寝返り返りができない赤ちゃん|戻る動きと体幹回旋の発達
反対へ回るには、頭を持ちあげるだけでなく下側の腕を抜きながら体をほどく力が必要です
「寝返りでうつ伏せにはなるのに、自分で仰向けへ戻れない」「苦しくなって泣くたびに戻している」——寝返り返りが見られないと、発達の遅れや睡眠中の安全が心配になるかもしれません。けれども、寝返り返りだけで発達の良し悪しは判断できません。月齢だけでなく、頭の向き、腕の支持、片側への重心移動、胸郭と骨盤のつながりを見ながら、家庭でできることと相談目安を整理します。

寝返り返りとは?いつ頃できる?
「寝返り返り」は、一般にうつ伏せから仰向けへ戻る動きを指す育児上の呼び方です。仰向けからうつ伏せになる寝返りと区別するために使われますが、医学的に独立した必須マイルストーンとして、全員に共通する開始時期や獲得順序が定められているわけではありません。
CDCは、6か月頃に多くの赤ちゃんが示す運動項目として「うつ伏せから仰向けへ転がる」を挙げています。CDCの項目は、その年齢までに少なくとも約75%の子どもに見られると考えられる観察項目であり、平均月齢や締切ではありません。また、正式な発達スクリーニングや診断の代わりになるものでもありません。
月齢に加えて、うつ伏せで頭を上げられるか、前腕や手で支えられるか、左右へ体重を移す動きが増えているか、ほかの姿勢や遊びが広がっているかを合わせて見ます。早産の場合は修正月齢も参考にします。
寝返りはできるのに、戻れない理由。
赤ちゃんがうつ伏せから戻らない理由は一つではありません。体幹の筋力だけで説明すると、実際にどの局面で動きが止まっているのかを見落とします。寝返り返りは、姿勢を安定させることと、その安定を一時的に崩して回転へ移ることの両方が必要な動きです。
うつ伏せが安定し、周囲を見たり玩具で遊んだりできると、すぐに仰向けへ戻ろうとしないことがあります。「できない」と「今は戻らない」を分けて見ます。
両腕で床を強く押して姿勢を保つほど、回転のために片側の腕を軽くしたり、胸の下から抜いたりすることが難しくなる場合があります。
真ん中で安定できても、片方の肘や胸へ体重を移せないと、反対側の肩や骨盤が床から離れにくくなります。左右で得意さが違うこともあります。
沈み込む寝具、滑りやすいシーツ、摩擦の強い衣服では、同じ赤ちゃんでも動き方が変わります。環境で変わるかどうかも大切な観察です。
ほかにも、疲れや眠気、空腹、授乳直後、腹ばい経験の少なさ、その日の機嫌などで変化します。反対に、どの条件でも強い左右差が続く、いつも同じ腕が体の下に残る、頭を上げること自体が難しい場合は、寝返り返りだけでなく関連する姿勢を含めて相談すると安心です。
戻る動きをつくる、5つの構成要素。
寝返りは全身運動です。頭だけ、体幹だけ、脚だけで完成するのではなく、床に接している部分を支えにしながら、別の部分を動かし、重心を移していきます。研究でも、乳児は一つの決まった方法ではなく、複数の手足の組み合わせを使って寝返ることが示されています。
顔を横へ向け、視線や頭の重さが回転のきっかけになるかを見ます。
前腕や手で姿勢を支えられるか、支持に使う腕を切り替えられるかを見ます。
片方の肘・胸・骨盤へ体重を移し、反対側を床から軽くできるかを見ます。
腕が胸の下に残らず、回転を妨げない位置へ動かせるかを見ます。
上半身だけ、骨盤だけで止まらず、全身が時間差を持ってつながるかを見ます。
一つの正解動作より、条件に応じて試し方が増えているかを重視します。
たとえば腕が抜けない場面でも、腕の力が弱いとは限りません。うつ伏せを安定させるために、その腕を「動かさない支え」として使い続けている可能性があります。その場合は、力をつける前に、反対側へ体重を移して支持を切り替えられる条件があるかを確認します。

生後5〜10か月頃の乳児を調べた研究では、手足を動かす順番や、姿勢を支えるために床へ残す手足の組み合わせに複数のパターンが見られました。経験が増えると、より少ない支持で効率よく回転する傾向も報告されています。
出典:Kobayashi Y, et al. Exp Brain Res. 2016;234(12):3433-3445./Kobayashi Y, et al. Exp Brain Res. 2021;239(9):2887-2904. 限界:健康な乳児の実験環境で観察された研究であり、個々の赤ちゃんの診断や、特定の寝返り方法を推奨するものではありません。
家庭でできるのは、完成形の練習より「試せる条件」づくり。
家庭で大切なのは、仰向けへ戻る完成形を教え込むことではありません。赤ちゃんが自分で頭を向け、腕の支持を変え、片側へ体重を移す経験をつくります。日中、起きていて、大人がすぐそばで見守れる時間に行ってください。
沈み込まないプレイマットなどを使い、赤ちゃんの全身が動ける広さを確保します。
大きく遠くへ動かさず、目と頭が自然に横へ向く位置から始めます。左右を入れ替えて反応を比べます。
腕が胸の下に深く入り続けるときは、強く引かず、肘や前腕が体の横から少し前に来る位置へ置き直します。
長時間続けるより、機嫌がよく試行錯誤できる短い時間を複数回つくります。泣き続ける場合は姿勢を変えます。
避けたい関わり
| 避けたい方法 | 避ける理由 | 代わりに行うこと |
|---|---|---|
| 腕を引っ張って仰向けへ返す | 肩や肘へ負担をかけ、本人の重心移動を省略します | 腕の位置を整え、頭や玩具の方向へ自分で体重を移す時間を待ちます |
| 頭や骨盤を強く押して回す | どの局面で止まっているか分からなくなり、受け身の動きになります | 必要なら体を支える程度にし、反応が出なければその日は終えます |
| 泣いても回数を続ける | 腹ばいへの嫌悪や親子双方の負担を強める可能性があります | 短く区切り、抱っこや横向き遊びを挟みます |
| 柔らかい布団や傾斜で練習する | 顔が沈みやすく、体を支える条件も変わります | 起きている時間に、硬く安定した床面で行います |
| 得意な方向だけを繰り返す | 左右の経験差が大きくなり、反対側の変化に気づきにくくなります | 玩具や保護者の位置を入れ替え、左右の反応を観察します |
16研究・計4,237人をまとめた系統的レビューでは、起きている時間の腹ばい経験は、粗大運動発達や、腹ばい・仰向けでの移動、寝返りなどと正の関連を示しました。
出典:Hewitt L, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168. 限界:対象は主に健康な0〜12か月児で、多くは観察研究です。腹ばい時間を増やせば寝返り返りを必ず獲得できると示した研究ではなく、個人差があり、医療評価や治療の代わりにはなりません。

日中の腹ばい遊びと、睡眠中のうつ伏せは分けて考える。
日中の腹ばい遊びは、起きていて大人が見守っている時間に行います。夜間や昼寝では、1歳までは仰向けに寝かせ始め、硬く平らな寝床を使い、顔の周りに枕・クッション・ぬいぐるみ・タオル・柔らかい掛け物などを置かないことが基本です。
睡眠中にうつ伏せになっていることに気づいた際は、仰向けへ戻して構いません。赤ちゃんを位置固定具で拘束するのではなく、安全な寝床を整えます。
仰向けで寝かせ始めた後に、赤ちゃんが自分で選んだ姿勢を保てるとされています。寝床の安全条件は変わりません。
睡眠中に腕や体を包んだ状態でうつ伏せになると、姿勢を変えたり顔を動かしたりしにくくなります。寝返り防止ベルト、傾斜のある睡眠用品、柔らかい位置固定具に頼らないでください。

呼吸が苦しそう、顔色や唇の色が悪い、反応が弱い、けいれんのような動き、急に片側の手足を動かさない、哺乳が急に悪くなった場合は、医療機関への相談を優先してください。
様子を見られることと、相談したいサイン。
寝返り返りだけで、発達の遅れや病気を判断することはできません。数週間の中で、姿勢の安定、頭の向き、腕の使い方、左右への重心移動などに小さな変化があるかを見ます。
| 経過を見られることが多い様子 | 健診・小児科・発達相談で共有したい様子 |
|---|---|
| うつ伏せで頭を上げ、左右へ顔を向けられる | うつ伏せで頭を上げにくい、顔を一方向にしか向けにくい |
| 前腕や手で支え、玩具へ手を伸ばす様子がある | 前腕や手で支える様子が増えない、一方の腕をほとんど使わない |
| 得意な方向はあるが、反対側も時々試す | いつも同じ方向だけで、反対側では頭・腕・脚の動きも少ない |
| 床面や機嫌によってできたりできなかったりする | どの条件でも同じ局面で止まり、数週間変化がない |
| ほかの遊びや姿勢が少しずつ広がっている | できていた寝返りや手足の動きをしなくなった |
| 抱き上げると落ち着き、呼吸・顔色・哺乳は普段通り | 極端な硬さ・柔らかさ、呼吸・顔色・哺乳の変化、けいれん様の動きがある |
専門家の評価で分かるのは、「戻れない理由の名前」ではなく、動きが止まる条件。
評価の目的は、寝返り返りができないことへ病名を付けることではありません。家庭で見えている「戻れない」を、観察できる要素へ分け、何を経過として見て、何を医療へ共有するかを整理することです。
| 観察される様子 | 確認するポイント | 家庭で見直す変化 |
|---|---|---|
| 頭は横を向くが体がついてこない | 頭の向きだけでなく、肩甲帯へ体重が移るか、反対側の肩が軽くなるか | 玩具の位置を変えた時に、肩や胸の動きまで広がるか |
| 一方の腕が胸の下に残る | その腕が弱いのか、姿勢を守る支持として残しているのか、反対側へ重心を移せるか | 肘の位置を整えた時や床面を変えた時に、腕が解放されるか |
| 上半身だけ回って骨盤が残る | 胸郭と骨盤の回転の時間差、脚の接地、腹部が床から離れる条件 | 疲れる前と後で、骨盤の追従や脚の使い方が変わるか |
| 片側では戻れるが反対側で止まる | 頭の向き、片腕の支持、骨盤・脚の動き、普段の抱っこや玩具位置の偏り | 左右で成功率が近づくか、反対側の試行が増えるか |
| 家では戻れないが別の場所では戻る | マットの硬さ、摩擦、衣服、玩具までの距離、周囲の刺激 | 条件を一つずつ変えた時に、どの要素が動きを助けるか |
赤ちゃんが寝返るとき、すべての手足を同時に動かすわけではありません。姿勢を安定させるために床へ残す部分と、回転をつくるために動かす部分を選びます。そこで評価では、成功した一回だけでなく、どの腕や脚を支持として残すか、方向を変えると選び方が変わるか、疲労後に支持が増えて動きが固くなるかを比べます。
さらに、硬いマットと柔らかい寝具、薄い衣服と摩擦の強い衣服など、条件差による変化を見ます。環境を変えるだけで動ける場合と、どの条件でも同じ左右差が続く場合では、次に確認する内容が異なるからです。一定期間後には、同じ床面・同じ方向・同じ玩具位置で動画を撮り、成功の有無ではなく、試し方が増えたかを再評価します。
寝返り返りができないという情報だけで、筋緊張や神経発達の問題を判断することはできません。強い左右差、退行、呼吸・哺乳・全身状態の変化がある場合は医療・健診を優先し、私たちは必要に応じて家庭動画や動作観察を通して併走します。
STROKE LABでは、家庭動画と実際の動きを確認し、頭・腕・胸郭・骨盤のつながり、左右差、床面などの条件を整理します。診断や健診の代わりではありませんが、「次に何を見ればよいか」が分からないときに、保護者と一緒に観察の焦点を整えます。
よくある質問。
Q. 寝返り返りは何か月頃にできるものですか?
Q. 寝返りはできるのに、寝返り返りができなくても大丈夫ですか?
Q. 寝返り返りの練習は必要ですか?
Q. 片方向にしか寝返り返りをしない場合は相談した方がよいですか?
Q. 睡眠中にうつ伏せになったら、毎回仰向けへ戻すべきですか?
Q. どのような様子があれば、小児科や発達相談へ相談すべきですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。乳児の姿勢や動きについては、病名を決めつけるのではなく、家庭で見えている困りごとを動作の要素へ分け、受診・健診で伝えたい情報と、生活の中で観察するポイントを整理します。医療機関での診断や治療を尊重し、生活と動きの側から併走します。
わが子を見つめる視点へ。

赤ちゃんの発達を見ていると、一つの動きができないだけでも、大きな不安になることがあります。特に寝返り後は、うつ伏せから戻れず泣く姿や、睡眠中の姿勢が心配になるでしょう。
私たちが大切にしているのは、一つの達成だけで判断せず、今どのような試行錯誤が育っているかを見ることです。頭、腕、胸郭、骨盤、床面との関係を丁寧に見ると、保護者が家庭で確認できる変化も見つけやすくなります。
医療・健診が先に必要なサインを見逃さず、そのうえで家庭での関わりを整理したいときは、一緒に考えていきます。
代表取締役 金子 唯史

動きを「できる・できない」で終わらせず、姿勢、感覚、支持面、身体各部のつながりとして捉える視点を解説しています。本記事の動作分析も、この機能解剖の考え方を乳児の発達観察へ応用しています。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 5か月で寝返りしない赤ちゃん|家庭での関わりと相談目安
- 6か月で寝返りしない赤ちゃん|遅れの見方と相談目安
- 発達相談で見せる動画の撮り方|赤ちゃんの姿勢・動きを伝えるコツ
本記事は、国内外の公的情報、乳児の運動発達研究、STROKE LABの臨床的な動作観察、および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、主治医・小児科医・乳幼児健診へご相談ください(最終確認日:2026年8月3日)。
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 6 Months. https://www.cdc.gov/act-early/milestones/6-months.html(6か月頃の観察項目)
- Centers for Disease Control and Prevention. Key Points about CDC’s Developmental Milestone Checklists. https://www.cdc.gov/act-early/milestones/key-points.html(75%基準とスクリーニングとの違い)
- American Academy of Pediatrics. Back to Sleep, Tummy to Play. HealthyChildren.org. https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/baby/sleep/Pages/back-to-sleep-tummy-to-play.aspx
- National Institute of Child Health and Human Development. About Back Sleeping. Safe to Sleep. https://safetosleep.nichd.nih.gov/reduce-risk/back-sleeping(寝返り後の睡眠姿勢・おくるみ中止)
- 消費者庁.Vol.640 就寝時の窒息事故に注意しましょう.2023.https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20231102/
- Hewitt L, Kerr E, Stanley RM, Okely AD. Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
- Kobayashi Y, Watanabe H, Taga G. Movement patterns of limb coordination in infant rolling. Exp Brain Res. 2016;234(12):3433-3445.
- Kobayashi Y, Yozu A, Watanabe H, Taga G. Multiple patterns of infant rolling in limb coordination and ground contact pressure. Exp Brain Res. 2021;239(9):2887-2904.
- Moon RY, Carlin RF, Hand I, et al. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics. 2022;150(1):e2022057990.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)