【2024年版】感覚障害に対するリハビリを徹底解説!体性感覚野の解剖学的理解と治療法
はじめに
本日は体性感覚野について解説したいと思います。この動画は「リハビリテーションのための臨床脳科学シリーズ」となります。
内容は、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
動画一覧は写真をクリック
体性感覚野とは?
体性感覚野の解剖と機能
位置と構造
体性感覚野(一次体性感覚皮質, S1)は、頭頂葉の中心後回に位置し、主にブロードマン領域3(3aおよび3b)、1、および2で構成されます。この領域は、中心溝の後方に位置し、触覚の特性(形状、サイズ、質感など)を特定する役割を持ちます。
一方、二次体性感覚野(S2)は、これらの感覚経験に関連する空間記憶と触覚記憶を処理し、海馬や扁桃体との強い関連も報告されています。
血液供給
体性感覚野への血液供給は、主に中大脳動脈(MCA)の枝によって行われますが、前大脳動脈(ACA)も下肢領域を中心に供給します。ACAは、特に内側表面にある下肢と足を表す部分に血液を供給し、中心傍小葉は前頭葉と頭頂葉の境界に位置し、ACAからの供給を受けています。
体性感覚情報の主な伝達経路
後索-内側毛帯路
後索-内側毛帯路は、触覚、圧覚、振動感、固有感覚(身体位置感覚)に関与する経路です。末梢神経から脊髄の背側を通り、延髄の薄束核/楔状核で交差し、視床を経由して体性感覚野に信号を伝達します。
脊髄視床路
脊髄視床路は、外側脊髄視床路と前脊髄視床路に分かれます。外側は痛みと温度感覚を、前脊髄視床路は粗い触覚と圧力感覚を伝えます。前者は後索-内側毛帯路と比べ、感覚の精度と識別能力が低いです。
三叉神経視床路
三叉神経視床路は顔部の体性感覚情報を伝達する経路で、三叉神経節から脳幹の三叉神経核を経由し、後内側腹側核(VPM)へ情報を送り、最終的に体性感覚野へ投影されます。
二次体性感覚野と頭頂連合野(神経接合について)
一次体性感覚野(S1)は、二次体性感覚皮質(S2)および後頭頂皮質(PPC)からの入力を受け取り、質感や形状の認識、知覚の統合などを行います。これらの情報は、運動皮質や皮質脊髄路に投影され、運動制御のための重要なフィードバックループを形成します。
一次運動野と皮質脊髄路への投射について
体性感覚皮質の役割
体性感覚皮質は、身体からの触覚情報や固有受容情報を処理し、これらの感覚データを運動皮質や皮質脊髄路などのさまざまな領域に投影します。
運動制御における統合
体性感覚皮質からの投射は、感覚運動統合において重要な役割を果たします。このプロセスにより、体の現在の状態(手足の位置、接触、圧力など)を運動システムに通知し、リアルタイムでの正確な運動制御と動きの調整が可能になります。
フィードバックループの重要性
皮質脊髄系は、体性感覚皮質との接続を通じてフィードバックループを確立し、感覚フィードバックに基づいたモーターコマンドの継続的な調整を行います。このフィードバックループは、調整された正確な動作を実現するために不可欠です。
皮質脊髄路と皮質脊髄システムの違いは?
皮質脊髄路
皮質脊髄路は、主に運動皮質から始まり、脳幹を通って脊髄に下降する軸索の集合体です。この経路は主に随意運動の直接制御に関与し、特に手や指の細かい動きの制御を担当します。
皮質脊髄システム
皮質脊髄システムは、皮質脊髄路に加えて、随意運動の計画、開始、制御に関与するさまざまな皮質および皮質下領域(例:体性感覚皮質)や神経回路を含む広範な概念です。運動経路だけでなく、運動制御に不可欠な感覚フィードバックループも含まれており、感覚入力と運動出力を統合するために連携して機能します。
まとめ
皮質脊髄路が主に運動信号の伝達に焦点を当てるのに対し、皮質脊髄システムは運動の計画、実行、調整を含む複雑な神経ネットワーク全体を指し、感覚と運動の統合を可能にします。
関連論文
アーメットら, 2022年:
Targeting Sensory and Motor Integration for Recovery of Movement After CNS Injury
この論文では、感覚情報と運動指令の統合が、運動の計画と実行においてどのように役立つかを詳述しています。
感覚と運動の主要な領域:
・感覚運動皮質
感覚情報と運動指令を統合し、運動の計画と実行において中心的な役割を果たします。
・小脳
体性感覚情報と運動コマンドを処理し、動き、バランス、姿勢を調整します。感覚入力と「エフェレンスコピー」(運動コマンドのコピー)を受け取り、動きを予測して調整します。
・後頭頂皮質(PPC)
複数の感覚情報を統合し、空間認識と動作計画に貢献します。
・大脳基底核
運動の調節、運動学習、自発的な運動の調整に関与します。
・脊髄と脳幹
感覚情報を脳に伝え、脳から筋肉に運動指令を伝達する経路です。脊髄には、反射動作のための独自の処理センターもあります。
脳への感覚経路:
・後索-内側毛帯路
接触および固有受容情報を脳に伝達する経路です。触覚や身体の位置感覚に関する情報がこの経路を通じて脳に送られます。
・脊髄小脳経路
固有受容情報を小脳に伝える経路で、身体の位置や動きに関する情報を小脳に送信します。これにより、姿勢やバランスの調整が行われます。
・モーターコマンドの形成
運動情報は、大脳基底核、後頭頂皮質(PPC)、小脳、脳幹からのフィードバックによって形成されます。下行コマンドは脊髄を通して筋肉に伝わり、動きを調整します。皮質脊髄路(青)は、これらの運動指令を伝達する主要な経路です。
・フィードバックループ
小脳は視床を介して皮質にフィードバックを送り、運動皮質には小脳、PPC、大脳基底核、脳幹とのフィードバックループがあります。このループにより、運動指令が洗練され、精密な運動制御が可能になります。
MRIのポイント
中心溝(中央溝)
中心溝は、大脳皮質の最も顕著なランドマークであり、深い溝として前頭葉と頭頂葉の間を分けます。この溝のすぐ後方に体性感覚皮質が位置しています。MRI画像では、中心溝は明確な境界として現れ、前頭葉と頭頂葉を分割する特徴的な構造です。
中心後回
中心後回は、中心溝のすぐ後ろに位置する隆起部分であり、ここに体性感覚皮質が存在します。MRI断面画像では、中心溝の窪みの直後にある隆起した領域として確認できます。この構造は、体性感覚情報を処理する主要な部位として重要です。
シルビウス裂の方向
シルビウス裂(外側溝)は、側頭葉を前頭葉および頭頂葉から分離する構造であり、体性感覚皮質の位置を特定する際にも役立ちます。中心後回はこのシルビウス裂の上部に位置しているため、シルビウス裂の方向を基に、体性感覚皮質の位置を推測することが可能です。
ホムンクルスの表現
ホムンクルスは、体性感覚皮質内での身体部分の地形的表現を示す概念であり、MRIでの物理的ランドマークではありませんが、治療者やコメディカルスタッフが観察する機能領域を特定するのに有用です。ホムンクルスの知識に基づいて、特定の身体機能に関連する皮質の位置を推測することができます。
観察ポイント
①感覚処理
触覚、温度、痛み、体性感覚のフィードバックを含む感覚処理は、視床からの情報を受け取り、信号を解釈して知覚と反応を可能にします。
- 触覚への反応: 物に触れたときの反応を観察します。反応がない、または過剰であれば、感覚処理に問題がある可能性があります。
- 温度に対する反応: 極端な温度(熱すぎるお湯、冷たすぎる水)に対する反応を観察し、異常があれば感覚処理の問題を疑います。
- 痛みに対する反応: 怪我やぶつかったときの反応が不適切な場合、感覚処理に障害がある可能性があります。
- 体位感覚の意識: 体の位置や動きに対する意識を観察し、頻繁につまずいたり、物を落としたりする場合は固有感覚フィードバックに問題があるかもしれません。
②固有受容感覚
固有受容感覚は筋肉、腱、関節からの情報を処理し、視覚的な手がかりがなくても体の部位の位置を知ることを可能にします。
- 小脳と体性感覚野の相補的役割: 小脳は無意識的な運動制御の統合を担当し、体性感覚皮質は意識的な知覚と固有受容情報の初期処理を行います。
- インタラクティブネットワーク: 小脳、体性感覚皮質、運動野が連携し、スムーズで調整された運動を保証するネットワークを形成します。
- 物に手を伸ばす精度: コップや本に手を伸ばしたときの正確さを観察し、困難があれば固有受容感覚の障害を示唆します。
- 歩行の観察: 歩幅の狭さ、つまずきやすさが見られる場合、固有受容感覚の問題が考えられます。
- 立ち座りの動作: 距離感の誤りや椅子の位置を見つけるのが難しい場合、固有受容感覚の問題があるかもしれません。
③空間識別
空間識別は、感覚刺激の位置とサイズを特定するために役立ちます。体性感覚皮質と上頭頂小葉(SPL)の役割に違いがあります。
- 体性感覚皮質とSPLの区別: 体性感覚皮質は身体の細かいマップを提供し、SPLはそれを統合して空間の理解を構築します。
- 体の部位の認識: 身体の部分を見ずに認識できるかを確認します。判断が難しい場合、空間識別能力の問題が考えられます。
- 手を伸ばす精度: 物体に手を伸ばす際に精度が低い場合、空間識別能力の問題が示唆されます。
- 周囲との関わり方: 物の位置や大きさを認識することが難しい場合、作業や移動に問題が生じることがあります。
- 読み書きの困難さ: 文字の行を追うのが苦手な場合や、スペースの判断が誤っている場合は、空間識別能力の障害を示唆します。
④運動制御
体性感覚野は、感覚入力に基づいて運動を微調整し、皮質脊髄路への投射を通じて運動野にフィードバックを提供します。
- 運動制御の観察: 食事や着替えなどの日常活動中の精密な動作の困難さを観察し、フィードバックの低下を疑います。
- 新しい運動スキルの習得: 新しい環境や作業に適応するのが難しい場合、体性感覚皮質から運動皮質へのフィードバックループの問題を示唆します。
- 運動と協調性の観察: 歩行や移動時にバランスや協調性の問題がある場合、体性感覚皮質と運動皮質の間の連携に障害がある可能性があります。
⑤バイモダル、マルチモダル、クロスモダル処理
感覚統合が必要なタスクでは、触覚と視覚情報の関連付けや両側統合などの問題が発生することがあります。
- 物体とその機能の関連付け: 触っただけで物体を認識し、その目的を理解できるかどうかを確認します。
- 両側の感覚統合: 両手を使う作業で協調性に問題があるか観察します。
マルチモダル感覚処理: 接触と視覚情報を統合する際に困難があるかを評価します。
臨床へのヒント
①感覚処理
・感覚再教育:視覚に頼らず触覚で物体を識別する練習として、目を閉じて異なる形状や質感の物品(サンドペーパー、布、スポンジなど)を触り、それらを区別します。また、温度差の認識を高めるために、温かい水と冷たい水を交互に感じる活動も効果的です。
・セルフケア活動:着替え、入浴、食事などのセルフケア活動に参加させることが有効です。例えば、着替えの際には異なる質感の衣料品を使用し、肌触りの違いを体験させることで触覚の認識を促進します。食事中には異なる重さや形状の食器を使うことで、食べ物の硬さや温度を感じる機会を提供します。
・ガーデニング、アート&クラフト:これらの活動は、様々な触覚体験を提供し、患者のモチベーションを高めることができます。ガーデニングでは、土や植物、水や小石などに触れることで、多様な感覚を体験します。アート&クラフト活動では、粘土や布、ビーズなどの素材を使用して作品を作り、感覚の発達を促します。
関連論文: Current clinical practice in managing somatosensory impairments and the use of technology in stroke rehabilitation, PLoS One, 2022
この論文では、脳卒中リハビリテーションにおける体性感覚障害の管理方法とテクノロジーの活用についての最新の臨床アプローチがまとめられています。
②固有受容感覚
・さまざまな質感を取り入れる:砂や水、ゼリー、泡など異なる素材を使用し、触覚や固有受容感覚を刺激します。異なる感触に触れることで、感覚のバリエーションが増え、体性感覚野の活性化が期待できます。
・関節の位置感覚トレーニング:セラピストが患者の関節を動かし、その動きを反対側の手足で再現する練習を行います。目を閉じた状態で肘や膝の角度を変え、その角度を反対側の手足で模倣することで、関節の位置や動きに対する認識が深まります。
・ウォーキングの練習:異なる環境(不整地、階段など)で定期的に歩行練習を行い、固有受容感覚を鍛えます。石畳や砂利道、坂道などの地形を利用することで、感覚の鋭敏さを向上させることができます。
関連論文:
SENSe: Study of the Effectiveness of Neurorehabilitation on Sensation, Leanne et al., 2011
The effect of sensory discrimination training on sensorimotor performance in individuals with central neurological conditions: A systematic review, Sarah et al., 2021
これらの論文は、感覚弁別トレーニングが脳卒中患者の固有受容感覚や体性感覚の改善に有効であることを示しています。
③空間識別
・部屋の中を移動する:トイレに行く、家具の周りを移動する、引き出しの中の物を探すなど、様々な環境で動き回ることを通じて空間認識能力を高めます。これにより、周囲の空間的配置の理解が深まります。
・体の部位を識別する:目を閉じて腕や足を触り、どの部位に触れているかを識別する活動を通じて、体の各部位の位置感覚を養います。これにより、触覚と空間認識の両方が向上します。
・ビジュアルスキャニング:混雑した市場の絵の中から赤いリンゴを見つける、野球の試合でボールの動きを追跡するなど、空間的な環境を認識する活動を行い、視野内の物体の動きや位置の識別能力を養います。
関連論文: The effectiveness of proprioceptive training for improving motor function: a systematic review, Joshua et al., 2014
この論文は、固有受容トレーニングが運動機能の改善に有効であることを示しており、関節位置感覚の強化に焦点を当てています。
④運動制御
・運動技能の学習:例えば、シャツを着る動作を小さなステップに分け、各ステップを繰り返し練習します。まずは腕を通す動作、次にボタンを留める動作を練習し、最終的に全てを組み合わせます。これにより、体性感覚野と運動野のフィードバックループを強化し、動作の正確さとスムーズさを向上させます。
・運動イメージ:実際の動作を行う前に、その動作をイメージする練習を行います。例えば、立ち上がる前に、足の筋肉の動きや重心の移動を詳細に想像することで、実際の動作時に正確な動きを促進します。これにより、感覚野の損傷による動作の粗大さを改善できます。
関連論文: Motor Learning in Neurorehabilitation, Mindy F. Levin and Marika Demers, 2020
この論文では、神経リハビリテーションにおける運動学習の最新の理論と実践方法を解説しています。
⑤バイモダル、マルチモダル、クロスモダル処理
・物品とその機能の関連付け:歯ブラシ、スプーン、ボールなどの物体を袋に入れ、患者が触覚だけでそれらを識別し、機能を説明する練習を行います。これにより、触覚と認知の統合が促進されます。
・両側の感覚統合:パズルを組み立てる、洗濯物をたたむなど、両手を協調的に使う活動を行います。これにより、両側の感覚と運動の統合を強化します。
・マルチモダル感覚処理:物体をサイズや色で分類する、簡単な料理をするなど、触覚と視覚情報を統合するタスクを組み込みます。これにより、異なる感覚モダリティの統合が促されます。
関連論文: Effect of Neuroplasticity-Principles-based Sensory Rehabilitation (NEPSER) on sensori-motor recovery in stroke, Kamal et al., 2021
この研究は、神経可塑性に基づく感覚リハビリテーションが脳卒中後の感覚運動回復を改善する効果を示しています。
これらのヒントは、感覚と運動機能の改善に向けた臨床実践に役立つアプローチを提供し、神経可塑性を促進してリハビリテーションの効果を最大化することを目指します。
体性感覚皮質の位置: 体性感覚皮質は脳のどこにあり、どのブロードマン野を構成していますか?
一次体性感覚皮質と二次体性感覚皮質: 一次体性感覚皮質の主な機能は何ですか?また、二次体性感覚皮質との違いは何ですか?
血液供給: 主に体性感覚皮質に血液を供給する動脈はどれですか?
体性感覚経路: 体性感覚情報を皮質に伝達する主な経路の名前と説明を教えてください。
感覚運動統合: 体性感覚皮質は運動制御と運動調整にどのように貢献していますか?
皮質脊髄路と皮質脊髄系: 皮質脊髄路と皮質脊髄系の違いは何ですか?
MRI で体性感覚皮質を特定する: MRI で体性感覚皮質を特定するための重要なランドマークは何ですか?
固有受容と小脳: 固有受容において体性感覚皮質と小脳はどのように相互作用するのでしょうか?
空間弁別: 体性感覚皮質と上頭頂小葉などの頭頂連合野における空間弁別の違いは何ですか?
感覚処理の臨床実践: 感覚処理を再教育し強化するために臨床実践で使用されるいくつかのテクニックを挙げていただけますか?
体性感覚皮質の位置: 体性感覚皮質は頭頂葉、特に中心後回に位置し、ブロードマン野 3、1、および 2 で構成されます。
一次体性感覚皮質と二次体性感覚皮質: 一次体性感覚皮質は、形状、サイズ、質感などの接触の特性の識別に焦点を当てますが、二次体性感覚皮質は空間記憶と触覚記憶に関与します。
血液供給: 体性感覚皮質には主に中大脳動脈の枝から血液が供給され、下肢領域には前大脳動脈から部分的に血液が供給されます。
体性感覚経路: 主要な体性感覚経路には、後索-内側毛帯路路 (接触、圧力、振動、固有受容)、脊髄視床路 (痛み、温度、粗い接触)、三叉神経視床路 (顔からの体性感覚情報) が含まれます。
感覚運動統合: 体性感覚皮質は、リアルタイムの運動制御と調整に重要な、触覚情報と固有受容情報を処理し、運動皮質と皮質脊髄路に投影します。
皮質脊髄路とシステム: 皮質脊髄路は自発的な運動制御のための軸索の集合体ですが、皮質脊髄系には運動経路や感覚フィードバック ループを含む、運動の計画、開始、制御のためのより広範なネットワークが含まれています。
MRI での体性感覚皮質の特定: 主要な MRI ランドマークには、中心溝、中心後回、シルビウス裂の方向、およびホムンクルスの表現の理解が含まれます。
固有受容と小脳: 小脳と体性感覚皮質は固有受容において相補的な役割を果たします。 小脳は運動制御の無意識の側面に焦点を当て、体性感覚皮質は意識的な知覚と初期の処理を処理します。
空間識別: 体性感覚皮質は特定の身体部分からの詳細な感覚情報を処理しますが、上頭頂小葉はこの情報を統合して、より広範な空間理解と空間に対する身体の関係を実現します。
感覚処理の臨床実践: 技術には、感覚の再教育 (触覚によって物体を識別する)、セルフケア活動 (異なる質感や温度を体験する)、さまざまな触覚体験のためのガーデニングや美術品や工芸品などの活動が含まれます。
体性感覚野を意識したリハビリテーション展開例
登場人物
- 療法士:金子先生
- 患者:丸山さん
ストーリー
初回セッション:評価と課題設定
冬の寒さが厳しい時期に、セラピストの金子先生が脳卒中後のリハビリに通う患者、丸山さんと初めてのセッションを始めます。丸山さんは左上肢・手指に中等度の感覚障害があり、退院後も日常生活での動作に苦労しています。金子先生はまず、丸山さんの体性感覚や運動機能、空間識別能力を評価します。
金子先生:「こんにちは、丸山さん。今日は初めてのリハビリセッションですね。まず、いくつかの評価を行い、どのようなリハビリが最適かを一緒に考えましょう。」
丸山さん:「よろしくお願いします。最近、コートを着るときのが難しくて困っているんです。家族に手伝ってもらっています。」
金子先生は、丸山さんの体性感覚を確認するために、触覚、温度感覚、痛みへの反応などを評価します。また、固有受容感覚や空間識別能力も観察し、問題のある部分を特定していきます。
総合評価とリハビリ目標の設定
評価の結果、金子先生は丸山さんが左上肢・手指の触覚と固有受容感覚に課題があり、特に袖を通す動きにおいて困難があることを確認しました。金子先生は丸山さんと相談し、リハビリの目標を「コートの袖通しがお一人で行える」に設定することにしました。
金子先生:「丸山さん、今日の評価をもとに、まずは『コートの袖通しがお一人で行える』ことを目標にしましょう。これには触覚や体の位置感覚を鍛えることが必要ですので、リハビリを通じて一緒に改善していきましょう。」
丸山さん:「わかりました。冬の時期に、お気に入りのコートをうまく着られるようになりたいです。」
リハビリの計画と実施
金子先生は、丸山さんのリハビリ計画を以下の3つの項目に基づいて策定しました。
- 感覚再教育と触覚の強化
- 固有受容感覚トレーニング
- 運動スキルの分解学習
詳細
-
感覚再教育と触覚の強化
目を閉じた状態で、異なる質感の物(サンドペーパー、スポンジ、布など)に触れることで、左上肢・手指の触覚認識を向上させる練習を行います。温かい水と冷たい水を交互に感じることで、温度感覚も刺激します。これにより、触覚と温度感覚のフィードバックを強化し、日常生活での触覚に対する反応を改善します。 -
固有受容感覚トレーニング
関節の位置感覚を強化するために、目を閉じた状態で肘や肩の角度を変え、その角度を反対側の手で模倣する練習を行います。さらに、丸山さんには、不整地や階段などの異なる環境での歩行練習も導入し、上肢全体の位置感覚を強化します。これにより、上肢の正確な動作を支援します。 -
運動スキルの分解学習
コートを着る動作を小さなステップに分けて練習します。最初は片手で袖を通す動作から始め、次に肩を回して上着を引き上げる動作、最後に全体の動作を一連で行います。このように段階的に学習することで、動作の精度とスムーズさを向上させます。
結果と進展
4週間のリハビリを経て、丸山さんは左上肢・手指の触覚と固有受容感覚がわずかですが改善していることを感じています。特に、上着を着る動作の中で、左上肢を袖に通す際の感覚が以前より分かるようになり、動作がスムーズになってきました。金子先生も、その進展を確認し、丸山さんを褒めます。
金子先生:「丸山さん、素晴らしいですね。リハビリの成果が出ています。引き続き、この調子で進めていきましょう。」
丸山さん:「ありがとうございます!少しずつできるようになってきて、とても嬉しいです。冬もこれで乗り越えられそうです。」
次のステップ
金子先生は、次のステップとして「複雑な動作の統合」と「マルチモダル感覚処理」の練習を取り入れることを提案します。コートを着るだけでなく、ボタンを留めるといったより細かい動作にも取り組み、感覚と運動のさらなる統合を目指します。
金子先生:「次は、コートを着る動作に加えて、ボタンを留める動作も練習しましょう。これにより、感覚と運動の統合がさらに深まります。」
丸山さん:「はい、頑張ります!」
丸山さんのリハビリの旅はまだ続きますが、確実に進展していることが彼の自信にもつながっていきます。金子先生の指導の下、丸山さんは新たな目標に向かってリハビリを続けていくことになりました。
今回のYouTube動画はこちら
退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)