【2026年版】脳卒中後の注意障害の予後とは?機能解剖・評価・リハビリテーション・回復メカニズムまで徹底解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】脳卒中後の注意障害の予後とは?機能解剖・評価・リハビリテーション・回復メカニズムまで徹底解説

Stroke Rehabilitation — Post-Stroke Attentional Deficits

脳卒中後の注意障害を、評価から介入まで体系化する。

脳卒中後の患者の約25%が経験する注意障害は、運動麻痺や失語症ほど目立たないにもかかわらず、リハビリテーションの効率を根本から損なう認知機能障害です。本記事では、5つの種類の定義・責任病巣・神経心理学的評価・エビデンスに基づく介入まで、新人臨床家が現場で即使えるよう体系的に整理します。

UPDATED2025
READ約15分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

Prevalence
25%
脳卒中患者のうち、何らかの注意障害を経験する割合。見逃されやすい認知機能障害の一つです。
Recovery Rate
40–60%
リハビリテーションを受けた脳卒中後注意障害の患者が、注意機能の改善を報告する割合。
Golden Period
6ヶ月
発症後6ヶ月〜1年が最も顕著な回復期。この時期の積極的介入が長期予後を左右します。

Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
注意障害は選択的・持続的・分配・転導性・反応性の5種類に分類される。脳卒中患者の約25%に出現し、リハビリの効率を全般的に低下させる。
02
責任病巣は前頭前野・頭頂葉・前帯状皮質・基底核・視床の5領域。複数領域の連携障害で発症するため、単一病巣では説明できない症例が多い。
03
評価はTMT(Trail Making Test)とStroop Testを基本とする。TMT-B所要時間が60歳代で180秒超の場合、注意切り替え障害を疑う。
04
介入の主軸は注意プロセストレーニング(APT)。週3〜5回・1回30〜60分・最低4〜8週間の継続が推奨される。持続→選択→転導→分配の順で難易度を段階的に上げる。
05
発症後6ヶ月〜1年が最も回復しやすい黄金期。多職種連携(OT主導・PT統合・ST包括評価・看護師の病棟観察)でアプローチの一貫性を確保することが重要。

01
Clinical Encounter

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
「歩けていたのに、突然止まってしまう患者さん」—その背景に何があるのか。

70歳代の男性患者さん。右中大脳動脈梗塞を発症し、入院から3ヶ月が経ちました。左片麻痺の回復は比較的順調で、平行棒内の歩行訓練では数往復できます。しかしPTが作業の指示を出した直後に、突然足を止め、ぼんやりとしてしまう場面が続いています。

「麻痺の問題ではないはずなのに…」と悩んでいたところ、OTの評価で持続的注意障害と転導性注意障害の複合が明らかになりました。注意障害は、このように「やる気がない」「協力が得られない」と誤解されやすい形で現れます。

注意障害(Attentional Deficits)は、脳卒中後の認知機能障害の中でも発見が遅れやすいものの一つです。運動麻痺や失語症と異なり、外見から判断しにくいため、患者さん本人も家族も「性格が変わった」「やる気を失った」と感じることがあります。

しかし、その背景には脳内の注意制御ネットワークの機能不全があります。臨床家として「なぜ集中できないのか」を神経科学的に理解することが、適切な介入の第一歩となります。

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「病院のリハビリだけでは物足りない」と感じているご家族へ。

STROKE LABは、脳卒中後の認知機能・注意障害に特化した自費リハビリ施設です。注意障害の種類を丁寧に評価し、エビデンスに基づいた個別プログラムを提供しています。まずは無料相談でご状況をお聞かせください。

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02
Definition & Epidemiology

注意障害の定義と5つの分類。

注意障害(Attentional Deficits)とは、特定の情報に焦点を当てる・長時間集中を維持する・複数の情報を同時に処理するといった注意機能が、脳損傷によって障害された状態を指します。脳卒中患者の約25%が経験するとされています(Frontiers in Neurology, 2024)。

Key Concept
注意機能は「単一の能力」ではない。

SohlbergとMateer(1987)が提唱した注意の階層モデルでは、注意機能は「持続的注意」「選択的注意」「交替的注意(転導性)」「分配注意」の4つの階層で構成されます。

この階層性を理解することが、APT(注意プロセストレーニング)の段階的介入の根拠となっています。

注意障害の5分類:特徴と日常生活への影響

種類 特徴 日常生活での問題
選択的注意障害 特定の情報に焦点を当て、不要な情報を無視する能力が低下する 背景のノイズや不必要な情報に気を取られ、集中が難しい
持続的注意障害 長時間にわたって注意を維持する能力が低下する タスク完了に時間がかかり、集中力が数分で途切れる
分配注意障害 複数のタスクを同時に処理する能力が低下する 歩きながら話す・料理しながら会話するなどの二重課題が困難になる
転導性注意障害 注意を柔軟に切り替える能力が低下し、変動が大きくなる 一日の中で注意力が変動しやすく、安定したパフォーマンスが困難
反応性注意障害 新しい刺激に迅速に反応する能力が低下する 反応が遅れ、突然の変化や新情報への対処が困難になる

03
Neural Mechanisms

神経メカニズムと責任病巣。

注意機能は、単一の脳領域ではなく、複数の部位が協調して制御しています。Posnerらが提唱した「注意ネットワーク理論」では、注意は覚醒・定位・実行制御の3つのネットワークで構成されます。以下の5つの責任部位を押さえることが、臨床的な症状理解の基盤となります。

Analogy
注意システムは「スポットライト」と「フィルター」の協働。

前頭前野がスポットライトの方向を決め、頭頂葉が照らす対象を選び、前帯状皮質がフィルターとして不要な情報を遮断します。基底核と視床はこれら全体のゲーティング(開閉)を担います。どの部品が故障しても、注意の質が低下します。

脳卒中後の注意障害 概要図

1. 前頭前野(Prefrontal Cortex)

前頭前野は選択的注意と実行機能の中枢です。「何に注意を向けるか」という意図的な制御を担います。損傷すると、選択的注意障害や分配注意障害が発生しやすくなります。

前頭前野と注意機能の関係図

2. 頭頂葉(Parietal Lobe)

頭頂葉は視覚的注意と空間的注意の処理に関与します。特に右頭頂葉の損傷は、視空間無視(hemispatial neglect)を引き起こすことがあり、物体の位置や動きを正確に把握する能力が低下します。

頭頂葉と視空間注意の関係図

3. 前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex)

前帯状皮質は持続的注意と反応性注意の調整に関与します。「今やるべきことに集中し続ける」という制御の要です。損傷によって集中の維持が著しく困難になり、ADL全般の効率が低下します。

前帯状皮質と持続的注意の関係図

4. 基底核(Basal Ganglia)

基底核は運動制御と注意の切り替えに重要な役割を果たします。「一つのことから次のことへスムーズに注意を移す」という転導性注意を担います。損傷すると注意の柔軟性が低下し、保続(perseveration)が生じやすくなります。

基底核と注意切り替えの関係図

5. 視床(Thalamus)

視床は感覚情報の中継と注意の全体的な調整に関与します。「どの情報を意識に上げるか」のゲートキーパーです。視床の損傷は注意の分配と持続的注意に重大な影響を与え、多くの注意障害タイプが同時に出現することがあります。

EVIDENCE
注意障害の神経基盤:最新メタアナリシスの知見(エビデンスレベル:SR/メタアナリシス)

Frontiers in Neurology(2024):注意機能は前頭葉・頭頂葉を中心とする複数の脳領域が協調して制御しており、これらの領域の損傷が注意障害の予後に大きく影響することが示されています。損傷範囲が広いほど複数種類の注意障害が重複して出現しやすいことが確認されています。

Frontiers in Human Neuroscience(2023):認知リハビリテーションを通じた注意機能への介入について、複数のRCTを含む系統的レビューで、早期介入の有効性と持続的介入の重要性が示されています(doi:10.3389/fnhum.2023.1155584)。

Cicerone et al.(2011, Arch Phys Med Rehabil):獲得性脳損傷後の認知リハビリテーションに関するエビデンスベースの実践ガイドライン。注意訓練(APT等)をPractice Standardとして推奨しています(強く推奨)。

04
Differential Diagnosis

鑑別診断と類似症候の違い。

注意障害と鑑別すべき主な症候として、半側空間無視・認知症・うつ病性の集中困難があります。これらは外見的に似た症状を示すことがあるため、評価を通じた鑑別が治療方針を大きく左右します。

鑑別ポイント 注意障害 半側空間無視 認知症
主な症状 集中力の低下・気が散りやすい・注意の切り替え困難 身体・空間の片側を無視する 記憶・言語・判断力の全般的低下
主な責任部位 前頭葉・頭頂葉・ACC・基底核・視床 右頭頂葉(右MCA梗塞が多い) 海馬・前頭葉(広範囲)
経過・予後 回復可能性あり(特に発症6ヶ月以内) 部分回復が多い。慢性期も残存しやすい 進行性。根治は現在困難
主な評価 TMT・Stroop Test・Digit Span・WCST BIT(行動性無視検査)・線分二等分 MMSE・MoCA・長谷川式
注意障害と半側空間無視はしばしば合併する。無視は「注意の非対称性」として捉えられることもあり、一方だけを評価して終わらないことが重要です。

05
Assessment

評価尺度と採点基準。

注意障害の評価は、標準化された神経心理学的検査を複数組み合わせて実施します。「1つの検査だけで判断する」という誤りを避けることが重要です。以下に主要な評価と臨床的な解釈基準を示します。

① トレイル・メイキング・テスト(TMT)

トレイル・メイキング・テスト(TMT)の実施例

SCORING CRITERIA
TMT(Trail Making Test)採点基準・臨床カットオフ

TMT-A(数字のみを1→2→3の順に結ぶ):視覚的追跡・持続的注意を評価します。60〜69歳の基準値は約40〜75秒。90秒を超える場合、持続的注意・処理速度の低下を疑います。

TMT-B(数字とアルファベットを交互に結ぶ):転導性注意・注意の切り替えを評価します。60〜69歳の基準値は約90〜180秒。180秒を超える場合、注意の切り替え障害を示唆します。

TMT B−A 差分スコア:差が40秒以上の場合、処理速度の影響を除いた転導性注意障害(実行機能障害)を示唆する臨床的指標となります。

② ストループ・テスト(Stroop Test)

ストループ・テストの例

SCORING CRITERIA
Stroop Test 採点基準・臨床的解釈

色読み条件(Color-Word):異なる色インクで書かれた色の名前(例:「赤」という単語が青インクで書かれている)のインク色を答えます。これが選択的注意と抑制制御の評価の核心です。

干渉スコア(Stroop interference):色読み所要時間から単純色命名時間を差し引いた値です。干渉スコアが25〜30秒を超える場合、選択的注意障害・抑制機能低下を示唆します。

臨床ポイント:このテストは持続的注意と反応性注意の評価にも有効です。高齢者では処理速度の影響を受けやすいため、年齢標準化スコアを参照することを推奨します。

③ デジット・スパン・テスト(Digit Span Test)

SCORING CRITERIA
Digit Span Test 採点基準・臨床的解釈

順唱(Digit Span Forward):読み上げた数字列をそのまま復唱します。短期記憶と持続的注意を評価します。正常成人は7±2桁程度が目安です。5桁未満の場合、持続的注意の低下を疑います。

逆唱(Digit Span Backward):逆順に復唱します。ワーキングメモリと注意制御を評価します。正常成人で5±1桁が目安。3桁未満の場合、ワーキングメモリ・注意機能障害を示唆します。

④ ウィスコンシン・カード分類テスト(WCST)

ウィスコンシン・カード分類テスト(WCST)の例

SCORING CRITERIA
WCST(Wisconsin Card Sorting Test)採点基準

実施方法:「色・形・数」などのルールに従ってカードを分類し、ルールが変わった際に柔軟に対応できるかを評価します。認知的柔軟性・転導性注意の評価に役立ちます。

保続エラー(Perseverative Errors):全試行の30%以上を占める場合、認知的柔軟性の低下・転導性注意障害を示唆します。

完成カテゴリー数:6カテゴリー中4以下の場合、実行機能障害・注意転換困難を示唆します。これはTMT-Bのカットオフと組み合わせて解釈することを推奨します。

⑤ 単純・選択反応時間テスト

単一刺激への反応時間(単純RT)と複数刺激への選択反応時間(選択RT)を測定します。反応性注意と処理速度の両方を評価できます。選択RTが単純RTの2倍以上の場合、注意の選択機能に問題があることを示唆します。

また、機能的MRI(fMRI)やCTスキャンは、注意障害に関わる脳損傷部位の可視化に使用されます。前頭葉・頭頂葉・前帯状皮質・基底核・視床の損傷が確認された場合は、対応する注意障害の存在を念頭に置いて神経心理学的評価を実施することが推奨されます。

06
Evidence-Based Intervention

介入の段階とエビデンス。

注意障害への介入は、認知リハビリテーションが中心となります。特に注意プロセストレーニング(APT:Attention Process Training)は、階層的な注意モデルに基づく体系的介入法として推奨されています。APTは持続的注意から始め、段階的に難易度を上げて分配注意へと進む構成です。

推奨パラメータ:週3〜5回・1回30〜60分・最低4〜8週間(合計10〜20セッション以上)の継続が効果的とされています(Cicerone et al. 2011, エビデンスレベル:Practice Standard)。

APT:4段階の介入ステップ

01
持続的注意トレーニングPhase 1 / Sustained Attention

一定時間、単純な課題(数字の連続するパターン探し・音の変化への反応など)に集中し続ける訓練です。まず「集中を持続させること自体」をトレーニングします。持続時間の目標を設定し、徐々に延長していきます(初期目標:5〜10分間の持続)。

02
選択的注意トレーニングPhase 2 / Selective Attention

ストループテスト・リストから特定単語を探す課題など、背景情報の中から目標刺激を選び取る訓練です。雑音環境下での課題(例:TVをつけた状態でカード分類)を段階的に導入します。背景刺激の密度を徐々に増やして難易度を調整します。

03
転導性(交替的)注意トレーニングPhase 3 / Alternating Attention

TMT-B・数字とアルファベットの交互課題など、2種類の課題間で注意を柔軟に切り替える訓練です。「一つの作業を中断して別の作業をし、戻ってきても続けられる能力」を鍛えます。WCSTなども応用できます。

04
分配注意トレーニングPhase 4 / Divided Attention

「歩きながら会話する」「料理しながら時計を確認する」など、二重課題(Dual Task)を用いた訓練です。片方が自動化されていない段階での二重課題は認知的過負荷を招くため、必ず片方の課題が安定してから導入します。これが「最も上位の注意」です。

机上課題の具体例

既存記事の内容を臨床場面に即した形でまとめます。これらはOTが中心となって実施しますが、PTもADL・歩行訓練の中に組み込める課題があります。

Desk Tasks
机上課題(主にOT)
— 段階的に難易度を上げる
ストループテスト反復(選択的注意・抑制)
TMT-A/B反復(持続・転導性注意)
コイン計算課題(数量推論・注意力)
間違い探し(視覚的注意・空間認識)
パターン記憶課題(記憶・注意の組み合わせ)
Functional Tasks
機能的課題(PT/OT統合)
— ADLへの般化を目指す
歩行中の計算課題(分配注意・二重課題)
調理中の手順管理(転導性注意)
目標指向的注意自己調整訓練(GOALS)
生活リズムに合わせた環境整備・静寂環境の確保
EVIDENCE
注意訓練の効果:メタアナリシスからのエビデンス(エビデンスレベル:SR/メタアナリシス)

Park & Ingles(2001, Neuropsychology):獲得性脳損傷後の注意訓練に関するメタアナリシス。特定の注意機能への直接的訓練は、効果量中程度(d=0.5〜0.7)の改善を示しました(エビデンスレベル:RCT複数)。

Novakovic-Agopian et al.(2011, J Head Trauma Rehabil):目標指向的注意自己調整訓練(GOALS)が、認知機能と生活の質の両方を改善することを示しました(エビデンスレベル:RCT)。

注意点:ニューロフィードバックに関しては現時点でのエビデンスは限定的です(エビデンスレベル:弱く推奨)。また、rTMSやtDCSなどの非侵襲的脳刺激(NIBS)は研究レベルのアプローチであり、一般的な外来・通所リハ環境での汎用的実施は想定されていません。

STROKE LAB代表 金子唯史

Message from CEO
「退院後も、諦めずに回復を続けてほしい。」

注意障害のリハビリは、退院後も続けることが大切です。STROKE LABでは、脳卒中後の認知機能障害に精通したセラピストが、患者さん一人ひとりの注意障害の種類と程度に合わせた個別プログラムを提供しています。「まだ良くなれるかも」と思ったら、ぜひご相談ください。

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07
Multidisciplinary Collaboration

多職種連携と環境調整。

注意障害のマネジメントは、一職種だけでは完結しません。訓練場面での認知的アプローチと、生活場面での環境調整を一貫して行うためには、多職種でのカンファレンスと役割分担の明確化が不可欠です。

各職種の役割分担

職種 主な役割 具体的な取り組み
OT(作業療法士) 認知訓練の主担当 APT実施・神経心理学的評価・ADL訓練への認知課題統合・家族への指導
PT(理学療法士) 運動と認知の統合 歩行訓練中の二重課題導入・難易度調整・注意への配慮が必要な姿勢・移乗訓練
ST(言語聴覚士) 包括的認知評価 言語・記憶を含む高次脳機能の包括評価(WAB・SLTA等)・コミュニケーションへの注意障害の影響を分析
看護師 病棟環境の調整と観察 静かな環境の確保・規則正しい生活リズムの管理・日常場面での注意機能の変動を記録
医師 医学的管理と情報共有 画像所見の共有・薬物療法の検討(現在一般的推奨薬なし)・全身状態管理
MSW(医療ソーシャルワーカー) 社会復帰支援 退院後の生活支援・就労支援・家族への介護指導・地域リハサービスとの連携調整

環境調整の具体的なポイント

Clinical Insight — 環境調整のポイント

「訓練室は静かにしてください。テレビをつけたままのリハビリは、選択的注意に問題がある患者さんには逆効果になります。」

「指示は短く・一度に一つ。複数の指示を一度に出すと、分配注意障害のある患者さんは最初の指示しか処理できません。」

「作業環境の整理整頓も重要です。机の上に不要な物が多いと、選択的注意のリソースが奪われてしまいます。」

08
Pitfalls & Clinical Judgment

Pitfallsと臨床判断のコツ。

注意障害への対応では、特定のパターンの誤りが新人臨床家の現場でよく見られます。これらの「罠」を事前に知っておくことで、評価の精度と介入の効果を大幅に高めることができます。

Pitfalls — Don’t make these mistakes
新人臨床家が陥りやすい3つの罠
!
「やる気がない」と誤解する:注意障害の患者さんは、集中が途切れると「ぼんやりしている」「協力的でない」ように見えます。しかし実際は、脳のフィルタリング機能が故障していて疲弊しているのです。責める前に「何分集中できたか」を計測し、評価につなげましょう。
!
1種類の評価だけで判断する:注意機能は多面的です。TMTのみ、あるいはMMSEのみで「注意障害あり・なし」を断定するのは危険です。5種類の注意タイプを意識して、TMT・Stroop・Digit Spanの最低3種類を組み合わせて評価することを習慣にしましょう。
!
訓練難易度を上げすぎる(認知的過負荷):「できないなら、難しくすればもっと鍛えられる」という発想は誤りです。APTはあくまで「今できるレベルよりわずかに難しい」課題が最も効果的です。失敗続きの訓練は患者さんの意欲を削ぎ、逆効果になります。「少し頑張れば達成できる」難易度設定が鉄則です。

臨床判断の分岐点

Mentor’s Voice

「訓練の効果が出ていないと感じたとき、まず疑うべきは難易度設定です。患者さんの実力に対して課題が簡単すぎても、難しすぎても注意の可塑性は引き出せません。」

「注意障害のある方の訓練は、時間帯も大切です。疲労が蓄積する夕方より、午前中の方が集中が持続しやすい方が多いです。評価も時間帯を統一して実施しましょう。」

「机上課題での改善が、ADLに般化しているかを必ず確認してください。訓練室でできても、生活場面でできなければゴールに届いていません。」

注意障害への介入の真の目標は訓練室での成績向上ではなく、生活場面への般化です。定期的に病棟・自宅での観察を行い、多職種でゴール達成度を確認しましょう。

09
Prognosis & Goal Setting

予後とゴール設定。

注意障害の予後は、以下の3つの要因によって大きく異なります。これらを把握した上でゴールを設定し、定期的に修正していくことが必要です。

Prognosis Factors
予後に影響する3つの要因
1
損傷の範囲と部位(最重要):前頭葉・頭頂葉・ACC・基底核・視床の損傷が広範なほど複数種類の注意障害が重複し、予後が複雑になります。複数部位の損傷では単独損傷より回復に時間がかかります(Frontiers in Neurology, 2024)。
2
早期介入の有無:発症後6ヶ月以内の積極的介入が回復を促します。リハビリを受けた脳卒中後注意障害患者の40〜60%が注意機能の改善を報告しており、最初の6ヶ月〜1年が最も顕著な回復期です。
3
年齢と全体的な健康状態:若年層の患者や他の健康問題が少ない患者は、より良い予後を示す傾向があります。ただし、高齢者でも適切なリハビリにより一定の改善が期待できます。

疾患別の具体的な予後データ

脳卒中後の注意障害:患者の40〜60%がリハビリにより注意機能の改善を報告しています。特に発症後6ヶ月〜1年での回復が顕著です。

頭部外傷後の注意障害:軽度〜中等度の場合、患者の約70〜80%が1年以内に注意機能の回復を経験します。重度の場合は30〜50%にとどまることが多いですが、継続リハビリにより改善が見込まれます(Frontiers in Neurology, 2024)。

神経変性疾患(アルツハイマー病・パーキンソン病等):注意障害は進行性であり、完全な回復は困難です。ただし、認知リハビリテーションや薬物療法により症状の進行を遅らせることが可能です。

ゴール設定は注意障害の種類別に設定することが重要です。「持続的注意は30分維持できる」「買い物中に選択的注意を維持できる」など、機能的・具体的な目標にしましょう。

10
FAQ

よくある質問。

Q. 注意障害は脳卒中後に必ず出現しますか?
A.

脳卒中後の患者の約25%が何らかの注意障害を経験するとされています。必ず出現するわけではありませんが、前頭葉・頭頂葉・前帯状皮質・基底核・視床に損傷が及ぶ場合、出現リスクが高まります。

損傷部位と範囲によって出現する注意障害の種類も異なるため、画像所見と神経心理学的評価を組み合わせた早期評価が重要です。

Q. 注意障害の評価には何を使えばよいですか?
A.

TMT(Trail Making Test)とStroop Testが標準的な評価として広く用いられています。TMTは視覚的注意と注意切り替えを、Stroop Testは選択的注意と抑制機能を評価します。

持続的注意にはDigit Span Test、認知的柔軟性にはWCSTも加えることで、5種類の注意障害をより包括的に把握できます。複数の評価を組み合わせることが鑑別精度を高めます。

Q. 注意プロセストレーニング(APT)は自宅でもできますか?
A.

APTの一部は家庭でも実施可能です。数字探しやカード分類などの机上課題は自宅練習として取り入れやすいものです。

ただし、セラピストの指導のもとで段階的に難易度を上げることが推奨されます。課題設定や難易度調整を誤ると効果が薄れるため、定期的な専門家のフォローが重要です。

Q. 注意障害があると運動リハビリの効果は下がりますか?
A.

注意障害はリハビリテーション全体の効率に影響を与えることが知られています。持続的注意の低下があると訓練中の集中が困難になり、運動学習の効率が落ちることがあります。

そのため、運動リハビリと並行してOTによる認知機能へのアプローチを行うことが、全体の効果を高めます。PTとOTが情報共有を密にし、訓練方針を一致させることが重要です。

Q. 注意障害の回復にはどのくらい時間がかかりますか?
A.

脳卒中後の注意障害は、最初の6ヶ月から1年で最も顕著な回復が見られます。リハビリを受けた患者の40〜60%が注意機能の改善を報告しています。

ただし、損傷部位や範囲・患者の年齢・健康状態によって個人差が大きいため、定期的な再評価に基づいたゴール修正が必要です。発症から1年以降も継続的なアプローチにより改善が見られる場合があります。

Q. 注意障害と認知症の違いを教えてください。
A.

注意障害は集中力・注意の維持・切り替えなど特定の認知機能が低下した状態であり、必ずしも全般的な認知機能の低下を意味しません。

一方、認知症は記憶・言語・判断力など広範な認知機能が徐々に低下する進行性疾患です。脳卒中後の注意障害は適切なリハビリにより改善が見込まれる点が大きく異なります。MMSEやMoCAなどのスクリーニングで全般的な認知機能も評価し、両者の鑑別を行いましょう。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABは、脳卒中後の高次脳機能障害・注意障害に特化した自費リハビリ施設です。退院後も回復への歩みを続けたいと願うご本人・ご家族を、脳神経科学と徒手技術の両面からサポートします。

Our Strengths
STROKE LABの強み
— 脳神経系に特化した専門チーム
注意障害の種類別に評価・プログラム立案
エビデンスに基づく認知リハビリテーション(APT等)
運動リハビリと認知訓練の統合プログラム
ご家族・介護者への指導・環境調整サポート
What We Can Do
取り組める内容
— 日常生活への般化を目指して
注意プロセストレーニング(APT)の段階的実施
ADL・歩行訓練への二重課題統合
生活場面を想定した機能的課題訓練
定期的な再評価とゴール修正

— STROKE LABでの脳卒中リハビリテーションの実際の様子です。

Voice from Mentors

「注意障害の方は『やる気がない』と誤解されやすいんです。でも実際には、脳が情報をフィルタリングできなくて疲弊しているんですよね。環境を整えるだけで、別人のように集中できるようになる方もいます。まずは環境調整から、というのが私のアプローチです。」— 作業療法士・臨床経験12年・高次脳機能障害専門

「歩行訓練中に注意が途切れる患者さんには、まずOTと連携して注意障害の種類と程度を確認します。運動課題の複雑さを段階的に上げることで、認知と運動を同時に鍛えることができます。二重課題は最後のステップとして導入するのがポイントです。」— 理学療法士・臨床経験9年・脳神経系リハビリテーション

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Message from CEO
「集中できない」「ぼんやりしている」—
諦めないでください。

STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

「なんだか最近、集中力が続かない」「訓練中にぼんやりしてしまう」—ご本人もご家族も、どうしていいかわからなくなることがあります。でも、それは「怠けている」のではありません。脳の中で起きている変化が原因です。

注意障害には、評価によってどの種類の注意が、どの程度障害されているかを明らかにし、それに合わせた個別プログラムで取り組むことが重要です。STROKE LABでは、その一人ひとりに合ったアプローチを、経験豊富なセラピストが一緒に考えます。

「まだよくなれるかもしれない」という希望を持ち続けてほしいと、私は心から思っています。退院後の回復は、ここから始まります。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

参考文献。

01 Frontiers in Neurology. Post-stroke attentional deficits and rehabilitation outcomes. Front Neurol. 2024. doi:10.3389/fneur.2024.1378731
02 Frontiers in Human Neuroscience. Cognitive rehabilitation interventions for attentional deficits after acquired brain injury. Front Hum Neurosci. 2023. doi:10.3389/fnhum.2023.1155584
03 Sohlberg MM, Mateer CA. Effectiveness of an attention-training program. J Clin Exp Neuropsychol. 1987;9(2):117-130.
04 Cicerone KD, et al. Evidence-based cognitive rehabilitation: Updated review of the literature from 2003 through 2008. Arch Phys Med Rehabil. 2011;92(4):519-530.
05 Park NW, Ingles JL. Effectiveness of attention rehabilitation after an acquired brain injury: A meta-analysis. Neuropsychology. 2001;15(2):199-210.
06 Rohling ML, et al. Effectiveness of cognitive rehabilitation following acquired brain injury: A meta-analytic re-examination of Cicerone et al.’s (2000, 2005) systematic reviews. Neuropsychology. 2009;23(1):20-39.
07 Novakovic-Agopian T, et al. Rehabilitation of executive functioning with training in attention regulation applied to individually defined goals. J Head Trauma Rehabil. 2011;26(5):325-338.
08 Posner MI, Petersen SE. The attention system of the human brain. Annu Rev Neurosci. 1990;13:25-42.
09 Poulin V, et al. Efficacy of cognitive rehabilitation interventions for adults with mild cognitive impairment. Neuropsychol Rehabil. 2012;22(4):565-589.
10 金子唯史. 脳卒中の動作分析. 医学書院. 2018.
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