【2026年版】帯状疱疹後の痛みが治らない原因とは?帯状疱疹後神経痛(PHN)のメカニズムと対処法を解説
帯状疱疹後神経痛(PHN)の機序とリハビリ介入戦略。
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、発疹が治癒した後も続く慢性神経障害性疼痛です。末梢感作・中枢感作・心理社会的要因が複雑に絡み合うこの状態に、セラピストがどう関わるべきかを、最新エビデンスとともに解説します。
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
入院前に帯状疱疹の既往あり。皮膚病変は治癒済みだが、胸部・体幹の片側性に焼けるような痛みと「服が触れるだけで痛い」というアロディニア(異痛症:非侵害刺激で誘発される痛み)を訴えている。
「痛みのせいでリハビリに集中できない」という訴えがある場合、PHNの合併を疑い、担当医への報告と疼痛管理の見直しを最優先する必要があります。
PHNは脳卒中リハビリの場面でも合併することがあります。高齢者では帯状疱疹の発症頻度が高く、リハビリ病棟・外来でも遭遇する機会が少なくありません。「痛みのため訓練に参加できない」という患者に、その背景として神経障害性疼痛がないかを確認するのは、セラピストの重要な役割です。
定義と疫学。
帯状疱疹後神経痛(PHN:Postherpetic Neuralgia)は、帯状疱疹(Herpes Zoster)の皮膚病変が治癒した後、90日以上持続する慢性疼痛状態です。帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella-Zoster Virus)の再活性化によって発症します。小児期に水痘に罹患したのち、VZVは感覚神経節に潜伏し続けます。免疫機能の低下をきっかけに再活性化し、皮膚分節(デルマトーム)に沿った片側性の発疹と激しい神経痛を引き起こします。
帯状疱疹の生涯発症率は約20〜30%とされており、60歳以上では免疫機能の低下から発症リスクが著しく上昇します。PHNへの移行率は全体で10〜15%程度ですが、70歳代では30〜50%に達するという報告があります(Yawn et al., Mayo Clin Proc, 2007)。
PHNは帯状疱疹の「長引く症状」ではなく、それ自体が独立した慢性疼痛疾患です。このことを臨床で認識することが、適切な管理の出発点になります。
PHN発症の3大リスクファクター
加齢による細胞性免疫の低下が再活性化・神経損傷を促進します。70歳以上ではPHN移行リスクが若年者の3〜5倍に上昇します。
急性期の痛みが激しいほど神経損傷が高度で、PHN移行リスクが高まります。急性期NRS≧7はハイリスクのサインです。
皮疹の範囲が広く重症なほど神経線維の損傷が広範囲になります。顔面・眼周囲の帯状疱疹(眼帯状疱疹)は特にリスクが高い部位です。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
そのお気持ち、一緒に考えさせてください。
STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。PHNを含む慢性疼痛や脳卒中後遺症に対し、神経科学の視点から個別最適なプログラムをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
神経メカニズムと責任病巣。
PHNの痛みは、単純な「神経のダメージ」だけでは説明できません。末梢から中枢に至る多層的な機序が複雑に絡み合っています。各機序を理解することが、適切な介入選択の根拠になります。
正常な痛みは「危険を知らせる警報」です。PHNでは、実際の危険がないのに警報が鳴り続けている状態です。末梢の「センサーの故障」と、中枢の「警報システム全体の過敏化」の2段階で考えると整理しやすくなります。
① 末梢感作:神経線維の損傷と過敏化
VZVは感覚神経節(主に後根神経節:DRG)に潜伏します。再活性化時にウイルスが神経軸索を逆行性に伝播し、C線維・Aδ線維(細い痛み・温度を伝える神経線維)を広範に損傷させます。損傷した神経線維は閾値が低下し、通常は痛みを生じない刺激(軽い接触など)でも痛み信号を脊髄へ送り続けます。これが末梢感作(Peripheral Sensitization)です。
② 中枢感作:脊髄後角〜脳の過敏化
末梢からの痛み信号が持続すると、脊髄後角のニューロンの興奮性が慢性的に高まります(中枢感作:Central Sensitization)。NMDAレセプターの活性化が中心的役割を担い、「ワインドアップ現象」と呼ばれる痛み信号の増幅が起こります。中枢感作が確立すると、痛みは末梢の入力とは半ば独立して維持されます。リハビリがなぜ「痛みへの教育」から始まるべきかの根拠がここにあります。
Oaklander et al. (2003):PHN患者の皮膚生検では、疼痛部位のC線維密度が健常対照と比較して有意に低下していることを示した。末梢神経線維の変性が中枢感作の引き金となることを示唆する(Pain, 2003)。エビデンスレベル:観察研究。
Geha et al. (2008):PHN患者の機能的MRI研究で、前帯状皮質・島皮質などの情動・認知系脳領域の活動異常を確認。「痛みは脳全体の問題」であることをセラピストは理解しておく必要があります(J Neurosci, 2008)。エビデンスレベル:神経画像研究。
③ 心理社会的要因:痛みの維持・増幅
PHNの慢性化には、心理社会的要因が大きく関与します。恐怖回避モデル(Fear-Avoidance Model)によれば、「痛みは危険だ」という破局的思考が活動回避を招き、筋力低下・廃用が進み、さらに痛みが増強するという悪循環が生じます。うつ・不安・睡眠障害はこの悪循環を加速させます。リハビリでの対話が痛みの認知変容に寄与する理由がここにあります。
鑑別診断と類似疾患。
神経障害性疼痛は多くの疾患が重複します。特に高齢の脳卒中患者では、視床痛・複合性局所疼痛症候群(CRPS)・糖尿病性末梢神経障害との鑑別が必要です。
| 疾患 | PHN(帯状疱疹後神経痛) | 視床痛 | 糖尿病性末梢神経障害 |
|---|---|---|---|
| 分布 | 片側性・デルマトーム領域 | 半身性(脳卒中側と反対) | 両側下肢・手袋靴下型 |
| 既往歴 | 帯状疱疹の既往(必須) | 脳卒中(視床梗塞・出血) | 糖尿病の長期罹患歴 |
| アロディニア | 顕著(服の接触でも誘発) | あり(温冷刺激で著明) | あり(主に足底) |
| 鑑別の核 | 皮疹の既往+デルマトーム分布 | MRIでの視床病変 | 神経伝導速度検査 |
評価尺度と採点基準。
PHNの評価は「痛みの強度」だけでなく、「痛みの質」「生活への影響」を多角的に捉える必要があります。以下の3つの評価尺度を組み合わせて用いましょう。
0点:疼痛なし。介入・活動を通常通り実施できる。
1〜3点(軽度):疼痛はあるが日常生活・リハビリへの参加は可能。段階的活動量増加を開始できる目安(NRS≦4)。
4〜6点(中等度):日常活動に支障あり。薬物療法との協働を優先。リハビリは疼痛教育・ペース配分指導から開始。
7〜10点(重度):疼痛が活動を著しく制限。担当医への報告を優先し、薬物療法の調整後にリハビリ開始を検討。
臨床のポイント:NRSの2点以上の改善が臨床的有意差(MCID)とされています。「痛みゼロ」ではなく「1〜2点の改善」を短期目標に設定するとゴールが現実的になります。
【問診:4項目】
1. 灼熱感(燃えるような痛み)
2. 冷感(冷たく感じる痛み)
3. 電撃様感覚(ピリピリ・ビリビリする感覚)
4. チクチク・ジンジン感(ピンで刺されるような感覚)
【身体診察:3項目】
5. 感覚低下(触覚の低下)
6. 痛覚低下(針刺激への反応低下)
7. 機械的アロディニア(綿棒の軽触で痛み誘発)
判定:4点以上 → 神経障害性疼痛の可能性が高い(陽性)。リハビリでは診察3項目(5〜7)を担当医と情報共有し、痛みの性質評価を多職種で行うことが重要です。
介入の段階とエビデンス。
PHNへの介入は4段階で構成します。薬物療法の安定化を前提に、リハビリ介入を段階的に追加していくアプローチが原則です。いきなり運動から開始せず、まず「痛みの教育」から始めることが現場での鉄則です。
「なぜ痛みが続くのか」を患者と共有するセッション。中枢感作・神経可塑性の概念をわかりやすく説明し、「痛みは危険の合図ではない」という認識の転換を促します。この段階で「動くと悪化するのでは」という恐怖回避思考に対処します。エビデンスレベル:SR(強く推奨)。
「好調な日にやりすぎて翌日に悪化する」というブーム&バストサイクルを防ぐペース配分(Pacing)の指導。活動と休息のバランスを活動日誌で可視化し、週10%ずつ活動量を増やす「段階的暴露」を実施します。目安:週3〜5回・1回20〜30分から開始。エビデンスレベル:RCT複数。
中枢感作が確立したPHNに対し、①左右判断課題(身体認識の再教育)→②運動イメージ(動きを想像するだけ)→③ミラーセラピーの3段階で脳の疼痛処理回路を再教育します。STROKE LABでは徒手技術と組み合わせた神経学的アプローチを採用しています。エビデンスレベル:弱く推奨(神経障害性疼痛への応用研究は進行中)。
PHNは睡眠を著しく阻害します。就寝前のルーティン確立・寝室環境の調整・昼寝制限などの睡眠衛生指導をOTが担います。衣服の素材(アロディニア対策でシルク・接触面積を減らす工夫)や入浴方法の指導も有効な生活環境調整です。エビデンスレベル:エビデンス限定的(ただし臨床的有用性は高い)。
Johnson RW et al. (Pain Ther, 2022):PHNの介入に関するシステマティックレビュー。プレガバリン・ガバペンチン・リドカインパッチは第一選択として推奨(RCT複数)。理学療法・認知行動療法との併用が痛みNRS・QOLの両方を有意に改善すると報告。エビデンスレベル:メタアナリシス(強く推奨)。
Harden RN et al. (Pain Med, 2013):疼痛神経科学教育(PNE)は慢性神経障害性疼痛患者の破局的思考・恐怖回避を有意に軽減。運動療法との組み合わせで効果が増強。エビデンスレベル:RCT(弱く推奨)。

PHNは正しい知識と段階的なアプローチで、多くの方が日常生活の質を取り戻すことができます。「痛みとうまく付き合う方法」を一緒に見つけていきましょう。
多職種連携と環境調整。
PHNの管理は、いかなる職種も単独では完結できません。セラピストがチームの中でどの役割を担うかを明確にしておくことが、患者アウトカムの鍵となります。
各職種の役割分担
| 職種 | 主な役割 | 連携のポイント |
|---|---|---|
| 医師 | 診断確定・薬物療法の選択と調整 | 疼痛NRS・DN4スコアの変化を定期報告。NRS≧7が続く場合は速やかに報告。 |
| 理学療法士(PT) | 疼痛教育・段階的運動療法・ペース配分指導 | GMI・段階的暴露の進捗を週1回チームで共有。活動日誌を活用。 |
| 作業療法士(OT) | ADL評価・生活環境調整・睡眠衛生指導 | 衣服・寝具のアロディニア対策。BPIの生活影響スコアをチームで確認。 |
| 薬剤師 | 薬物療法の副作用モニタリング・服薬指導 | プレガバリンの眠気・ふらつきはリハビリ前評価に影響。服薬タイミングをリハビリ時間と調整。 |
| 看護師 | 疼痛モニタリング・日常生活ケアでの観察 | 夜間疼痛・睡眠状況をリハビリチームへ共有。入浴・更衣時のアロディニア部位を申し送り。 |
| 公認心理師/MSW | 認知行動療法・社会資源の調整 | 抑うつ・不安スクリーニング(PHQ-9等)を実施。破局的思考が強い場合は心理職への早期紹介を検討。 |
先輩臨床家のメッセージ
「PHNの患者さんに『もっと動いてください』とだけ言うのは逆効果です。まず痛みの仕組みを一緒に理解することから始めてください。」
「薬がうまく効いていない段階でリハビリを強行しても、恐怖回避を強めるだけです。医師・薬剤師と連携してNRS≦4を確認してからリハビリを本格化させましょう。」
「アロディニアは眼に見えません。更衣・入浴でのつらさをご家族に伝えることも、OTの大切な仕事です。」
Pitfallsと臨床判断のコツ。
PHNは「慢性疼痛」という複雑さゆえ、新人が陥りやすい落とし穴が多い分野です。現場でよく遭遇するつまずきを整理しておきましょう。
臨床判断の分岐点:今日の介入をどう決めるか
「NRSが今日7で昨日より悪化している場合は、まず医師に報告し薬剤調整を確認してから介入方針を決めましょう。」
「『好調な日』に患者が頑張りすぎた翌日は必ず悪化します。ブーム&バストを記録しておき、セッション冒頭で振り返りましょう。」
「PHN患者の疼痛教育は1回では終わりません。毎セッション冒頭の5分を疼痛日誌の振り返りに使う習慣が定着への近道です。」
予後とゴール設定。
PHNの自然経過として、発症後6か月で約半数、1年以内に約65%が軽快するとされています。しかし、高齢者・重症例では数年単位の経過をたどるケースもあります(Dworkin et al., J Pain, 2008)。ゴール設定はこの現実を踏まえたものにする必要があります。
短期目標(2〜4週):疼痛NRSが1〜2点改善する、または現在の活動量を維持しながら恐怖回避スコアが低下する。睡眠時間が増加する。
中期目標(1〜3か月):活動日誌でブーム&バストサイクルが減少し、ペース配分が自立して行えるようになる。ADLへの疼痛の影響(BPI生活影響スコア)が改善する。
長期目標(3〜6か月):慢性疼痛があっても「やりたいこと・役割」を再開できている状態。患者が自己管理戦略を持ち、リハビリへの依存が低下している。
よくある質問。
帯状疱疹患者の約10〜15%がPHNに移行するとされています。60歳以上では発症率が高まり、70歳代では30〜50%に達するという報告もあります。
早期の抗ウイルス薬投与がPHN移行リスクを下げる最重要介入です。セラピストとしては、高リスク患者(高齢・重症帯状疱疹の既往)の疼痛モニタリングを継続することが重要です。
PHNは帯状疱疹の既往歴(皮膚病変の分布域と一致した疼痛)が最大の鑑別点です。DN4やNPSなどの疼痛評価尺度に加え、アロディニアの有無、発疹治癒後90日以上の疼痛持続を確認します。
糖尿病性神経障害は両側下肢・手袋靴下型で鑑別できます。視床痛は脳卒中の既往とMRI所見で確認します。
理学療法・作業療法では、①段階的活動量増加、②グレーデッドモータイメージリー(GMI)を用いた中枢感作の再教育、③生活指導・睡眠衛生、④ペース配分指導が主な介入です。
痛みを回避する「恐怖回避モデル」から「段階的暴露」への転換が回復の鍵となります。
数値評価スケール(NRS 0〜10)、神経障害性疼痛スクリーニング(DN4・7点中4点以上が陽性)、Brief Pain Inventory(BPI)などが代表的です。
アロディニアの評価には綿棒軽触検査(圧をかけずに軽く触れて痛みが誘発されるかを確認)を実施します。
プレガバリン・ガバペンチン(第一選択)や三環系抗うつ薬による疼痛コントロールが安定した段階でリハビリを段階的に導入します。
痛みNRS≦4を目安に活動量増加を開始し、薬剤師・医師と疼痛閾値の共有を行いながら協働することが重要です。
PHNは発症後1年以内に約半数が軽快しますが、高齢・重症例では数年単位の経過をたどります。ゴールは「疼痛ゼロ」ではなく「痛みがあっても生活できる状態」への転換が重要です。
疼痛NRSの1〜2点改善でも日常活動能力や睡眠が有意に向上することをご本人・ご家族と共有しましょう。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳科学と徒手技術に特化した脳神経系専門の自費リハビリ施設です。帯状疱疹後神経痛(PHN)を含む慢性疼痛や脳卒中後遺症に対し、神経科学の視点から個別最適なリハビリプログラムをご提供しています。

— STROKE LABでのリハビリの実際の様子です。
「帯状疱疹後の患者さんが外来に来た時、まず驚いたのが『誰にも痛みをわかってもらえなかった』という孤独感でした。疼痛教育で『あなたの痛みには理由がある』と伝えた瞬間から顔つきが変わりました。」— PT・神経系専門・経験12年
「PHNのある方のADL指導では、服の素材選びひとつで生活が劇的に変わることがあります。『こんな工夫があったのか』とご家族が笑顔になる瞬間が、この仕事の醍醐味です。」— OT・生活期専門・経験8年
諦めないでください。

帯状疱疹後神経痛は、「発疹が治れば終わり」ではありません。神経の傷跡が痛みとして残り続けるこの状態は、ご本人もご家族も疲弊させます。
「慢性的な痛みがあっても、できることはある」という確信が、リハビリを続ける力になります。私たちはその確信を、一緒に育てていきたいと思っています。
STROKE LABでは、脳神経科学に基づく個別のリハビリプログラムで、痛みと向き合うすべての方を全力でサポートします。まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)