【2026年版】脳卒中リハビリにおけるインソール処方とは?適応・評価・選定・フォローアップを徹底解説
インソールは、いつ・誰に・どう処方するのか。
脳卒中後の荷重非対称や歩行不安定は、足底からの感覚入力を変えるだけで改善することがあります。インソールは「補助具」ではなく、運動学習を促す感覚入力デバイスとして位置づけ、評価・選定・フォローまでを体系的に行うことが臨床応用の鍵です。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
68歳男性、左片麻痺(中等度)、発症後6ヶ月(生活期への移行期)。Berg Balance Scale(BBS)39/56。主訴は「立っているとふらつき、左右に体重をうまく移せない」。
初回評価では重心移動速度0.9 cm/s(低下)、立位時の荷重比は右70%・左30%と明らかな非対称性を認めました。
この荷重比70:30という数字を見たとき、新人のうちは「とりあえず麻痺側に体重をかける練習を増やそう」と考えがちです。
しかし、足底からの感覚入力そのものが乏しい状態では、いくら口頭指示で「左に乗って」と伝えても、患者さんは自分の体がどこにあるのか感じ取れません。
ここでインソールという選択肢が登場します。足部のアライメントと感覚入力を同時に変える、運動学習のスイッチになり得る道具です。
インソールの定義と種類。
インソールとは、靴の中に挿入し足底のアライメントや圧分布を変える装具の総称です。脳卒中後の片麻痺患者では、立位・歩行時の荷重が非麻痺側に偏ることが多く、この非対称性が転倒リスクとQOL低下に関与します。

① バイオメカニクス的作用:足部のアライメントを補正し、膝・股関節・骨盤の配列を整え動作効率を高めます。荷重分布を均等化し、支持基底面を調整して前後・左右の重心移動を補助します。
② 神経学的作用:足底感覚受容器(SPV=身体的垂直認知:自分の体がまっすぐかを感じる脳の機能、の入力源の一つ)への刺激を強化し、患者が重心移動や接地の変化を体感できることで、運動学習を促進します。
5タイプのインソールと適応
足内側アーチを支持し過剰な回内を防ぎ、重心移動をスムーズにします。偏平足傾向や内反膝のある患者が適応です。
前足部の荷重を分散させ、中足骨周囲の痛みを軽減します。歩行時に前足部痛がある患者に用います。
足関節背屈制限や脚長差を補正し、骨盤の安定性を高めます。非麻痺側を補高するCBWS(強制的ウエイトシフト)もこの一種です。
動的な重心移動を補助し接地感覚を強化します。歩行バランスに課題のある軽~中等度麻痺患者に向きます。
足部特性に応じた完全フィットで最大限の補正効果を得ます。高度な変形や特異的な歩行障害を伴う患者に適応します。[専門家合意]
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABでは足底圧分布や重心移動の評価から、お一人おひとりに合わせたリハビリプランをご提案します。神経リハビリ専門スタッフが、現状の機能を丁寧に確認します。
なぜインソールで荷重が変わるのか。

一般的に足が短い側には荷重が乗りやすく、長い側には荷重がかかりにくくなります。「休め」の姿勢で支える側が短下肢、出している側が長下肢になるイメージです。CBWSでは非麻痺側にインソールを挿入して補高することで、相対的に麻痺側を短下肢の状態にし、麻痺側への荷重を自然に促します。
荷重非対称が固定化する機序
対称的な立位荷重は歩行能力の予測因子として認識されており、リハビリ・転倒予防の重要な目標です。重度麻痺により非麻痺側でしか体重を支えられない、あるいは麻痺側への荷重に消極的な状態が続くと、運動機能が改善しても非対称性が残存し、さらなる不使用を助長する可能性があります。
下肢のCI療法(健側下肢を拘束する課題誘導型運動療法)は歩行ができなくなるため適用しづらく、代わりに足底からの感覚入力を変えるアプローチが注目されてきました。
慢性期脳卒中片麻痺18名のRCT[単独RCT]:Aruin AS, et al. Topics in Stroke Rehabilitation. 2012;サンプル数18名(平均年齢57.7±11.9歳、発症後平均6.7±3.9年)。非麻痺側に0.6cm厚のインソールを挿入し6週間の理学療法と併用した実験群は、対照群(理学療法のみ)に比べ麻痺側荷重9.7%増加(対照群6.4%)、歩行速度10.5%改善。効果は介入終了後3ヶ月の保持期間でも維持された。
このように、足底からの感覚入力をわずかに変えるだけで、全身的な動作パターンの再学習が進み、インソール除去後も学習した動作方法が維持される可能性が示唆されています。
荷重非対称の原因を見極める。
「荷重が偏っている」という所見は、必ずしも足部だけの問題ではありません。インソールを処方する前に、以下の鑑別を行い、原因に応じたアプローチを優先する必要があります。
| 鑑別疾患・要因 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| Pusher症候群(SPV障害) | 非麻痺側へ荷重が偏る | 麻痺側へ重心を戻す介助に対し非麻痺側で押し返す。インソールより姿勢知覚への介入が優先 | Scale for Contraversive Pushing(SCP) |
| 半側空間無視 | 立位・歩行で左右差 | 視覚的注意の偏りが先行。視覚探索課題で再現性を確認する | 線分二等分試験、BIT |
| 末梢性感覚障害(糖尿病性ニューロパチー等) | 足底感覚低下・荷重低下 | 両側性であることが多い。既往歴・血糖コントロール状況を確認 | モノフィラメント検査 |
| 整形外科的疼痛(変形性膝関節症等) | 片側への荷重回避 | 荷重時の疼痛の訴えあり。発症前からの既往を確認する | 関節可動域・疼痛評価(NRS) |
| 足部変形(内反尖足等) | 片側の接地面減少 | 足部のみの構造的要因。インソール+靴の適合確認が中心となる | 足底圧分布測定 |
Berg Balance Scaleの採点で迷わない。
インソール処方の前後評価には、足底圧分布・重心動揺計だけでなく、汎用性の高いBerg Balance Scale(BBS)を併用します。14項目を0~4点で採点し、合計56点満点です。

| 項目 | 採点基準(各0~4点) | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 1. 着座位から立位 | 手を使わず安定して立てれば4点、上肢介助が必要なら段階的に減点 | 合計45点未満で転倒リスク高(感度・特異度はBerg 1992に基づく) | 下肢筋力・立ち上がり戦略を反映 |
| 2. 支持なし立位保持 | 2分間安全に保持で4点、保持時間に応じて減点 | 静的立位バランスを反映 | |
| 3. 支持なし座位保持 | 両足底接地・背もたれなしで2分保持で4点 | 座位での体幹安定性 | |
| 4. 立位から着座位 | 手を使わずコントロールして座れれば4点 | 遠心性コントロール | |
| 5. 移乗 | 手を使わず安全に移乗で4点 | 日常生活動作との関連が高い | |
| 6. 閉眼立位保持 | 閉眼10秒安全に保持で4点 | 体性感覚・前庭依存度を反映 | |
| 7. 両足を閉じた立位保持 | 両足を閉じて1分保持で4点 | 支持基底面減少時の安定性 | |
| 8. 上肢前方リーチ | 25cm以上安全にリーチで4点 | 動的バランスの限界 | |
| 9. 床の物を拾う | 安全かつ容易に拾えれば4点 | 前傾位での重心移動能力 | |
| 10. 後方を振り返る | 両側へバランス良く振り返れれば4点 | 体幹回旋を伴う重心制御 | |
| 11. 360度回転 | 両方向へ4秒以内で安全に回転で4点 | 方向転換の安定性 | |
| 12. 踏み台へ交互に足を乗せる | 支持なしで20秒以内に8回完遂で4点 | 片脚荷重への移行能力 | |
| 13. 継ぎ足立位 | 前後に足を継いで30秒保持で4点 | 支持基底面が前後に狭い状態での制御 | |
| 14. 片足立位 | 片足立位を10秒以上保持で4点 | 麻痺側単独支持の指標として重要 |
原版開発[専門家合意]:Berg K, et al. Can J Public Health. 1992。検者間信頼性ICC=0.97以上と高い再現性が確認されている。
妥当性[複数RCT]:Fugl-Meyer Assessment(下肢)や歩行速度との中~強い相関が複数の脳卒中コホートで確認されている。
MCID(臨床的最小変化量)[観察研究]:Hiengkaew V, et al. Arch Phys Med Rehabil. 2012、慢性期脳卒中患者を対象とした検討で、BBSのMCIDは4点と報告されている。介入効果の判定にはこの基準を用いる。
介入のエビデンスと進め方。
インソールを処方したら終わり、ではありません。評価→選定→静的練習→動的歩行練習という4ステップで、感覚入力の変化を全身の運動パターンへつなげていきます。
足底圧分布測定で麻痺側の荷重低下を確認し、重心動揺計で静的・動的な重心移動能力を分析します。歩行分析と関節可動域、主訴(痛み・転倒恐怖)も併せて聴取します。
評価結果に基づき5タイプから選定します。CBWSの場合は非麻痺側に0.6cm前後の補高を行い、装着後の足底圧分布の変化を確認します。
両足荷重立位でインソールの装着感を確認し、ミラーでの視覚フィードバックを併用して重心移動を練習します。木製ブロックを用いた両側荷重比練習も有効です。
カラーマーカーでステップ位置を誘導し、平地歩行→坂道→階段昇降へ段階的に進めます。トレッドミルでは速度・傾斜を調整し歩幅とケイデンスを均等化します。
慢性期脳卒中の機能予後[SR/MA]:Hatem SM, et al. Front Hum Neurosci. 2016(複数RCT・コホートを統合したシステマティックレビュー)。発症6ヶ月以降でもFMA・ARAT(上肢機能評価)が有意に改善しうると報告。「半年経過したから効果がない」という考え方を見直す根拠となる。
介入パラメータの目安[専門家合意]:インソール装着は日中の全活動時間。週1回60分の理学療法を基本とし、症例の重症度に応じて週4~5回・各45~60分の集中練習を6~8週間継続する。

公的保険リハビリには日数・時間の上限があります。STROKE LABでは自費リハビリとして、足底圧分布の評価から歩行再訓練まで、お一人おひとりに合わせた時間と頻度でプログラムを設計します。
多職種で支えるインソール処方。
なぜ一人で決めないのか
インソールは足部だけの問題ではなく、靴の選定・皮膚状態・全身の活動量・経済的な負担にも関わります。PTだけで完結させず、関係職種と情報を共有しましょう。
「感覚障害がある患者さんは、痛みや圧迫を自覚できないことがあります。看護師さんに皮膚観察を依頼しておくと、早期にトラブルを見つけられますよ」
「靴とインソールの組み合わせは、義肢装具士やOTと一緒に確認すると、装着後のズレや不適合を防げます」
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 足底圧分布・重心移動・歩行速度・BBS | インソール選定・静的/動的重心移動練習・歩行再訓練 | OTへADL場面での荷重状況を共有 |
| OT | 立ち上がり・移乗動作・更衣動作での荷重 | ADL場面でのインソール装着習慣の定着・靴の脱着指導 | PTの評価結果を生活動作に反映 |
| ST | 注意機能・指示理解度(運動学習への影響) | フィードバック方法の調整(視覚/言語の優先度) | 高次脳機能障害がある場合PTへ伝達方法を提案 |
| 看護師 | 皮膚状態・装着時間・転倒歴 | 装着部位の皮膚観察・装着時間の記録 | 皮膚トラブル時はPTへ即時報告し調整を依頼 |
| 医師 | 麻痺の重症度・感覚障害の有無・合併症 | 処方の許可・装具作成の指示 | 変形・痛みの増悪時は早期に相談する |
| MSW | 経済状況・保険適用範囲 | カスタムメイド等高額な選択肢の費用相談 | 既製品と特注品の選択肢をPTと共有 |
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
インソール処方は一見シンプルですが、新人臨床家がよく陥る失敗パターンがあります。先輩の経験から、特に重要な3つを共有します。
補正は段階的に
「過剰な補正は、かえって新たな負担や痛みを生じます。初期装着時は長時間使用を避け、徐々に慣れさせましょう」
「患者さんの主観的な装着感を必ず聞いてください。数値だけでは見えない違和感が、継続率を左右します」
予後とゴール設定。
「発症から半年以上経っているから、もう変化は望めない」と考えてしまう新人は少なくありません。しかしエビデンスはそれを否定しています。
荷重比の目標は45:55程度(完全な50:50を初期から求めない)、歩行速度は介入前の1.5倍程度を中間目標とし、BBSはMCID(4点)以上の改善を6週間ごとの評価で確認します。3ヶ月後の保持期間でも効果が維持されるかを必ずチェックしましょう。
よくある質問。
立位・歩行で荷重の左右差が明らかで、最小介助以上で立位や歩行が可能な慢性期片麻痺患者が良い適応です。急性期で荷重耐性が確立していない場合は、まず荷重練習を優先します。
先行研究では6週間の介入で荷重比・歩行速度に有意な改善が見られ、3ヶ月後の保持期間でも効果が維持されています。臨床では2週間ごとに足底圧分布と歩行速度を再評価することを推奨します。
圧迫や摩擦を自覚しにくいため、装着時間を段階的に延ばし、装着部位の皮膚観察を毎回行います。柔らかい素材を選び、痛みの訴えがなくても定期的に皮膚状態を確認してください。
軽度から中等度の荷重非対称や偏平足傾向であれば既製品で対応可能です。高度な足部変形や特異的な歩行パターンを示す場合は、足底圧分布を測定したうえでカスタムメイドを検討します。
重心動揺計による静的・動的バランス測定、Berg Balance Scale、足底圧分布測定システムが用いられます。患者自身の装着感のフィードバックも重要な評価情報です。
システマティックレビューでは発症6ヶ月以降でも上肢機能や歩行に有意な改善が報告されています。慢性期であっても、個別評価に基づく介入で機能向上が期待できます。
STROKE LABのプログラム。
「もう退院したのに手足が思うように動かない」「週2回の通院リハだけでは回復が頭打ち」――そんな声に応えるため、STROKE LABは自費リハビリとして、保険の枠を超えたオーダーメイドのプログラムをご用意しています。神経リハ特化メソッドに基づき、足底圧分布の評価から歩行・バランス練習までを一貫してサポートします。

— 実際のリハビリでどのように身体が変化していくかをご覧いただけます
「BBS39点の方の立位を見たとき、麻痺側の足底感覚がほとんど感じられていないことに気づきました。アーチサポート付きインソールを装着し、ミラーで視覚フィードバックを加えながら荷重移動を練習したところ、6週間でBBSが48点まで改善しました。感覚入力を変えるだけで全身の運動パターンが変わることを、この症例で実感しました」— 理学療法士・経験5年・脳卒中リハビリ専門
「歩行速度0.6m/sの方に、最初は積極的な歩行練習だけを行っていましたが、足底圧分布を測ると麻痺側荷重が30%未満でした。前足部に軽度のリフトを加えたインソールに変更し、トレッドミルで速度と傾斜を段階的に調整したところ、8週間で歩行速度0.9m/s・ケイデンス90歩/分まで改善。評価を見直すことの大切さを学びました」— 理学療法士・経験8年・歩行分析専門
あわせて読みたい:【2026年版】フットコアシステムと歩行の関係性とは?脳卒中・脳梗塞における足部機能と歩行リハビリを論文から徹底解説
諦めないでください。

「期間が終わったから仕方ない」とリハビリをあきらめてしまう方が、全国にたくさんいらっしゃいます。しかし、足底からの感覚入力を少し変えるだけで、立ち方や歩き方が変わった症例を私たちは数多く見てきました。
公的保険リハビリには日数・時間の上限がありますが、自費リハビリなら、あなたに合わせた時間と頻度でリハビリを「やりたいだけ、やれる」環境があります。
STROKE LABでは、足底圧分布の評価から歩行・バランス練習まで、神経リハビリ専門スタッフが一人ひとりに合わせたプランをご提案します。まずは無料相談で、今の状態を一緒に確認しませんか。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)