【完全解説】UPDRS・MDS-UPDRSとは?評価方法・スコアの意味・重症度カットオフ・リハビリ活用まで徹底解説(パーキンソン病評価尺度) – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【完全解説】UPDRS・MDS-UPDRSとは?評価方法・スコアの意味・重症度カットオフ・リハビリ活用まで徹底解説(パーキンソン病評価尺度)

この記事でわかること

UPDRSは「数字を記録するツール」ではありません。
パーキンソン病患者の「生活の質」を多面的に可視化し、
リハビリ・薬物治療・多職種連携を最適化するための羅針盤です。

「スコアがどう変わったのか分からない」「MDS-UPDRSと旧UPDRSの違いが混乱する」「評価結果をリハビリ計画にどう活かせばいい?」——
UPDRS・MDS-UPDRSの構造・採点・重症度カットオフ・各パートの評価項目・リハビリへの臨床応用まで、患者さんと専門家の両目線で徹底解説します。

こんな疑問・悩みを感じていませんか?

📋

スコアの意味がよく分からない

UPDRSで「30点」と出ても、それが軽いのか重いのか判断できない。数字だけが記録されて、治療計画に活かせていない。

🔄

UPDRSとMDS-UPDRSの違いが混乱する

文献によってUPDRSとMDS-UPDRSが混在しており、どちらを使えばいいか、互換性があるのかが分からない。

🩺

評価結果をリハビリに活かせない

評価は実施するが、Part IIIの運動項目の低下をどのようなリハビリ目標・プログラムに落とし込めばいいか迷う。

これらすべてに答えるのがこのページです。UPDRS・MDS-UPDRSを「使いこなす」ための知識を体系的にお伝えします。

1. UPDRSとは? ― 歴史と目的

統一パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、パーキンソン病(PD)の重症度・進行度・治療効果を多面的に評価するための標準化されたスケールです。1987年にFahn&Eltonらによって開発され、世界中の臨床・研究現場で40年近くにわたり使用されてきました。

📖 UPDRSが生まれた背景

パーキンソン病は振戦・固縮・動作緩慢・姿勢反射障害という四大運動症状を中心としながらも、認知・精神・自律神経・睡眠など非運動症状も患者のQOLに大きく影響します。それ以前は評価方法が施設・研究者ごとにバラバラで、治療効果の比較ができませんでした。UPDRSはこの問題を解決するために、国際的に統一された評価基準として誕生しました。

評価対象

誰が・何のために使う?

神経内科医・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など多職種が使用します。初診時のベースライン評価・定期的な経過観察・薬物調整・リハビリ効果判定・臨床研究のアウトカム指標として活用されます。

評価の特徴

運動+非運動の両方を捉える

振戦・固縮などの運動症状だけでなく、認知機能・気分・ADL・感覚障害まで包括的に評価できる点がUPDRSの強みです。一方で評価に20〜60分程度かかることが実臨床での普及を妨げている側面もあります。

⚠ 重要:オン・オフの区別を忘れずに

UPDRSの評価は、薬が効いている「オン期」と薬の効果が切れた「オフ期」で結果が大きく変わります。Part III(運動機能)は基本的にオン期に実施し、Part II(ADL)はオン・オフそれぞれで評価することが推奨されています。どちらの状態で評価したかを必ず記録・伝達することが重要です。

2. UPDRSの全体構造と採点方法

旧UPDRSは3つのパートで構成され、各項目を0〜4の5段階で評価します(0=正常、4=最重度)。パート間の独立性が高く、それぞれを個別に分析することで、どの側面に問題があるかを把握できます。

パート 評価領域 項目数 最高点 評価者
Part I 精神機能・行動・気分(認知・幻覚・抑うつ・意欲) 4項目 16点 医師・自己申告
Part II 日常生活動作(ADL)——言語・嚥下・書字・歩行・振戦など 13項目 52点 自己申告(主にオン期)
Part III 運動機能検査(振戦・固縮・指タップ・歩行・姿勢など) 14カテゴリー
(左右別・多部位評価含む)
108点 医師・療法士(オン期)

⚠ Part IIIの最大108点:なぜ14項目なのに108点?

Part IIIは「14カテゴリー」ですが、各カテゴリー内で左右別・複数部位の評価があります。例:安静時振戦は顔面・左右手・左右足の5部位(20点)、固縮は頸部・左右上肢・左右下肢の5部位(20点)、指タップ・手の運動・回内外・下肢敏捷性はそれぞれ左右2部位ずつ(各8点)。こうした内訳を合計すると最大108点になります。「14×4=56点」と単純計算するのは誤りです。評価記録には部位ごとのスコアを必ず記入しましょう。

📎 旧UPDRS Part IV:治療の合併症

旧UPDRSにはPart I〜IIIに加えて、薬物療法の合併症を評価するPart IV(Complications of Therapy)があります。ジスキネジア(不随意運動)の持続時間・障害度・痛み、および運動変動(オン/オフ)の評価を含む11項目で構成されています。MDS-UPDRSのPart IVはこれを整理・改訂したものです。

💡 合計点の解釈:Part I〜IIIの合計最高点は 176点(Part I:16点 + Part II:52点 + Part III:108点)です。Part IVの治療合併症を含めると最大約199点になります。スコアが高いほど重症度が高いことを示しますが、パートごとの内訳を見ることが臨床的には重要です。

🔢 採点の基本ルール(0〜4スケール)

0:正常/症状なし 1:軽度(日常生活への影響は最小限) 2:中等度(明らかな障害あり、補助は不要) 3:高度(補助が必要な場面が増える) 4:著明・最重度(自立が困難)

この0〜4スケールは全パートで共通しており、評価者が同じ基準で判断できることが信頼性を高めています。ただし各項目により「正常」の定義が異なるため、評価前に各項目の基準を確認することが重要です。

🏥 Hoehn-Yahr(H&Y)重症度分類との関係

UPDRSと並んでよく使われる重症度分類がHoehn-Yahrステージ(H&Yステージ)です。H&Yは簡便なグローバル評価、UPDRSは各症状を詳細に数値化するという役割の違いがあります。両者を組み合わせることで、より立体的な患者像を把握できます。

H&Yステージ 症状の特徴 UPDRS Part III(目安) リハビリの主な焦点
1 一側性(片側のみ)の症状。機能障害はほとんどない 0〜10点程度 柔軟性・有酸素運動・姿勢意識の確立
1.5 一側性+体軸の障害 5〜15点程度 コア筋力・回転動作の練習
2 両側性の症状。バランス障害なし 10〜22点程度 歩行訓練・上肢巧緻動作・ADL維持
2.5 軽度の両側性症状。引き戻しテストで回復可能 18〜28点程度 バランス訓練・転倒予防の導入
3 軽〜中等度の両側性症状。姿勢反射障害あり。自立可能 25〜35点程度 転倒予防・Cue療法・環境調整
4 重度の機能障害。介助なしで立つ・歩くことは可能 35〜50点程度 歩行補助具・介護者教育・廃用予防
5 車椅子または寝たきり。全面介助が必要 50点以上 ポジショニング・嚥下・コミュニケーション支援

※ UPDRS Part IIIスコアは目安であり、個人差があります。H&YとUPDRSの相関は中程度(r≒0.7)で、非線形な関係があることに注意が必要です。

3. 重症度カットオフ値の解説

UPDRSには「この点数以上は転倒リスク高」という単純なカットオフ値はありません。Berg Balance Scaleの45点以下が転倒予測として有用なのとは異なり、UPDRSは重症度分類ツールとして位置づけられています。ただし、各パートに一般的な重症度区分の目安があります。

パート 軽度 中等度 重度
Part I(最大16点) 0〜4点 5〜8点 9〜16点
Part II(最大52点) 0〜13点 14〜26点 27〜52点
Part III(最大108点) 0〜27点 28〜54点 55〜108点

📊 重症度区分の臨床的意味

  • 軽度:日常生活・運動機能への影響が最小限。介入は予防的・教育的アプローチ中心。
  • 中等度:日常生活・運動機能に顕著な影響あり。専門的リハビリ・薬物調整が必要。転倒リスク管理が重要。
  • 重度:日常生活・運動機能に重大な影響。包括的介入・介護者教育・環境整備が不可欠。

⚠ カットオフ値の限界と注意点

上記のカットオフ値はあくまで目安(参考値)であり、研究や論文によって基準が異なる場合があります。重症度の判定は点数だけでなく、患者の生活背景・環境・介護状況・服薬状況を総合的に踏まえた臨床判断が必須です。また旧UPDRSとMDS-UPDRSでは構成が異なるため、スコアを単純比較することはできません。

4. UPDRS Part I ― 精神機能・行動・気分(最大16点)

Part Iはパーキンソン病の非運動症状のうち、認知・精神・情動に関わる4項目を評価します。運動症状に目が向きがちですが、認知機能低下や抑うつはQOLを著しく損なうため、療法士も必ず把握しておく必要があります。

Part I 評価のポイント

リハビリ計画への直結事項

  • 知的機能の障害(項目1):認知機能低下があるとホームプログラムの指導・般化が難しくなります。MMSEやMoCAと合わせて評価し、指示の複雑さを調整しましょう。
  • 思考の障害(項目2):幻覚・妄想は主にドーパミン薬の副作用として出現することが多く、服薬タイミングやリハビリのセッション時間の調整が必要です。
  • 抑うつ(項目3):PD患者の約40〜50%が抑うつを経験します。運動意欲の低下・リハビリへの積極性減退の背景に抑うつがある場合、精神科・心療内科との連携が必要です。
  • 意欲・自発性(項目4):アパシー(無気力)は抑うつと異なり、悲しみを伴わない意欲・自発性の低下です。ホームプログラムの継続率に直結します。
▶ Part I 全4項目の詳細評価基準を見る
項目 0(正常) 1(軽度) 2(中等度) 3(重度) 4(最重度)
1. 知的機能の障害 なし 記憶に問題があるが部分的に思い出せる。他の認知機能には影響なし 中等度の記憶障害と見当識障害。複雑な問題への処理能力低下。家庭内で軽度の介助が必要 重度の記憶障害。時間・場所の認識に大きな問題。問題解決能力に重大な障害 非常に重度の記憶障害。人の認識のみ保たれる。判断・問題解決が不可能で大きな介助が必要
2. 思考の障害
(認知症または薬物副作用による)
なし 生々しい夢を見る 幻覚があるが現実でないことを理解している 時々または頻繁に幻覚・妄想あり。現実と混同し日常生活に支障 持続的な幻覚・妄想。精神的に不安定で自立した生活が困難
3. 抑うつ なし 時々通常以上の悲しみや罪悪感に悩まされるが短期間で収まる 1週間以上持続する抑うつ状態がある 不眠・食欲不振・体重減少・興味の消失を伴う持続的な抑うつ状態 上記の症状に加え、自殺念慮や自殺企図がある
4. 意欲・自発性 正常 通常より受動的・消極的な態度が見られる ルーチンでない活動への意欲・興味が減少している 日常の基本的な活動への意欲・興味が著しく減少 完全に引きこもり、意欲や自発性がほとんどない

5. UPDRS Part II ― 日常生活動作(ADL)(最大52点)

Part IIは日常生活のなかで運動症状がどの程度影響しているかを自己申告で評価します。主にオン期の状態を評価しますが、オフ期との比較も臨床的に重要です。理学療法士・作業療法士が介入目標を設定する上で最も直接的に活用できるパートです。

OTとの連携

ADL項目はOTが主導

着衣・食事・書字・入浴・衛生管理など、日常的な生活動作(ADL)への影響は作業療法士が詳細評価を担います。Part IIの項目は、そのままOTの目標設定・介入計画の骨格になります。

PTとの連携

歩行・転倒・すくみはPTが主導

歩行(項目11)・転倒(項目9)・すくみ現象(項目10)はPTが歩行分析・バランス評価と組み合わせて詳細評価します。Part IIのスコアはFOG-Qなど専門評価と並行して活用します。

▶ Part II 全13項目の詳細評価基準を見る
項目 0 1(軽度) 2(中等度) 3(高度) 4(最重度)
1. 会話 正常 軽度の障害。理解には問題なし 中等度の障害。時々繰り返す必要がある 高度の障害。頻繁に繰り返す必要あり ほとんど聞き取り不可能
2. 流涎(よだれ) 正常 軽度に唾液増加。夜間に流涎が見られることがある 中等度に唾液増加し、わずかに流涎あり 高度に唾液増加し、時々流涎あり 唾液が非常に多く、常にティッシュが必要
3. 嚥下 正常 まれにむせることがある 時々むせることがある 柔らかい食事でないとむせる 経管栄養が必要
4. 書字 正常 わずかに遅いか字が小さい 中等度に遅いか小さいが全て読める 高度の障害。一部の文字が読めない ほとんどの文字が読めない
5. 食事・食器の扱い 正常 やや遅いかぎこちないが補助不要 遅くぎこちないがほとんど自分でできる。時々補助が必要 食事の準備が必要だが食べることはできる 補助がなければ食べられない
6. 着衣 正常 やや遅いが補助不要 ボタンを留める・袖を通すなどに補助が必要 自分でできることもあるがかなり補助が必要 自力での着替えが不可能
7. 衛生(入浴・トイレ) 正常 やや遅いが補助不要 入浴・シャワーに補助が必要。動作は非常に遅い 洗顔・歯磨き・整髪などの日常動作に補助が必要 カテーテルなどの補助器具が必要
8. 寝返り・布団を直す 正常 やや遅いが補助不要 一人でできるが非常に困難 自力ではできない 完全に補助が必要
9. 転倒
(すくみ現象とは関係なし)
なし まれに転倒する 時々転倒するが一日に一回以内 平均して一日一回転倒する 一日に一回以上転倒する
10. 歩行中のすくみ なし まれにすくみ。歩き始めにすくむことがある 時々歩行中にすくむ 頻繁にすくみ、時に転倒する 頻繁にすくみ、転倒する
11. 歩行 正常 軽度の障害。腕の振りがなかったり足を引きずることがある 中等度の障害。補助はほとんど不要 高度の障害。補助が必要 補助があっても歩行不可能
12. 振戦(震え) なし 軽度。まれにある 中等度。患者にとっては気になる 高度。多くの日常生活動作に影響 著明。ほとんどの日常生活動作に支障
13. 感覚障害
(パーキンソニズムに関連)
なし 時々しびれ・ちくちく・軽度の痛みを感じる 頻繁にしびれ・ちくちく・痛みを感じるが耐えられる 頻繁に痛みを感じる 耐え難い痛みが常にある

💡 臨床のコツ:項目9(転倒)と項目10(すくみ)は別概念として評価されています。「転倒はないがすくみは頻繁にある」というケースも多く、すくみに特化したFOG-Q(Freezing of Gait Questionnaire)との組み合わせが臨床的に有用です。

6. UPDRS Part III ― 運動機能検査(最大56点)

Part IIIは医師または専門家が直接観察・検査する客観的な運動機能評価です。主にオン期に実施し、14項目で振戦・固縮・動作緩慢・姿勢・歩行などを評価します。リハビリの介入ターゲットを特定するために最も直接的に活用できるパートです。

🔬 Part IIIの神経科学的背景

Part IIIの各項目は、大脳基底核・小脳・一次運動野・補足運動野(SMA)の機能と直接対応しています。例えば、固縮(項目5)は基底核のドーパミン欠乏による間接路の過活動を、動作緩慢(項目14)はSMAからの運動開始指令の低下を反映します。評価スコアをこの観点から解釈することで、より精度の高いリハビリ計画を立案できます。

▶ Part III 全14項目の詳細評価基準を見る
項目 評価内容・方法 0 1 2 3 4
1. 言語 声量・明瞭さ・表現力を聴取 正常 表現・用語・声量に軽度の障害 単調で不明瞭だが理解できる 高度の障害。理解が困難 理解不能
2. 顔の表情 仮面様顔貌の程度を観察 正常 わずかに表情が乏しい(ポーカーフェイス) 軽度だが明らかな表情の乏しさ 中等度の表情の乏しさ。口を閉じていない時がある 仮面様。口は0.6cm以上開いている
3. 安静時振戦
(顔面・左右手・左右足)
安静時の振戦の有無・振幅 なし わずかの振戦が時にみられる程度 軽度の振幅が持続的、または中等度が時々 中等度の振戦が大部分の時間に出現 高度の振戦が大部分の時間に出現
4. 姿勢時・動作時振戦
(手)
手を挙上・前方伸展時の振戦 なし 軽度。動作に伴って起こる 中等度の振幅。動作に伴って起こる 中等度の振幅。動作時・姿勢保持時に起こる 高度の振幅。食事の動作が障害される
5. 筋固縮(rigidity)
(頸部・左右上肢・左右下肢)
座位安静で主要関節をゆっくり他動 なし 軽微またはミラームーブメントで誘発できる程度 軽度ないし中等度の固縮 高度の固縮。関節可動域は正常 著明な固縮。関節可動域に制限あり
6. 指タップ
(左右別々)
親指と示指を最大振幅で素早くタップ 正常 やや遅いか振幅が小さい 中等度の障害。疲れやすく時々止まる 高度の障害。しばしば開始時にすくむ・止まる ほとんどできない
7. 手の運動
(左右別々)
最大振幅で素早く手の開閉を繰り返す 正常 少し遅いか振幅が小さい 中等度の障害。すぐ疲れ時に止まる 高度の障害。しばしばすくみ・止まる ほとんどできない
8. 手の回内・回外運動
(両手同時)
最大振幅で回内・回外を繰り返す 正常 やや遅いか振幅が小さい 中等度。すぐ疲れ時に止まる 高度。しばしばすくみ・止まる ほとんどできない
9. 下肢の敏捷性
(左右別々)
下肢を7.5cm以上上げかかとで床をタップ 正常 やや遅いか振幅が小さい 中等度。すぐ疲れ時に止まる 高度。しばしばすくみ・止まる ほとんどできない
10. イスからの立ち上がり 背もたれ付きイスで腕を組んだまま立ち上がる 正常 遅い。または一度ではうまくいかないことがある 肘掛けに腕をつく必要がある 一度ではうまくいかず倒れ込むことがある。しかし介助なしで立ち上がれる 介助なしでは立ち上がれない
11. 姿勢 立位での姿勢アライメントを観察 正常 軽度の前屈姿勢。高齢者では正常な程度 中等度の前屈姿勢。明らかに異常。一側にやや傾くことも 高度の前屈姿勢・脊柱後弯。一側に中等度に傾くことも 高度の前屈姿勢。極端に異常な前屈
12. 歩行 廊下等での歩行を観察 正常 緩慢。小刻みでひきずることも。加速歩行・前方突進はなし 困難を伴うが介助は不要。加速歩行・前方突進あり 高度の障害。介助を必要とする 介助があっても歩行不能
13. 姿勢の安定性
(後方突進現象)
後方から肩を突いて反応を観察 正常 後方突進現象があるが自分で立ち直れる 後方突進現象。支えなければ倒れてしまう きわめて不安定。自然にバランスを失う 介助なしでは立てない
14. 運動緩慢・運動減少 動作の速度・振幅・量を総合評価 なし わずかに緩慢。運動振幅がやや小さい 軽度の運動緩慢。運動量が明らかに低下 中等度の運動緩慢・運動量低下 高度の運動緩慢・運動量低下

💡 評価の実施ポイント:項目6〜9(指タップ・手の運動・回内外・下肢)は左右を別々に評価します。左右差がある場合、利き手側・症状の強い側を区別して記録しましょう。Part IIIの評価中にFOG(すくみ足)が出現した場合は、評価を一時停止して安全確保を優先してください。

ここまでお読みいただいた方へ

ここからはMDS-UPDRSの解説と
リハビリへの活用法に入ります

2008年に刷新されたMDS-UPDRSは旧版とどう違うのか?
評価結果を治療計画にどう落とし込むか——実臨床に即して解説します。

7. MDS-UPDRSとは? ― 旧版との違い

MDS-UPDRS(Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)は、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)が2008年に発表したUPDRSの全面改訂版です。現在の臨床研究・国際標準としてはMDS-UPDRSが主流となっています。

比較項目 旧UPDRS(1987年〜) MDS-UPDRS(2008年〜)
パート数 3パート(+補足) 4パート(明確な構成)
最大点数 約144点(Part I〜IV合計) 260点(Part I〜IV合計)
非運動症状の評価 Part Iで4項目のみ Part Iで13項目(大幅拡充)
評価者 医師による他覚評価中心 自己申告(Part I・II)+他覚評価(Part III)の明確な分離
信頼性・妥当性 国際的な標準化に限界 多施設・多言語での検証済み。評価者間信頼性が向上
電子版・遠隔評価 対応なし 電子版あり。遠隔医療への応用が進んでいる
治療合併症の評価 Part IVで評価(ジスキネジア等) Part IVでオン/オフ・ジスキネジアを詳細評価

💡 なぜMDS-UPDRSが重要なのか

旧UPDRSでは「精神・行動・気分」の評価が4項目に限られており、認知機能低下・睡眠障害・自律神経障害・疲労など患者のQOLに大きく影響する非運動症状が十分に評価されていませんでした。MDS-UPDRSは非運動症状を13項目に拡充し、「全人的なパーキンソン病評価」を可能にした点に最大の意義があります。2023年以降の国際的な臨床試験では、ほぼすべてMDS-UPDRSが採用されています。

8. MDS-UPDRS ― 全4パート詳細解説

📊 MDS-UPDRSの全体構成(合計260点)

  • Part I(非運動症状の日常生活体験):13項目・最大52点
  • Part II(運動症状の日常生活体験):13項目・最大52点
  • Part III(運動機能検査):33項目・最大132点
  • Part IV(運動合併症):6項目・最大24点

MDS-UPDRS Part I

非運動症状の日常生活体験(最大52点)

旧UPDRSの4項目から13項目へと大幅に拡充。医師が聴取するセクションA(6項目)患者が自己申告するセクションB(7項目)に分かれています。

  • 1.1 認知機能障害 1.2 幻覚・精神症状 1.3 抑うつ気分 1.4 不安気分 1.5 アパシー(意欲低下)
  • 1.6 ドパミン調節障害症候群の特徴(衝動制御障害)
  • 1.7 睡眠問題 1.8 日中の眠気 1.9 痛み・異常感覚 1.10 排尿障害 1.11 便秘 1.12 起立性めまい 1.13 易疲労感
▶ Part I(非運動症状)全13項目の評価基準を見る
項目 0(なし) 1(軽度) 2(中等度) 3(重度) 4(最重度)
1.1 認知機能障害 全くない 軽度の物忘れや注意力低下。日常生活にほぼ影響なし 時々物忘れ・注意力低下。日常生活に大きな影響はない 頻繁に物忘れ・注意力低下あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.2 幻覚・精神症状 全くない 軽度の幻覚・精神症状。稀で日常生活にほぼ影響なし 時々幻覚・精神症状あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に幻覚・妄想あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.3 抑うつ気分 全くない 軽度の抑うつ気分。日常生活にほぼ影響なし 時々抑うつ気分あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に抑うつ気分あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.4 不安気分 全くない 軽度の不安感。日常生活にほぼ影響なし 時々不安感あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に不安感あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.5 アパシー(意欲低下) 全くない 軽度の動機・興味低下。日常生活にほぼ影響なし 時々動機・興味低下。日常生活に大きな影響はない 頻繁に動機・興味低下。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.6 ドパミン調節障害 全くない 軽度の症状。日常生活にほぼ影響なし 時々症状あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に症状あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.7 睡眠問題 全くない 軽度の睡眠障害。日常生活にほぼ影響なし 時々睡眠障害あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に睡眠障害あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.8 日中の眠気 全くない 軽度の日中の眠気。日常生活にほぼ影響なし 時々日中の眠気あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に日中の眠気あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.9 痛み・異常感覚 全くない 軽度の痛みや異常な感覚。日常生活にほぼ影響なし 時々痛みや異常感覚あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に痛みや異常感覚あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.10 排尿障害 全くない 軽度の排尿障害。日常生活にほぼ影響なし 時々排尿障害あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に排尿障害あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.11 便秘 全くない 軽度の便秘。日常生活にほぼ影響なし 時々便秘あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に便秘あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.12 起立性めまい 全くない 軽度のめまい・気分不良。日常生活にほぼ影響なし 時々めまい・気分不良あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁にめまい・気分不良あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
1.13 易疲労感 全くない 軽度の疲労感。日常生活にほぼ影響なし 時々疲労感あり。日常生活に大きな影響はない 頻繁に疲労感あり。日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響

MDS-UPDRS Part II

運動症状の日常生活体験(最大52点)——患者自己申告

旧UPDRSのPart IIに相当しますが、項目が整理・更新されています。患者本人が過去1週間の状態を報告します。オン・オフ両状態を考慮した生活全体の印象で回答することがポイントです。

評価項目:2.1 会話の困難さ 2.2 唾液の流出 2.3 食事の困難さ 2.4 筆記の困難さ 2.5 服の着脱 2.6 ベッド・椅子からの立ち上がり 2.7 布団・寝具の整え 2.8 歩行の困難さ 2.9 バランスの問題 2.10 すくみ現象(FOG) 2.11 日常の家事 2.12 趣味・活動 2.13 外出の困難さ

▶ MDS-UPDRS Part II 全13項目の詳細評価基準を見る
項目 0(問題なし) 1(軽度) 2(中等度) 3(重度) 4(最重度)
2.1 会話の困難さ 全くない 軽度の困難さがあるが理解されやすい 時々困難さがあるが理解は可能 頻繁に困難さがあり、時々理解が難しい 非常に頻繁に困難さがあり、ほとんど理解されない
2.2 唾液の流出(よだれ) 全くない 軽度のよだれがあるが稀 時々よだれがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁によだれがあり日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
2.3 食事の困難さ 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ影響なし 時々困難さがあるが助けを必要としない 頻繁に困難さがあり時々助けが必要 常に助けが必要
2.4 筆記の困難さ 全くない 軽度の困難さがあるが読める字が書ける 時々困難さがあるが読める字が書ける 頻繁に困難さがあり時々読めない字が書かれる ほとんど読めない字が書かれる
2.5 服の着脱 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ助け不要 時々困難さがあるが助け不要 頻繁に困難さがあり時々助けが必要 常に助けが必要
2.6 ベッド・椅子からの立ち上がり 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ助け不要 時々困難さがあるが助け不要 頻繁に困難さがあり時々助けが必要 常に助けが必要
2.7 布団・寝具の整え 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ助け不要 時々困難さがあるが助け不要 頻繁に困難さがあり時々助けが必要 常に助けが必要
2.8 歩行の困難さ 全くない 軽度の困難さがあるが日常生活にほぼ影響なし 時々困難さがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁に困難さがあり日常生活に支障 日常生活に深刻な影響
2.9 バランスの問題 全くない 軽度の問題があるが転倒しない 時々問題があるが転倒しない 頻繁に問題があり時々転倒する 非常に頻繁に問題があり常に転倒する
2.10 すくみ現象(FOG) 全くない 軽度のすくみが稀にある 時々すくみがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁にすくみがあり日常生活に支障 非常に頻繁。日常生活に深刻な影響
2.11 日常の家事 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ影響なし 時々困難さがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁に困難さがあり日常生活に支障 深刻な影響
2.12 趣味・活動 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ影響なし 時々困難さがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁に困難さがあり日常生活に支障 深刻な影響
2.13 外出の困難さ 全くない 軽度の困難さがあるがほぼ影響なし 時々困難さがあるが日常生活に大きな影響はない 頻繁に困難さがあり日常生活に支障 深刻な影響

MDS-UPDRS Part III

運動機能検査(最大132点)——評価者による客観的評価

旧版の14カテゴリーから33評価項目に拡充。評価前に患者の服薬状況(オン/オフ)と薬の服用時刻を記録することが必須です。

  • 顔面表情・発話・嚥下・舌の動き
  • 安静時振戦(手・足・顎)・動作時振戦
  • 上下肢の固縮(リジディティ)・背部固縮
  • 指タップ・手の運動・手首の回内外・下肢の動き
  • 立ち上がり動作・歩行・静止時姿勢保持・姿勢の安定性
  • 体幹の回旋・動作の緩慢さ・各部位の不随意運動
▶ MDS-UPDRS Part III 全33項目の評価基準を見る
No. 評価項目 0(正常) 1(軽度) 2(中等度) 3(重度) 4(最重度)
3.1 顔面表情 正常 軽度に減少 明らかに減少 ほとんど無表情 完全に無表情
3.2 運動時の不随意運動 全くない 軽度・稀 時々見られる 頻繁に見られる 常に見られる
3.3 舌の動き 正常 軽度に減少 明らかに減少 ほとんど動かない 全く動かない
3.4 声の大きさと質 正常 軽度の減少 明らかな減少 非常に小さい声 声がほとんど出ない
3.5 嚥下の困難さ 全くない 軽度の困難 時々困難 頻繁に困難 常に困難
3.6 手の震え(安静時振戦) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.7 足の震え(安静時振戦) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.8 顎の震え(安静時振戦) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.9 上肢の固縮(リジディティ) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.10 下肢の固縮(リジディティ) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.11 指タップ 正常 軽度の遅れまたは不完全 明らかな遅れまたは不完全 頻繁に不完全または非常に遅い 全く動かない
3.12 手の動き 正常 軽度の遅れまたは不完全 明らかな遅れまたは不完全 頻繁に不完全または非常に遅い 全く動かない
3.13 手首の回内外運動 正常 軽度の遅れまたは不完全 明らかな遅れまたは不完全 頻繁に不完全または非常に遅い 全く動かない
3.14 下肢の動き 正常 軽度の遅れまたは不完全 明らかな遅れまたは不完全 頻繁に不完全または非常に遅い 全く動かない
3.15 立ち上がり動作 正常 軽度の困難さ 中等度の困難さ 重度の困難さ 全く立ち上がれない
3.16 歩行 正常 軽度の困難さ 中等度の困難さ 重度の困難さ 全く歩けない
3.17 静止時の姿勢保持 正常 軽度の不安定さ 明らかな不安定さ 重度の不安定さ 全く保持できない
3.18 姿勢の安定性 正常 軽度の不安定さ 明らかな不安定さ 重度の不安定さ 非常に不安定
3.19 身体の回転(体幹の回旋) 正常 軽度の困難さ 中等度の困難さ 重度の困難さ 全くできない
3.20 静止時の振戦(全身) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.21 動作時の振戦(全身) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.22 口元の運動の困難さ 正常 軽度の困難 中等度の困難 重度の困難 全く動かない
3.23 顎の運動の困難さ 正常 軽度の困難 中等度の困難 重度の困難 全く動かない
3.24 眼球運動の困難さ 正常 軽度の困難 中等度の困難 重度の困難 全く動かない
3.25 唇の運動の困難さ 正常 軽度の困難 中等度の困難 重度の困難 全く動かない
3.26 発話の困難さ 正常 軽度の不明瞭さ 中等度の不明瞭さ 重度の不明瞭さ 全く話せない
3.27 上肢の不随意運動 全くない 軽度・稀 時々見られる 頻繁に見られる 常に見られる
3.28 下肢の不随意運動 全くない 軽度・稀 時々見られる 頻繁に見られる 常に見られる
3.29 バランス保持の困難さ 全くない 軽度の不安定さ 中等度の不安定さ 重度の不安定さ 非常に不安定
3.30 動作の緩慢さ(運動の鈍さ) 全くない 軽度の緩慢さ 中等度の緩慢さ 重度の緩慢さ 非常に重度の緩慢さ
3.31 他の部位の振戦 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度
3.32 頭部の運動の困難さ 正常 軽度の困難 中等度の困難 重度の困難 全く動かない
3.33 背部の固縮(リジディティ) 全くない 軽度 中等度 重度 非常に重度

MDS-UPDRS Part IV

運動合併症(最大24点)——治療経過のモニタリング

レボドパなどの薬物治療を長期間続けると、ジスキネジア(不随意運動)ウェアリングオフ(薬の効果が切れる症状変動)などの運動合併症が生じることがあります。Part IVはこれらの頻度・持続時間・日常生活への影響を評価します。

  • 4.1 一日の中での運動変動(オン/オフ)
  • 4.2 ジスキネジアの持続時間 4.3 ジスキネジアの日常生活への影響
  • 4.4 オフ状態の持続時間 4.5 オフ状態の日常生活への影響
  • 4.6 痛みや不快感

⚠ MDS-UPDRSのカットオフ値(参考目安)

各パートのカットオフ値はあくまで研究に基づく参考値であり、診断や判定に直接用いるものではありません。個々の患者の生活背景・介護状況・服薬状態を踏まえた総合的な臨床判断が必須です。

  • Part I(最大52点):軽度 0〜16点 / 中等度 17〜33点 / 重度 34点以上
  • Part II(最大52点):軽度 0〜17点 / 中等度 18〜34点 / 重度 35点以上
  • Part III(最大132点):軽度 0〜44点 / 中等度 45〜88点 / 重度 89点以上
  • Part IV(最大24点):軽度 0〜8点 / 中等度 9〜16点 / 重度 17点以上
  • 合計(最大260点):軽度 0〜86点 / 中等度 87〜173点 / 重度 174点以上(目安)

なお、Part IIIについてはMDS推奨の臨床的に意味のある最小変化量(MCID)が約2.5〜5点とされており、リハビリ効果判定の基準として参照されています(Horváth et al., 2015)。

9. 評価結果のリハビリ活用法 ― スコアを「介入計画」に変換する

UPDRS・MDS-UPDRSは評価して終わりではありません。スコアを具体的なリハビリ目標・プログラム・多職種連携の根拠に変換することが専門家の役割です。

1
Part IIIの問題項目からリハビリターゲットを特定する

固縮(項目5)が高ければ→関節可動域訓練・ストレッチを優先。指タップ・手の運動(項目6・7)が低ければ→巧緻動作訓練・上肢の自動運動。歩行(項目12)・姿勢安定性(項目13)が低ければ→歩行訓練・バランス訓練・杖の適応検討。

2
Part II のADL項目からOT介入の優先度を決める

着衣・食事・書字・衛生管理のどの項目が最も患者のQOLを損なっているかを特定し、OTが生活場面に特化した訓練と福祉用具選定を行います。患者・家族が「最も困っていること」と一致させることが重要です。

3
Part I(非運動症状)を無視しない

抑うつ・アパシー・認知機能低下はリハビリの効果と継続率に直接影響します。Part I のスコアが高い場合、神経内科・精神科・臨床心理士との連携を積極的に打診しましょう。

4
オン期にあわせてセッションをスケジュールする

レボドパ服薬後1〜2時間のオン期にリハビリセッションを設定することで、運動課題の難易度を上げられ、より高い学習効果が得られます。活動日誌でオン期パターンを把握し、主治医と服薬スケジュールを調整しましょう。

5
定期的な再評価でプログラムを更新する

UPDRSは経過観察にも有用です。3〜6ヶ月ごとの再評価によりスコアの変化を追跡し、悪化している領域への早期介入・プログラム変更の根拠として活用しましょう。

臨床シナリオ

評価結果:MDS-UPDRS Part III 合計47点(中等度)。特に固縮(重度)・歩行(中等度)・姿勢安定性(中等度)・運動緩慢(中等度)が高スコア。Part II では歩行中のすくみ(2点)・転倒(2点)が目立つ。

介入方針:①PTが歩行訓練(聴覚Cue使用)・バランス訓練・関節可動域訓練を実施。②FOG-Qを追加評価し、すくみ足に特化したStop&Goウォーキングを導入。③服薬タイミングのオン期に合わせてセッションをスケジュール。④神経内科医と固縮・運動緩慢の薬物調整について情報共有。

⚡ 新人療法士が陥りやすい「UPDRS評価の落とし穴」

① オン/オフを確認せずに評価する——評価前に服薬状況と最終服薬時刻を必ず確認・記録することが鉄則です。同じ患者でも状態によりスコアが20点以上変動することがあります。

② Part IIIを「14項目×4点=56点」と誤計算する——左右別・多部位評価があるため最大108点です。スコアシートの合計欄を確認せず手計算で誤る事例が多いです。

③ Part Iを「精神科の管轄」と見なし介入計画に含めない——認知機能・抑うつ・アパシーはリハビリの効果と継続率に直接影響します。Part Iのスコアが高い場合、プログラムの設計そのものを見直す必要があります。

④ 1回の評価で全てを把握しようとする——初診時はスクリーニングとして主要項目に絞り、次回以降で詳細評価するプランニングが現実的です。完璧主義が評価の普及を阻む最大の障壁です。

⑤ スコアを伝えても「意味」を伝えない——「前回より5点上がりました」だけでは患者さんに何も届きません。「歩行の安定性が改善しました」「すくみ足の頻度が減りました」と、生活の言葉に翻訳することが信頼関係の基盤になります。

10. よくある質問(FAQ)

患者さん・ご家族・療法士から寄せられる代表的な疑問に答えます。

Q. UPDRSとMDS-UPDRSのスコアは互換性がありますか?

直接の互換性はありません。旧UPDRSとMDS-UPDRSは構成・項目数・最高点が異なるため、スコアを単純に比較することはできません。ただし、一定の換算式(equating)が研究されており、旧UPDRSのPart III 30点がMDS-UPDRS Part III約49点に相当するとする換算が提案されています(Goetz et al., 2012)。臨床では、同一スケールで継続評価することが最も信頼性が高い方法です。

Q. 評価はどのくらいの頻度で行うべきですか?

一般的には3〜6ヶ月ごとの定期評価が推奨されています。薬物調整の前後・新たな症状出現時・転倒後・リハビリプログラムの切り替え時などは、間隔を短縮して評価することが有用です。初診時は全パート実施し、フォローアップでは問題が顕在化しているパートを重点的に評価する方法も実臨床では現実的です。

Q. 患者さんにUPDRSのスコアを伝えるべきですか?

スコアそのものより、「前回より〇点下がった/上がった」という変化の説明が患者さんにとって意味を持ちます。スコアを伝える際は、数字の大小だけでなく「何が改善されたか・どこに課題があるか」という言葉で補足することが重要です。特に重症度の高いスコアを伝える場合は、「現状を把握して一緒に対策を考えるための数字」であることを強調し、患者さんが萎縮しないよう配慮しましょう。

Q. Part IIIの評価中にすくみ足(FOG)が出た場合、どうすればいいですか?

まず安全確保を最優先してください。転倒リスクがある場合はすぐに介助します。FOGエピソードが発生した場合は評価を一時中断し、エピソードの持続時間・トリガー・解除方法を記録します。その後、可能であれば評価を再開しますが、無理に続行する必要はありません。FOGが頻繁に出現する患者では、FOG-Qなどの専門評価を別途実施し、FOGの特性を詳細に把握することが推奨されます。

Q. 非専門施設でも評価できますか?実施に必要な条件は?

MDS-UPDRSの評価にあたっては、公式のトレーニングプログラム(MDS-UPDRS認定トレーニング:e-learning形式で提供)の受講が推奨されています。特にPart IIIは標準化された実施手順があり、未訓練での評価は評価者間のばらつきが大きくなります。Part I・IIは患者の自己申告を中心とするため、比較的導入しやすいパートです。非専門施設では、まずPart II(ADL)の自己申告評価から始めることが現実的なアプローチです。

Q. オン期・オフ期のどちらで評価したほうがいいですか?

パートによって推奨状態が異なります。Part III(運動機能)はオン期に実施するのが原則です(薬の効果が出ている状態での「ベスト」の運動機能を把握するため)。一方、Part IIはオン・オフ両方での自己評価が理想的で、オン期とオフ期のスコア差が運動変動(ウェアリングオフ)の程度を示す指標になります。評価時の服薬状況と最終服薬時刻を必ず記録に残してください。

11. STROKE LABオリジナル簡易評価

時間が限られた臨床現場向けに、STROKE LABが開発したパーキンソン病の簡易運動評価動画をご紹介します。UPDRSのエッセンスを取り入れながら短時間で実施できるオリジナルの評価方法です。

💡 評価時間の目安:旧UPDRSの全実施には20〜60分かかりますが、Part IIIのみの実施であれば10〜15分程度です。初診・定期評価のどちらにも対応できるよう、場面に応じてパートを選択することが現実的です。

パーキンソン病全体の評価・治療・体操をまとめた解説動画

12. 関連エビデンス・参考文献

Level I Evidence

主要参考論文

1. Goetz CG, et al. (2008) “Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS): scale presentation and clinimetric testing results.” Mov Disord. 23(15):2129-70.
→ MDS-UPDRSの開発・妥当性検証の原著論文。多施設研究によって信頼性・妥当性が確認された。

2. Schrag A, et al. (2006) “Parkinson’s disease severity levels and MDS-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale.” — 重症度レベルのカットオフ値の研究基盤。患者と医師の同意に基づくスコアリングガイドラインを提供。

3. Horváth K, et al. (2015) “Minimal clinically important differences for the experiences of daily living parts of MDS-UPDRS.” — Part I・IIの最小臨床的重要差(MCID)を特定。治療効果判定の基準として重要。

4. Martinez-Martin P, et al. (2014) “Relationship between the MDS-UPDRS and Quality of Life: A large multicenter study of 3206 patients.” Parkinsonism Relat Disord. — MDS-UPDRSスコアと生活の質の関連を3206名で調査。

Fahn S, et al. Unified Parkinson’s Disease Rating Scale. Recent Developments in Parkinson’s Disease. 1987;2:153-163.
Movement Disorder Society. MDS-UPDRS. www.movementdisorders.org
Shirley Ryan AbilityLab. Rehabilitation Measures Database. www.sralab.org
Weiss D, et al. Freezing of gait: understanding the complexity of an enigmatic phenomenon. Brain. 2020;143(1):14-30.

📌 おすすめ記事 → 【2023年版】パーキンソン病に有効な評価と治療・体操・エクササイズまで!エビデンスの高い運動・体操は?

UPDRS評価を「生きた臨床情報」として
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スコアを記録するだけでは不十分です。
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これらの評価を正しく活用することで、パーキンソン病の症状管理と治療計画がより精度の高いものになります。少しずつ進歩することで自信を持ち、患者さんが自分のペースでリハビリを進められるよう支援していきましょう。

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