きょうだいに発達が気になる子がいる家庭へ|家族全体の関わりの整え方
その子だけではなく、家族全体が無理なく続けられる支援を考えます
「下の子ばかりに手がかかって、上の子を我慢させている気がする」「きょうだいが“ずるい”と言うようになった」——発達が気になる子の支援は、本人だけで完結しません。大切なのは、きょうだいに理解や我慢を求める前に、家族全体が安心して過ごせる動線を整えることです。

家族の中で、起こりやすい悩み。
発達が気になる子がいる家庭では、本人のかんしゃく、感覚過敏、切り替えにくさ、通院や療育の予定が、家族全体の生活リズムに影響します。親はその子の安全や支援を優先せざるを得ず、きょうだいは「また待つの?」「自分は後回し?」と感じることがあります。
これは、親の愛情が足りないからでも、きょうだいの理解が足りないからでもありません。家庭の中で、誰かが毎回我慢する動線になっていると、怒りや寂しさが積み重なります。
発達が気になる子への支援は、本人の困りごとを減らすだけではなく、きょうだいと親の安心感を守ることまで含めて考える必要があります。特に、かんしゃくやパニックが起きたときに、きょうだいがどこへ行けばよいか、誰に話せばよいか、どの時間なら親を独占できるかが見えないと、不公平感が強くなりやすくなります。
この記事では、きょうだいの気持ちを大切にしながら、家庭で今日から整えやすい「説明」「逃げ場所」「親子時間」「役割の外し方」「相談先」を整理します。
きょうだいが感じやすい気持ち。
きょうだいは、発達が気になる子を嫌いだから怒るわけではありません。親を取られた寂しさ、予定を崩された悔しさ、突然の大きな声や物音への怖さ、周囲から「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言われる負担が重なり、怒りや甘えとして表に出ることがあります。
「分かってあげて」と言われ続けると、きょうだいは自分の気持ちを言いにくくなります。大切なのは、正しい理解を求める前に、「嫌だった」「寂しかった」「怖かった」と言える場所を作ることです。

| きょうだいの言葉 | 背景にある気持ち | 大人の返し方 |
|---|---|---|
| 「ずるい」 | 自分も大切にされたい、不公平に感じる | 「そう感じるよね」と受け止め、必要な助けは人によって違うと説明する |
| 「また待つの?」 | 見通しがなく、終わりが分からない | 「あと何分」「終わったら何をする」を短く伝える |
| 「こっちに来ないで」 | 音や動きが怖い、安心できる場所がほしい | 離れてよい場所を決め、嫌がる気持ちを責めない |
| 無口になる | 言っても変わらないと思っている | 短時間でも一対一の時間を固定する |
STROKE LABの視点:気持ちだけでなく、家庭内の動線を見る。
きょうだい支援というと、「気持ちを聞く」「説明する」ことが中心に見えます。もちろんそれは大切ですが、STROKE LABではもう一歩進めて、家庭内の動線を見ます。どこで音が重なるか、誰がどこに逃げられるか、親が毎回どちらに向かうか、きょうだいが何分待たされるか。こうした生活の流れが、きょうだいの不安や怒りに大きく関わります。
たとえば、かんしゃくが起きた瞬間に、きょうだいが同じ部屋で待つしかない家庭では、怖さや怒りが積み重なります。先に「ここへ移動していい」「この箱にはイヤーマフと本がある」「落ち着いたら親が必ず来る」と決めておくと、きょうだいは自分を守る行動を取りやすくなります。
きょうだいへの説明の仕方。
きょうだいへの説明では、最初から診断名を詳しく伝える必要はありません。年齢が低い子には、「音が大きいとびっくりしやすい」「予定が変わると困りやすい」「気持ちを言葉にするのがまだ難しい」と、日常の場面で説明します。年齢が上がってきたら、診断名や特性について少しずつ話してもよいでしょう。
説明で大切なのは、「あなたが我慢すればうまくいく」という伝え方を避けることです。本人に支援が必要な理由を伝えながら、きょうだいにも助けが必要なときがあることを同時に伝えます。
「わがまま」ではなく、「大きな音が苦手」「急に予定が変わると不安になりやすい」と伝えます。
「嫌だったね」「待つのはつらかったね」と、正しさより先に気持ちを認めます。
手伝ってくれたら感謝を伝えますが、毎回の役割にしないようにします。
「あと5分」「落ち着いたら一緒に本を読む」など、待つ時間の終わりを見える形にします。
研究でわかっていること。
神経発達症のある子どものきょうだいを対象にしたsystematic reviewでは、社会的サポートが少ないほど、きょうだいの心理社会的な適応に不利な傾向があると示されています。家庭では「分かってあげて」と求めるだけでなく、きょうだい本人が話せる相手、離れられる場所、親に見てもらえる時間を作ることが支えになります。
公的な相談先としては、発達障害者支援センター、自治体の発達相談、園・学校、児童発達支援、相談支援専門員などがあります。本人の困りごとだけでなく、きょうだいの不安や親の疲れも「家族全体の支援課題」として伝えてよい内容です。
家庭で整えられること、相談した方がよいこと。
きょうだいの反応は、家庭内の調整で変わることもあります。ただし、きょうだいの不調が続く場合や、家族だけで安全を守りにくい場合は、早めに相談することが安心です。
| 観察ポイント | 家庭で整えやすいこと | 相談を考えたいこと |
|---|---|---|
| きょうだいの言葉 | 「ずるい」「嫌だ」と言える | 無口になる、極端に我慢する、怒りが続く |
| 家庭内の安全 | 離れられる場所を決めると落ち着く | 物が飛ぶ、暴力がある、同室で待つしかない |
| 親子時間 | 短時間でも一対一の時間を作れる | きょうだいが常に後回しで、甘えや不眠が続く |
| 手伝い | 本人が希望する範囲で短時間できる | 親代わり、見守り役、仲裁役が続いている |
| 相談先 | 園・学校・支援機関と共有できる | どこに相談すればよいか分からず孤立している |

健診・相談で伝えるための家族メモ。
相談時には、本人の発達や行動だけでなく、きょうだいと家族全体の困りごとも伝えて大丈夫です。以下の7項目をメモしておくと、支援者が家庭の全体像を把握しやすくなります。
年齢別に、きょうだいへの関わりを変えます。
きょうだいへの説明や役割の外し方は、年齢によって変わります。年齢は目安です。理解の仕方には個人差があるため、発達年齢や性格、家庭の状況に合わせて調整します。
| 年齢の目安 | 関わり方 | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 未就学 | 短い言葉で「音が苦手」「今は休む時間」と説明し、離れられる場所を作る | 長い説明、我慢の強要、トラブル中の説得 |
| 小学校低学年 | 「ずるい」と言えることを認め、終わりの時間と次の予定を見せる | 兄・姉だから分かるはずと決めつける |
| 小学校高学年 | 診断名や特性を少しずつ説明し、本人の気持ちを聞く時間を作る | 手伝いを当然の役割にする |
| 中高生 | 家族の方針を共有しつつ、自分の予定・友人関係・休息を守る | 親の相談相手や第二の保護者にする |

家庭でできる整え方と、避けたい関わり。
家庭でできることは、大きな特別対応ではなく、日常の中の小さな固定化です。きょうだいが「自分も大切にされている」と感じるためには、親子時間、逃げ場所、説明の一貫性、役割を背負わせすぎない仕組みが役立ちます。
5〜10分でもよいので、寝る前、登校前、週末などに、その子だけに向き合う時間を作ります。
かんしゃくが始まってから考えるのではなく、事前に離れてよい場所と合図を決めます。
親、祖父母、園・学校で説明が大きく違うと混乱します。短い共通フレーズを決めます。
手伝ってくれたら感謝し、次は遊びに戻れるようにします。続けて任せる役割にしません。
| 避けたい関わり | 起こりやすいこと | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 「分かってあげて」と繰り返す | 自分の気持ちを言いにくくなる | 「嫌だったね」と先に受け止める |
| きょうだいを仲裁役にする | 親代わりの負担が増える | 大人が介入し、きょうだいは離れてよいと伝える |
| 同じ対応が公平だと考える | 必要な支援の違いが説明されず不満が残る | 「それぞれ必要な助けが違う」と説明する |
| 親の疲れを家庭だけで抱える | 家族全体の余白がなくなる | 支援機関に家族全体の困りごととして相談する |
STROKE LABでは、子どもの姿勢・感覚・運動発達だけでなく、家庭での関わり方、きょうだいの負担、親の余白も含めて整理します。
よくある質問。
年齢や理解度に合わせて、診断名そのものよりも日常で起きていることを具体的に伝えると安心です。「音が大きいとびっくりしやすい」「予定が変わると不安になりやすい」など、困りごととして説明します。診断名を伝える場合も、怖い言葉としてではなく、その子を理解するための言葉として扱うことが大切です。
まずは「そう感じるよね」と受け止めます。そのうえで、「同じにすること」と「それぞれに必要な助けをすること」は違うと、短い言葉で説明します。きょうだいが不公平に感じる背景には、親を取られた寂しさや予定を崩された悔しさが隠れていることがあります。
長い時間でなくても構いません。5〜10分でも、スマートフォンを置き、その子だけに向き合う時間を固定できると「自分も見てもらえている」という実感につながります。毎日が難しい場合は、曜日や寝る前など、続けやすい形にします。
本人が望む範囲で、短時間・年齢相応の手伝いなら問題ありません。ただし、親の代わりの役割を続けさせたり、トラブルの仲裁役にしたり、危険な場面を任せたりすることは避けます。手伝いよりも、子ども自身の遊び・学び・休息を守ることを優先します。
まず、きょうだいが離れられる場所を決めておきます。別室、廊下、祖父母の部屋、イヤーマフや好きな本を置いた場所など、逃げてもよい場所を事前に作ります。トラブル中に説明しようとするより、落ち着いた後に短く振り返る方が伝わりやすいです。
かかりつけの小児科、自治体の発達相談、発達障害者支援センター、園や学校、児童発達支援、相談支援専門員、心理士、作業療法士・理学療法士などに相談できます。本人の困りごとだけでなく、きょうだいの不安や家族全体の負担も伝えることが大切です。
STROKE LABでは、家族全体の関わりを見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、本人の発達だけを切り取らず、家族の中でどんな場面が負担になっているかを確認します。本人の姿勢・感覚・運動発達、かんしゃくが起きやすい場面、きょうだいの逃げ場所、親子時間、園・学校との共有まで、生活に戻せる形で整理します。
きょうだい支援は、きょうだいに我慢を求めることではありません。本人も、きょうだいも、親も、それぞれが支えられている実感を持てるように、家庭の仕組みを一緒に見直します。
家族全体の安心を整えます。

発達が気になる子の支援では、本人を支えることと同じくらい、家族の中で無理なく続く形を作ることが大切です。
STROKE LABでは、脳・感覚・運動発達・生活動線・家族の役割を一緒に整理し、ご家庭で実行しやすい関わり方を提案します。
代表取締役 金子 唯史

子どもの行動を「困った行動」として見るだけでなく、脳・感覚・姿勢・情動調整の背景から考えることで、家庭での関わり方が具体化します。
- 小児(脳性麻痺児/発達障害など)のリハビリ — STROKE LAB
- 発達障害の感覚過敏|家庭でできる環境調整
- 子どものかんしゃく・パニック|家族でできる対応
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療・個別の療育方針を決定するものではありません。お子さんとご家族の状態については、かかりつけ医や専門職にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。
- 厚生労働省:発達障害者支援施策の概要
- 発達障害ナビポータル
- 発達障害情報・支援センター
- American Academy of Pediatrics: ASD Family Handout — Sibling Support
- Kirchhofer SM, Orm S, Haukeland YB, et al. A systematic review of social support for siblings of children with neurodevelopmental disorders. Research in Developmental Disabilities. 2022;126:104234.
- Wolff B, et al. Psychosocial interventions and support groups for siblings of children with neurodevelopmental disorders: a mixed methods systematic review. 2023.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)