクロ改造が有効
排泄(CIC) 清潔間欠自己導尿(CIC)はテノデーシスを活用して自力実施可能。トイレへの移乗はL字バーとスライドボードで自立を目指す
入浴・整容 シャワーチェア・手すり・ロングハンドルスポンジで部分的〜完全自立が可能。電動歯ブラシ・電動シェーバーが効率的
PC・スマホ操作 タイピングスティック・音声入力・視線入力など、テクノロジーの進歩で選択肢は大幅に拡大。スマートフォンはタッチペンまたはAssistive Touchで操作可能

🏠 退院前の「住環境改造」もOTの重要な役割

退院前に自宅を訪問し、車椅子でのアクセシビリティ(廊下幅・ドア幅・段差)、トイレ・浴室の改造計画、ベッド周りの環境設定を評価・提案します。どんなに身体機能が改善しても、住環境が整っていなければ自立は実現しません。「住環境の設計」はリハビリの重要な一部です。

C6損傷のリハビリは「元通りに戻る」ことではなく、「新しい体の使い方と暮らし方を設計し直す」プロセスです。テノデーシスの精度が上がり、移乗が安定し、CICを一人でできるようになる——その一つひとつの達成が自信となり、次の目標への燃料になります。プロセスを信じて、一歩ずつ積み上げていきましょう。

ここまでお読みいただいた方へ

ここからが「回復の本番」です。
どこでリハビリを受けるかで、結果は変わります。

脳神経科学の視点からC6損傷リハビリにアプローチする——
それが、STROKE LABの強みです。



STROKE LABでのリハビリ ― 脳神経専門施設の強みとは

C6脊髄損傷は「脊髄の問題」と思われがちですが、回復の鍵の一つは脳レベルの運動プログラム再編成にあります。損傷後の脳は失われた神経回路を代償するため、ダイナミックに再組織化されます。完全損傷では残存筋の効率的な制御と新たな動作戦略の学習、不完全損傷では残存神経路の積極的な強化——いずれにも脳の可塑性の活用が不可欠です。

STROKE LABは脳卒中をはじめとする脳神経疾患リハビリの専門施設として、この「脳の可塑性」を日常的に活用したリハビリを実践しています。この知見と経験を脊髄損傷リハビリに統合することで、一般的な施設では実現しにくい回復の深度を目指します。

一般的なC6損傷リハビリ STROKE LABのC6損傷リハビリ
残存筋の段階的筋トレ 残存筋の強化+脳の運動プログラム再構築による「使い方の質」の向上
テノデーシスの基本説明と練習 テノデーシス効率を最大化する段階的プログラム+感覚フィードバック統合
マニュアル通りの移乗訓練 動作分析に基づく個別の移乗戦略設計+自宅・職場環境を想定した応用訓練
自助具の紹介・練習が中心 「自助具→段階的離脱→直接操作」の回復ロードマップを個別設計
完全・不完全で同じアプローチ AISグレード・不完全損傷のサブタイプ(中心性・ブラウン=セカールなど)に合わせた個別プログラム
「回復しない」という前提でのリハビリ 不完全損傷の「眠っている機能」を引き出す神経科学に基づくアプローチ
STROKE LABが大事にしていること

「再現性」を大切にする ― 通って終わりにしない

  • 評価→介入→自宅化→再評価のループを必ず回す:「何が変わったか」を毎回確認し、プログラムを最適化。週ごとの変化を数値で追います
  • 「なぜこの練習をするか」を毎回伝える:テノデーシスの原理、脳の可塑性の仕組み、自律神経管理の方法——納得感のある訓練は自主練習の質を変えます
  • ご家族も「チームの一員」に:自律神経過反射の対処法、テノデーシスを守るポジショニング、適切な見守りと過介助の違い——ご家族への教育も訓練の柱です
  • 主治医・病院リハと役割分担して連携する:医療の範囲を尊重し、入院中と退院後のリハビリをシームレスにつなぎます

STROKE LABの脊髄損傷リハビリ実例

STROKE LABの脊髄損傷リハビリ効果

STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する医学書院刊「脳の機能解剖とリハビリテーション」の知見をもとに、具体的なトレーニングを設計しています。

STROKE LAB

STROKE LABサービス一覧

リハビリを受けた方の声

退院後、近くのリハビリに通っていましたが、いつも同じ内容の繰り返しで「この先どこまで良くなるのか」が全く見えませんでした。STROKE LABでは初回に今の神経学的な状態を丁寧に説明してもらい、「3か月後にはCICの自立を目指しましょう」と具体的な目標を示してもらえました。テノデーシスの効率が上がり、今では食事も一人でできるようになっています。

30代男性・C6完全損傷(受傷後5か月〜)

転倒で中心性脊髄損傷と診断されました。「手が動くから大丈夫」と言われたのに、箸もボタンも全然うまくいかない。STROKE LABで感覚の再教育プログラムを始めてから、指先の感覚が戻り始め、少しずつ力の加減ができるようになってきました。脳卒中のリハビリの知見を脊髄損傷に応用してもらえるのが、ここならではの強みだと思います。

60代男性・C6不完全損傷 中心性脊髄損傷(受傷後3か月〜)

受傷直後はすべてが絶望でした。でもSTROKE LABのスタッフは「できないこと」ではなく「今できること」を一つひとつ見つけてくれました。車椅子の操作が上達するたびに外に出る自信がついて、今ではスポーツも楽しめるようになりました。「不安を具体的な目標に変えてくれる」場所がある、ということが一番の安心感でした。

40代女性・C6完全損傷(受傷後4か月〜)



よくある質問(FAQ)

Q
「完全損傷」と診断されましたが、もう回復しないのでしょうか?
受傷直後は「脊髄ショック」により本来の損傷程度が正確に判断できないことがあります。数週間後の再評価で不完全損傷に変わるケースも少なくありません。また完全損傷であっても、テノデーシス・グリップの習得や代償戦略の確立によって日常生活の自立度は大きく向上できます。「完全損傷=可能性なし」ではありません。まずは早期から専門リハビリを継続することが重要です。
Q
退院後も自費リハビリに通う意味はありますか?
あります。入院中のリハビリは急性期〜回復期の基礎訓練が中心ですが、退院後は「実生活での般化」と「機能の深化」が主眼になります。「病院では移乗・車椅子操作の練習をしたが、自宅や外出先では応用できない」「自助具は使えるが本当の自立感がない」という方に特に有効です。目標を「何ができるようになりたいか」で設定し直すことで、生活の質が実感を伴って向上します。
Q
テノデーシス・グリップはどのくらいで習得できますか?
個人差はありますが、基本的な「掴む・離す」の動作は数週間〜数か月で習得できるケースが多いです。その後、物のサイズ・形状・重さに応じた力の調節ができるようになるまでには、より長い練習期間が必要です。重要なのは、練習量よりも「正しいテノデーシスのパターン」を繰り返すこと。間違ったパターンを反復すると脳に誤った運動記憶が刻まれるため、専門家の指導のもとで始めることを強くおすすめします。
Q
家族が C6損傷です。どんなサポートをすれば良いですか?
最も重要なのは「適切な介助と過介助の線引き」を知ることです。善意から全てを手伝うと、本人が自立できるはずの機能が育ちません。特に①テノデーシスを妨げるストレッチをしない、②自律神経過反射のサインと対処法を把握する、③除圧動作(褥瘡予防の体位変換)のタイミングを管理する——この3点を最低限学んでおいてください。STROKE LABでは家族向けの指導も標準的に提供しています。
Q
病院リハビリと自費リハビリ、どちらが大事ですか?
どちらも大切で、役割が異なります。病院リハビリは医療管理と標準的プログラムに強みがあり、自費リハビリは個別最適化と実生活への応用に強みがあります。両者を並行することで相乗効果が生まれます。自費施設が「主治医との連携方針」を明確にしているかを確認することが、スムーズな併用のポイントです。
Q
東京(御茶ノ水・世田谷)と大阪、どちらに相談すればいいですか?
通いやすさと現在の課題に応じて選べます。STROKE LABでは各拠点で無料の適応相談(15分)を実施しています。現在の損傷レベル・リハビリの課題・生活環境をお聞きし、最適な対応方法をご提案します。遠方の方にはオンライン相談もご利用いただけますので、まずはお気軽にご連絡ください。

参考文献

Fehlings MG, Vaccaro A, Wilson JR, et al. Early versus delayed decompression for traumatic cervical spinal cord injury: results of the Surgical Timing in Acute Spinal Cord Injury Study (STASCIS). PLoS One. 2012;7(2):e32037. PubMed
Kirshblum SC, Burns SP, Biering-Sorensen F, et al. International standards for neurological classification of spinal cord injury. J Spinal Cord Med. 2011;34(6):535-546. PubMed
Kalsi-Ryan S, et al. Development of the Graded Redefined Assessment of Strength, Sensibility and Prehension (GRASSP). J Neurotrauma. 2012;29(5):905-914. PubMed
Harvey LA. Physiotherapy rehabilitation for people with spinal cord injuries. J Physiother. 2016;62(1):4-11. PubMed
Anderson KD. Targeting recovery: priorities of the spinal cord-injured population. J Neurotrauma. 2004;21(10):1371-1383. PubMed
Consortium for Spinal Cord Medicine. Preservation of upper limb function following spinal cord injury: a clinical practice guideline. J Spinal Cord Med. 2005;28(5):434-470. PubMed
日本脊髄障害医学会: 脊髄損傷の診断・治療・管理に関するガイドライン
日本理学療法士協会: japanpt.or.jp 日本作業療法士協会: jaot.or.jp 日本リハビリテーション医学会: jarm.or.jp



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「同じメニューの繰り返し」になっていませんか?

第6頚髄損傷からの回復と生活適応は、残存機能の正確な評価 × 神経科学に基づくアプローチ × 生活全体を見据えたゴール設定で大きく変わります。
テノデーシスの最適化から脳の可塑性の活用まで、脳神経専門の知見を脊髄損傷リハビリに統合できる——それがSTROKE LABの強みです。
東京(御茶ノ水・世田谷)・大阪にて、損傷レベルと回復フェーズに最適なプログラムを提供しています。

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