【2026年版】握力と筋力の関係性とは?握力測定の方法・コツ・臨床的意義を徹底解説【脳卒中リハビリ論文レビュー】
握力は、全身の筋力を映す鏡である。
脳卒中後のリハビリで「全身の力がどこまで落ちているか」を把握するのは、とても難しいことです。そこで注目されているのが握力です。握力は測定が簡便でありながら、全身の筋力状態を映し出す初期指標として、世界中のリハビリ現場で活用されています。この記事では、握力評価の科学的根拠と、ご家族が知っておくべき活用法を詳しくお伝えします。
— 握力評価の方法と脳卒中リハビリにおける意義をわかりやすく解説しています。
続きをお読みください。
こんなお悩みはありませんか?
脳卒中後のリハビリを続けるなかで、「今どのくらい回復しているのか」を正確に知ることは難しいものです。毎日そばで見ていても、全身の筋力の変化を感じ取るのは簡単ではありません。
そのような不安を感じているご家族は多くいらっしゃいます。実は「握力」は、単に手の力を測るものではありません。適切に評価することで、全身の筋力状態を把握する手がかりになります。
握力評価とは何か。
握力評価とは、ダイナモメーター(握力計)を用いて手の握る力を数値化する検査です。測定は短時間で終わり、患者さんへの負担も少ないため、リハビリの現場で広く使われています。
握力の値は、全身の筋肉量や筋力の状態を反映する指標として世界中で研究されています。
脳卒中後のリハビリでは、握力の変化をモニタリングすることが、全身状態の把握と介入タイミングを知る大切な手がかりになります。
握力評価で何がわかるのか。
握力が強い人は体幹・股関節・膝の筋力も高い傾向があります。簡便な初期評価として活用されています。
握力の低下は、将来的な機能障害リスクや転倒リスクの増加と関連しています。早期介入の指標になります。
定期的に測定し記録することで、リハビリの進捗を客観的な数値で確認できます。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは脳神経系に特化した自費リハビリ施設です。脳卒中後の筋力評価から個別プログラムの設計まで、専門の療法士が丁寧に対応します。退院後の「次の一手」を一緒に考えます。
なぜ握力で全身がわかるのか。
人体の筋肉は独立しているのではなく、神経系や筋膜(きんまく:筋肉を包む膜組織)を通じて全身でつながっています。手を握る動作には、前腕・上腕・肩・体幹の筋肉が協調して働きます。
そのため、握力の低下は「手の問題だけではなく、全身の筋力低下が起きているサイン」である可能性があるのです。
脳卒中後に握力が低下しやすい理由。
脳卒中(のうそっちゅう:脳の血管が詰まったり破れたりする病気)を発症すると、運動を司る神経が損傷されます。これにより片麻痺(かたまひ:体の片側に力が入りにくくなる状態)が生じ、麻痺側の上肢・下肢・体幹すべての筋力が低下します。
さらに、長期の安静や活動量の低下によって、麻痺のない健側(けんそく)の筋力も低下することが知られています。握力を定期的に測定することは、こうした全身的な筋力低下の早期発見につながります。
評価対象筋群: 体幹屈曲・伸展、股関節屈曲・伸展・外転・内転、膝関節屈曲・伸展、足関節背屈・底屈(手動筋力計および等速性筋力計を使用)。
統計手法: ピアソンの積率相関分析後、性別・年齢・BMI・身体活動レベル・併存症数を共変量とした多変量線形回帰にて関連を評価。
注意点: 調整モデルでは足関節背屈筋ピークトルクとの関連が有意性を失った。体幹・下肢特定筋力の代替指標としての臨床使用は、調整変数を考慮したうえで慎重に判断する必要がある。
研究論文が示す知見。
「握力と全身筋力の関係」を直接検証した研究があります。地域在住の高齢者150人(平均年齢68歳)を対象とした研究(Massy-Westropp ら, 2019)では、以下の結果が得られました。
すべての筋群(体幹・股関節・膝・足関節)と握力の間に、低〜中程度の有意な相関が見られました。
ただし、性別・年齢・BMI・身体活動レベル・併存症数を統計的に調整すると、一部の筋群(特に足関節背屈筋)との関連は弱まりました。体幹・下肢の特定筋力を握力で代替することは、慎重に行う必要があります。
正しい測定方法と評価のポイント。
信頼性の高い握力データを得るためには、測定条件を統一することが重要です。以下に標準的な測定手順をご紹介します。
脳卒中患者では麻痺側(まひそく)の握力低下が顕著ですが、非麻痺側(健側)の握力も低下することがあります。左右差を定期的に確認することで、麻痺側の回復状況と健側の維持状況を同時に把握できます。
麻痺側:非麻痺側の比較は、リハビリプログラムの方向性を決める重要な指標になります。
握力評価を回復に活かす方法。
握力の評価結果は、リハビリプログラムを組み立てる際の具体的な指針になります。以下に、回復への活用ステップをご紹介します。
週ごとまたは月ごとに測定・記録することで、リハビリの効果を客観的な数値で確認できます。患者さんのモチベーション向上にも役立ちます。
握力の測定値を基に、ハンドグリップを使ったトレーニングや日常生活での手を使う活動の強度・頻度を調整します。上肢筋力の向上が全身的な筋力維持・向上に寄与します。
バランス評価・歩行評価・関節可動域評価(かんせつかどういき:関節が動く範囲)などと組み合わせることで、より精度の高い全身評価が可能です。
脳卒中患者において握力が急激に低下した場合は、全身の筋力低下が進んでいるサインの可能性があります。早期に専門家へ相談することが重要です。

握力のわずかな変化が、全身の状態を知る大切な手がかりになります。退院後のリハビリで「どうすれば回復できるか」迷っているご家族は、ぜひ一度STROKE LABにご相談ください。専門の療法士が、現在の状態を丁寧に評価したうえで、最適なプログラムをご提案します。
ご家族ができるサポート。
日常生活でのサポートリスト。
ご家族からの声かけ例。
「今日、この瓶のふたを開けてみよう。先週よりも力が入るか試してみてね。」
「両方の手で同じことをやってみよう。左右でどう感じるか教えてね。」
「先月より握力の数値が上がっていたよ。毎日続けてきた成果が出ているね。」
握力トレーニングの方法(在宅でできるもの)。
| トレーニング | 期待される効果 | 備考 |
|---|---|---|
| ハンドグリップ | 前腕・上腕筋力の強化 | 疼痛のない範囲で実施 |
| タオルを絞る動作 | 日常動作への応用力 | 両手で行うのが理想的 |
| 指の開閉運動 | 指の筋力・巧緻性の維持 | 麻痺側にも実施を試みる |
在宅復帰と公的支援制度。
退院後に自宅でリハビリを続けるためには、適切な環境整備と公的支援の活用が欠かせません。握力をはじめとした筋力評価の結果を基に、必要なサポートを整えましょう。
在宅復帰チェックリスト。
主な公的支援制度。
| 制度名 | 主な内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問リハビリ・デイケア・福祉用具貸与など | 市区町村介護保険窓口 |
| 身体障害者手帳 | 補装具費支給・医療費減免・各種サービス | 市区町村障害福祉窓口 |
| 高額療養費制度 | 月額医療費が上限を超えた分を払い戻し | 加入する健康保険窓口 |
| 障害年金 | 障害の程度に応じた年金支給 | 年金事務所・市区町村 |
| 自立支援医療 | リハビリ・精神科等の医療費の自己負担を軽減 | 市区町村障害福祉窓口 |
回復期間と予後の見通し。
脳卒中後の筋力回復は、発症からの時間・病変部位・リハビリの頻度・質によって大きく異なります。一般的には発症後3〜6ヶ月が「神経可塑性(しんけいかそせい:脳が変化する能力)」の高まる回復の黄金期とされています。
近年の研究では、適切な環境とリハビリが提供されれば発症後1年以降でも機能回復が起こりうることが示されています。
握力をはじめとした筋力の定期的な評価を継続しながら、あきらめずにリハビリを続けることが大切です。
よくあるご質問。
握力は全身の筋力と一定の相関があることが研究で示されています。ただし、性別・年齢・BMI・活動量などを調整すると相関が弱まる筋群もあります。
あくまで「全身状態を把握する初期指標」として活用することが推奨されます。断定的な判断には他の評価との組み合わせが必要です。
麻痺側でも測定可能です。麻痺側と非麻痺側の両方を測定し、左右差を確認することが重要です。
麻痺側の握力低下は全身筋力低下のサインである可能性が高く、早期リハビリ介入の根拠となります。
座位でリラックスした状態で、肘を90度に曲げてダイナモメーター(握力計)を握ります。3回測定してその平均値を記録します。
利き手・非利き手の両方を測定し、脳卒中の場合は健側と麻痺側の比較も行います。患者の疲労度や疼痛の有無を事前に確認することが大切です。
握力が低いことは、将来的な機能障害リスクや転倒リスクの増加と関連することが研究で示されています。
脳卒中患者では、握力の急激な低下が全身筋力低下のサインである可能性が高く、日常生活での機能的な問題が生じるリスクが高まります。
握力の強化そのものが全身筋力を直接高めるわけではありませんが、ハンドグリップや手を使う日常活動を増やすことで上肢筋力が向上します。
それが全身筋力の維持・向上に寄与することが期待できます。握力評価はリハビリ計画の指標として活用することが重要です。
はい、非常に重要です。脳卒中患者では麻痺側だけでなく非麻痺側の筋力も低下することがあります。
非麻痺側の握力を定期的に評価することで、非麻痺側の筋力維持・向上のための対策を立てることができます。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中に特化した自費リハビリ施設です。脳神経科学と徒手療法(としゅりょうほう:手技による治療)に基づいた専門プログラムを提供しています。握力評価を含む個別の筋力評価から、生活への応用まで、一人ひとりの回復をサポートします。
— STROKE LABでの脳卒中リハビリの実際の様子です。

「退院後に握力を定期的に測ってもらうようになって、少しずつ数値が上がるのが励みになりました。目に見えない筋力の変化が、数字でわかるのはありがたいです。」— 60代男性・脳梗塞後6ヶ月・ご家族談
「麻痺側だけでなく、健側の握力も落ちていることを教えてもらいました。健側のケアもしっかり続けています。」— 70代女性・脳出血後1年・本人談
あわせて読みたい:脳卒中後のリハビリ — STROKE LABのプログラム詳細はこちら
諦めないでください。

「握力が少し弱くなった」というサインを見逃さないでほしいのです。それは、全身の筋力が低下し始めているサインかもしれません。早期に気づき、適切なリハビリにつなげることで、回復の可能性は大きく広がります。
脳卒中後のリハビリは、決してあきらめるべきものではありません。発症から時間が経っていても、適切な介入によって回復は起こりえます。STROKE LABでは、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に評価し、最適なプログラムをご提案しています。
まずは無料相談にお越しください。ご家族の不安や疑問に、専門の療法士が誠実にお答えします。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)