CBS(キャサリン・ベルジェゴ・スケール)の評価・採点基準を徹底解説|半側空間無視の生活場面評価と病態失認の捉え方 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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CBS(キャサリン・ベルジェゴ・スケール)の評価・採点基準を徹底解説|半側空間無視の生活場面評価と病態失認の捉え方

今回は、半側空間無視(USN)が日常生活にどのような問題をもたらしているかを、机上テストでは捉えられない「実際の生活場面」で定量評価できるCBS(Catherine Bergego Scale:キャサリン・ベルジェゴ・スケール)について、正確な採点基準の確認から全10項目の実施方法・病態失認の定量化・介入戦略まで徹底解説します。BITやSIASの視空間認知スクリーニングでは見逃しやすい食事・着衣・移動などの生活場面での行動的無視(Behavioral Neglect)を約10〜20分で観察するだけで定量化できる、脳卒中リハビリ臨床家必携の評価ツールです。

CBS(キャサリン・ベルジェゴ・スケール)の実施方法を動画で確認できます。

CBS(Catherine Bergego Scale:キャサリン・ベルジェゴ・スケール)は、Bergego Cらが1995年に仏語で発表し、Azouvi Pらが1996年に英語版として標準化した日常生活動作(ADL)の観察を通じて半側空間無視(USN)を10項目・30点満点で定量評価する観察型スケールです(Azouvi et al., Neuropsychological Rehabilitation. 1996;Azouvi et al., Arch Phys Med Rehabil. 2003)。
高得点=重度の無視(SIASとは採点方向が逆)で、各項目は0〜3点で採点します。観察者評価(CBS-T)と患者自己評価(CBS-P)の差分から病態失認(アノソグノジア:自分の障害に気づかない症状)の程度も定量化でき、退院後の安全リスク予測にも活用できます。

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📊 CBS:臨床家が必ず知っておくべき数字と事実

  • 正式名称:Catherine Bergego Scale(キャサリン・ベルジェゴ・スケール)
  • 開発者・年:Bergego C, Azouvi P, Samuel C ら(フランス)1995年(仏語原著)→ Azouvi P ら 1996年(英語版)
  • 項目数・配点:10項目 / 満点30点。高得点=重度の無視(SIASとは逆方向)
  • 採点の4段階:0点=無視なし / 1点=軽度(右側を先に探索・左への移動は遅く迷いあり)/ 2点=中等度(左側への明らかな見落としや衝突あり・正中線は越えられる)/ 3点=重度(右半側空間のみしか探索できない)
  • N/A項目と換算式:評価不能な項目は「N/A」として除外。合計=(有効項目スコアの合計 ÷ 有効項目数)× 10
  • 評価方法:観察者評価(CBS-T)と患者自己評価(CBS-P)の2種類。差分(CBS-T − CBS-P)が病態失認スコア
  • 重症度分類(Azouvi基準):0点=無視なし / 1〜10点=軽度 / 11〜20点=中等度 / 21〜30点=重度
  • 信頼性(Azouvi 2003, n=83):評価者間信頼性Kappa係数 0.59〜0.99(各項目)・Spearman相関Rho=0.96。内的一貫性Spearman Rho 0.58〜0.88
  • 所要時間:約10〜30分(ADL観察と並行して実施可能・特別な道具不要)
  • 発展型:KF-NAP®(Kessler Foundation Neglect Assessment Process)はCBSの詳細な実施・採点マニュアル兼発展型評価システム

CBS(キャサリン・ベルジェゴ・スケール)とは ― 開発背景と半側空間無視の理解

CBS(Catherine Bergego Scale)は、フランスのBergego C・Azouvi Pらが1995年に仏語で発表(Bergego C et al., Ann Readapt Med Phys. 1995)し、1996年に英語版として国際的に標準化された観察型の半側空間無視評価ツールです。Azouvi P(2003)の大規模検証研究(n=83)によって信頼性・妥当性・机上テストとの比較優位性が確立されました。

🔬 なぜCBSが必要だったのか ― 机上テストの限界と開発の背景

1990年代以前の半側空間無視評価は線分二等分・星印消去・模写などの紙筆検査(BIT等)が主流でした。しかしこれらは「集中した検査場面での静的パフォーマンス」を測定するものであり、実際の生活場面との乖離(生態学的妥当性の低さ)が問題でした。例えば「BITで正常と判定されても、食事で左半分を食べ残す・廊下で左壁に衝突する・左袖に腕を通さない」という行動的無視が残存するケースが多く報告されていました。

BergegoCらはこの問題を解決するため、実際のADL10場面を観察的に評価し、かつ患者自身の自己評価との比較で病態失認も定量化できるツールとしてCBSを開発しました。Azouvi et al.(2003)の検証では、CBSが従来の机上テスト(線分消去・星印消去等)よりも行動的無視の検出感度が高いことが統計的に示されました。

💡 半側空間無視(USN)とは ― CBSを理解するための基礎

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)は右半球損傷後に多く見られる神経心理学的症状で、「見えている・聞こえているのに、左側の空間・物体・自分の身体に意識が向かない」状態です。視覚の問題ではなく、脳の空間注意機能の非対称性が原因です。

脳卒中後の右半球損傷患者では50〜60%以上に認められるとする報告もあり(Azouvi 2002)、ADL自立・歩行・転倒リスク・長期転帰に大きな影響を与えます。詳細は半側空間無視の解説記事もご参照ください。

⚠️ 【重要】CBSはSIASと採点方向が逆です

SIASは高得点=機能良好・低得点=重度障害ですが、CBSは高得点=重度の無視・0点=無視なし(正常)です。同じ評価用紙を使う施設では特に混乱しやすいため、電子カルテや評価シートに採点方向を必ず注記してください。

CBS の2つの評価形式:観察者評価(CBS-T)と患者自己評価(CBS-P)

📋 観察者評価(CBS-T / Therapist Rating)

理学療法士・作業療法士・看護師などが日常生活動作を観察しながら採点します。ADL実施中に並行して観察できるため追加の検査時間はほとんど不要です。複数回・複数場面の観察の積み重ね(推奨:少なくともそれぞれの場面を2〜3回観察)で信頼性が高まります。評価前に半側空間無視に関するトレーニング期間を設けることが推奨されています(Azouvi 2003)。

🙋 患者自己評価(CBS-P / Patient Rating)

患者が同じ10項目について「自分はどのくらい困っているか」を0〜3点で評価します。CBS-T − CBS-P の差分が病態失認スコアとなります。正の差分が大きいほど「自分の無視を過小評価している(病態失認が強い)」ことを示します。重度の失語症・認知機能障害がある場合は実施困難なこともあるため、患者の状態を確認してから実施してください。

CBS 正式採点基準と全10項目の実施方法

【公式採点基準】0〜3点の正確な定義(Azouvi et al., 1996/2003 原著準拠)

0点 — 無視なし

左側への無視行動が観察されない。正常なパフォーマンス。

1点 — 軽度無視

軽度の無視が観察される。常に右半側空間を先に探索し、左への移動は遅く・ためらいがある(Mild neglect: patients always exploring right hemi-space first and going slowly and hesitating towards the left)

2点 — 中等度無視

中等度の無視。左側への明らかな見落としや衝突が一貫して観察される。正中線を越えることはできるが、左半側でのパフォーマンスは不完全・不効率(Moderate neglect: constant and clear left-sided omissions or collisions; still able to cross midline)

3点 — 重度無視

重度の無視。右半側空間のみしか探索できない(Severe neglect: only able to explore right hemi-space)

📐 N/A(評価不能)項目と合計スコアの換算式

患者が医学的に安定していない・当日は該当のADLを実施しないなど、評価できない項目には「N/A」(Not Applicable)を記録します。CBSでは評価不能な項目を除外した上で以下の換算式で30点満点に換算します。

CBS合計スコアの換算式(N/A項目がある場合): 合計スコア = (有効項目スコアの合計 ÷ 有効項目数) × 10 例:10項目中8項目が有効・合計スコアが12点の場合 → (12 ÷ 8) × 10 = 15.0点

全10項目が実施可能な場合は換算不要(合計スコアをそのまま使用)。N/A項目を0点として算入してはいけません。

CBS-PA / CBS-ME サブスケール

知覚・注意サブスケール(CBS-PA)と運動・探索サブスケール(CBS-ME)

KF-NAP®の開発者Chen P らは、CBS 10項目をCBS-PA(Perceptual-Attentional):知覚・注意サブスケールCBS-ME(Motor-Exploratory):運動・探索サブスケールの2つに分類しています(Chen et al., Top Stroke Rehabil. 2012)。CBS-MEは急性期の機能的依存度をより強く予測するという報告があり(Goedert et al., 2012)、サブスケール分析を加えることで無視タイプ別の介入計画が精密化できます。詳細分析はKF-NAP®の使用を推奨します。

10項目の全体概要

番号 評価項目(日本語・英語) 観察場面 配点
【セルフケア・身体的ケア領域】
1 左側の整容を忘れる
Grooming of left side of body
洗面・整髪・髭剃り・化粧 0〜3点
2 左側の着衣が困難
Dressing the left side
更衣全般(上衣・ズボン・靴下・靴) 0〜3点
3 左側の料理を食べ忘れる
Eating food on left side of plate
食事(食器・盆の左半分) 0〜3点
4 左側の歯を磨き忘れる
Cleaning teeth on left side
口腔ケア(歯磨き・義歯清掃) 0〜3点
【注意・認識領域】
5 左側への視覚的注意が困難
Turning to look toward the left
会話・環境探索・左からの刺激への反応 0〜3点
6 左上下肢への認識が困難
Acknowledging left limbs
移動・動作場面での左手足の位置確認・使用 0〜3点
7 左側への聴覚的注意が困難
Auditory attention to the left
左側からの呼びかけ・音への反応 0〜3点
【移動・空間認識領域】
8 移動時に左側へ衝突する
Collisions with obstacles on the left
歩行・車椅子移動時の障害物回避 0〜3点
9 左側の空間見当識が困難
Spatial orientation toward the left
病棟内移動・目的地への左折・方向転換 0〜3点
10 左側の身の回りの物を探せない
Finding personal belongings on left
ナイトテーブル・ベッド周囲の物品探索 0〜3点
合計(10項目) 30点

セルフケア・身体的ケア領域(項目1〜4)

整容・着衣・食事・口腔ケア場面での無視行動

実際のADL場面で最も観察しやすく、また日常生活への影響も最も直接的な4項目です。左側の身体への意識・手入れ食事・口腔ケアでの左半側への注意を評価します。麻痺による「できない(運動障害)」と無視による「気づかない(空間認知障害)」の鑑別が重要です。

1

左側の整容を忘れる(Grooming of left side of body)

観察場面洗面・整髪・髭剃り・化粧・顔拭き
観察ポイント頭髪の左側・顔の左半分・左側の髭・左耳周辺が手入れされているか
配点0〜3点(0=正常・3=重度)
点数 採点基準(Azouvi 原著準拠)
0点 整容行動に左右差なし。顔・頭髪の左側も適切に手入れされている
1点 整容時に常に右側から先に開始し、左側への移動が遅く・ためらいがある。促せば左側も整えられる
2点 左側の整容を一貫して見落とすことが観察される。指摘すると左側にも手を動かせるが不完全。左側の髪がとかされていない・左側の髭が残るなど
3点 整容が右半側のみに終始する。左側の整容を行わないことが常態化。「整容を終えた」と認識している(病態失認を伴うことが多い)
【臨床観察のポイント・運動障害との鑑別】 整容後の患者の外見を確認します。「なぜ左側を拭かなかったのか」への返答で鑑別できます。「左があると思わなかった・問題ない」→ 無視(病態失認あり)。「左手が動かないのでできなかった」→ 主に運動障害が原因。重度麻痺がある場合は、健側(右手)で左側も手入れできるかで評価します。

2

左側の着衣が困難(Dressing the left side)

観察場面更衣全般(上衣・ズボン・靴下・靴の着脱)
観察ポイント左袖に腕を通すか・左脚のズボン・左靴を履くか・着衣の左右対称性
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 着衣に左右差なし。左側の衣類も自然に着用できる
1点 着衣時に常に右側から先に行い、左側への移行が遅く・ためらいがある。促せば修正できる
2点 左袖・左脚・左靴への注意の一貫した見落としが観察される。指摘すると左に手を動かせるが不完全(左袖が半分しか通っていないなど)
3点 着衣が右半側のみに終始する。左袖が空のまま・ズボン左脚が降ろされていない・左靴が放置されたまま立とうとする。「着替えが終わった」と認識している
【臨床的意義・介入】 更衣は排泄プライバシーへの配慮が必要なため観察機会の確保が課題になります。可能であれば評価者が同席して直接観察することが推奨されます。軽度(1点)では「左側から着始める」という代償戦略の教育が有効。重度(3点)では更衣前の左上肢認識訓練・環境キューイング(左側の袖に赤いシール)を先行させます。

3

左側にある料理を食べ忘れる(Eating food on left side of plate)

観察場面食事場面(食器・盆の左半分への注意)
観察ポイント食後に食器の左半分に料理が残っていないか・「もう食べた」と認識しているか
配点0〜3点
注記食事の提供がない日はN/Aとして記録
点数 採点基準
0点 食器・盆の左右を均等に食べる。食後に片側だけ残すことはない
1点 食事中に常に右側から先に箸を向け、左側への移行が遅く・ためらいがある。促せば左側も食べる
2点 食後に食器の左半分が一貫して残る。指摘すれば左側に手を伸ばせるが探索は不完全・不効率。「口に合わなかった」など別の理由を述べることがある
3点 食事が食器の右半分のみで終始する。左側の料理に全くアクセスしない。「全部食べた」と認識している
【臨床的意義・栄養との関連】 左側の残食は低栄養・体重減少・入院期間延長に直結します。食事観察記録(残食量・左右の偏り)とCBSスコアを並行記録し管理栄養士に共有することが推奨されます。介入:①食事中に食器を90°回転(左側の料理を右側に移動)②食器の中央に赤いシールで「ここまで食べた」確認キュー③プリズム適応療法後の食事場面観察。

4

左側の歯を磨き忘れる(Cleaning teeth on left side)

観察場面口腔ケア(歯磨き・義歯清掃・含嗽)
観察ポイント歯磨き後の口腔内左側(左歯列・左頬粘膜・左歯肉)の清掃状態
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 口腔内の左右を均等に磨く。左側の磨き残しなし
1点 歯磨き時に常に右側から開始し、左側への移行が遅く・ためらいがある。促せば左側も磨ける
2点 左側の口腔清掃の一貫した不十分さが観察される。右側だけ磨いて終わろうとするが、指摘すれば左に歯ブラシを動かせる(ただし不完全)
3点 歯磨き動作が右半側のみで終始する。歯磨き後も左歯列に食物残渣・歯垢が残存していることが常態化
【臨床的意義・誤嚥性肺炎リスク】 左側口腔ケアの不足は口腔内細菌数増加・食物残渣の誤嚥リスク増大と直結します。歯磨き後の口腔内視診を評価者が確認することで客観的に記録できます。STおよび看護師と連携し口腔ケアプロトコルへ無視対応手順を組み込むことを推奨します。

注意・認識領域(項目5〜7)

視覚・自己身体認識・聴覚注意の場面での無視行動

左側の空間・身体・音への注意の向かいにくさを評価します。特に項目6(自己身体無視)は半側身体失認(ソマトパラフレニア)の初期スクリーニングとしても機能します。机上テストでは全く検出できない行動的無視を直接評価します。

5

左側への視覚的注意が困難(Turning to look toward the left)

観察場面会話中・左側からのアプローチへの反応・環境内の物品への自発的な視線向け
観察ポイント左側から声をかけた時・左側に物を提示した時に頭・視線が左に向くか
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 左側への自発的・反射的な視線移動が正常。左からの刺激に適切に反応する
1点 視線が常に右側を先に向き、左への転向が遅くためらいがある。促すと左側を向ける
2点 左側への視線転向の一貫した困難。左側の人・物に気づかないことが多い。指摘されれば左を向けるが不完全
3点 視線が右半側空間のみに向く。左側の空間が「存在しない」かのように行動する
【視野障害との鑑別】 半盲(同名半盲)は視野の問題で代償的な頭部回転が起きる傾向がある一方、USNでは頭部も含めて左側への自発的注意が低下します。「左から呼びかけても右を向いたまま返事をする」行動は典型的な3点所見です。視野検査(HFA・対座法)との組み合わせで鑑別してください。

6

左上下肢への認識が困難(Acknowledging left limbs)

観察場面移動・日常動作・会話場面。左腕が体の外にはみ出す・車椅子のフットレストから落ちるなどへの反応
観察ポイント左上下肢の不適切な位置に自発的に気づき修正するか
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 左上下肢の位置・状態を自然に把握している。不適切な位置にあれば自発的に修正する
1点 左上下肢への認識が遅く、常に右肢を先に確認してから左を向く。左肢の確認が遅くためらいがある
2点 左上下肢が不適切な位置に放置されることが一貫して観察される。指摘すれば気づくが確認が不完全・不効率
3点 左上下肢への認識がほぼない。右半側の身体のみ意識している。「この腕は自分のものではない」発言が出ることもある(ソマトパラフレニアの可能性)
【安全上の緊急課題】 左上肢が車椅子のフットレストに挟まったまま移動しようとする行動は転倒・骨折の直接リスクです。3点(ほぼ常に認識なし)の場合はソマトパラフレニアの可能性を考慮し、神経心理学的精密評価(医師・公認心理師との連携)を検討してください。家族・病棟スタッフへの注意喚起を必ず行います。

7

左側への聴覚的注意が困難(Auditory attention to the left)

観察場面左側から発せられる声・音・アラームへの反応
観察ポイント左側からの呼びかけへの反応速度・頭の向き・応答の有無
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 左側からの呼びかけ・音に左右差なく適切に反応する
1点 左側からの呼びかけに対して常に右側を先に確認してから左に向く。反応が遅くためらいがある
2点 左側からの呼びかけを一貫して無視または著しく遅延して反応する。左にいるスタッフから呼ばれても右を向いたまま返事をする
3点 左側からの音・声にほぼ反応しない。左耳への聴覚刺激への反応が著しく低下・消失
【難聴との鑑別】 聴覚性無視は左側からの声に無反応なのに右側からは普通に会話できる点で両側性難聴と鑑別できます。病棟コミュニケーションでは患者の右側からの接触を基本とすることで安全なコミュニケーションが確保できます(ただし無視の改善を妨げる場合があるため段階的な配慮が必要)。

移動・空間認識領域(項目8〜10)

移動・方向見当識・物品探索場面での無視行動

実際の移動・空間ナビゲーション・物品探索場面での無視行動を評価します。転倒・衝突リスクの直接評価となる項目が含まれ、退院後の安全性・在宅生活の可否判断にも重要です。

8

移動時に左側へ衝突する(Collisions with obstacles on the left)

観察場面歩行・車椅子自走・廊下移動場面
観察ポイント左側の壁・ドア枠・家具・車椅子フットレストへの衝突・接触
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 移動中に左側の障害物への衝突なし。適切に回避できる
1点 移動中に常に右側を先に確認してから左側を確認する。左側の障害物への接近時に遅く・ためらいがある
2点 左側の壁・ドア枠・家具への衝突が一貫して観察される。声かけすれば回避動作はとれるが探索が不完全
3点 移動が右半側のみを意識した軌跡となり、左側への衝突が頻繁。常時見守り・誘導が必要。車椅子自走は安全に実施困難
【転倒・外傷リスク管理:最重要項目】 2点以上の場合は即日対応が必要です。①左側廊下壁に目立つ赤いテープ・矢印②車椅子自走の範囲制限③プリズム適応療法との組み合わせ。退院前には自宅環境のシミュレーション評価(段差・通路幅・家具配置の確認)が必須です。

9

左側の空間見当識が困難(Spatial orientation toward the left)

観察場面病棟内の自室・トイレ・食堂への移動。廊下での左折・方向転換
観察ポイント目的地が左側にあるときに左折できるか・左を向くべき場面で直進しないか
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 病棟内の方向見当識は正常。左への移動・転換に問題なし
1点 方向転換時に常に右側を先に確認してから左を向く。左への転換は遅くためらいがある
2点 目的地が左側にある時の方向転換が一貫して困難。「部屋がわからない」訴えがある。指摘されれば左を向けるが探索は非効率
3点 方向転換が右半側空間のみに向き、左への転換ができない。病棟内で頻繁に迷子になり常時誘導が必要
【在宅生活への直接影響】 空間見当識の低下は自宅・近隣での単独移動に直接影響します。介入:①病棟内のルートに視覚的ランドマーク(色付きテープ・矢印)②仮想空間でのナビゲーション訓練(VR)③プリズム適応療法。退院前の外出訓練で実環境でのスコア確認が推奨されます。

10

左側の身の回りの物を探せない(Finding personal belongings on left side)

観察場面ナイトテーブル・ベッド周囲・病室内の左側に置かれた物品の探索
観察ポイントナイトテーブルの左側に置かれたコップ・眼鏡・リモコンを探す際に左側を確認するか
配点0〜3点
点数 採点基準
0点 左側に置かれた物品を自然に探して取ることができる
1点 物品探索時に常に右側から先に確認し、左側への移行が遅く・ためらいがある。促せば左側も探せる
2点 左側の物品を一貫して発見困難。「見つからない」と右側ばかり探す。指摘されれば左を向けるが探索は不完全
3点 左側の物品探索を右半側のみで行い、左側が完全に無視される。「誰かが持っていった」と述べることがある
【在宅環境整備との直結】 最も即効性のある代償戦略は「重要物(眼鏡・補聴器・薬・携帯電話)は患者の右側に置く」という環境整備です。退院前に家族へ「重要な物は右側に、危険な物(刃物・熱い飲み物)は左側に置かない」指導を必ず実施してください。

CBS スコア解釈 ― 重症度分類・病態失認の定量化

重症度分類(Azouvi基準:0〜30点)

無視なし 0点 全10項目で
無視行動なし
軽度無視 1〜10点 一部ADL場面での
軽微な無視行動
中等度無視 11〜20点 多くの場面で
一貫した無視行動
重度無視 21〜30点 ほぼ全場面で重篤
常時介助が必要

📊 参考データ(Azouvi 2003, n=83 右半球脳卒中患者・発症後平均15.9週)

Azouvi et al.(2003)の検証研究では、83名中3.6%のみが0点(無視なし)であり、多くの患者に何らかの行動的無視が残存していることが示されています。Goedert et al.(2012, n=51, 急性期右半球脳卒中)では平均CBSスコア19.3点(SD 6.7点)が報告されており、急性期の右半球損傷患者では中等度〜重度の無視が一般的です。

病態失認(アノソグノジア)の定量化

📐 病態失認スコアの算出と解釈

病態失認スコア = CBS-T(観察者評価合計)― CBS-P(患者自己評価合計)

正の値が大きいほど「患者が自分の無視を過小評価している(病態失認が強い)」ことを意味します。Azouvi et al.(2003)では病態失認の程度は無視の重症度と有意に相関するが個人差も大きいと報告されています。

差分スコア(CBS-T − CBS-P) 解釈 臨床的対応
0点(一致) 病態失認なし〜軽微 自己認識と一致。代償戦略の学習・定着が進みやすい
1〜5点 軽度の病態失認 フィードバックで自己認識の改善が期待できる
6〜10点 中等度の病態失認 安全管理強化。家族への注意喚起を行う
11点以上 重度の病態失認 退院後の単独生活・運転は危険。24時間見守り体制の検討

負の差分(CBS-P > CBS-T)の場合:患者が実際より困難を大きく訴えているケースで、抑うつや不安の影響も考慮して評価してください。

専門家向け:CBS-PA / CBS-ME サブスコアと無視サブタイプ分析

Chen P, Hreha K ら(Top Stroke Rehabil. 2012)はCBSの10項目を2つのサブスケールに分類しています:

CBS-PA(Perceptual-Attentional:知覚・注意サブスケール):項目1(整容)・2(着衣)・3(食事)・4(口腔ケア)・5(視覚注意)・7(聴覚注意)などの感覚・注意系の項目群。主に頭頂葉の空間注意ネットワークに関連。

CBS-ME(Motor-Exploratory:運動・探索サブスケール):項目6(上下肢認識)・8(衝突)・9(空間見当識)・10(物品探索)などの能動的・探索的行動に関わる項目群。主に前頭葉・運動系のネットワークに関連。

Goedert et al.(2012)の研究では、CBS-ME(運動・探索サブスケール)が急性期の機能的依存度をより強く予測する(FIMとの相関が高い)という知見が報告されています。サブスケール別の分析を行うことで、知覚性無視(注意の問題)と運動性無視(探索行動の問題)を鑑別し、アプローチを最適化できます。詳細分析にはKF-NAP®の使用が推奨されます。

CBS・BIT・SIAS・KF-NAP® の徹底比較

比較項目 CBS BIT(行動性無視検査) SIASの視空間認知(項目19) KF-NAP®
評価の種類 観察型(ADL場面) 机上テスト(紙筆) 机上(50cm線分二等分) 観察型+机上の統合
配点 0〜30点・10項目(高点=重度) 通常146点+行動81点=最大227点 0〜3点・1項目(高点=良好) CBS準拠・詳細採点
所要時間 10〜30分(ADL並行) 30〜45分(机上検査) 1〜2分 30〜60分
生態学的妥当性 ✅✅ 最高(実ADL場面) △ 低い(検査場面) △ 低い(机上) ✅ 高い
病態失認評価 ✅ 可(CBS-T − CBS-P) ❌ 不可 ❌ 不可 ✅ 可能
無視サブタイプ分析 △(PA/MEサブスケール) ✅(通常・行動テスト別) ❌ 不可 ✅✅ 最も詳細
N/A項目の扱い ✅ N/A換算式あり — 基本的に全実施 — 省略不可 ✅ N/A対応あり
BITより感度が高い ✅(Azouvi 2002 報告) —(標準参照ツール) △(スクリーニングのみ)
急性期ベッドサイド ✅(観察のみで可) △(体力・意識が必要) ✅ 可 △(習熟が必要)
介入効果の測定 ✅(ADL改善を直接反映) ✅(感度が高い) △(粗い)
最適場面 ADL行動的無視の定量化・病態失認評価・介入効果モニタリング 無視の精密神経心理プロファイル SIASとしての包括スクリーニング 無視の包括的・精密評価

💡 推奨:半側空間無視評価ツール組み合わせのフロー

急性期(発症〜2週):SIAS項目19(スクリーニング)+ CBS-T(ADL観察から並行開始)→ USN疑い強い場合はBIT追加。病棟スタッフへUSN対応指示(ベッドの向き・接触方向など)を出す。

回復期(集中リハビリ期):CBS-T+CBS-P(病態失認モニタリング)を2〜4週ごとに定期評価。BITで神経心理プロファイル分析。プリズム適応療法の効果判定にCBS-Tを使用。

退院前・生活期:CBS+自宅環境シミュレーション評価 → 退院後サービス・家族指導・環境調整の立案。KF-NAP®での詳細評価を必要に応じて追加。

⚠️ CBSの限界と注意点

評価者の習熟度が信頼性に影響:評価前のトレーニングが推奨されています(Azouvi 2003)。施設内での定期的なキャリブレーション(合同評価・採点基準の読み合わせ)が重要です。

複数回観察が必要:1回のADL観察のみでは信頼性が低くなります。少なくとも各項目を2〜3回の機会で観察してから採点することが推奨されます。

運動障害との鑑別:重度の麻痺がある患者では「できない(運動障害)」と「気づかない(USN)」の鑑別が必要で、CBSスコアが実際のUSN重症度より高くなる可能性があります。

左側USNが主な対象:CBSは主に右半球損傷後の左側USN評価のために設計されており、右側USN(左半球損傷後・稀)への適用は標準化データが限られています。

重度の失語症・認知機能低下への対応:CBS-P(患者自己評価版)の実施は重度の失語症・認知機能低下患者では困難な場合があります。CBS-Tのみの実施も有効ですが、病態失認スコアは算出できなくなります。

CBSスコアからリハビリ計画へ ― エビデンスに基づく介入戦略

ここまでお読みいただいた方へ

CBSのスコアパターンを
「個別リハビリ計画」に落とし込めていますか?

10項目のスコアと病態失認スコアを組み合わせた分析から、最も介入効果が高い場面を特定することが最短の回復ルートです。STROKE LABでは包括的評価から介入まで一貫して対応しています。

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プリズム適応療法(Prism Adaptation Therapy)― 最もエビデンスが強い介入

右側に光学的にずらすプリズムゴーグルを装着してポインティング課題を反復練習します(1セッション10〜15分・週5回・2〜4週間)。複数のRCTでCBSスコア・BITスコアの有意な改善が報告されており(Rode et al., 2015;Mizuno et al., 2011)、USN介入の中で最もエビデンスレベルが高い方法の一つです。CBS-MEサブスケール(運動・探索系)に特に効果的との報告もあります。プリズム効果の確認評価はセッション10回終了後にCBS-Tで実施することを推奨します。

2
視覚走査訓練(Visual Scanning Training)― 最もよく用いられる介入

左側への自発的な視線移動を体系的に訓練します。「左端の目印から右方向へスキャンする」「左側から確認を始める習慣づけ」を食事・読書・環境探索の各場面で繰り返す方法です。CBS-PA(知覚・注意系)の項目改善に有効です。代償戦略(「食べる前に必ず左を確認する」というルーティン化)との統合が実用的なADL改善に直結します。

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環境調整とキューイング ― 即効性の高い安全対策

①重要物品(眼鏡・薬・コップ)は患者の右側に配置②ベッドを左側が壁になるよう配置(左への衝突防止)③廊下・病室に目立つカラーテープ・矢印の設置④食器の中央に赤いシール(「ここまで食べた」確認キュー)。これらは訓練の代替ではなく安全確保の補助手段として位置付けます。代償戦略への過度の依存は無視の自然回復を妨げる可能性もあるため、認知的訓練と並行して使用します。

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病態失認が強い患者への特別アプローチ(差分スコアが6点以上の場合)

標準的な訓練の前に「自分が無視していること」を認識させるフィードバックセッションが必要です。
食事前後の写真撮影(「左半分が残っている」を視覚的に示す)②動画記録を本人に見せる(「左側を見ていないこと」を観察させる)③「なぜ左を見なかったのか」のメタ認知訓練。病態失認が強いほど代償戦略の学習効率が低いため、自己認識の改善を最優先ターゲットとします。退院後の単独生活・運転可否の判断にも差分スコアを活用してください。

5
その他のアプローチ ― 補助的介入

頸部筋振動刺激(Neck Muscle Vibration)・TENS・経頭蓋磁気刺激(TMS)・体幹の左回旋訓練・前庭刺激などが補助的に用いられます。これらのCBSスコア改善への直接的なエビデンスは限定的ですが、プリズム療法・視覚走査訓練との組み合わせで効果増強が期待されています。VR(仮想現実)を用いた無視リハビリは近年エビデンスが蓄積されつつある新しい選択肢であり、特に空間見当識(項目9)・衝突(項目8)への効果が期待されています。

CBSのエビデンス ― 信頼性・妥当性・臨床的有用性

信頼性(Azouvi et al., 2003, n=83)

高い評価者間信頼性 ― Kappa 0.59〜0.99(各項目)・Spearman Rho=0.96

Azouvi et al.(2003)の検証研究(83名の右半球脳卒中患者・発症後平均15.9週)において、評価者間信頼性は各項目でKappa係数 0.59〜0.99、全体的なSpearman相関係数はRho=0.96という高い値が確認されました。内的一貫性(Spearman’s Rho)は0.58〜0.88で、歯磨き項目(0.58)を除く全項目が0.69以上の高い相関を示しました。これは「訓練を受けた評価者が使用することで安定した評価が可能」であることを意味しますが、訓練なしの評価者では信頼性が低下する可能性があるため、評価前トレーニングが不可欠です。

妥当性(Azouvi 2002;Luukkainen-Markkula et al.)

机上テスト(BIT)より感度が高い ― 生態学的妥当性の優越性

Azouvi et al.(2002, J Neurol Neurosurg Psychiatry)の研究では、CBSが線分消去・星印消去・線分二等分などの従来の机上テストと有意に相関しながらも、行動的無視の検出においてこれらより感度が高いことが統計的に示されました。特に重要な知見として、机上テストで正常と判定された患者の一部にもCBSで有意な行動的無視が検出されることが明らかになっています。CBSとFIMの相関(r=−0.65〜−0.78)から、CBSスコアが日常生活上の活動制限を適切に反映することも確認されています。

転帰予測

急性期CBSスコアと退院時ADL・入院期間の予測

急性期のCBSスコアが高いほど退院時FIMスコアが低く・入院期間が長く・自宅退院率が低いことが複数の研究で報告されています。特に病態失認スコア(CBS-T − CBS-P)が大きいほど長期予後が不良という知見は、病態失認評価の臨床的重要性を裏付けています。また、Samuel et al.(2000)はCBSがプリズム適応療法の介入効果測定ツールとして有効であることを示し(CBSスコアが21→15・23→12に改善)、介入効果のモニタリングにCBSが最適なアウトカム指標であることが示されています。

臨床ケーススタディ ― CBSを活用したリハビリ計画の立案

📋 症例:田中さん(72歳・女性)右中大脳動脈領域梗塞 発症後3週間

左片麻痺(右利き)、回復期リハビリ病棟入棟時評価。「自分はほとんど問題ない」と述べているが、ADL全般に左側への無視が観察されている。BIT通常テスト95/146点(カットオフ以下)、BIT行動テスト49/81点。

項目番号・内容 CBS-T(観察者) CBS-P(患者自己) 差分(病態失認) 優先度
1. 左側の整容 2点 0点 +2
2. 左側の着衣 3点 1点 +2 ★最優先
3. 左側の料理 3点 0点 +3 ★最優先(栄養)
4. 左側の歯磨き 2点 0点 +2 ◎(誤嚥)
5. 視覚的注意 3点 1点 +2 ★最優先
6. 上下肢認識 2点 0点 +2 ◎(安全)
7. 聴覚的注意 2点 0点 +2
8. 移動時衝突 3点 1点 +2 ★最優先(転倒)
9. 空間見当識 2点 0点 +2
10. 物品探索 2点 1点 +1
合計 24点(重度) 4点 +20点(重度病態失認)

分析と介入優先順位:

病態失認スコア+20点が最大の問題 → メタ認知プログラム(食事前後の写真比較・動画フィードバック)を開始し自己認識の改善から着手。② 移動時衝突(8:3点)が最も緊急の安全課題 → 即日、廊下左壁に赤いテープ設置。車椅子自走は見守り付きに限定。③ 食事の3点(栄養リスク)→ 食器を食事中に90°回転。管理栄養士と連携し残食記録を継続。④ プリズム適応療法を週5回開始。⑤ 口腔ケア4点(誤嚥リスク)→ STに情報共有し口腔ケアプロトコルに左側対応手順を追加。

よくある質問(FAQ)― CBS評価について

CBSとBITはどちらが半側空間無視の評価に優れていますか?
CBS:実際のADL場面での行動的無視を定量評価。Azouvi et al.(2002)の報告で机上テストより感度が高いことが示されています。病態失認の評価(CBS-T − CBS-P差分)ができる点が大きな強みです。机上テストで正常と出ても実際の生活で無視が残存するケースを検出できます。

BIT:標準化された神経心理学的テスト。無視の精密なプロファイリング・サブタイプ分析に有用で、研究目的に向いています。

推奨フロー:日常臨床でのADLモニタリング・介入効果の測定→CBS無視タイプの精密分析・研究目的→BITを組み合わせることで最も包括的な情報が得られます。

1点の採点基準「右側を先に探索する・ためらいがある」が分かりにくいです
Azouvi et al.(1996/2003)の原著における1点の定義は「mild neglect: patients always exploring right hemi-space first and going slowly and hesitating towards the left」です。

日本語で説明すると:「毎回必ず右側から先に始め、左側に向かう時は動きが遅くなったり、一瞬止まって迷ったりするが、最終的には左側にも到達できる」状態です。例えば食事では「毎回右側の料理から食べ始め、左側へ箸を伸ばすのが遅い・ためらいがあるが、食後には食器をほぼ完食している」場合が1点相当です。2点との違いは「左側への見落としが一貫している(2点)か、遅くても最終的には到達できる(1点)か」で判断します。

N/Aの項目が多い場合、信頼性に問題はありませんか?
評価可能な項目数が少ないほど換算スコアの信頼性は低くなります。一般的に7項目以上が評価可能であれば換算式(合計÷有効項目数×10)でのスコア算出が妥当とされています。急性期でベッド上安静が続く場合は移動関連の項目(8・9)がN/Aになりやすく、セルフケア場面(1〜4)の評価が先行します。医学的に安定し活動量が増えてきた段階で全10項目の評価を目指してください。N/A項目が多い急性期でも、評価可能な項目のみでのスコアは転帰予測に有用です。
CBSは右半球損傷以外(例:TBI・左半球損傷)にも使えますか?
CBSは主に右半球脳卒中後の左側USN評価のために標準化されており、検証データの多くは右半球損傷患者を対象としています。ただしRehabMeasures(SRALab)では「脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)のすべての回復段階で使用可能」と記載されており、TBI後のUSN評価への応用も可能です。左半球損傷後の右側USN(稀ではありますが存在します)への適用は理論的には可能ですが、採点基準の左右を読み替える必要があり、標準化データは限られています。適用する際は評価目的を明確にし、スコアの解釈に注意してください。
評価者間信頼性を高めるためのキャリブレーションはどうすればよいですか?
以下のステップを施設内で実施することを推奨します:

採点基準の読み合わせ:本記事の各点数の定義(特に1点・2点の行動的描写)を複数名で確認する
動画を用いた合同評価:USN患者のADL動画を複数の評価者が独立して採点し、不一致項目を議論する
実際の患者で合同評価:新人・経験者がペアで同一患者を観察し、採点後に照合する
KF-NAP®のマニュアル活用:KF-NAPはCBSの詳細な採点基準を文書化したマニュアルであり、施設内教育に最適です

定期的なキャリブレーション(月1回程度)で施設内の採点基準の統一を維持することが、縦断的な変化追跡の精度向上につながります。

CBSの評価頻度と再評価のタイミングは?
一般的な目安:
急性期:週1回(状態変化の早期把握)
回復期(集中リハビリ):2〜4週ごと(プリズム療法実施中は介入前後:10セッション終了後)
退院前:退院の2〜4週前に最終評価(在宅環境のシミュレーション時と合わせると有効)
退院後フォローアップ:退院後1・3・6ヶ月での評価が生活期の変化把握に役立つ

同一患者の評価はできるだけ同一評価者が担当することで評価者間誤差を最小化できます。評価者が変わる場合は引き継ぎの際に採点基準の確認を行ってください。

患者さんやご家族にCBSのスコアをどう伝えればよいですか?
数字をそのまま伝えるより、「どの生活場面でどのような困難が起きているか」を具体的に説明することが有効です。例:「食事のとき左側の料理を見落とすことが多い(3点)」「歩いていて左の壁に当たりやすい(3点)」のように場面別の問題として伝えましょう。

病態失認がある場合は特に慎重に。「測定の結果ではこのような場面でこのような行動が見られます」と客観的事実を伝え、批判・評価をしない姿勢が重要です。ご家族には「本人は気づきにくい症状なので、周囲が補う形での安全確保が重要」と具体的な支援方法と合わせて説明し、家族が責任を持ちすぎない(バーンアウト防止)よう配慮してください。

STROKE LABのCBS活用 ― 評価から介入まで

STROKE LABでは、CBSを「点数の記録ツール」ではなく「どの生活場面での無視が最も患者の生活を制限しているかを特定する地図」として活用しています。CBS-T(観察者評価)とCBS-P(患者自己評価)の差分から病態失認の程度を定量化し、自己認識の改善を含めた包括的な無視リハビリテーションを設計します。

STROKE LAB式

CBS起点の半側空間無視リハビリ設計フロー

Step 1 評価:CBS-T(観察者)+ CBS-P(自己評価)+ BIT+ SIAS項目19 で初回評価。病態失認スコア・N/A項目の換算スコアを算出。

Step 2 分析:10項目のスコアをセルフケア・注意認識・移動空間の3領域に分類。CBS-PA/ME サブスケールの傾向を確認。病態失認スコアの程度を確認し介入方針の優先順位を決定。

Step 3 介入設計:プリズム適応療法・視覚走査訓練・病態失認フィードバックセッション・環境調整を個別化して設計。患者の目標(「また台所に立ちたい」「一人で病室から食堂まで行きたい」)に直結した意味ある訓練を処方。

Step 4 効果判定:2〜4週ごとにCBS-T・CBS-Pを再評価。差分スコアの縮小(病態失認の改善)もモニタリング。改善がない場面はアプローチ見直しのシグナル。

Step 5 共有:スコアパターンを病棟スタッフ・家族・多職種チームで共有。「食事時は左側から声かけしない(左→右への気づきを患者自身で促すため)」「重要物品は右側に配置」などの具体的な対応方針をチームで統一します。

リハビリを受けた方の声

入院中から「食事が半分しか食べられていない」と言われていましたが、自分ではまったく気づいていませんでした。STROKE LABでCBSを受けて食前・食後の写真を見たとき、「本当に左半分が残っている」と初めて実感できました。プリズムを使ったリハビリを続けて、今は「食事の前に必ず左を確認する」が習慣になり、一人での食事も安全にできるようになっています。

70代女性・右MCA梗塞後5ヶ月

車椅子で廊下を走っていると「何度も左の壁にぶつかる」とスタッフから言われていました。でも自分では「たまたま」だと思っていました。CBSの評価でぶつかりの記録を見せてもらい、プリズム療法を開始してから1ヶ月でぶつかりの回数が明らかに減りました。家族にも「左側に大事なものを置かない」と協力してもらい、今は安全に自走できています。

65代男性・右頭頂葉出血後4ヶ月

参考文献・引用文献

  • 1) Bergego C, Azouvi P, Samuel C, et al. Validation d’une échelle d’évaluation fonctionnelle de l’héminégligence dans la vie quotidienne: l’échelle CB. Ann Readapt Med Phys. 1995;38:183-189.(仏語原著)
  • 2) Azouvi P, Marchal F, Samuel C, et al. Functional consequences and awareness of unilateral neglect: Study of an evaluation scale. Neuropsychological Rehabilitation. 1996;6(2):133-150.(英語版)
  • 3) Azouvi P, Olivier S, de Montety G, Samuel C, Louis-Dreyfus A, Tesio L. Behavioral assessment of unilateral neglect: Study of the psychometric properties of the Catherine Bergego Scale. Arch Phys Med Rehabil. 2003;84(1):51-57.(大規模検証研究 n=83)PubMed
  • 4) Azouvi P, Samuel C, Louis-Dreyfus A, et al. Sensitivity of clinical and behavioural tests of spatial neglect after right hemisphere stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2002;73(2):160-166.(CBSとBITの感度比較)
  • 5) Chen P, Hreha K, Fortis P, Goedert KM, Barrett AM. Functional assessment of spatial neglect: a review of the Catherine Bergego Scale and an introduction of the Kessler Foundation Neglect Assessment Process. Top Stroke Rehabil. 2012;19(5):423-435. PMC(KF-NAP®解説・CBS-PA/ME)
  • 6) Goedert KM, et al. Psychometric evaluation of neglect assessment reveals motor-exploratory predictor of functional disability in acute-stage spatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(1):137-142.(CBS-MEとFIMの関連)
  • 7) Marques CLS, Souza JT, et al. Validation of the Catherine Bergego Scale in patients with unilateral spatial neglect after stroke. Dement Neuropsychol. 2019;13(1):82-88. PMC
  • 8) Mizuno K, Tsuji T, et al. Prism adaptation therapy enhances rehabilitation of stroke patients with unilateral spatial neglect: a randomized, controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2011;25(8):711-720.
  • 9) SRAlab Rehabilitation Measures Database. Catherine Bergego Scale. sralab.org
  • 10) Nagayama H, et al. Reliability and validity of the Catherine Bergego Scale for behavioral assessment of unilateral neglect after stroke(日本語版信頼性). Sogo Rehabilitation. 2011;39(4):373-380.

CBSで「どの生活場面で無視が起きているか」を特定したら、
次は「どう変えるか」です。

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