2018.05.04神経系
vol.315:二重課題認知運動トレーニング 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
施設在住高齢者の認知、バランスにおける二重課題認知運動トレーニングの効果:無作為化比較試験
The effect of cognitive-motor dual task training with the biorescue force platform on cognition, balance and dual task performance in institutionalized older adults: a randomized controlled trial
?Jstage Tom Delbroek Journal of Physical Therapy Science Vol. 29 (2017) No. 7 p. 1137-1143
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・姿勢制御において認知機能は重要な役割を持つ。転倒予防に二重課題を課すことが近年増えてきており、今回RCTで効果を検証した本論文を見つけ、読もうと思った
内 容
背景・目的
・65歳以上の28%~35%は年に少なくとも年に1回転倒するという。施設在住の高齢者ではさらに転倒率は高いとの報告もあり、転倒予防の取り組みは急務であることは明確である。
・認知症などの認知機能の低下は遂行機能や注意機能低下をもたらし、転倒の一因となっている。
・二重課題はこれらの認知機能とバランス能力の低下に効果があるとされており、今回、BioRescueを使った認知運動二重課題の効果を検討する。
方法
・20名の高齢者(75歳以上)、10m歩行は補助具ありで可能、中等度認知症を有する者
・介入群:一般的な介入に加え、BioRescueを使ったトレーニングプログラム(週2回、6週間)
・BioRescueはWiiFitと類似した機器で、WiiFitより支持面が大きい。
表1:介入群のプラグラム
Tom Delbroek より引用
・プログラム(表1、一部抜粋)
Memory exercise:TV上の4枚のカードを記憶し、5枚目に出たカードと先ほどの4枚のカードを一致させる。一致させるには身体重心を移動し、TV上のカードを選択する必要がある。
Spaceshuttle:重心移動でスペースシャトルを操作し、障害物をよける
・バランスと歩行はTinetti-POMA scaleとinstrumented Timed Up and Go Test(iTUG)を使用した。
・認知機能の評価としてMontreal Cognitive Assessment (MoCA)が使われた。また、プログラム中のモチベーション計測のためにIntrinsic Motivation Inventory (IMI)が使用された。
結果
表2:実験結果
Tom Delbroek より引用
・介入群のiTUGは介入前後で有意に改善が見られた。特に、方向転換から着座の時間、方向転換前のステップ時間で介入前後の有意な改善が認められた。
・Tinetti-POMA (歩行)と MoCA(認知機能)には変化がなかった。
表3:IMIの結果
Tom Delbroek より引用
・IMIより、介入群はBorRescueに対して興味や楽しさ、有益さなどを感じていることがわかる。
私見・明日への臨床アイデア
・BioRescueによりiTUGに改善がみられ、特に、方向転換の項目に改善が認められた。介入群では重心移動の課題を多く行っていたため、方向転換時によりスムーズな重心移動が可能になったのではないか。
・認知機能の向上は今回認められなかったが、BioRescueは被験者が楽しく取り組める課題となっており、練習に集中しやすく継続できる機器としてとても有益だと感じる。
・今後、BioRescueに限らず様々な機器がリハビリ業界に参入することが予想される。使える機器を見極め、柔軟にリハビリプログラムを作成していきたい。
職種 理学療法士
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