【2026年最新】橈骨遠位端骨折のリハビリとは?コーレス骨折・スミス骨折・バートン骨折の原因・症状・治療に関して解説!
自転車やスポーツ中に転倒した際、反射的に手をついて受傷する橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)は、成人上肢骨折の中で最も頻度が高く、救急部骨折の約6分の1を占める重要な傷病です。骨折の種類・合併症・保存療法か手術か・リハビリのタイミングと方法について、患者さんにも医療者にも分かりやすく徹底解説します。
- 正式名称:橈骨遠位端骨折(Distal Radius Fracture)。コーレス骨折(Colles’ fracture)は最多の亜型
- 頻度:救急部での骨折の約1/6。成人上肢骨折で最多。橈骨遠位端骨折の90%以上がコーレス骨折
- 受傷機序:転倒時の保護伸展反応(手を伸ばした状態でついて着地)。高齢者は低エネルギー外傷でも骨粗鬆症により受傷しやすい
- 好発年齢:女性は40歳以降に発生率が急増。40歳未満では男性に多い。高齢者では骨粗鬆症との関連が深い
- 骨折の種類:コーレス骨折(背側転位・最多)・スミス骨折(掌側転位・逆コーレス)・バートン骨折(関節内骨折+脱臼)
- 合併症:CRPS(8〜35%)・急性手根管症候群・腱断裂・DRUJ障害・変形治癒(17%)・デュピュイトレン病など多数
- 治療:転位の程度に応じて保存療法(ギプス4〜6週)または手術(経皮的ピンニング・掌側ロッキングプレート固定など)
- リハビリ3段階:固定中(浮腫・ROM維持)→ 固定後(可動域・筋力回復)→ 骨癒合後(ADL・応用動作の再獲得)
- 評価ツール:VAS・DASH・PRWE・MHQ(主観的)+ROM・握力測定・画像所見(客観的)を組み合わせて経時的に評価
橈骨遠位端骨折とは ― 定義・歴史・概要
橈骨は前腕を構成する2本の骨(橈骨・尺骨)のうち母指側の大きい方です。橈骨遠位端とは、橈骨が手首で月状骨および舟状骨と接する部位(橈骨関節面から約3cm近位まで)を指します。この部位の骨折を「橈骨遠位端骨折」と呼びます。
🔬 コーレス骨折の歴史的背景
何世紀もの間、この骨折は手首の脱臼として分類されていました。1814年、アイルランドの外科医・解剖学者 Abraham Colles が骨折として正確に再定義し、以降「Colles骨折(コーレス骨折)」として知られるようになりました。
橈骨は腕の骨の中で最も骨折しやすい骨であり、骨折の大部分は上に重なる皮膚が無傷のまま残る閉鎖損傷です。転倒時に反射的に手を伸ばして体を支えようとする「保護伸展反応」が主要な受傷機序です。
疫学・受傷機序・リスク因子
年齢・性別による受傷パターンの違い
| 患者属性 | 橈骨遠位端骨折の特徴 | 受傷機序 | 骨折の性状 |
|---|---|---|---|
| 若年成人(男性多) | 高エネルギー外傷が主体 | 交通事故・高所墜落・スポーツ | 複雑骨折・関節内骨折が多い |
| 高齢女性(40歳〜) | 低エネルギー外傷で骨折しやすい | 立位からの転倒・自転車転倒 | 骨粗鬆症性骨折・粉砕骨折が多い |
| 高齢男性 | 骨粗鬆症は女性より少ない | 転倒・作業中の外傷 | 比較的単純な骨折も多い |
⚠️ 高齢者における骨粗鬆症との関係
高齢者では骨粗鬆症による骨の脆弱性が大きく、立位高さからの転倒(低エネルギー外傷)でも容易に骨折が生じます。特に閉経後女性では骨密度の低下が顕著で、40歳以降から発生率が急増します。橈骨遠位端骨折を契機に骨粗鬆症の精査・治療を開始することが、股関節骨折など将来の重大な骨折予防につながります。
骨折の種類 ― コーレス・スミス・バートン骨折
橈骨遠位端骨折は関節外骨折(橈骨の関節面が無傷)と関節内骨折(関節面が破壊)に大別され、さらに転位方向・形態によって代表的な3型に分類されます。
① コーレス骨折(Colles’ Fracture)― 背側転位型
手首を背屈(手の甲側に曲げた)状態で転倒・手をついた際(FOOSH:Fall On Outstretched Hand)に、橈骨遠位骨片が背側(手の甲側)に転位することで生じます。側面X線で「フォーク変形(fork deformity)」または「スプーン変形(dinner fork deformity)」として特徴的な変形が確認されます。
図引用元:Wikipedia
② スミス骨折(Smith’s Fracture)― 掌側転位型
手首が掌屈(手のひら側に曲がった)状態で転倒・手をついた際、または手の甲から直接地面に当たった際に受傷します。遠位骨片が掌側(手のひら側)に転位するため、コーレス骨折とは逆方向の変形が生じます。「逆コーレス骨折(Reverse Colles’ Fracture)」とも呼ばれます。コーレス骨折に比べ頻度は低いですが、掌側転位のため整復位の保持が難しく、手術適応になりやすい骨折です。
図引用元:Wikipedia
③ バートン骨折(Barton’s Fracture)― 関節内骨折+亜脱臼型
手根骨に関節内骨折が生じ、同時に手根骨の亜脱臼または転位を伴う特殊な骨折です。転位方向によって背側バートン骨折と掌側バートン骨折に分類されます。関節靭帯・関節包も損傷するため、徒手整復後の固定性が悪く、外科的固定(手術)が必要になることが多い難治性の骨折です。
図引用元:Radiopaedia
臨床に関わる解剖学的構造
手関節(radiocarpal joint)は前腕と手の間の滑膜関節です。手根骨の近位列(豆状骨を除く)が遠位側を形成しています。
🦴 手根骨(近位列)
手関節は近位側では橈骨遠位端と関節円板で形成されています。
🔗 主要な関節(3つ)
手首の多面的な運動はこの3つの関節を中心に行われます。
💡 橈骨・尺骨の荷重分担と臨床的意義
軸方向荷重の80%は橈骨遠位端で、残りの20%は尺骨で支えられています。尺骨上面には関節円板(三角線維軟骨複合体:TFCC)と呼ばれる線維軟骨性の円板があり、尺骨と手根骨との関節を防ぎ、遠位橈尺関節(DRUJ)の安定性を担います。橈骨遠位端骨折ではTFCCの損傷が合併することも多く、術後・リハビリ計画に影響します。
橈骨遠位端には多数の靱帯が付着しており、掌側靱帯が背側靱帯より強固で橈骨手根関節の安定性に大きく貢献します。これが掌側プレート固定(内固定)が安定した治療効果を発揮する解剖学的根拠の一つです。
評価・鑑別診断・合併症
鑑別診断 ― 橈骨側の疼痛を呈する主な疾患
橈骨遠位端骨折の受傷機序は通常高エネルギーの外傷であるため、診断確定と周辺組織の評価のためにX線撮影が必須です。橈骨側の痛みを呈する類似疾患には以下が含まれます。
| 鑑別すべき病態 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| TFCC断裂・穿孔 | 尺側疼痛・DRUJの不安定性。MRI・関節鏡で確認 |
| Galeazzi骨折 | 橈骨遠位2/3の骨折+DRUJ脱臼。必ずDRUJを評価 |
| 舟状骨骨折 | 解剖学的嗅ぎタバコ窩の圧痛。X線で写りにくく初診で見逃されやすい |
| 橈骨手根靭帯損傷 | 手根不安定症の原因。ストレスX線・MRIで確認 |
X線評価の正常値と整復許容基準
橈骨遠位端骨折の初期評価と治療選択において、X線写真の読影は不可欠です。療法士もこれらの基準を理解することで、治療の進捗評価・リハビリ開始時期の判断に役立てることができます。
| X線計測項目 | 正常値 | 整復許容限界(成人) | 臨床的意義 |
|---|---|---|---|
| 掌屈角(Palmar tilt) 正面:橈骨関節面の掌側傾斜 |
10〜15°掌側傾斜 | 0°以上(中立〜掌屈位) | 背屈位が残ると把持力・前腕回旋に影響。掌側プレート固定でこの角度の回復を目指す |
| 橈骨傾斜角(Radial inclination) 正面:橈骨関節面の橈側傾き |
21〜25° | 15°以上 | 傾斜が小さいと橈骨短縮・関節面の非対称性が増す。荷重分散に影響 |
| 橈骨高(Radial height) 橈骨茎状突起と尺骨頭の高さの差 |
10〜13mm | 短縮 ≦ 5mm | 短縮が大きいと尺骨プラスバリアント・DRUJ障害のリスクが上がる |
| 関節内骨折の骨片ずれ 関節面の段差・隙間 |
0mm(平滑) | 骨片ずれ ≦ 2mm | 2mm超の段差が残ると将来の手関節変形性関節症リスクが上昇 |
| 尺骨変位(Ulnar variance) | ±1mm(中立) | プラス変位 ≦ 3mm | 尺骨プラスバリアントはTFCC・月状骨への荷重集中を引き起こす |
⚠️ 整復許容基準は患者の年齢・活動性によって異なる
上記の許容基準はあくまで成人の一般的な目安です。高齢者・活動性が低い患者では、解剖学的整復の精度よりも「痛みなく日常生活ができること」を優先し、やや許容範囲を広くとる場合があります。一方、若年の活動的な患者・職人・スポーツ選手では、わずかな関節面の段差や橈骨傾斜角のずれも機能的影響が大きいため、より厳格な整復と外科的固定が選択されます。担当整形外科医と療法士が連携して、個別の目標設定を行うことが重要です。
主要な合併症 ― 早期認識が機能予後を左右する
複合性局所疼痛症候群(CRPS)― 8〜35%に発生
橈骨遠位端骨折の最も重要な合併症の一つです。疼痛・ROMの制限・腫脹が損傷の程度と不釣り合いに強い場合、CRPS(複雑性局所疼痛症候群)を疑います。皮膚温の変化(患部の冷感または熱感)・発汗異常・皮膚変色も診断の手がかりとなります。
急性手根管症候群 ― 治療遅延は予後不良につながる
手根管内圧の上昇により、正中神経が圧迫される急性の合併症です。1〜4指の急性しびれ・疼痛・母指球筋の脱力が典型症状。骨折後早期に出現することがあり、治療の遅れは予後不良・不完全な回復・機能回復時間の延長につながります。療法士は急性手根管症候群を見極め、迅速に医師に報告できる能力が求められます。
コンパートメント症候群 ― 発生率1%だが緊急対応が必要
筋区画内の圧力上昇により組織に虚血をきたします。発生率は約1%と低いものの、見逃すと不可逆的な筋壊死につながる緊急事態です。コンパートメント症候群が疑われる場合はすぐにギプスを開いて緩め、圧力を解放した上で専門医への緊急相談が必要です。
デュピュイトレン病 ― 骨折後に顕在化・進行することがある
デュピュイトレン病(手掌腱膜拘縮症)は橈骨遠位端骨折との直接的な因果関係は限定的ですが、骨折後の固定・廃用・浮腫をきっかけに潜在していた病態が顕在化・進行することが知られています。第4〜5指ラインに沿った手掌の索状硬結と屈曲拘縮が特徴です。軽度であれば保存的リハビリ(ストレッチ・スプリント)で対応しますが、拘縮が進行した場合は外科的介入(腱膜切離術・コラゲナーゼ注射)が必要になります。リハビリ中に手掌の硬結・指の伸展制限を発見したら、早期に担当医へ報告することが重要です。
療法士による評価 ― 主観的検査・客観的検査
患者立脚型アウトカム尺度の比較
痛み・ROM制限・活動制限など、患者から収集するすべての情報が含まれます。
| 評価ツール | 評価内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| VAS(視覚的アナログスケール) | 疼痛 | 管理が簡単・迅速 | 疼痛のみ・手首特化でない |
| DASH(上肢機能評価) | 上肢全体の機能と症状 | 上肢を包括的に評価 | 回答時間が長い・関係ない質問含む |
| PRWE(手首評価) | 手首の疼痛と機能 | 手首症状に特化 | 上肢全体の機能は評価しない |
| MHQ(ミシガン手評価) | 手の機能・ADL・美観・満足度 | 6尺度で包括的 | 回答時間が長い |
ROM・握力・画像所見を経時的に評価
手首および指のROM・握力と前腕筋力(ハンドヘルドダイナモメーター・Jamar油圧式ハンドダイナモメーター)・骨および軟部組織の異常・皮膚状態の評価を含みます。画像所見からは骨折・転位・骨片・神経の関与・靭帯の完全性を読影していく必要があります。
🖼️ STROKE LABでは、より正確な評価と適切なセラピーのために「画像所見(X線・MRI・CTレポート)」の持参をお勧めしています。画像情報があることで、骨折のタイプ・転位量・靱帯損傷の有無を確認した上でリハビリ計画を立案できます。
橈骨遠位端骨折に対する医学的管理
📋 治療選択の基本フロー(日本ガイドライン2017・AO原則に準拠)
治療方針は主に「骨折の転位量がX線整復許容基準を満たすか」「骨折の不安定性があるか」「患者の年齢・活動性・全身状態」の3軸で決定されます。
| 状態の判断 | 一次選択 | 補足事項 |
|---|---|---|
| 転位なし/許容範囲内・安定型 | 保存療法(ギプス固定4〜6週) | 高齢者・低活動性患者でも第一選択 |
| 転位あり・閉鎖整復で許容範囲に入る・安定型 | 整復後ギプス固定 | 整復後のX線で再転位がないか確認 |
| 転位あり・整復後再転位・不安定型 | 経皮的ピンニングまたは掌側プレート固定 | 不安定性の予測因子:高齢・骨粗鬆症・粉砕・背屈角大 |
| 関節内骨折・段差2mm超・バートン型 | 掌側ロッキングプレート固定(ORIF) | 解剖学的整復が長期機能予後に影響 |
| 開放骨折・重度粉砕 | 創外固定+状況に応じて内固定を追加 | 感染リスク管理が最優先 |
非外科的治療(保存療法)
骨折後の転位がほとんどなく許容範囲内にある場合は、骨が治癒するまでギプス固定を行います。骨折位置がずれている場合は整復後にスプリントやギプスを装着します。
整復・ギプス固定
骨折の転位が許容範囲内であれば徒手整復後にギプス固定を行います。整形外科医が適切な位置関係を確認後、スプリントまたはギプスで固定します。
ギプス交換(装着2〜3週後)
装着後2〜3週間して腫れが引いてきたらギプスを交換します。腫脹の軽減に伴い、ギプスが緩くなるためです。
ギプス除去・リハビリ開始(計4〜6週後)
合計4〜6週間で治癒が許容範囲に達したと判断したらギプスを外し、手首の機能を改善するためのリハビリテーションを開始します。
外科的治療 ― 適応と方法
骨折の転位が大きく整復では不十分な場合、または活動的で健康な人の関節変位骨折では手術が推奨されます。
| 手術法 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 低侵襲手術 | |||
| 経皮的ピンニング(K-wire) | 皮膚小切開から金属ピンを骨に固定 | 低侵襲・早期動作可能 | ピン部位感染・橈骨神経損傷リスク |
| 創外固定 | 骨にピン/ネジを刺入し体外フレームで固定 | 開放骨折・皮膚不良に有効 | 外部装置の不快感・高粉砕骨折に限定的 |
| 観血的手術(内固定) | |||
| 掌側ロッキングプレート固定(ORIF) | 最も一般的な内固定法。Henryアプローチで掌側から固定 | 解剖学的整復・安定した固定・早期運動可能 | 侵襲的・感染リスク・腱障害の報告あり |
| 背側プレート固定 | 背側から固定。一部の複雑骨折に適応 | 背側骨片の固定に有効 | 腱の癒着・断裂リスク |
| 補助的処置 | |||
| 骨移植・骨補填材 | 整復後の骨の空隙を埋める | 骨欠損部の補填・骨形成促進 | 自家移植では追加手術・ドナー部位の痛み |
⚠️ 外固定に関するエビデンスの現状
外部固定による機能的転帰の改善に関する現在のエビデンスは限定的で、またピン部位感染や橈骨神経損傷などの合併症リスクも報告されています。治療法の選択は骨折の特性・患者の活動性・年齢・骨質・担当医の専門性を総合的に考慮して行われます。
橈骨遠位端骨折に対するリハビリテーション
橈骨遠位端骨折のリハビリは「固定中」「固定後」「骨癒合後」の3段階で進められます。ゴールドスタンダードは存在せず、骨折のタイプ・治療法・患者の活動性に応じた個別の対応が必要です。
Phase 1:固定中のリハビリ ― 浮腫管理と隣接関節の維持
固定期間中の最優先事項は①浮腫の管理 ②指・肩・肘のこわばり予防 ③患者教育です。
- 隣接関節ROM(肩・肘・指):ギプスで固定されていない関節を毎日動かす。特に肩の挙上・外旋・指の完全屈曲伸展を維持することが、固定除去後の回復速度に大きく影響する
- 浮腫管理:患肢の挙上(心臓より高く)・弾性包帯による圧迫・逆行性マッサージ(末梢→中枢方向)を組み合わせる。就寝時も枕や専用スリングで挙上位を保つ
- 疼痛管理:冷熱療法(急性期は冷療法・慢性期は温熱)。ギプスが当たる部位の痛みは担当医に報告する(圧迫壊死のリスク)
- 患者教育:ギプスの管理方法(濡らさない・強い圧迫感・しびれが増した場合の対処)・日常生活の工夫(片手動作の代償戦略・利き手交換訓練)
- 安静時装具:症例の約50%で保護目的の安静時スプリントを使用(特にギプス除去後〜固定後早期)
Phase 2:固定後のリハビリ ― 可動域・筋力・モビライゼーション
ギプス・スプリント除去後から本格的な手首のリハビリが始まります。この段階では手首ROM・前腕回旋の回復が特に重要です。
🏃 代表的なエクササイズ(固定後早期〜中期)
① 手首屈曲・伸展ROM:テーブルに前腕を乗せた状態で手首をゆっくり上下に曲げる。痛みが出ない範囲から開始し、徐々に可動域を広げる。1セット10〜15回、1日3回を目安に。
② 前腕回旋(回内・回外):肘を90°に曲げた状態でペットボトルやタオルを持ち、前腕をゆっくり回す。コーレス骨折後は回外(手のひらを上向き)の制限が残りやすい。
③ 手首橈尺屈:テーブルに前腕を置き、手首を親指側・小指側にゆっくり動かす。
④ 逆行性マッサージ:指先から手首・前腕へ向けて優しくなでるように圧迫する。浮腫の排液を促す。入浴後・温熱後に行うと効果的。
⑤ 関節モビライゼーション:療法士が手根骨・橈骨関節面に対して副運動(アクセサリーモーション)を加えることで、関節包の柔軟性を回復させる。患者自身では行わず、必ず専門家のもとで実施。
- 温熱/冷熱療法:運動前の温熱(血流促進・組織柔軟化)・運動後の冷熱(炎症・腫脹抑制)
- 巧緻性エクササイズ:ペグボード・粘土・コインつまみなど、細かい手の動きの回復
- 筋力強化:握力訓練(ゴムボール・セラバンド)・前腕屈伸筋の抵抗運動。骨癒合状況を確認しながら段階的に負荷を上げる
- スプリント療法:手首伸展制限に対する静的伸展スプリント(夜間装着)、屈曲制限に対する屈曲スプリント
⚠️ この時期の注意事項
痛みを我慢してROMを強制することは禁物です。特に掌側ロッキングプレート固定後の早期(6週以内)は、腱(長母指伸筋腱など)のプレートによるインピンジメントに注意が必要です。疼痛が急激に増す・特定動作で鋭い痛みが走る場合は、腱断裂のサインである可能性があるため即座に担当医に報告してください。
Phase 3:骨癒合後のリハビリ ― ADL・職業・スポーツ復帰
より能動的な手首トレーニングに重点を置きます。十分な可動域が獲得できていない場合は受動的ROMも継続します。最終目標は日常生活動作・仕事・スポーツなどの応用動作の再獲得です。
🎯 機能的目標の目安(骨癒合後3〜6ヶ月)
| 評価項目 | 機能的に必要な目安値 | 一般的な日常生活動作 |
|---|---|---|
| 手首屈曲 | 40〜50°以上 | 食事・洗髪・衣服の着脱 |
| 手首伸展 | 35〜40°以上 | 荷重動作(押す・支える) |
| 前腕回外 | 50°以上 | 手のひらを上に向ける動作(物を受け取る等) |
| 前腕回内 | 50°以上 | キーボード・箸・書字 |
| 握力(患側/健側比) | 70〜80%以上 | 重いものを持つ・ドアノブを回す |
- 職業復帰:事務作業・軽作業は8〜10週以降が目安。重労働・振動工具を使う作業は3〜6ヶ月以降。担当医の許可を得てから段階的に復帰する
- スポーツ復帰:接触プレーのないスポーツ(水泳・ウォーキング等)は早期から可能。ラケット競技・球技・格闘技は骨癒合完成後に段階的復帰
- 骨粗鬆症治療の継続:骨折を契機に骨粗鬆症治療を開始した場合、リハビリ期間中も内服・注射を継続し、再骨折予防に努める
- 転倒予防プログラム:特に高齢者では、バランストレーニング・下肢筋力強化・家庭環境整備(段差解消・手すり設置)が重要
STROKE LABのセラピー ― 「姿勢連鎖セラピー」による手・上肢治療
代表金子による手の治療動画(治療場面の参考にご覧ください)
手(局所)の治療 × 全身からのアプローチ
STROKE LABのセラピーは「姿勢連鎖セラピー」です。手・手首の局所的な治療はもちろん、手をより効率的に・楽に動かせるよう、全身のアライメント・肩・体幹から包括的に治療します。人間の動きを追求する経験豊富なプロフェッショナルが、手・上肢の辛いお悩みに寄り添い、解決します。
🎯 STROKE LABセラピーの目標
① 上肢関節の可動性改善(副運動を含む)
② 正常な運動パターンの回復
③ 浮腫・腫脹・疼痛の軽減
④ 日常生活動作が快適に遂行できる状態の実現
⑤ 局所の関節機能を姿勢全体から高める
⑥ 適切な自主トレーニングの指導と習慣化
ご利用者様の声
転倒して手首を骨折してギプスが外れた後、なかなか動かなくて困っていました。STROKE LABでは手首だけでなく、肩の動きや姿勢まで一緒に整えてもらって、気づいたら日常生活がほとんど不自由なくできるようになりました。
60代女性・橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)術後リハビリ
手のしびれ(手根管症候群の症状)が骨折後しばらくして出てきて心配でしたが、STROKELABのスタッフさんに早めに気づいてもらって適切に対応してもらえたので助かりました。専門知識の高さを感じました。
70代男性・橈骨遠位端骨折保存療法後
よくある質問(FAQ)
コーレス骨折とスミス骨折の違いは何ですか?
ギプスが外れた後、すぐにリハビリを始めてよいですか?
骨折後にしびれが出てきましたが、何が起きていますか?
橈骨遠位端骨折の治癒期間はどれくらいですか?
骨粗鬆症がある場合、骨折後にすべきことはありますか?
手術(プレート固定)後に「指が伸ばしにくい」「親指が痛い」のですが大丈夫ですか?
掌側ロッキングプレート固定後に最も注意すべき合併症のひとつが長母指伸筋腱(EPL腱)断裂です。プレートのスクリューが背側に突出していたり、腱の走行とプレートが干渉することで、術後数週〜数ヶ月後に突然「親指が反らせない」状態(腱断裂)が起きることがあります。発生率は数%程度ですが、見逃すと機能障害が残ります。
「親指の付け根・甲側の痛みが増えてきた」「手首を動かすと鋭い痛みが走る」「突然親指を上に反らせなくなった」などの症状があれば、すぐに担当整形外科医に報告してください。療法士も定期評価でEPL腱の機能確認を行うことが推奨されます。
参考文献・引用文献
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- 13) Mindsガイドラインライブラリ. 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2012(日本整形外科学会・日本骨折治療学会)
- 14) 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版). 日本整形外科学会・日本骨折治療学会監修. 南江堂, 2017.
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)