【2026年版】サルコペニアとは?原因・評価法SARC-Fからパーキンソン病等の疾患併発リスクまで解説
サルコペニアは、なぜ神経疾患患者で急速に進行するのか。
加齢性の筋肉減少と思われがちなサルコペニアは、パーキンソン病では最大56%、脳卒中後では33〜52%という高頻度で合併します。「年齢のせい」で済ませず、AWGS2019に基づいて数値で捉える視点を、新人セラピストのために整理しました。
— サルコペニアのメカニズムと運動介入の基礎を動画で確認できます。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。

パーキンソン病発症5年目、Hoehn-Yahr Stage III(生活期)。主訴は歩行速度の低下と過去6ヶ月で2回の転倒、1年で3kgの体重減少。介護施設入所が検討される段階で紹介された。
初回評価:握力22.5kg(男性カットオフ28kg未満)、歩行速度0.72m/秒、5回椅子立ち座り16.8秒、SARC-F 7点、TUG 18.2秒、SPPB 5点。すべての項目が基準を下回り、AWGS2019の「重症サルコペニア」に該当した。
新人セラピストが陥りやすいのは、「パーキンソン病だから歩行が悪化するのは当然」と考え、筋力・筋肉量そのものの評価を後回しにしてしまうことです。山田さんのように、疾患の重症度分類(Hoehn-Yahrなど)だけでは見えない「筋肉の喪失」が、転倒や生活機能低下の直接的な原因になっているケースは非常に多くあります。
サルコペニア(Sarcopenia:加齢に伴う筋肉量・筋力・身体機能の複合的な低下を特徴とする症候群)は、単なる老化現象ではなく、転倒・骨折・要介護・死亡リスクを高める独立した疾患概念です。パーキンソン病患者では最大56%[SR/MA:Erceg et al. 2019]、脳卒中後患者では33〜52%[観察研究:Scherbakov et al. 2013]という高頻度で合併することが報告されており、神経疾患を専門とするセラピストにとって避けられない臨床課題です。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABはパーキンソン病・脳卒中など神経疾患を専門とする自費リハビリ施設です。AWGS2019に準拠した評価から、疾患特性に合わせた運動プログラムまで一貫してサポートします。
定義と疫学。
サルコペニア(Sarcopenia)は、ギリシャ語の「sarx(肉・筋肉)」と「penia(喪失)」を組み合わせた造語で、1989年に栄養学者Irwin Rosenbergによって命名されました[専門家合意:Rosenberg 1989]。2010年にEWGSOP(欧州サルコペニア研究ワーキンググループ)が初の統一診断基準を策定し、2018年のEWGSOP2改訂で「筋力低下」が主要基準に格上げされました。日本ではアジア人向けにカットオフ値を調整したAWGS2019[専門家合意:Chen et al. 2020]が臨床標準として広く用いられています。

日本では65歳以上が総人口の約29%を占め、世界最高水準の高齢化率です。サルコペニアの有病率(65歳以上の10〜40%)から推計すると、日本だけで400〜1600万人以上がサルコペニアを有する可能性があります。介護需要・医療費の増大と直結する国策レベルの課題であり、早期発見と運動介入が臨床現場に求められています。
診断基準の変遷(3ステップで押さえる)
筋肉量・筋力・身体機能の3要素で定義する統一診断基準を初めて策定。
「筋力低下」を主要基準に格上げ。筋肉量だけでなく機能低下を重視する方向へ転換。
アジア人向けカットオフ値を採用し、コミュニティ経路と臨床経路の二段階スクリーニングフローを導入。
筋肉量の減少は40歳代から10年ごとに平均5〜8%進行し、65歳以降は年間1〜2%まで加速します。この「静かな進行」こそが、新人セラピストが最も見落としやすいポイントです。

平均年齢87歳の方でも10週間で筋力が125%改善したという研究結果があります。「もう年だから」と諦める前に、まずは現状を正確に評価することから始めましょう。STROKE LABでは神経疾患に特化した評価とプログラム設計を行っています。
メカニズムと神経疾患特有の悪循環。
サルコペニアの背景には①タンパク質合成・分解バランスの破綻②ミトコンドリア機能障害③同化ホルモンの低下④慢性炎症(インフラメイジング)⑤神経筋接合部の退行という5つの生物学的機序が存在します。
① タンパク質合成・分解バランスの破綻
骨格筋のタンパク質合成(アナボリズム)と分解(カタボリズム)の動的平衡が、加齢によって分解優位に傾きます。特にmTORC1(タンパク質合成シグナル)を介した合成反応の鈍化と、ユビキチン-プロテアソーム系(MAFbx・MuRF-1)の活性上昇が主因です。タンパク質合成率は加齢によって約30%低下するとされています[観察研究:Rennie et al. 2010]。
② ミトコンドリア機能障害とエネルギー代謝の低下
ミトコンドリアDNA変異の蓄積・活性酸素種(ROS)の過剰産生・PGC-1α発現低下によって、筋細胞のエネルギー産生能力が低下し、アポトーシス(細胞死)が促進されます。有酸素運動によるミトコンドリア新生(PGC-1α活性化)がサルコペニア予防の生理学的根拠の一つです[観察研究:Holloszy 1967/継続する後続研究]。
③ 同化ホルモンの低下
テストステロン・成長ホルモン(GH)・IGF-1・DHEAは筋タンパク質代謝回転の重要な調節因子です。男性は30歳以降テストステロンが年約1%低下し、女性は閉経後エストロゲンが急落します。運動によるこれらホルモンの急性・慢性的な分泌促進が、運動療法の内分泌学的根拠です。
④ 慢性炎症(インフラメイジング)
IL-6・TNF-α・CRPなどの炎症性サイトカインの持続的上昇(Inflammaging)が、筋タンパク分解の促進・筋衛星細胞の機能低下・インスリン抵抗性の増大を引き起こします。骨格筋自体もマイオカインを分泌し、運動後のIL-6・IL-10・IL-1raなどの抗炎症性因子の増加が「運動は最良の抗炎症薬」と言われる根拠です。
⑤ 神経筋接合部の退行と運動単位の喪失
加齢により脊髄前角の運動ニューロンが選択的に減少し、特にType II(速筋)線維の萎縮・脱神経が顕著になります。Frontera et al.(2000)の縦断研究では、30歳から80歳の間に等速性膝伸展トルクが約50%低下することが示されており[観察研究:Frontera et al. 2000]、これは筋肉量の減少だけでなく神経系の変化によるものが大きいとされています。
[観察研究]Frontera et al. 2000(12年縦断研究):30歳から80歳の間に等速性膝伸展トルクが約50%低下。純粋な筋肉量減少ではなく神経系変化(運動単位減少・興奮性低下)の関与が大きく、神経筋システム全体へのアプローチが不可欠であることを示す。
パーキンソン病における特有の悪循環
パーキンソン病患者のサルコペニア有病率は最大56%[SR/MA:Erceg et al. 2019]、Westerink et al.(2022)では約26%が診断基準を満たし転倒・QOL低下と関連すると報告されています[観察研究:Westerink et al. 2022]。ドーパミン欠乏による不動化と廃用性筋萎縮(完全臥床で筋力が1日1〜2%低下:Berg et al. 1993)、振戦・固縮による酸化ストレス蓄積、嚥下・消化機能障害による栄養不足(レボドパはアミノ酸と腸管吸収を競合)、睡眠障害による夜間の筋分解亢進、うつ・アパシー(約40〜50%に合併:Aarsland et al. 2012)による活動意欲の低下など、複数の経路が相互に悪化し合う負のスパイラルを形成します。DBS(脳深部刺激療法)で症状が改善しても、長年の不活動による筋萎縮は自然には回復せず、積極的な運動介入の併用が不可欠です。
脳卒中後サルコペニアの特殊性
脳卒中後患者のサルコペニア有病率は33〜52%[観察研究:Scherbakov et al. 2013]と、一般高齢者の2〜4倍以上です。脳卒中後サルコペニアは、神経性(麻痺による脱神経萎縮)・廃用性(不活動)・炎症性(全身性炎症)の3要因が重複する点が特徴です。麻痺側の筋肉量は発症後7日間で最大30%低下するとの報告があり、上位運動ニューロン障害による神経性萎縮は単純な廃用性萎縮より速く進行します。加えて、活動制限によって非麻痺側も同時に萎縮すること、急性期の嚥下障害(約50〜70%)による栄養不足、高次脳機能障害(失語症・半側空間無視・注意障害)による活動量の慢性的不足がサルコペニアを加速させます。
鑑別診断。
サルコペニアは「筋肉が減る病態」を包括する概念であり、フレイル・ダイナペニア・悪液質・廃用症候群・オステオサルコペニアなど関連概念との重複が大きく、混同されやすいため整理が必要です。
| 鑑疾患 | サルコペニアとの共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| フレイル | 身体機能低下・握力低下 | 体重減少・疲労感・活動量低下を含むより包括的な脆弱性概念。約80%がサルコペニアと重複 | J-CHS基準/改訂Fried基準 |
| ダイナペニア | 筋力低下 | 筋肉量の減少を伴わず筋力のみ低下。サルコペニアの前駆状態と考えられる | 握力+DXA/BIA(筋肉量は正常) |
| 悪液質(Cachexia) | 筋肉量減少 | がん・慢性疾患に伴い進行が速く、脂肪量も減少。炎症・代謝異常が主因 | 体重変化率・CRP・原疾患の評価 |
| 廃用症候群 | 筋力・筋肉量低下 | 不活動・臥床による急速な萎縮(1〜2週で10〜15%喪失)。脳卒中急性期などで急速発症しサルコペニアを加速させる主要因 | 臥床期間の確認・週単位の筋力変化 |
| オステオサルコペニア | 筋肉量・筋力低下 | サルコペニア+骨粗鬆症の併存。転倒→骨折リスクが飛躍的に増大。高齢女性に多い | 骨密度検査(DXA)の併用 |
評価尺度と採点基準。
AWGS2019は「どこで評価するか」によって2つの経路を設けています。コミュニティ(地域・外来)では簡便なスクリーニングから、臨床(病院・急性期)では精密な測定から評価を開始します。

AWGS2019 診断カットオフ値(項目を完全網羅)
| 項目 | 採点基準(評価方法) | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 筋力(握力) | 握力計で利き手または最大値を測定 | 男性28kg未満/女性18kg未満 | 主要基準(EWGSOP2以降) |
| 身体機能①歩行速度 | 通常歩行速度6mまたは4m | 1.0m/秒未満(男女共通) | 身体機能低下の判定基準 |
| 身体機能②5回CS | 椅子からの5回立ち上がり時間 | 12秒超(男女共通) | 歩行速度測定困難時の代替 |
| 筋肉量①DXA法 | 二重エネルギーX線吸収測定法 | 男性7.0kg/m²未満/女性5.4kg/m²未満 | 筋肉量評価の基準法 |
| 筋肉量②BIA法 | 生体インピーダンス法 | 男性7.0kg/m²未満/女性5.7kg/m²未満 | 臨床現場で使いやすい代替法 |
| ふくらはぎ周径(CC) | 最太部をメジャーで計測 | 34cm未満(男女とも。女性33cm未満とする文献もあり) | DXA/BIA不可時の簡易代替指標(正式なAWGS2019診断基準ではない) |
SARC-F(5項目・自己記入スクリーニング)
| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| S:Strength(筋力) | 5kgの荷物を持ち運ぶ難易度(0〜2点) | 各項目0〜2点 | 難しくない0/やや難しい1/非常に難しい2 |
| A:Assistance(歩行補助) | 部屋を横断する歩行の難易度 | 各項目0〜2点 | 2点=歩行補助具が必要 |
| R:Rise(椅子立ち上がり) | 椅子・ベッドからの立ち上がり難易度 | 各項目0〜2点 | 2点=介助が必要 |
| C:Climb(階段昇段) | 10段の階段昇段の難易度 | 各項目0〜2点 | 2点=昇段不可 |
| F:Falls(転倒) | 過去1年間の転倒回数 | なし0/1〜3回1/4回以上2点 | 合計4点以上でリスク高 |
[観察研究]感度・特異度:Woo et al.(2014)によれば感度22〜30%・特異度91〜99%。陰性であっても除外できない点に注意(MCIDに相当するカットオフの再現性は高い)。
[観察研究]改良版SARC-CalF:ふくらはぎ周径を加えることで感度が60〜65%まで改善(Woo et al. 2014)。地域での大規模スクリーニングに有用。
補助評価法(詳細評価・機能予後の把握に)
立位バランス・4m歩行速度・5回椅子立ち座りの3要素を各0〜4点で採点(合計0〜12点)。8点以下で移動障害・入院・死亡リスクが有意に増大(Guralnik et al. 1994)。
立ち上がり・3m歩行・方向転換・着座を統合評価。12秒超で転倒リスク高、20秒超で屋外歩行困難。パーキンソン病ではON時間帯に実施し方向転換時のすくみ足に注意する。
握力は座位・肘90度屈曲で左右各2回測定し最大値を採用。歩行速度は前後1〜2mの助走路を設け、4〜6m区間の通常歩行を2〜3回測定して平均を採用する。歩行速度は「第6のバイタルサイン」とも呼ばれ、生存率・入院・認知症リスクと関連する(Studenski et al. 2011)。
介入のエビデンス。
サルコペニアに対する介入は、レジスタンストレーニングとタンパク質補給の組み合わせが最高レベルのエビデンスを持ちます。以下に標準的な6ステップの運動プログラムを示します。
AWGS2019基準で現状を定量化し、フレイル・転倒歴・認知機能・服薬(抗精神病薬・降圧薬等)を確認。6分間歩行・30秒CSで基礎体力を把握し安全な開始強度を設定する。
強度:1RMの60〜80%/量:3セット×8〜12回/頻度:週2〜3回/期間:12〜16週。セット間休憩60〜90秒、毎週2.5〜5%の漸進的負荷増加。Peterson et al.(2011)のメタ分析(14試験・424名)では筋肉量+1.1kg・筋力+2.98kgの改善が示されている。
強度:Borg12〜14または最大心拍数の50〜70%/頻度:週3〜5回/量:20〜60分。ミトコンドリア機能改善・心肺機能向上を目的とし、レジスタンストレーニングとの併用で相加効果が期待される。
頻度:週3回以上。片足立ち・タンデム歩行・体幹安定化・太極拳(Sherrington et al. 2017のCochraneレビューで転倒予防に最高レベルのエビデンス)を実施。
重度サルコペニア・運動困難な患者、脳卒中急性期の廃用性萎縮に対し、大腿四頭筋・下腿三頭筋への電気刺激で随意収縮なしに筋収縮を誘発。早期離床困難な患者の筋量・筋力維持を支援する。
歩行しながらの計算・命名課題など。David et al.(2015)の24ヶ月RCTで注意力・ワーキングメモリの有意改善が示されている。パーキンソン病では単一タスクから開始し難易度を段階的に上げる。
3ヶ月の高強度レジスタンストレーニングで87歳の筋力が125%改善
[単独RCT]Fiatarone et al.(1994):n=100・平均年齢87歳の特養入所者。10週間の高強度レジスタンストレーニング(膝伸展・膝屈曲・ヒップ伸展)で介入群の筋力が125%以上改善(対照群は3%未満)。歩行速度・階段昇降速度・自発的身体活動量も有意に改善した。「高齢すぎる」「重症すぎる」で介入を諦める必要はないことを示す代表的な研究である。
栄養介入:アナボリックレジスタンスへの対応
高齢者は若年者と同量のタンパク質・同強度の運動でも、筋タンパク質合成反応が若年者比30〜40%鈍化する「アナボリックレジスタンス」を有します[観察研究:Burd et al. 2013]。この状態への対策として、①1回の食事で25〜40gのタンパク質(若年者の20gより多め)②ロイシン含有量の高い良質タンパク質(ホエイ等)③運動後30〜60分以内の摂取、が推奨されます。PROT-AGE Study Group(2013)はタンパク質摂取目標を1日1.2〜1.5g/kg(重篤な場合は最大2.0g/kg)と提言しています[専門家合意:Bauer et al. 2013]。

[単独RCT]パーキンソン病の高強度RT:Allen et al.(2010)は3セット×8〜10回・1RMの80%の高負荷レジスタンストレーニングが安全に実施でき、筋力・歩行・QOLを改善したと報告。ON時間帯に実施し、起立性低血圧の確認・固定式マシンの使用が推奨される。
[専門家合意]脳卒中後の時系列対応:急性期(0〜2週)はNMES・ポジショニング・48時間以内の早期離床・経腸栄養開始。回復期(2週〜3ヶ月)は漸進的レジスタンストレーニング・歩行訓練・タンパク質1.2〜1.5g/kg/日。生活期(3ヶ月以降)はAWGS2019の定期評価と継続的な自費リハビリ介入が推奨される。NIHSSが改善しても筋肉量・筋力は自然回復しない点に注意する。

パーキンソン病や脳卒中があっても、適切な強度・頻度で運動すれば筋力は改善します。STROKE LABでは疾患特性を踏まえた個別のパラメータ設計を行っています。
多職種連携と環境調整。
サルコペニアは単一職種では解決できない
サルコペニアの背景には運動器・栄養・嚥下・認知・環境要因が複雑に絡み合っており、PTだけの介入では不十分です。特にレボドパ服薬タイミングとタンパク質摂取の調整、嚥下障害への対応は多職種での情報共有が不可欠です。
「握力や歩行速度が改善しても、体重が増えていなければ栄養面の再確認が必要です。運動だけでは筋肉は作れません。」
「パーキンソン病の患者さんには、必ず服薬時間を確認してからプログラムを組んでください。OFF時間に無理に運動させると転倒リスクが跳ね上がります。」
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 握力・歩行速度・TUG・SPPB | レジスタンストレーニング・歩行訓練・バランス訓練・転倒予防指導 | 服薬タイミング(ON/OFF)を医師・看護師と共有 |
| OT | ADL動作・手指巧緻性・活動量 | ADL再学習(視覚キュー活用)・環境調整・活動量向上プログラム | PTの筋力データを日常動作の難易度設定に反映 |
| ST | 嚥下機能(VF/VE)・コミュニケーション | 口腔機能訓練・嚥下訓練・食形態調整の提案 | 管理栄養士へ摂取可能な食形態・量を共有 |
| 看護師 | バイタル・服薬状況・皮膚状態 | 運動前後のバイタル確認・起立性低血圧の監視・服薬管理 | PT/OTへ運動可否のリアルタイム共有 |
| 医師 | 原疾患の重症度・合併症・DXA/BIA指示 | 薬物調整・DXA/BIA等の精査指示・運動処方の許可 | リハビリチームからの機能評価結果を治療方針に反映 |
| MSW | 生活環境・介護保険サービス利用状況 | 通所・訪問サービスの調整、住環境整備の相談 | 継続的な運動機会の確保をPTと連携して調整 |
| 管理栄養士 | タンパク質・エネルギー摂取量・体重変化 | タンパク質1.2〜1.5g/kg/日の達成計画、レボドパ服薬と食事タイミングの調整 | STから嚥下可能食形態を、医師から服薬時間を共有してもらう |
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
サルコペニア評価・介入において、新人セラピストが特に陥りやすい3つの落とし穴を整理します。
臨床判断の軸を持つ
「評価は一度ではなく、必ず4週・8週・12週で再測定してください。数字の変化がモチベーションにもなり、プログラム修正の根拠にもなります。」
「体重が増えているのに筋力が増えていない場合は、脂肪の増加や浮腫を疑ってください。数字だけでなく、体組成の変化も含めて評価する視点を持ちましょう。」
予後とゴール設定。
サルコペニアは「完全な治癒」よりも「進行を止め、機能を改善する」ことが現実的な目標です。ただし早期(プレサルコペニア段階)での介入ほど効果が高く、進行してからの回復よりも効率的であることは強調しておくべきポイントです。
ON時間帯のレジスタンストレーニング(週2回)・RAC歩行訓練・バランストレーニング・栄養管理(タンパク質1.3g/kg/日目標)を12週間実施した結果、握力24.8kg(+2.3kg)、歩行速度0.92m/秒(+0.2m/秒)、TUG13.8秒(-4.4秒)、SPPB8点(+3点)、体重+1.5kgと全指標が改善し、転倒はゼロだった。介護施設入所の検討は取り下げとなり、外来通所を活用した在宅生活の継続に至った。
ゴール設定は「握力を◯kg改善する」といった単一指標だけでなく、歩行速度・SPPB・TUGなど複数の機能指標と、実際の生活場面(転倒回数・介護度)を組み合わせて評価することが、新人セラピストにも実践しやすい方法です。数値目標と生活目標をセットで提示することで、患者・家族との合意形成もしやすくなります。
よくある質問。
サルコペニアは握力・歩行速度・筋肉量という測定値で定量的に診断される症候群です。フレイルはFriedの表現型基準(体重減少・疲労感・活動量低下・歩行速度低下・握力低下の5項目)で評価される、より包括的な脆弱性の概念です。フレイル患者の約80%にサルコペニアが合併するとされ、両者は大きく重複します。併存が疑われる場合はAWGS2019とJ-CHS基準(または改訂Fried基準)を並行して評価し、介入は運動療法・栄養管理・社会参加支援を組み合わせた包括的アプローチが最も効果的です。
否定できません。SARC-Fの感度は22〜30%と低く、多くのサルコペニアを見逃します。一方で特異度は91〜99%と高く、陽性であればサルコペニアの可能性は高いと言えます。Woo et al.(2014)は、SARC-Fにふくらはぎ周径を加えたSARC-CalFで感度が60〜65%まで改善したと報告しています。陰性であっても臨床的に疑わしい場合は、握力・歩行速度など客観的指標での再評価を検討してください。
適切な監視のもとで実施すれば安全であり、むしろ推奨されます。Allen et al.(2010)のランダム化比較試験では、パーキンソン病患者への高負荷レジスタンストレーニング(3セット×8〜10回・1RMの80%)が安全に実施でき、筋力・歩行機能・生活の質を有意に改善したと報告されています。実施時はON時間帯(薬効ピーク時)に行うこと、起立性低血圧を運動前後で確認すること、固定式マシンを使用すること、疲労や疼痛の自覚症状を確認しながら漸進的に負荷を上げることが重要です。
PROT-AGE Study Group(2013)の推奨に基づくと、目標は1日1.2〜1.5g/体重kgです。1回の食事で25〜40gを、ロイシンを多く含む良質なタンパク質から摂取し、運動後30〜60分以内に摂ることでタンパク質合成が最大化されます。プロテインサプリは食事だけで目標量に届かない場合の補助として有用ですが必須ではありません。ホエイプロテインは吸収が速くロイシン含有量が高いため高齢者に適していますが、腎機能低下がある場合は摂取量の調整について主治医・管理栄養士と連携してください。
強い関連があります。骨格筋由来のマイオカイン(イリシンやBDNF前駆体など)が脳の神経新生・シナプス可塑性を促進するとされ、筋肉量の低下はこの保護因子の減少につながる可能性があります。加えて身体活動量の低下による脳血流の低下、慢性炎症やインスリン抵抗性という共通のリスク因子も両者を同時に悪化させます。Cederholm et al.(2022)のレビューでは、サルコペニアを有する高齢者の認知症発症リスクは約1.7倍高いと報告されています。運動介入は身体機能だけでなく認知機能の保護にも寄与する可能性があります。
回復には積極的な介入が前提となり、自然回復は非常に遅いことが知られています。Berg et al.(1993)の報告では、完全臥床によって筋力は1日あたり1〜2%低下し、1〜2週間の臥床で10〜15%の筋力喪失が生じるとされます。これを回復するには喪失に要した期間の数倍、目安として2〜6週間以上の期間が必要になることが多く、高齢者や既にサルコペニアがある場合はさらに時間を要します。Long COVID後は労作後倦怠感(PEM)を避けるペーシングを意識した段階的な運動再開が重要です。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、パーキンソン病・脳卒中後遺症をはじめとする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。AWGS2019準拠の定量評価から、疾患特性・服薬パターン・生活環境を踏まえた完全オーダーメイドの運動・栄養プログラムまで、PT・OT・ST・管理栄養士が連携して一貫サポートします。
— STROKE LABの実際のリハビリの様子をご覧いただけます。
「Hoehn-Yahr Stage IIIの利用者さんで、握力22.5kg・歩行速度0.72m/秒という数値を見た時、まず服薬タイミングを確認してON時間帯にレジスタンストレーニングを組みました。当初は転倒リスクを懸念して負荷を抑えがちでしたが、固定式マシンと監視下であれば高負荷でも安全に実施できることを実感し、12週間で握力・歩行速度・TUGすべてが改善しました。『重症だから運動は控えめに』という思い込みを自分自身が超える経験になりました。」— 理学療法士・神経疾患担当7年目
「脳卒中後の利用者さんで、麻痺側だけでなく非麻痺側の筋力もかなり低下しているケースがありました。麻痺側の回復に意識が向きがちでしたが、両側の握力・下肢筋力を測定し直し、非麻痺側にも十分な負荷をかけるようプログラムを修正した結果、歩行の安定性が明らかに改善しました。『麻痺側だけ見てはいけない』という視点を新人時代に持てていたら、もっと早く気づけたはずだと感じています。」— 作業療法士・脳血管疾患担当5年目
実際にSTROKE LABで評価・介入を受けた方からも、次のような声をいただいています。72歳女性・脳卒中後遺症の方は、握力・歩行速度が基準以下と分かったことで「本当に筋肉が落ちていたんだ」と実感し、3ヶ月間のレジスタンストレーニングと栄養指導の結果、友人と公園を歩けるようになりました。68歳男性・パーキンソン病Hoehn-Yahr Stage IIの方は、ON時間帯の安全なレジスタンストレーニングにより、4ヶ月で5回椅子立ち座りが18秒から12.5秒まで改善したと報告しています。
諦めないでください。

筋肉量の低下は、パーキンソン病や脳卒中があってもなくても、適切な評価と運動・栄養介入によって改善が見込める領域です。平均年齢87歳の方でも筋力が125%改善した研究があるように、「もう年だから」「病気だから」で可能性を諦める必要はありません。
STROKE LABでは、数字で現状を見える化し、疾患特性に合わせたプログラムを設計することを大切にしています。
ご本人・ご家族が「まだできることがある」と実感できるリハビリを、一緒に作っていきたいと考えています。まずは無料相談で、現状を確認してみませんか。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)