アテトーゼ型・失調型の脳性麻痺|不随意運動と姿勢の不安定さ
揺れや不随意運動を、姿勢の土台づくりから考える
「体が勝手に動いてしまう」「座ると崩れる」「歩くとふらつく」——アテトーゼ型・失調型の脳性麻痺では、手足だけでなく、姿勢・視線・呼吸・緊張・疲労が動きに影響します。大切なのは、動きを無理に止めることではなく、本人の意図した動きが出やすい姿勢条件を見つけることです。

「勝手に動く」「ふらつく」は、本人の努力不足ではありません。
アテトーゼ型・失調型の脳性麻痺では、本人がやろうとしている動きと、実際に体に出る動きがずれることがあります。手を伸ばしたいのに体が反る、口を動かしたいのに顔や舌が動きすぎる、座っていたいのに骨盤が崩れる。保護者の方から見ると、「力が入りすぎている」「落ち着きがない」「体幹が弱い」と見えるかもしれません。
けれど、それは本人の気持ちや努力だけの問題ではありません。脳から体へ送る動きの調整が難しく、姿勢の不安定さがさらに動きを大きくしていることがあります。
脳性麻痺は、運動と姿勢に影響する状態です。同じ脳性麻痺でも、つっぱりが中心の痙直型、動きのコントロールが難しいジスキネジア型、バランスと協調が難しい失調型など、見え方は大きく異なります。この記事では、アテトーゼ型・ジスキネジア型・失調型に焦点を当て、生活の中で何を見て、どのように関わるかを整理します。
急な顔色の変化、呼吸の異常、けいれん様の動き、哺乳不良、急な片麻痺、意識がぼんやりする、強い頭痛や嘔吐などがある場合は、リハビリや家庭対応よりも医療が優先です。自己判断せず、すぐに医療機関へ相談してください。
アテトーゼ型・失調型とは、どんなタイプか。
現在の説明では、アテトーゼ型はジスキネジア型の一部として扱われることがあります。ジスキネジア型では、本人の意思とは別に手足・顔・舌などが動いたり、筋緊張が硬さと柔らかさの間で変動したりします。動きは、ゆっくりうねるように見えることもあれば、急に力が入るように見えることもあります。
失調型では、バランスや協調運動が難しくなります。立つ、歩く、手を伸ばす、コップを持つ、鉛筆を使うといった動作で、距離感や力加減、タイミングが合いにくくなります。ゆっくりならできるのに、急ぐと崩れる。近くなら届くのに、少し遠いとふらつく。このような形で生活の中に現れます。

| タイプ | 見えやすい特徴 | 生活で困りやすい場面 |
|---|---|---|
| アテトーゼ型・ジスキネジア型 | 不随意運動、緊張変動、顔・舌・手足の動きすぎ、努力時の反り返り | 食事、発音、手を伸ばす、書く、着替える、座り続ける |
| 失調型 | ふらつき、距離感のずれ、力加減の難しさ、動作時の震えやぎこちなさ | 歩行、階段、手先操作、コップ飲み、体育、姿勢保持 |
| 混合型 | つっぱり、不随意運動、ふらつきが組み合わさる | 場面によって困り方が変わるため、型名だけでは判断しにくい |
なぜ、動きが不安定になるのか。
体を動かすとき、脳は「どの筋肉を、どの順番で、どのくらいの強さで使うか」を調整しています。アテトーゼ型・ジスキネジア型では、この出力の調整が揺れやすく、必要以上の動きや緊張が混じることがあります。失調型では、動きの距離・タイミング・力加減をそろえることが難しく、ふらつきや震え、ぎこちなさにつながります。
ここで大切なのは、手足だけを見ないことです。手を伸ばす動作でも、実際には頭の位置、体幹の支え、骨盤の傾き、足の接地、視線、呼吸、椅子や机の高さが関わります。姿勢が不安定なまま頑張るほど、余分な動きが増えてしまうことがあります。
同じお子さんでも、背もたれの有無、足底の接地、机の高さ、保護者の声かけ、時間帯、疲労の程度で動きは変わります。家庭で観察したいのは、「できる・できない」の判定ではなく、「どの条件なら本人の動きが出やすいか」です。

不随意運動を「止める」より、動きが出しやすい条件を探す。
STROKE LABでは、アテトーゼ型・失調型のお子さんを見るとき、まず「不随意運動そのもの」だけを追いかけません。なぜなら、動きは環境と課題によって変わるからです。椅子に座ると大きく反るのに、床座位では落ち着く。広い空間ではふらつくのに、机に手を置くと手が使いやすい。こうした変化の中に、支援のヒントがあります。
不随意運動を力で抑えると、本人の動きたい意図まで止めてしまうことがあります。専門的に見るべきなのは、どの支え方なら、余分な動きが少なくなり、本人が選んだ動きが出るかです。
| 見方 | 確認すること | 支援につながる視点 |
|---|---|---|
| 姿勢 | 頭・体幹・骨盤がどこで崩れるか | 座面、足台、背もたれ、手の支持を調整する |
| 課題 | 距離・速さ・重さ・回数で動きが変わるか | 成功しやすい難易度から生活動作へ広げる |
| 環境 | 音、視覚刺激、時間帯、疲労で変化するか | 家庭・学校で再現できる条件にする |
研究でわかっていること。
脳性麻痺の子ども・若者の身体機能を高める介入についての国際的なガイドラインでは、本人と家族が選んだ目標をもとに、実際の動作全体を練習することが重要とされています。アテトーゼ型・失調型でも、「不随意運動を止める」だけでなく、座る、食べる、書く、歩く、遊ぶなど、生活の中で使える動きへつなげる視点が大切です。
限界:研究の多くは脳性麻痺全体を対象にしており、アテトーゼ型・失調型だけに限定した結果ではありません。効果には個人差があり、年齢、重症度、併存症、疲労、練習量、環境で変わります。リハビリは診断・投薬・ボツリヌス療法・手術などの医学的治療の代替ではありません。
このため、STROKE LABでは「手を動かす練習」「体幹を鍛える練習」と分けすぎず、生活の目的から逆算します。たとえば「食事でスプーンを使いたい」なら、手首や指だけでなく、座位、骨盤、足台、机の高さ、食具の重さ、声かけの量まで含めて設計します。
専門リハで取り組めること。
アテトーゼ型・失調型のお子さんでは、動きの量を減らすことだけが目的ではありません。姿勢を整え、課題を調整し、本人の意図した動きが生活で使えるように組み立てます。
座位・立位・抱っこ・椅子・足台・支持面を調整し、余分な緊張や不随意運動が出にくい条件を探します。
手を伸ばす、食べる、書く、歩くなど、生活の目標に合わせて距離・速さ・重さ・姿勢を設定します。
疲労、緊張、姿勢保持、机・椅子、食具、遊び方を調整し、家庭や学校で「できた」が増える形にします。
個人差が大きく、発達・成長・疲労・治療経過で状態は変わります。医学的な判断は主治医と相談し、STROKE LABではその方針を尊重しながら、姿勢・動作・生活参加の側から支援します。

家庭・学校でできる関わり。
家庭で大切なのは、「もっと頑張らせる」ことではなく、動きが出しやすい条件を見つけることです。椅子に座る時間、足台の高さ、机との距離、声かけの量、食具の重さ、遊びの速さを少し変えるだけで、動きが落ち着くことがあります。
- 足裏が床や足台につくと、手の動きは落ち着くか
- 背もたれがある方が、食事や書字がしやすいか
- 机の高さを変えると、肩や首の力みが減るか
- 急いだとき、緊張したとき、疲れたときに動きが増えるか
- 片手で支えると、もう一方の手が使いやすくなるか
- 音や人の多さで、ふらつきや不随意運動が変わるか
- できた場面を短い動画で残し、主治医や療法士に共有できるか
学校では、姿勢保持だけでなく、疲労の出方、教室の刺激、机椅子、書字量、体育や給食での困りごとを共有することが大切です。支援は一律ではなく、「何をすると崩れるか」「何があると安定するか」を具体的に伝えると、先生や支援者と協力しやすくなります。
よくある質問。
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。小児リハでは、姿勢・運動・感覚・生活環境をつなげて、お子さんの発達段階に合わせた関わりを組み立てます。アテトーゼ型・失調型では、手足だけでなく、頭・体幹・骨盤・支持面・視線・疲労を含めて、本人の意図した動きが出やすい条件を一緒に探します。
生活の「できた」につなげる。

アテトーゼ型・失調型のお子さんでは、動きが大きく揺らぐ日もあれば、落ち着いて使える日もあります。その変化を「よい日・悪い日」で終わらせず、どの姿勢・どの課題・どの環境なら動きが出やすいかを一緒に見つけていくことが大切です。
STROKE LABでは、機能解剖と動作分析をもとに、姿勢、支持面、手の使い方、歩行、家庭や学校での工夫をつなげます。医療機関での治療方針を尊重しながら、生活の中で「できる」を増やすために併走します。
不随意運動やふらつきのあるお子さんの姿勢・動作・生活場面を整理したい方は、どうぞ一度ご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

本記事の背景には、脳の機能解剖を臨床動作へつなげる考え方があります。お子さんの動きも、単なる筋力や努力だけではなく、脳・姿勢・感覚・環境のつながりとして捉えることが大切です。
- 脳性麻痺の子どものリハビリ|動作分析で見る運動発達の可能性
- 痙直型脳性麻痺|つっぱりを運動から理解する
- GMFCSとは|脳性麻痺の運動機能レベルと将来の見通し
- 脳性麻痺の子どもの歩き方|はさみ足・尖足を運動分析から支える
- 脳性麻痺の子どもの装具と靴|成長に合わせた見直し方
本記事は、国内外の公的情報・臨床実践ガイドライン・研究レビューと、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず主治医・小児科医にご相談ください(最終確認日:2026年7月7日)。
- Centers for Disease Control and Prevention. About Cerebral Palsy. Updated 2026.
- American Academy for Cerebral Palsy and Developmental Medicine. Cerebral Palsy and Dystonia Care Pathway.
- Jackman M, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children with Cerebral Palsy. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)