【2026年版】浅指屈筋-深指屈筋の起始停止から作用・役割まで徹底解説 脳卒中×触診
手指屈筋の解剖と臨床応用を、脳卒中リハビリの視点から読み解く。
深指屈筋・浅指屈筋は、把持動作の核を担う前腕屈筋群です。脳卒中後に生じる手指屈筋の痙縮と拘縮は、ADL低下や手指衛生の問題を引き起こします。本記事では解剖・神経支配・臨床症候・介入手順を体系的に解説します。

要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
60代男性。左中大脳動脈領域の脳梗塞により右上下肢麻痺を呈しています。上肢はブルンストロームステージⅢ。手指は深指屈筋・浅指屈筋の痙縮が強く、把持パターンが屈筋優位となっています。
手指衛生が困難になり、皮膚トラブルも出現しています。臨床でよく出会うこのケースでは、屈筋の解剖と神経支配の理解が介入の質を左右します。
実習や臨床の場で「手が開かない患者さん」に出会う場面は多いです。その背景には深指屈筋と浅指屈筋の解剖学的特性があります。まず両筋の構造を正確に把握することが、適切な介入への第一歩です。
深指屈筋(FDP)の解剖。
深指屈筋(FDP:Flexor Digitorum Profundus)は前腕の深層筋の一つです。前腕の中で最も力強く、かつ最大の筋肉で、主に手で把持する際の指先の力を担います。

— 図引用元:VISIBLE BODY
起始・停止・触診
触診は前腕の後面で行います。尺骨の皮下後縁の内側で筋の膨隆を触知できます。
患者にDIP関節を屈曲させながら抵抗を加えると、収縮を確認しやすくなります。
神経・血液供給

— 図引用元:VISIBLE BODY
内側半分(薬指・小指):尺骨神経
尺骨神経が損傷すると、薬指・小指のDIP屈曲が障害されます。
外側半分(中指・示指):前骨間神経(正中神経の運動枝)
前骨間神経(AIN:Anterior Interosseous Nerve)損傷では、示指・中指のDIP屈曲が障害されます。
血液供給:総骨間動脈の枝である前骨間動脈により栄養が供給されます。
深指屈筋の作用と臨床トレーニング
深指屈筋の主な作用は以下のとおりです。第2〜5指のDIP関節屈曲、PIP関節とMCP関節の屈曲(補助)、および手関節の掌屈です。DIP関節を屈曲できる唯一の筋であることが最大の臨床的特徴です。
掌より大きめで適度な硬さのボールに手掌を置き、MP関節とPIP関節を伸展位に保持します。この姿勢で、DIP関節だけを屈曲させてボールを指先で凹ませます。
2〜5指全てで同時に力が入っているか確認しましょう。深指屈筋に選択的な張力を与えられるため、分離運動の再学習にも有効です。
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STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。手指の痙縮・拘縮に対して、脳科学と徒手技術を組み合わせた個別プログラムで対応しています。まずは無料相談でお気軽にお話しください。
浅指屈筋(FDS)の解剖。
浅指屈筋(FDS:Flexor Digitorum Superficialis)は前腕の掌側に沿って、深指屈筋と長母指屈筋の表側に位置します。長掌筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋・円回内筋の深層に位置する中間層の筋です。かつて英語でFlexor Digitorum Sublimisと呼ばれていたこともあります。

— 図引用元:VISIBLE BODY
前腕から手指に向かうにつれ、浅指屈筋腱は表在性と深在性に分離します。表層はさらに分裂して中指と環指に腱を供給し、深層は示指と小指に供給します。4本の浅指屈筋腱は横手根靭帯の深部を通過し、手根管内の全9腱のうち4本を構成しています。
浅指屈筋の作用
第2〜5指のPIP関節屈曲が主な作用です。MCP関節の屈曲と手関節の掌屈にも補助的に関与します。臨床では「PIP関節だけを曲げる動き」と覚えると整理しやすいです。
鑑別と類似症候の比較。
手指屈筋に関連する臨床症候は多岐にわたります。それぞれの特徴を押さえて鑑別を正確に行いましょう。
| 症候名 | 特徴的な所見 | 関連する筋・神経 |
|---|---|---|
| 虫様筋プラス優位指 | 屈曲しようとするとIP関節がパラドックス的に伸展する | FDP遠位腱損傷・虫様筋 |
| 四頭馬車現象(Quadrigia) | 一指の腱が固定されると他指のFDP腱も独立して動けなくなる | FDP共通筋腹・腱癒着 |
| ジャージーフィンガー | DIP関節の能動屈曲不能(75%で環指) | FDP遠位付着部断裂 |
| AIN損傷(前骨間神経症候群) | Perfect Oサイン陽性・ピンチグリップ低下 | 前骨間神経(長母指屈筋・FDP外側) |
| ベネディクションサイン | 示指・中指のMCP・IP屈曲不能(拳を握れない) | 正中神経(前骨間神経) |
| フロマン徴候 | 紙をつまむと母指IP関節が過屈曲する | 尺骨神経(母指内転筋麻痺) |
| スワンネック変形 | PIP過伸展+DIP屈曲の変形 | FDS弛緩・関節包損傷(RA・外傷等) |
評価と機能テスト。
手指屈筋の臨床的評価では、筋力だけでなく痙縮の程度・腱滑走・関節可動域を多角的に評価することが重要です。
深指屈筋の機能テスト
| テスト名 | 方法 | 陽性の意味 |
|---|---|---|
| FDP単独テスト | PIP・MCP固定下でDIP屈曲を指示 | DIP屈曲不能→FDP機能不全 |
| FDS単独テスト | 他3指を伸展保持し対象指PIP屈曲を指示 | PIP屈曲不能→FDS機能不全 |
| Perfect Oサインテスト | 母指と示指でOKサイン形成を指示 | 完全なO形成不能→AIN損傷疑い |
| フロマンテスト | 紙を母指・示指でつまみ検者が引く | 母指IP過屈曲→尺骨神経麻痺疑い |
MAS 0:筋緊張の亢進なし
MAS 1:軽度の筋緊張亢進。可動域の終わりにひっかかりがある
MAS 1+:軽度の筋緊張亢進。可動域の後半50%未満でひっかかりがある
MAS 2:中等度の筋緊張亢進。ほぼ全可動域でひっかかりがあるが、関節は動かせる
MAS 3:著明な筋緊張亢進。他動運動が困難
MAS 4:患肢が屈曲または伸展位に固定されている(拘縮)
介入の段階的アプローチ。
脳卒中後の手指屈筋痙縮への介入は、「緩める→動かす→使う」の段階的フローで考えます。痙縮を緩めるだけでは根本的な解決にはなりません。機能的な把持動作の再獲得まで段階的に進めましょう。
手関節部の離開や手根骨と橈骨・尺骨間の副運動を用います。屈筋の痙縮により手関節屈筋側スペースが狭小化しているため、まず手根骨列の可動性を確保します。セッション時間の目安:10〜15分。
各指関節を個別に他動的に伸展させます。FDPとFDSを鑑別しながら、DIP・PIPそれぞれの関節で丁寧に伸張します。腱滑走訓練では5種類のポジション(フラット・フック・フルフィスト・テーブルトップ・ストレートフィスト)を組み合わせます。各ポジション5〜10回×3セットを目安にします。
MCP・PIPを伸展保持した状態でDIP関節だけを屈曲する訓練でFDPを選択的に活性化します。逆にDIPを固定した状態でPIP屈曲をするとFDSの選択的収縮につながります。各10〜15回×3セット、週3〜5回の頻度で実施します。
コップを持つ・ペンを握るなど実際のADL動作を用いた課題指向型訓練に移行します。物体の硬さ・形状・重量を段階的に変化させ、把持力の調節能力を高めます。30分セッション・週3〜5回が推奨されます(Peters et al., Cochrane Review, 2017)。
出典:Peters SE, Jha B, Ross M. Rehabilitation following surgery for flexor tendon injuries of the hand. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2017(1).
主要結果:早期可動化プロトコルは遅延固定に比べて腱滑走と機能回復が優れていると示されています。ただし合併症リスクとのバランスが必要です。
エビデンスレベル:SR(システマティックレビュー)

あなたの脳はまだ変化できます。
脳卒中後の手指機能回復は、適切な時期に適切なアプローチをとることで大きく変わります。STROKE LABでは脳神経科学に基づいた徒手アプローチと課題指向型訓練で、一人ひとりの回復を丁寧に支援しています。
多職種連携と環境調整。
手指機能の回復は、一職種だけの取り組みでは限界があります。各職種が自らの役割を明確に持ち、連携して介入する体制が重要です。
| 職種 | 主な役割 | 連携のポイント |
|---|---|---|
| OT(作業療法士) | 手指機能評価・腱滑走訓練・ADL訓練・スプリント作製 | MAS評価結果をPT・看護師と共有 |
| PT(理学療法士) | 上肢・体幹の姿勢制御・前腕の近位筋へのアプローチ | 肩・肘のポジショニングを整え手指介入の前提を作る |
| ST(言語聴覚士) | 指示理解の確認・認知機能への配慮 | 訓練の指示が届いているか確認し、OT・PTに情報共有 |
| 看護師 | 病棟での手指ケア・ポジショニング管理・痙縮状態の観察 | 手指衛生の問題や皮膚トラブルをOTに報告 |
| 医師 | 痙縮治療薬の処方(バクロフェン等)の検討・診断確認 | MASが3以上の場合は薬物療法の相談を提案 |
| MSW(医療ソーシャルワーカー) | 退院後のリハビリ継続先・自費リハビリ等の情報提供 | 手機能回復に特化した外来・自費施設の調整 |
「手指の痙縮が強い患者さんは、まず肩・肘のポジショニングを確認してください。近位部の緊張が手指の痙縮を助長していることがよくあります。」
「病棟での手指衛生管理は看護師と密に連携を。スプリントを使っているなら着脱のタイミングも共有しておきましょう。」
「MASが3以上の場合は、医師と薬物療法の相談を早めに行うことで、リハビリの効率が大きく変わります。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
新人臨床家が手指屈筋の評価・介入で陥りやすい罠を3つ挙げます。実際の失敗パターンと対策を押さえておきましょう。
予後とゴール設定。
脳卒中後の手指機能回復は、発症後早期(3〜6ヶ月)が最も変化が期待できる時期です。ただし、慢性期においても適切なリハビリを継続することで機能改善が得られることが報告されています。
短期ゴール(2〜4週):手指の他動可動域確保・MASスコアの1段階改善・手指衛生の自立または介助量の軽減
中期ゴール(1〜3ヶ月):随意的なDIP・PIPの屈伸分離・把持動作(円柱把持・ピンチ)の獲得
長期ゴール(3〜6ヶ月以上):日常生活での道具操作・書字・食事動作での手指機能の統合的使用
よくある質問(新人臨床家の疑問)。
深指屈筋(FDP)はDIP関節を屈曲できる唯一の筋です。浅指屈筋(FDS)はPIP関節を主に担当します。
また深指屈筋は尺骨神経と前骨間神経の二重支配を受けるハイブリッド筋である点が最大の特徴で、浅指屈筋は正中神経(C7・C8・T1)のみで支配されます。
痙縮筋を緩めるだけでは根本的な解決になりません。手関節部の離開や手根骨と橈骨・尺骨間の副運動を用いた関節モビライゼーション、腱滑走訓練を行い、その後に課題指向型の手指訓練を実施することが重要です。
痙縮を放置すると拘縮に進行し、手指衛生面での問題も生じます。早期から多職種で連携して介入しましょう。
遠位付着部での深指屈筋腱の断裂により、DIP関節の能動的な屈曲ができなくなった状態です。ゾーン1の屈筋腱損傷に分類されます。
症例の75%で環指が侵されます。ラグビーのタックル時に相手の衣服に指が引っかかることで生じることが多いです。
深指屈筋腱の遠位部が損傷すると、指を屈曲しようとした際にパラドックス的なIP関節の伸展が生じます。
深指屈筋腱に付着している虫様筋が、近位への張力を受けて逆に伸展方向に作用してしまうことが原因です。
前骨間神経(AIN)は長母指屈筋・方形回内筋・深指屈筋外側半分を支配します。損傷により、母指と示指のDIP関節を屈曲できないため、完全な「OK」サインが形成できなくなります(Perfect Oサイン陽性)。
ピンチグリップテストも陽性となります。感覚障害は生じないことが特徴です。
MP関節とPIP関節を伸展位に保持した状態で、DIP関節だけを屈曲させる方法が有効です。掌より大きめの適度な硬さのボールに手掌を置き、指先のみでボールを凹ませます。
これにより深指屈筋に選択的な張力を与えられます。2〜5指すべてで同時に力が入っているか確認しましょう。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の手指機能回復に向けて、脳科学と徒手技術を組み合わせた個別プログラムで対応しています。「保険診療の枠内では時間が足りない」「もっと集中して手を使う練習がしたい」というご要望にお応えします。
— STROKE LABでの脳梗塞後の上肢・手指リハビリの実際の様子です。
「深指屈筋と浅指屈筋を個別に評価・介入できるようになると、手の見え方がガラリと変わります。DIPとPIPで何が違うかを常に意識してアプローチしてください。」— 作業療法士・臨床経験15年・上肢リハビリ専門
「脳卒中患者さんの手指の屈筋痙縮は、それ単体で見るのではなく、近位部(肩・肘)の緊張パターンと一緒に評価してください。上から順番に見ることで、本当の問題が見えてきます。」— 理学療法士・臨床経験12年・脳卒中リハビリ専門
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諦めないでください。

脳卒中後の手指機能障害は、適切なリハビリを継続することで、発症から時間が経過した後でも改善が期待できます。「もう遅い」「これ以上良くならない」と思っている方にこそ、一度ご相談いただきたいと思っています。
STROKE LABでは、深指屈筋・浅指屈筋をはじめとする手指の解剖と神経メカニズムを深く理解したセラピストが、一人ひとりの状態に合わせた個別プログラムを提案します。
まずは無料相談から。あなたとご家族の可能性を、一緒に探りましょう。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)