低緊張(筋緊張が低い)とは|赤ちゃん〜学童の症状と神経のしくみ
低緊張(筋緊張が低い)とは|赤ちゃん〜学童の症状と神経のしくみ
抱っこするとぐにゃっとする、姿勢がすぐ崩れる、疲れやすい、運動発達がゆっくり——それは、単なる「体が柔らかい」ではなく、体を支えるための筋肉の準備が入りにくい状態かもしれません。低緊張を、神経・姿勢・生活動作の視点から整理します。

こんな場面で、心配になります。
赤ちゃんを抱き上げると、首が後ろに倒れやすい。わきの下から抱こうとすると、体がすべるように感じる。うつ伏せにしても頭を上げにくく、手足がだらんと伸びている。
少し大きくなってからも、座っているとすぐ机にもたれる。歩くと疲れやすい。体育や書字が苦手。こうした様子が重なると、「筋緊張が低いのでは?」と心配になることがあります。
低緊張は、見た目だけでは分かりにくいことがあります。赤ちゃんでは「ぐにゃっとする」「頭が支えにくい」という形で気づかれやすく、幼児〜学童では「姿勢が崩れやすい」「疲れやすい」「不器用」として見えてくることがあります。
大切なのは、低緊張を「体が柔らかい」「筋肉が弱い」と一言で片づけないことです。筋緊張は、姿勢を保ち、手足を動かし始めるための神経と筋肉の準備状態です。この記事では、低緊張の症状を年齢ごとに整理し、神経のしくみから分かりやすく解説します。
低緊張とは何か。
低緊張とは、筋肉の張り、つまり筋緊張が通常より低い状態を指します。筋緊張は、何もしていないときにも体の中で保たれているわずかな張りで、姿勢を保ったり、次の動作にすぐ移ったりするために必要です。
たとえば、椅子に座っているとき、私たちは意識しなくても体幹や首の筋肉を少し働かせています。立つ、歩く、手を伸ばす、鉛筆を持つといった動作も、まず体を支える筋肉が準備され、その上に手足の動きが乗っていきます。低緊張では、この土台となる張りが入りにくいため、姿勢が崩れやすく、動作に余分な努力が必要になります。

体が柔らかい子どもが全員、低緊張というわけではありません。低緊張では、関節の柔らかさだけでなく、姿勢を保つ力、動作を始めるタイミング、疲れやすさ、生活動作への影響をあわせて見ます。
筋緊張と筋力の違い。
低緊張を考えるときに重要なのが、筋緊張と筋力を分けて見ることです。筋緊張は、姿勢を保つための筋肉の張り。筋力は、必要なときに力を発揮する能力です。似ているようで、評価するポイントは異なります。
低緊張がある子どもは、筋力そのものが大きく低下していなくても、姿勢を保つために余分な努力が必要になり、結果として疲れやすく見えることがあります。一方で、低緊張と筋力低下が一緒に見られる場合もあります。そのため、専門的な評価では「張り」と「力」を分けて確認します。
赤ちゃんの低緊張で見られやすいサイン。
赤ちゃんの低緊張では、抱っこや寝返り、うつ伏せ、哺乳など、毎日の関わりの中で気づくことがあります。以下は、家庭で見られやすいサインです。あくまで目安であり、ひとつ当てはまるだけで病気と決まるわけではありません。

| 場面 | 見られやすい様子 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 抱っこ | 体がぐにゃっとする、わきの下から滑るように感じる | 頭・肩・体幹をどのくらい支える必要があるか |
| 仰向け | 手足がだらんと開きやすい、カエル足のように見える | 左右差、足の開き、手足を中心に寄せる力 |
| うつ伏せ | 頭を上げにくい、肘で支えにくい、すぐ疲れる | 首・肩甲帯・体幹で支える準備 |
| 授乳・哺乳 | 吸う力が弱い、飲むのに時間がかかる、むせやすい | 体幹・口周り・呼吸との協調 |
| 発達の節目 | 首すわり、寝返り、お座りがゆっくり | 月齢だけでなく、少しずつ変化しているか |
幼児〜学童では、生活の困りごととして見えます。
低緊張は、赤ちゃんの時期だけの問題ではありません。幼児期や学童期になると、姿勢を保つ時間が長くなり、歩く・走る・座る・書く・食べるなどの活動が増えます。そのため、低緊張は「運動が苦手」「姿勢が悪い」「疲れやすい」「不器用」といった形で見えやすくなります。

| 年齢・場面 | 困りごと | 背景にあるかもしれないこと |
|---|---|---|
| 幼児期 | 転びやすい、階段が苦手、すぐ抱っこを求める | 体幹・股関節・足部の安定不足、持久力の低さ |
| 園生活 | 座っていられない、床に寝転がる、姿勢が崩れる | 座位保持に努力が必要で、注意が保ちにくい |
| 学習場面 | 字を書くと疲れる、机にもたれる、鉛筆の操作が不安定 | 体幹・肩甲帯の土台が不安定で、手先に負担がかかる |
| 運動・体育 | 走ると疲れる、ジャンプが苦手、球技がぎこちない | 抗重力姿勢、関節安定、タイミング調整の難しさ |
低緊張の子どもは、だらしないわけではありません。座る、書く、立つ、歩くという日常動作の中で、体を支えるために多くのエネルギーを使っていることがあります。その結果、集中が続きにくい、疲れやすい、姿勢が崩れるという形で表れます。

— 体の張り・姿勢・発達の流れを一緒に確認します
STROKE LABでは、筋緊張だけでなく、姿勢、感覚、関節の安定、運動発達、食事や遊び、学習姿勢まで含めて評価します。お子さんに合った関わり方を、ご家族と一緒に整理します。
神経のしくみから見る、低緊張。
筋緊張は、筋肉だけで決まるものではありません。脳、脊髄、末梢神経、筋肉、感覚入力が連携して、体を支える準備を作っています。低緊張では、このどこかの働きが十分に整いにくく、姿勢や動作の立ち上がりがゆっくりになります。

姿勢を保つためには、脳が体幹や首、肩、股関節の筋肉に「支える準備」を送る必要があります。この準備が弱いと、体がぐにゃっと崩れやすくなります。
足裏、関節、筋肉、前庭感覚などから入る情報によって、体は「今どの姿勢か」を知ります。感覚入力が入りにくい、または整理しにくいと、姿勢の安定に影響します。
低緊張では関節が柔らかく見えることがあり、肩・股関節・足部などが安定しにくい場合があります。関節が安定しないと、手先や歩行にも影響します。
低緊張の子どもは、姿勢を保つために余分な努力を使うことがあります。そのため、同じ活動でも疲れやすく、途中で寝転がる、もたれる、集中が切れるように見えることがあります。
中枢性と末梢性の違い。
低緊張の背景は一つではありません。大きく分けると、脳や脊髄などの中枢神経が関係するものと、末梢神経や筋肉が関係するものがあります。保護者の方が原因を見分ける必要はありませんが、「低緊張には複数の背景がある」と知っておくことは大切です。
軽度で経過とともに安定していく低緊張もあります。一方で、哺乳や呼吸の問題、発達の退行、強い筋力低下、左右差がある場合は、早めの医療評価が必要です。心配な場合は、健診・小児科・小児神経・リハビリ専門職に相談しましょう。
相談を考えたいサイン。
低緊張は、早めに相談しても「心配しすぎ」ではありません。特に赤ちゃんでは、哺乳や呼吸、体重増加、発達の進み方と関係することがあります。以下のようなサインがある場合は、かかりつけの小児科や乳幼児健診で相談してください。
相談時には、気になる場面をスマートフォンで短く動画に残しておくと伝わりやすくなります。抱っこ、うつ伏せ、寝返り、お座り、歩行、食事、学習姿勢など、普段の様子が分かる動画があると、専門職が状態を把握しやすくなります。
家庭でできる関わり。
家庭での関わりは、無理に筋トレをさせることではありません。姿勢が安定しやすい環境を作り、遊びの中で体幹・肩・股関節・足部の筋肉が自然に働く経験を増やしていくことが大切です。

赤ちゃんでは、短時間のうつ伏せ遊びや、横向きで手を前に出す遊びなど、頭・肩・体幹を少しずつ使う経験が大切です。必ずそばで見守り、無理のない時間から始めます。
幼児では、ハイハイ遊び、トンネルくぐり、ボールを両手で押す遊び、マットでの姿勢変換など、体を支える遊びを取り入れます。
学童では、椅子と机の高さ、足台、書く前の軽いウォームアップ、短い休憩を使い、姿勢を保ちやすい条件を作ることが大切です。
椅子に深く座る、足裏が床や足台につく、机の高さを調整するなど、体が安定しやすい条件を整えます。
ハイハイ、四つ這い、ボール押し、トンネルくぐりなど、手足で体を支える遊びは、体幹と肩甲帯の安定につながります。
書く前や食事前に、手を押す、タオルを引っ張る、軽くジャンプするなど、体を目覚めさせる活動を入れると姿勢が安定しやすくなります。
長時間がんばらせるより、短時間で姿勢を整え、こまめに休憩を入れる方が生活に取り入れやすくなります。
STROKE LABで見ること。
STROKE LABでは、低緊張を「筋肉が弱いかどうか」だけで判断しません。姿勢、筋緊張、関節の安定、感覚入力、運動発達、生活動作を総合的に見ます。赤ちゃんであれば抱っこ・うつ伏せ・寝返り・お座り、学童であれば座位姿勢・書字・歩行・遊び・体育場面まで確認します。

よくある質問。
低緊張は状態を表す言葉であり、それ自体が一つの病名とは限りません。背景には、発達の個人差、原因不明の軽度低緊張、脳・神経・筋・遺伝性疾患など、さまざまな要因があります。
同じではありません。低緊張は筋肉の張りの低さ、筋力低下は力を出す能力の低下です。ただし、両方が一緒に見られることもあるため、評価では分けて確認します。
いいえ。関節が柔らかいことと低緊張は重なることもありますが、同じではありません。姿勢を保てるか、疲れやすいか、発達や生活動作に影響しているかを合わせて見ます。
原因や程度によって異なります。軽度で原因がはっきりしない低緊張では、成長と経験によって動作が安定してくることもあります。一方で、医療的な評価が必要な背景もあるため、気になるサインが続く場合は相談しましょう。
赤ちゃんでは短時間のうつ伏せ遊び、横向き遊び、抱っこの工夫などから始めます。幼児〜学童では、四つ這い遊び、ボール遊び、机と椅子の調整、活動前の軽いウォームアップなどが役立ちます。お子さんの状態によって適切な方法は異なるため、専門職に相談しながら進めると安心です。
生活の中で丁寧に見ていくサインです。

低緊張は、単に「筋肉が弱い」「体が柔らかい」と片づけられるものではありません。姿勢、感覚、関節、神経の働き、生活環境が関係しながら、お子さんの動きや疲れやすさに表れます。
私たちは、脳卒中をはじめとする神経リハビリで培った運動分析の視点をもとに、お子さんの姿勢と動作を生活の中でどう支えるかを大切にしています。
抱っこ、うつ伏せ、座位姿勢、歩行、書字、疲れやすさなどで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
参考と注意書き。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず小児科医、小児神経科、発達相談、理学療法士・作業療法士などの専門職にご相談ください。低緊張の原因や経過は一人ひとり異なるため、気になるサインが続く場合は早めの相談が大切です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)