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vol.405:末梢神経損傷後に視床感覚受容野のリモデリングは起こるのか?-異所性疼痛に関する研究-  脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

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カテゴリー

バイオメカニクス
 
 
 

タイトル

末梢神経損傷後の視床感覚受容野における求心性経路の再組織化(リモデリング)と異所性疼痛に関する研究

Afferent Fiber Remodeling in the Somatosensory Thalamus of Mice as a Neural Basis of Somatotopic Reorganization in the Brain and Ectopic Mechanical Hypersensitivity after Peripheral Sensory Nerve Injury.Yuichi Takeuchi, Hironobu Osaki, Yuki Yagasaki, Yoko Katayama, Mariko Miyata.eNeuro 2017; 4(2): 1-21

 
 
 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・末梢神経損傷により、幻肢痛や異所性疼痛などが生じ、リハビリテーションに難渋するケースがある。
 
・しかしこれらの病態は明らかとなっておらず、有効的な治療法はない。一方、近年、神経損傷後に脳内身体表現の変化が生じ、これらの難治性病態に寄与している可能性が示唆されてきた。
 
・しかしヒトを対象とした研究には限界があり、メカニズムに迫ることは不可能に近い。そこで動物を対象とした最新の研究にあたることにした。
 
・難解な論文であるが、神経損傷後に生じる変化を一挙一動に明らかにしており、先に述べた難治性症状に関するメカニズムに迫れており、臨床上での解釈に大変有用であると感じた。できるだけ要点を抑えて分かりやすくまとめてみたい。当に膝関節に痛みを訴える利用者が多いため、解剖学的な知識を深めたいと考えた。
 
 
 

内 容

概 要

・末梢神経損傷後に生じる中枢神経系の適応は、一連の複雑なプロセスを含んでいる。
 
・損傷した神経系は神経新生が生じ、大脳皮質では再組織化(脳内身体表現の変化)が生じる。局所的な変化はこれまでの研究で明らかにされてきたが、それらを介する連絡経路において何が起きているかは明らかでない。
 
・つまり、異常な脳内身体表現の変化が、なぜ生じているのは、その機序は不明であった。
本研究では、マウスのヒゲ神経(V2領域)を切断し、その後の脳幹、内側毛帯繊維、視床受容野で生じる変化を明らかにすることを目的とした。
 
・結果は、神経損傷後に①視床の受容野において、
①切断したV2領域由来の神経線維が減少していること
②V3などV2以外の領域からの神経線維の投射が増加していること
③電気刺激をすると過剰な神経発火のバーストが生じること
④触覚刺激に対する過剰な発火が増加すること
が明らかとなった。これらのことから、神経損傷後には視床において新たな神経回路が形成され、異所性の入力が侵入してくる。
 
・この「神経回路の配線のつなぎ換え」現象が、幻肢痛や異所性疼痛、感覚過敏などの異常病態のメカニズムである可能性が高い。
 
 
 

目 的

マウスのヒゲ神経を切断し、その後の脳幹、内側毛帯繊維、視床受容野で生じる変化を明らかにすること。これを通じて、異所性疼痛や感覚過敏のメカニズムを明らかにすること。
 
 
 

方法

●対象:Krox20-Ai14miceという遺伝子組み換えマウス。本実験では神経線維を蛍光する必要があるため、蛍光たんぱく質に反応するマウスと、損傷した神経を染色するためのtdTomatoに反応する受容体もつマウスを交配させ、Krox20-Ai14miceを作成した。
 
 
●方法:
①マウスのヒゲV2領域に対し、 IONC; infraorbital nerve cutという眼窩下神経切断術を施行した。
 
②td Tomatoという蛍光たんぱく質をも用いて、V2領域由来の内側毛帯繊維(PrV2-origin lemniscal fiber)を染色した。また、V3領域などその他の領域に由来する内側毛帯繊維はVGlut2という蛍光蛋白で染色した。
 
③内側毛帯神経束を電気刺激し、神経の発火を視床で計測した。
 
④V2やV3およびその周囲領域に触刺激を与え、従来はV2支配領域であった部位が、新たにどのような支配領域を形成したか明らかにした。また、刺激に対して、逃避行動が生じるか観察した。
 

 
 
 

結果

①視床におけるPrV2由来の内側毛帯繊維の発現量:tdTomatoによる蛍光の結果が左図で、蛍光強度と面積を定量化し、反対側と対側の比を算出したのが右の図である。神経切断により、その内側毛帯由来の神経線維の視床への発現量が低下することが分かった。

 
・②V2以外由来の神経線維成分の発現:VGlut2という蛍光蛋白で染色を行うが、これは内側毛帯の終末で染色される。つまりこの性質はV2由来の成分と同じであるが、tdTomatoが陽性か陰性かでV2由来かどうかを識別できる。IONC後は、このV2由来のPrV2の密度が減少し、さらにVGlut2の密度が上昇していることで、V2以外が由来の内側毛帯繊維が侵食し、密度が増えていることが分かる。

 
③電気刺激に対する視床の応答:IONC前は1回の電気刺激に対して1本のスパイクが見られた。IONC後は時間経過と共に、1回の刺激に対して複数のスパイクが観察された。この現象は、V2以外の領域からの神経投射の増加とも相関していた

 
④触刺激に対する応答:従来はヒゲ領域支配神経であるので、Sham群はヒゲ部位のみの反応である。一方、右図のIONC後は顎から胸領域の刺激に対して反応が見られ、支配領域が変わっていた。また、触刺激に対する逃避行動の増加が見られ、逃避反応が生じる閾値が低下していた。


 
 
 

考 察

●脳内身体表現変化の背景には神経線維の配線のつなぎ換え現象があった。
 
先行研究において、神経損傷後に大脳皮質において機能地図の変化などが生じることがヒトを対象とした研究でも明らかとなっている。
 
しかし、皮質下領域での変化は明らかとなっていなかった。今回、視床の感覚神経受容野で大幅な神経線維のリモデリングが生じることが明らかとなった。
 
視床は感覚投射・統合のハブ領域であり、この地点での大きな変化が生じることは、大脳皮質感覚野だけでなく、脳内ネットワーク全体に影響を及ぼしていると考えられる。
 
 
●異常病態との関連
結果②、③では神経新生によりシナプス結合が増加し、多重支配現象が生じ、④のような感覚過敏が生じたと考えられる。これはアロデニアの病態基盤と強く関係していると考えられる。
また、②のようなシナプスの侵食が増加することで、④のような支配領域の変化が生じることが生じた。これは従来の支配領域の四肢が欠損と、脳の受容野は他の領域を支配するようになり、つまり機能地図の再編成と関連していると考えられる。
 
 
 

私見・明日への臨床アイデア

・医師の間では、このような神経線維の配線のつなぎ換えに対して、薬理的な効果により制御しようとする試みが増えている。
 
・一方で、療法士の介入により、このような障害後に生じる神経回路のリモデリングを操作できることが、理想的なニューロリハビリテーションではないだろうか。現在、神経学に基づいた多様な介入法が考案されている。
 
・私はこれらの方法は、上記のレベルでの神経回路リモデリングという点で、ある程度の効果をもたらしているものが多いのでは、と感じている。
 
・つまり、徒手的な介入を含めた運動療法で、このような神経学的状態をも変えてしまうことは、学術的にも大変価値が高いことである。
 
・しかし、神経生理学的に効果を検討することが遅れており、他分野から認められていない現状がある。この部分を担う人材が増えることで、療法士の価値が他分野でも認められるようになるための取り組みが必要と考えている。
 
 
 
 

氏名 中西 智也

職種 理学療法士

 

 
 
 
 
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