【2026年版】危険!脳卒中/脳梗塞後は便秘になりやすい?原因は?関連と看護計画に訳立つ【脳腸相関】
脳卒中後の便秘は、なぜ8割の患者に起こるのか。
脳卒中の後、排便に悩む方はとても多くいます。リハビリ病棟の患者さんの約80%が便秘を経験するというデータがあります。これは単なる「食事の問題」ではなく、脳と腸をつなぐ神経回路(脳腸軸)の乱れが主な原因です。正しく理解し、チームで対処することが回復への鍵になります。

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こんなお悩みはありませんか。
「退院してからお腹の調子がずっとおかしい」「以前は毎日あった排便が、今は3日に1度もない」——脳卒中後のご家族からこうした声を多くお聞きします。
腹部の不快感は食欲を下げ、活動意欲も奪います。リハビリへの集中力にも影響します。便秘を「仕方がない」と諦めず、原因を知り、適切なケアにつなげることが大切です。
脳卒中後の便秘とは。
慢性便秘とは、数週間以上にわたって排便回数が少ない、または便の通過が困難な状態です。便秘は「結腸(けっちょう:大腸の一部)や肛門を通る便の動きが悪くなる状態」として説明されます。
脳卒中後の便秘は特に発生しやすく、一般成人の有病率(2〜27%)と比べて著しく高い割合が報告されています。リハビリ病棟での研究では、155人中123人(79.4%)に便秘が確認されました。
脳卒中によって脳腸軸(のうちょうじく:脳と腸をつなぐ神経の通り道)が乱れることが主な原因です。
ご本人が努力しても改善しにくい場合があります。医療チームと連携して対処することが大切です。
便秘の二次的な原因
便秘の原因は大きく2種類あります。特発性(原因が特定しにくいもの)と、何らかの疾患に続いて起こる「二次性」のものです。神経疾患後には特に二次性便秘が起こりやすいです。
脳卒中・多発性硬化症・パーキンソン病・脊髄損傷など。脳や脊髄が腸の動きを制御する神経回路に影響します。
糖尿病・ヒルシュスプルング病など。末梢神経が腸の動きに関わるため、障害を受けると便通に影響します。
過敏性腸症候群・薬剤の副作用・活動量低下・水分不足なども便秘を悪化させます。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。便秘をはじめ、脳卒中後の生活の悩みをセラピストが丁寧にお聞きします。まずは無料相談からご利用ください。
なぜ起こるのか。
腸は「第2の脳」とも呼ばれるほど、脳との密な連絡をもっています。この連絡路を「脳腸軸(のうちょうじく)」といいます。脳卒中が起きると、この電話回線が切断されたような状態になります。
命令が届かなくなった腸は、正常なリズムで動けなくなります。その結果として便が滞り、便秘が起こります。
脳卒中後の便秘に関わる主なメカニズム
腸の動きは、腸管神経系・自律神経系・随意神経系・ホルモンなど複数の仕組みで制御されています。脳卒中後には以下の変化が生じることが知られています。
① 脳腸軸の断絶: 大脳皮質・大脳基底核・脳幹・小脳・下部脳神経の病変が、腸の動きを制御する自律神経に影響します。
② 免疫変化と腸粘膜への影響: 脳卒中後の免疫抑制は腸の粘膜に影響し、腸のバリア機能が低下します。細菌のバランスが乱れ(腸内毒素症)、さらに腸機能が悪化する悪循環が生じます。
③ 活動量の低下と水分不足: 脳卒中後は体を動かす機会が減るため、腸の動きも低下します。また水分摂取が不足すると便が硬くなりやすくなります。
排便の神経制御: 通常の排便時には恥骨直腸筋(ちこつちょくちょうきん)と外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)が協調して弛緩し、腹腔内圧が上昇し、結腸の分節活動が抑制されます。これらの筋肉の弛緩は脊髄反射の皮質による調節を受けており、脳卒中によってこの皮質制御が障害されます。
テント下病変との関連: 研究では、テント下病変(小脳・脳幹の損傷)のある患者では脳卒中後に便秘になりやすいことが示されています。また重度の機能障害が便秘の重症度を増加させるという結果も報告されています。
他の便秘との違い。
便秘には様々な種類があります。脳卒中後の便秘は「神経因性便秘」に分類され、一般的な便秘とは原因が異なります。対処法も少し異なるため、種類を理解しておくことが大切です。
| 種類 | 脳卒中後(神経因性) | 一般的な慢性便秘 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 脳腸軸の断絶・自律神経障害 | 食物繊維不足・運動不足 |
| 発生率 | 約80%(脳卒中リハ病棟) | 2〜27%(一般成人) |
| 食事改善の効果 | 有効だが単独では限界あり | 高い改善効果が期待できる |
| 下剤の必要性 | 多くの場合、継続使用が必要 | 一時的な使用で改善可能 |
| 理学療法の役割 | 非常に重要(バイオFB・腹圧) | 運動指導が中心 |
診断基準と評価。
医師が機能性便秘を診断する際には、国際的な基準「Rome IV(ローム4)」が使われます。Longstreth GFらが推奨するこの基準を、ご家族向けにわかりやすく整理します。
患者教育において重要なポイントは、「毎日の排便が必ずしも必要ではない」という理解です。週3回以上の自発的な排便があり、不快感がなければ問題ない場合もあります。下剤への不必要な依存を避け、水分・食物繊維の摂取習慣を整えることが長期的には重要です。
治療・ケアの方法。
脳卒中後の便秘には、医師・理学療法士(PT)・看護師・管理栄養士が連携して取り組むことが重要です。主なアプローチを4つご紹介します。
食物繊維を1日20〜35g摂取することが目標です。水溶性食物繊維(果物・オーツ麦・豆類)と不溶性食物繊維(小麦・ライ麦)の両方が役立ちます。急に増やすと腹部膨満感が出るため、少量から徐々に増やすことが大切です。食物繊維は下剤ではありませんが、便を軟らかくして通過しやすくします。
理学療法士による「バイオフィードバック(骨盤底筋の動きを機器で見える化する訓練)」が有効です。恥骨直腸筋や外肛門括約筋の適切な収縮・弛緩を練習します。また腹圧コントロールのエクササイズや有酸素運動の習慣化も効果的です。食物繊維の摂取記録(ファイバーダイアリー)をつけることも推奨されています。
バルク形成性下剤(サイリウム等)・浸透圧剤(ポリエチレングリコール等)・刺激性下剤(ビサコジル・センナ等)が使用されます。重症例では坐薬・摘便が処方されることもあります。刺激性下剤の長期使用が大腸に構造的な障害を引き起こすという確実なエビデンスはないとされています。
食後(特に朝食後)にトイレに座る習慣をつけることが推奨されています。朝は大腸の動きが最も活発な時間帯です。食後の正常な大腸運動(胃結腸反射)を活かすことが効果的です。
Chiarioni G らの研究(Gastroenterology 2006): 骨盤底機能障害による正常通過型便秘において、バイオフィードバックは下剤療法より優れた効果を示しました。筋電図(EMG)等の機器を使い、患者が骨盤底の弛緩を視覚的にモニタリングしながら訓練することで、排便協調が改善します。
臨床アイデア: 脳卒中後は学校で便秘への介入を系統的に学ぶ機会が少ない分野です。卒後の専門的な勉強会への参加や職場環境の連携が、質の高いケア提供につながります。
ご家族ができるサポート。
今日からできる生活サポートチェックリスト
声かけの工夫
「今日の朝ごはんの後、トイレに行ってみようか。急がなくていいよ」
「お腹の調子はどう? 先生に伝えておいてあげようか」
「お水、一緒に飲もう。お腹にいいって聞いたよ」
避けた方がよい対応
| 避けたい対応 | 推奨される対応 |
|---|---|
| 「もっと食べなきゃダメ」と叱る | 「食欲がないのは仕方ないね、少しずつ試してみよう」 |
| 「なんで毎日出ないの」とプレッシャーをかける | 毎日でなくても良いことを伝え、記録で状況を把握する |
| 下剤を自己判断で増量する | 変化を記録して、医師・薬剤師に相談する |
在宅復帰と公的支援制度。
退院後の在宅生活では、排便管理が日常ケアの重要な一部になります。利用できる公的支援制度を知っておくと、ご家族の負担を軽減できます。
在宅復帰チェックリスト(排便管理)
主な公的支援制度
| 制度名 | 主な内容・活用場面 | 相談窓口 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問看護・訪問リハビリ・福祉用具貸与(ポータブルトイレ等) | 市区町村・ケアマネジャー |
| 身体障害者手帳 | 補装具・日常生活用具給付/医療費助成・交通費割引 | 市区町村福祉窓口 |
| 住宅改修給付 | トイレ手すり設置・段差解消・引き戸への改修費用補助 | ケアマネジャー・市区町村 |
| 高額療養費制度 | 医療費の自己負担に上限を設け、超過分を払い戻す制度 | 加入の健康保険窓口 |
| 障害年金 | 脳卒中による障害が一定基準を満たす場合に受給可能 | 年金事務所・社会保険労務士 |
回復の経過と予後。
リハビリ病棟での研究では、便秘を経験した123人のうち、退院時に下剤の使用を中止できたのは13人でした。多くの患者さんでは長期的な管理が必要になります。
研究では、経直腸薬(坐薬・摘便)を必要とする重症例は、主要な医学的合併症のリスクが高かったことが示されています。また重度の機能障害(高いBarthel Index低下)があるほど便秘の重症度も高い傾向がありました。
早期から食事・運動・薬物療法・理学療法を組み合わせた包括的なケアを続けることで、生活の質(QOL)を保ちながら管理できるケースも多くあります。

排便の問題は、リハビリの効果にも直結します。STROKE LABでは、生活全体を見渡したサポートを大切にしています。どうぞ遠慮なくご相談ください。
よくあるご質問。
脳卒中によって脳と腸をつなぐ神経回路(脳腸軸)が乱れるためです。大脳皮質・大脳基底核・脳幹・小脳などの病変が腸の動きを制御する自律神経に影響し、便の通過速度が低下します。
さらに活動量の低下・水分摂取不足・薬の副作用も重なります。
リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者155人を調査した研究では、79.4%(123人)に便秘が確認されました。
一般成人の有病率2〜27%と比較すると、脳卒中後は著しく高いことが分かります。
食物繊維を1日20〜35g摂取する食事療法が基本です。理学療法士によるバイオフィードバックや腹圧エクササイズも有効です。
医師からは症状に応じてバルク形成性下剤・浸透圧剤・刺激性下剤が処方されます。チームで包括的に取り組むことが重要です。
テント下病変とは、小脳や脳幹など小脳テントより下の部位の損傷を指します。この部位は自律神経の調節に深く関わっており、研究では脳卒中後に便秘になりやすいことが示されています。
また重度の障害があるほど便秘の重症度も高くなる傾向があります。
毎日の排便記録の確認、食物繊維が多い食事の準備、十分な水分補給の声かけが基本です。食後・特に朝食後にトイレを試みるよう促すことも大切です。
排便の悩みは医療スタッフへ遠慮なく相談するよう後押しすることも重要です。
経直腸薬(坐薬や摘便)が必要になるほど重症化すると、主要な医学的合併症のリスクが高まるという研究結果があります。腹部不快感は活動意欲・睡眠・食欲の低下にもつながります。
リハビリ全体の質に影響するため、早期の対処が重要です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳科学と徒手技術に特化した神経系専門の自費リハビリ施設です。便秘をはじめとする生活全般の課題に対し、脳神経系の視点からアプローチします。厳しい採用基準と継続的な研修を経たセラピストが、個別プログラムを提供します。
— STROKE LABでの脳卒中後リハビリの実際の様子です。
「退院後もお腹の調子がずっと悪くて、リハビリへの気力もなかったんです。STROKE LABで生活全体のことを相談したら、腹部のエクササイズや食事の工夫を一緒に考えてもらえました。少しずつ動ける時間が増えて、今はリハビリが楽しくなっています。」— 60代・男性・脳梗塞・発症8ヶ月後
「母が脳卒中後からずっと便秘に悩んでいて、どこに相談すればいいか分からなかった。STROKE LABの無料相談で話を聞いてもらい、具体的な対処法を教えてもらえたので気持ちが楽になりました。」— 40代・女性・脳卒中患者のご家族
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諦めないでください。

「先生に相談するほどでもないかな」と思い、我慢してしまうことはありませんか。便秘のような「日常の不調」こそ、生活の質に直結する重要な問題です。
脳卒中後のリハビリは、麻痺の回復だけではありません。排便・睡眠・食欲といった生活基盤を整えることが、本当の意味での回復につながると私は考えています。
ご家族が「これは相談していいのかな」と迷っていること、どうぞ遠慮なく持ち込んでください。STROKE LABはそのためにあります。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)