vol.56:神経学的にみる高齢者のバランス障害 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
脳科学,姿勢制御,高齢者
タイトル
聴覚キューによるステップ開始の遅れと,高齢者における白質高吸収域の増加量との関連
Delays in auditory-cued step initiation are related to increased volume of white matter hyperintensities in older adults?PubMedへ
Sparto PJ et al.:Exp Brain Res. 2008 Jul;188(4):633-40
内 容
目 的
●MRIにおける白質高吸収域量の増加は,高齢者の運動障害に関連していると考えられる
●8人の被検者(75~83歳)の白質高吸収域量と聴覚キューによるステップ開始との関連を調査
方 法
●皮質脊髄路と前視放線における白質高吸収域量を合計
●被検者は,聴覚キューステップ課題で2つの単純反応時間試験(SRT)と3つの選択反応時間試験(CRT)を実施
<SRT課題>:被検者は直立位から右足を一歩前方へ出来るだけ早く一歩出してもらう
<CRT課題>:2つの場所のどちらかへ出来るだけ早く一歩出す
●時間は先行随伴性姿勢調整(APA)と下肢持ち上げ(LO)の時間で算出
●APAとLOの時間はSRT課題とCRT課題間で比較
結 果
●白質高吸収域量増加群は,SRT・CRT両方でAPAとLO両方とも時間が多くかかった
Fig.1:ステップ課題における反応時間の比較(Sparto PJ et al.:2008)?原著PDFへ
選択反応時間(CRT)と単純反応時間(SRT)は,ステップ課題中の下肢持ち上げ時間における下肢機能として描写(白質量)
a:少ない側方へのステップ移動
b:大きな側方へのステップ移動
CRT A:少ないか大きいかの傾斜ステップ選択
CRT B:少ないか大きいかの前方ステップ選択
考 察
●これらのデータは,白質高吸収域量増加群が意図的なステップ開始中における中央処理時間の増加がある事を提示しており,とりわけどの位白質束の障害があるかで,高齢者の運動にどれ位影響するかという説明を支持することになる
私見・明日への臨床アイデア
●白質高吸収域量の多い患者ではAPAsが行われるまでの時間がかかることが示唆されるStudy
●高齢者のバランスの不安定性をただの筋力低下と短絡的に決めつけて筋力トレーニングを提供している場合は,考えを改める必要があることに警鐘を鳴らすものと考えている
●高齢者の多くは,皮質の萎縮や白質変性は多かれ少なかれ存在することが多く.若年者に比べ,皮質興奮性が通常レベルでも低いとされるため,効率的な皮質脊髄路の活性が行われていない可能性が推測される
●報酬系を意識したドパミン作動や脳幹網様体,明確なSensory Inputを利用しながら,皮質興奮性を十分に高めた上でバランストレーニングを実施していくことが,APAs駆動の効率性にも貢献できる可能性があるのではないかと考えられる
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)