子どもの運動発達はどう評価する?|MABC-2・専門的アセスメントの話
子どもの運動発達はどう評価する?|MABC-2・専門的アセスメントの話
「走り方がぎこちない」「転びやすい」「手先が不器用」「体育や運動遊びを嫌がる」——子どもの運動発達は、単に“できる・できない”だけでは評価できません。MABC-2のような標準化検査と、姿勢・感覚・生活場面の観察を組み合わせることで、どこで困り、どこから育てればよいかが見えてきます。

こんな場面で、相談されます。
園の運動遊びで、走るとすぐ転ぶ。片足立ちやジャンプが苦手。ボールを投げる・受ける動きがぎこちない。家では元気に遊んでいるように見えるけれど、集団の中では明らかに遅れて見える。
さらに、着替え、箸、はさみ、書字、片付けなども時間がかかる。そんなとき、保護者の方は「練習不足なのか」「不器用なだけなのか」「発達性協調運動症なのか」と悩みます。
子どもの運動発達を評価するとき、単に「できる・できない」だけを見ても十分ではありません。なぜなら、同じ“できない”でも、体幹が不安定なのか、バランスが取りにくいのか、手足のタイミングが合わないのか、見た情報を運動に変換しにくいのか、背景は子どもによって異なるからです。
評価の目的は、子どもにラベルを貼ることではありません。どこで困り、どの条件なら動きやすく、どの順番で支援すると伸びやすいかを明らかにすることです。
運動発達の評価とは。
運動発達の評価とは、年齢相応の運動ができているかを確認するだけでなく、動きの土台となる姿勢、バランス、筋緊張、感覚、注意、運動の順序立て、生活場面での困りごとを総合的に見ることです。
たとえば、同じ「片足立ちが苦手」でも、足部の支持が不安定な子、体幹が横に崩れる子、視線が定まらない子、不安が強くて固まる子、そもそも課題の意図を理解しにくい子では、支援方法が異なります。標準化検査は大切ですが、点数だけではその違いまでは分かりません。

標準化検査で同年齢の子どもと比べた位置を確認し、同時に、実際の動き方、代償、疲れやすさ、成功しやすい条件を見ます。この二つがそろうことで、支援の方向性が具体的になります。
MABC-2で分かること。
MABC-2は、Movement Assessment Battery for Children-Second Editionの略で、子どもの運動協調性を評価する標準化検査の一つです。対象は主に3歳から16歳までで、年齢帯ごとに課題が分かれています。評価する主な領域は、手先の操作、ボール操作、バランスです。
MABC-2の良さは、運動の苦手さを「なんとなく不器用」という印象ではなく、年齢に応じた基準と比較して整理できる点にあります。特に、発達性協調運動症、いわゆるDCDが疑われる子どもでは、運動面の困難さを確認するために用いられることがあります。

| 評価領域 | 見ている力 | 生活での困りごと |
|---|---|---|
| 手先の操作 | 指先の細かさ、目と手の協調、スピードと正確性 | 書字、はさみ、ボタン、箸、折り紙、工作が苦手 |
| ボール操作 | 投げる・受ける・狙う・タイミングを合わせる力 | ドッジボール、キャッチボール、体育、遊びへの参加が難しい |
| バランス | 静的・動的バランス、姿勢保持、体重移動 | 転びやすい、片足立ち・ジャンプ・階段・遊具が苦手 |
MABC-2の結果は、お子さんの運動の苦手さを客観的に見る材料になります。ただし、検査結果だけで支援内容が決まるわけではありません。どんな姿勢で取り組んだか、失敗したときにどう修正したか、疲れるとどう変化したかも重要です。
点数の見方と注意点。
MABC-2では、課題ごとの成績を年齢に応じた基準に照らして、標準得点やパーセンタイルとして整理します。パーセンタイルは、同じ年齢の子どもの中でどのあたりに位置するかを見るための指標です。
DCDの評価では、一定以下のパーセンタイルが運動面の困難を示す参考になります。ただし、特に低年齢では一度の検査だけで決めるのではなく、時期を空けて再評価したり、生活での困りごとと照らし合わせたりする必要があります。
| 結果で見るもの | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 総合得点 | 全体としての運動協調性の目安 | 総合点が平均でも、特定領域だけ弱いことがあります |
| 領域別得点 | 手先・ボール・バランスのどこが苦手か | 得点の低さと生活上の困りごとが一致するか確認します |
| 観察所見 | どのように課題に取り組んだか | 代償、疲労、不安、理解、注意の影響を見ます |
DCDとの関係。
発達性協調運動症、DCDは、年齢や経験に比べて協調運動の獲得や実行が難しく、日常生活、学校生活、遊び、スポーツなどに影響が出る状態です。よくある困りごとには、転びやすい、ボールが苦手、着替えに時間がかかる、字を書くのが遅い、はさみや定規が苦手、体育を避けたがるなどがあります。
ただし、DCDの診断はMABC-2だけで決まるものではありません。運動技能の低さ、生活や学業への影響、発達早期からの様子、そして視覚障害・神経疾患・筋疾患・知的発達の影響など、他の要因で説明されないかを確認する必要があります。
DCDの可能性を考える目的は、子どもを分類することではありません。本人が困っている動作を理解し、環境調整や練習方法、学校での配慮につなげるためです。

— 点数だけでなく、生活場面での困りごとまで整理します
STROKE LABでは、標準化検査の考え方に加え、姿勢・体幹・感覚・運動計画・生活動作を総合的に見ます。「どこができないか」ではなく、「どうすれば動きやすくなるか」を一緒に考えます。
専門的アセスメントの流れ。
専門的な運動発達評価では、検査だけを行って終わるのではなく、事前の聞き取り、観察、標準化検査、質的分析、フィードバックを組み合わせます。特に小児では、緊張や不安、眠気、場所への慣れ、検査者との関係性によって動きが変わるため、一回の結果だけで判断しないことも大切です。
妊娠・出産、乳児期の発達、歩き始め、転びやすさ、手先の困りごと、園や学校での様子を確認します。
着替え、食事、書字、遊び、体育、移動、集団参加など、実際に困っている場面を具体的に整理します。
MABC-2などを用いて、同年齢の基準と比較しながら手先・ボール操作・バランスを確認します。
姿勢、筋緊張、体重移動、視線、手足の協調、代償、疲労、不安など、動き方の質を見ます。
家庭での練習、学校での配慮、リハビリで育てたい要素を、優先順位をつけて提案します。
動きの質を見る視点。
専門的なアセスメントでは、課題が成功したかどうかだけでなく、成功するまでにどのような動きをしていたかを見ます。ぎこちない動きの中には、体幹の不安定さ、感覚の使いにくさ、運動の順序立ての難しさが隠れていることがあります。

| 観察する視点 | 見える様子 | 支援の方向性 |
|---|---|---|
| 姿勢の安定 | 座ると崩れる、走ると体が左右に揺れる | 体幹・骨盤・足部の支持を整える |
| タイミング | ボールに手が遅れる、ジャンプの踏み切りが合わない | リズム、予測、視線と体の連動を練習する |
| 感覚の使い方 | 力加減が強すぎる・弱すぎる、足元を見続ける | 固有感覚・前庭感覚・触覚の使いやすさを見る |
| 運動計画 | 初めての動きで固まる、手順を忘れる | 工程を分け、見本・言葉・反復の仕方を調整する |
家庭・園・学校での見方。
運動発達の評価では、検査室での成績だけでなく、家庭・園・学校での実際の困りごとを必ず確認します。なぜなら、同じ子どもでも、環境によって動きやすさが大きく変わるからです。
家では問題なく見えても、園や学校では、時間制限、集団行動、道具の違い、周囲との比較、先生の指示の速さなどが加わります。そのため、家庭では目立たなかった運動の苦手さが、集団場面で現れることがあります。
家庭では、着替え、食事、歯みがき、靴、ランドセル、宿題の書字などを見ます。時間がかかるだけでなく、疲れやすい、嫌がる、途中で怒るといった様子も大切な情報です。
園や学校では、体育、外遊び、製作、書字、道具の準備、移動、給食、着替えなどを見ます。集団の中で困る場面は、本人の自己肯定感にも関わります。
評価前に、困っている場面を短いメモや動画で残しておくと、専門家に伝わりやすくなります。
| 場面 | 見るポイント | 支援につながる情報 |
|---|---|---|
| 家庭 | 着替え、食事、宿題、身支度、遊び | 生活の中で練習しやすい課題が分かる |
| 園 | 運動遊び、制作、集団活動、着替え | 成功しやすい環境調整が見つかる |
| 学校 | 体育、書字、道具操作、休み時間、移動 | 合理的配慮や課題調整につながる |
相談の目安。
運動が少し苦手でも、本人が楽しく参加でき、生活上大きな困りごとがない場合は、すぐに専門評価が必要とは限りません。一方で、苦手さが生活や学校参加に影響し、本人が強い不安や自己否定を感じている場合は、早めに相談する価値があります。
相談先としては、かかりつけの小児科、自治体の発達相談、園や学校の先生、作業療法士・理学療法士などがあります。評価を受ける前に、困っている場面、得意な場面、どんな条件ならできるかをメモしておくと、支援方針が立てやすくなります。
STROKE LABの評価。
STROKE LABは、脳卒中をはじめとする神経リハビリで培った運動分析の視点をもとに、小児の姿勢・運動発達・生活動作の評価を行っています。標準化検査の考え方に加えて、動きの背景にある体幹、骨盤、肩甲帯、足部、感覚、運動計画を丁寧に見ていきます。

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よくある質問。
MABC-2はDCDの評価で重要な情報になりますが、検査だけで診断が決まるわけではありません。生活や学校での困りごと、発達歴、他の医学的要因の有無などを総合的に確認します。
苦手でも楽しく参加できている場合は、すぐに専門評価が必要とは限りません。ただし、転びやすさ、手先の困りごと、体育への強い苦手意識、生活への支障が続く場合は、一度評価を受けることで支援の方向性が見えやすくなります。
点数が低いことは重要なサインですが、支援内容は生活での困りごとと合わせて考えます。本人が困っている動作、学校で困る場面、家庭での負担を見ながら、必要な支援を決めていきます。
困っている場面をメモしておくことが役立ちます。たとえば、どの動作で時間がかかるか、いつ転びやすいか、どんな声かけでできるか、学校で何に困っているかを整理しておくと、評価が具体的になります。
検査だけではなく、姿勢、体幹、感覚、運動計画、生活動作を総合的に見ます。そのうえで、家庭での練習や学校での配慮、リハビリで優先すべき課題を一緒に整理します。
その子に合う育て方を見つけるためにあります。

子どもの運動発達には、大きな個人差があります。だからこそ、苦手な動きだけを見て判断するのではなく、姿勢、感覚、生活場面、本人の気持ちまで丁寧に見ることが大切です。
STROKE LABでは、神経リハビリで培った運動分析の視点をもとに、その子がどの条件なら動きやすいか、どの順番で支援すると伸びやすいかを一緒に考えます。
お子さんの運動発達や不器用さで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
参考と注意書き。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。MABC-2などの標準化検査は、適切な資格・訓練を受けた専門職が、検査手続きに沿って実施・解釈する必要があります。お子さんの状態については、小児科医、発達相談、作業療法士・理学療法士などの専門職にご相談ください。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)