【2024年最新】Kinect・Wii Fitによる脳卒中リハビリ効果とは?Nintendo Switch・Meta Quest(VR)など最新デバイスの徹底比較
・Kinect、Wii Fitを用いたトレーニングのメリットやデメリットを理解する
・デバイスを用いたトレーニングを開始するための準備や手順を理解する
・Nintendo SwitchやMeta Questなど他のデバイスについても理解する
論文を読む前に
金子先生:
「丸山さん、今日は脳卒中患者に対するリハビリテーションに、KinectやWii Fit、その他のゲームデバイスを活用する方法について話していきます。これらのデバイスは、リハビリの現場でも注目されています。ゲームを通じて患者のモチベーションを引き出すだけでなく、運動機能の改善にも役立つことが研究で示されています。」
ゲームデバイスのリハビリ効果の概要
丸山さん:
「KinectやWii Fitのようなデバイスは、どのように脳卒中患者のリハビリに役立つのでしょうか?」
金子先生:
「まず、これらのデバイスはインタラクティブゲームを利用して、患者が自然な形でリハビリに取り組めるように設計されています。患者の動機付けを高めるだけでなく、繰り返しの動作やフィードバックを通じて、脳の可塑性を促進します。脳卒中後の運動麻痺には、こうした繰り返しとフィードバックが非常に効果的です。」
KinectとWii Fitの基本的な原理と利点
画像引用元:amazon
Kinectの利点
金子先生:
「Kinectは、カメラとセンサーを使って患者の全身の動きをキャプチャします。これにより、非接触型の運動分析が可能になります。患者が前後左右に動くと、その動きが画面上に反映され、リアルタイムでフィードバックを得ることができるのが特徴です。」
丸山さん:
「患者さんはゲームを楽しみながら、自然に体を動かすことができるということですね。」
金子先生:
「その通りです。また、Kinectは特にバランス機能の改善や上肢の運動訓練に効果があるとされています。バーチャル環境での歩行や動作の練習もできるため、脳卒中後の歩行訓練やバランス訓練に応用されています。」
Wii Fitの利点
画像引用元:amazon
金子先生:
「次に、Wii Fitです。こちらはバランスボードを使って、患者の重心移動や姿勢制御をトレーニングすることができます。特に体幹の安定性が重要な脳卒中患者に対して、ゲームを通じて重心を移動させる訓練が行えます。重心を正確に把握できる機能があり、バランス訓練において強力なツールです。」
論文で示されている効果
丸山さん:
「これらのデバイスが脳卒中患者に対してどのような効果をもたらすかについて、具体的なエビデンスはありますか?」
金子先生:
「いくつかの研究でその効果が確認されています。例えば、Kinectを使ったリハビリでは、上肢の機能回復やバランス機能の改善が見られたという報告があります。ある研究では、Kinectを使ったグループが従来のリハビリのみを行ったグループに比べて、運動機能が有意に改善したことが示されています。また、Wii Fitに関しても、体幹の安定性や歩行機能の向上に寄与するとの報告があります。」
具体的なトレーニング方法
ステップ1: 上肢の機能回復を目指したKinectトレーニング
金子先生:
「まず、Kinectを使った上肢のトレーニングを紹介します。」
-
Reach and Grab(手を伸ばしてつかむ動作のトレーニング)
患者は画面上に表示された仮想オブジェクトに向かって手を伸ばし、それをつかむ動作を繰り返します。Kinectのセンサーが患者の動きを認識し、リアルタイムでフィードバックを行います。これにより、患者は運動の精度と反応速度を高めることができます。- 目的: 上肢の可動域の拡大と反復動作による脳の再学習。
- フィードバック: 患者がターゲットに到達できるかどうかを画面上で視覚的に確認できます。
-
バーチャルボクシング
患者は仮想的なボクシングマシンに向かってパンチを繰り返す動作を行います。これにより、肩関節や肘関節、さらに前腕の回内・回外運動が促され、上肢全体の筋活動が強化されます。- 目的: 上肢の筋力強化と動作のコントロールの改善。
ステップ2: バランス機能向上を目指したWii Fitトレーニング
金子先生:
「次に、Wii Fitを使ったバランストレーニングです。」
-
バランスボードを使った重心移動訓練
患者がバランスボードの上に立ち、画面上のターゲットに向かって重心を移動させるゲーム形式のトレーニングです。患者は、視覚的なフィードバックを得ながら体幹のバランスを改善できます。- 目的: 重心移動のトレーニングを通じて、体幹の安定性とバランス感覚を強化する。
- ポイント: 患者が自分の重心の位置を視覚的に確認できるため、フィードバックを受けながら修正を行いやすい。
-
スキーシミュレーションゲーム
画面上で仮想的なスキーを楽しむゲームを行います。患者は左右に体重移動を行いながら、重心をコントロールしてスキーを進めます。- 目的: 体幹と下肢の協調運動を改善し、バランス機能の向上を図る。
注意点とリスク管理
丸山さん:
「これらのトレーニングを行う際、注意すべき点は何でしょうか?」
金子先生:
「いくつかの注意点があります。まず、安全性が最優先です。患者がゲームに夢中になって、無理な動作を行わないように注意が必要です。特に、バランス訓練では転倒のリスクがあるため、介助者がそばで見守ることが重要です。また、患者の疲労に注意し、過度な負荷をかけないようにすることも大切です。KinectやWii Fitは楽しい反面、患者が無理をしてしまうこともあります。」
丸山さん:
「そうですね、ゲームの中に没頭しすぎることが逆に負担になってしまうかもしれません。」
まとめ
金子先生:
「ゲームデバイスを活用したリハビリは、患者のモチベーションを引き出しながら、機能回復を促進する非常に効果的な方法です。ただし、患者の安全を確保し、疲労や負荷に配慮しながら慎重に進めることが重要です。」
丸山さん:
「ありがとうございます、金子先生。これからKinectやWii Fitを使ったリハビリに取り組む際の具体的なイメージがつかめました!」
デバイス | 購入手段 | 価格 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
Kinect |
|
約10,000〜20,000円 |
|
|
Wii Fit |
|
約5,000〜10,000円(バランスボード付き) |
|
|
論文内容
タイトル
Kinect gameを使用した慢性期脳卒中者リハビリ
Effects of Virtual Reality Training using Xbox Kinect on Motor Function in Stroke Survivors: A Preliminary Study PubMed Park DS et al.J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017 Oct;26(10):2313-2319. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2017.05.019. Epub 2017 Jun 9.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・motion captureやVR等のリハビリ応用の可能性や限界を知りたいと思ったため
内 容
背景・目的
・『Kinectゲームシステム』はリハビリテーションにおいて治療上有益であることが示されていますが、脳卒中後の運動機能を改善するためのKinectベースのバーチャルリアリティ(VR)トレーニング適用の可能性は調査されていません。
・本研究は、XboxのKinectゲームシステムを使用し、慢性期の片麻痺患者の運動回復に対するVRトレーニングの効果を調査することを目的としました。
方法
・これはランダム化比較試験(RCT)でした。片麻痺患者20名を無作為に介入群または対照群のいずれかに割り当てました。
・介入群(n = 10)の参加者は、Xbox Kinectベースのゲームを用いたVRトレーニングを30分と従来の理学療法を30分実施し、対照群(n = 10)の参加者は、30分の従来の理学療法のみを受けました。
・介入は6週間毎日のセッションで構成されていました。
・Fugl-Meyer評価(FMA-LE)、Berg Balance Scale(BBS)、Timed Up and Goテスト(TUG)、および10mWTをoutcome mesureとし、ベースライン時と終了時に実行されました。
結果
・FMA-LE、BBS、TUG、および10mWTのスコアは、トレーニング後の介入群と対照群の両方において、ベースラインから介入後に有意に改善しました。
・介入群のBBS、TUG、および10mWTの前後差スコアは、対照群のそれらより有意に改善されました。
・本論文は脳卒中リハビリテーション中の運動機能を改善するための効果的な治療アプローチとしてのXbox Kinectゲームシステムによる追加のVRトレーニングの使用を支持しています。
私見
・kinectは2017年に生産終了しているが、2019年2月24日に「Azure Kinect」というもので形を変えて新たに発表された。
・100万画素の深度センサーと複数のマイク群、1,200万画素のカメラを組み合わせ、MicrosoftのクラウドサービスAzure上のAIサービスと連動させられるデベロッパー向けデバイスとのことです。
・複数台でパノラマ的に撮影することも可能である。様々な用途で用いられてくると思われ、動向に注目したい。
トレーニングにKinect・Wii fitを用いた症例検討
Kinect・Wii fitを用いた片麻痺患者に対する上肢および下肢・体幹機能訓練は、リハビリテーションにおいて有効なアプローチとして注目されています。以下、具体的な症例を提示しながら、それぞれの訓練の方法と効果を解説します。
Kinectを用いた症例
- 患者: 55歳男性、脳梗塞後の右片麻痺、発症から6ヶ月経過
- 現状: 上肢では肩屈曲や肘伸展が困難で、手指の把握力も低下。下肢は麻痺側の股関節屈曲と膝伸展が弱く、歩行時に足先が引っかかる。体幹の安定性も低く、座位や立位の姿勢保持が不安定。
- 目標: 上肢のリーチ動作の改善、歩行時の下肢の協調性と体幹安定性の向上。
上肢機能訓練
Kinectを用いた上肢リハビリでは、動作の可視化とフィードバック機能を活用し、患者が自発的に動作を学習することが促されます。
-
訓練方法
- リーチ動作: Kinectが患者の上肢動作をモニタリングし、画面上のターゲットに手を伸ばすリーチ動作を行います。患者は動作の精度と速度をリアルタイムでフィードバックとして確認できます。
- 実施例: 画面に現れるターゲットを決められた時間内に触れるという課題を設定。動作の範囲は肩の屈曲・外転、肘の伸展・屈曲、手首の回旋を組み合わせ、段階的に難易度を調整します。
-
臨床効果
- 視覚フィードバックにより、動作の意識的な修正が促され、肩関節や肘関節の協調性が改善。練習によりリーチ動作のスムーズさが向上しました。また、動作の反復により、上肢筋力の向上も見られました。
-
症例の改善
- 訓練開始後2週間で、右肩屈曲の角度が20度から40度まで改善。リーチ動作の精度が向上し、日常生活で物を取る際の動作が容易になりました。
下肢・体幹機能訓練
Kinectを用いた下肢と体幹の訓練では、バランスと協調性を養うためにゲーム要素を取り入れた動作訓練が行われます。
-
訓練方法
- 体幹安定性訓練: Kinectが体幹と下肢の動作をリアルタイムで検出し、バランスを保ちながら特定の方向に体を傾けたり、立位での重心移動を行います。例えば、画面上で指示された方向に重心を移動させて仮想の障害物を避ける訓練や、片足立ちでのバランス訓練を実施します。
- 下肢機能訓練: 足を使ったゲーム形式のトレーニングも行われます。仮想のボールを蹴る、ターゲットに足を移動させるなど、患者が動作に集中しながら下肢の筋力強化や協調性を養う課題を設定。
-
臨床効果
- 重心移動の訓練により、患者の体幹安定性が向上し、姿勢保持が改善。立位でのバランスが強化され、歩行時の転倒リスクが低減します。また、視覚的フィードバックにより、患者は左右の重心バランスの偏りを認識しやすくなり、自主的に修正することが可能となります。
- 下肢の協調性と筋力の改善が見られ、足関節の柔軟性も向上。歩行時のつま先引っ掛かりが軽減し、歩行速度の向上が確認されました。
-
症例の改善
- 体幹と下肢のKinect訓練を4週間続けた結果、座位や立位での姿勢保持が安定し、歩行速度が約10%向上。さらに、麻痺側の足関節 dorsiflexion(背屈)の角度も向上し、歩行中のつま先引っかかりが改善されました。
結論
Kinectを活用した上肢と下肢・体幹機能訓練は、視覚フィードバックとインタラクティブな課題設定により、片麻痺患者の運動機能回復に大きな効果を発揮します。この症例では、Kinectによる上肢リーチ訓練と体幹・下肢バランス訓練を組み合わせたことで、患者の日常生活での運動能力とQOLが顕著に向上しました。
Wii Fitを用いた症例
- 患者: 60歳女性、脳出血後の左片麻痺、発症から7ヶ月経過
- 現状: 左上肢の可動域制限と筋力低下が顕著で、特に肩関節の屈曲・外転が難しい。下肢では左側のバランス保持が不安定で、立位や歩行時に転倒のリスクが高い。
- 目標: 上肢の可動域改善と筋力強化、体幹および下肢のバランス機能向上、転倒リスクの軽減。
上肢機能訓練
Wii Fitを用いた上肢機能訓練では、ゲーム内で体の動きを反映させる要素を活用し、楽しく反復運動を行います。
-
訓練方法
- 「フラフープ」ゲーム: Wii Fitの「フラフープ」ゲームでは、腰を左右に動かしてフラフープを回す動作を行います。上肢は腕を伸ばして仮想のフラフープをキャッチする動作を伴い、肩関節の屈曲や外転、肘の屈伸が促されます。この運動は、上肢の可動域を拡大し、肩関節の柔軟性を改善します。
- 「バランスゲーム」への応用: バランスボードに乗り、両腕を広げてバランスを取りながら体の重心移動を行うゲームでも、上肢を使って体を支える必要があり、上肢と体幹の連動性が向上します。
-
臨床効果
- 可動域と筋力の改善: フラフープゲームを繰り返すことで、肩の可動域が徐々に改善され、動作のスムーズさが向上。ゲームの特性上、患者は反復的に腕を動かすため、楽しみながらリハビリに取り組むことができます。筋力の向上と同時に、持続的な動作を通じて肩周囲の筋の協調性も高まります。
- 動作のモチベーション向上: ゲーム形式により、患者は自発的に動作を行いやすく、動作精度や時間に対するフィードバックもリアルタイムで得られるため、モチベーションが維持されやすい点がメリットです。
-
症例の改善
- 2週間の訓練後、左肩の屈曲角度は30度から50度に改善。患者は日常生活で洗濯物を干す際に左腕を使えるようになり、上肢の運動能力が向上しました。
下肢・体幹機能訓練
Wii Fitを使ったバランス訓練では、バランスボードを活用し、体幹と下肢の筋力強化、バランス感覚の改善を目指します。
-
訓練方法
- 「バランスボード」ゲーム: Wii Fitの「バランスボード」では、患者がバランスボードに乗り、体の重心を移動させることで、画面上のキャラクターを操作する課題が行われます。体幹の安定性や下肢のバランスを向上させるために、左右方向への重心移動、前後方向の移動を交互に行います。
- 「スキー」ゲーム: 仮想スロープを滑り降りるスキーゲームでは、膝の屈伸運動や重心移動が求められ、股関節や膝、足関節の連動した運動が促されます。また、体幹の安定性が求められるため、姿勢制御機能の改善にも効果があります。
-
臨床効果
- バランス感覚の向上: Wii Fitのバランスボードは、患者の微細な重心移動を捉えるため、体幹と下肢のバランスを繰り返し鍛えることができます。特に片麻痺側の足で重心を保つ練習が、バランス改善に寄与します。
- 筋力強化: スキーゲームにより、下肢全体の筋力が強化され、足関節から膝、股関節までの協調性が向上します。また、体幹の筋力も同時に鍛えられるため、立位や歩行時の安定性が向上し、転倒リスクが軽減されます。
-
症例の改善
- 4週間の訓練後、左下肢での重心保持時間が20秒から40秒に延長。立位や歩行中のバランスが安定し、転倒の回数が減少しました。患者はまた、階段の昇降が容易になり、日常生活の自立度が高まりました。
結論
Wii Fitを使用した上肢および下肢・体幹機能訓練は、患者の運動能力を楽しく効果的に改善するための優れた手法です。視覚的なフィードバックやゲーム要素がリハビリに動機づけを与え、反復的な運動を促進します。今回の症例では、上肢の可動域と筋力、下肢および体幹のバランス感覚と筋力が顕著に改善し、日常生活の活動においても大きな進展が見られました。
KinectやWii Fitを用いたトレーニングの準備と手順
KinectとWii Fitを用いたリハビリトレーニングを病院で行う際の環境準備と、ゲームを始める手順を初心者向けにわかりやすく説明します。両者とも、インタラクティブなゲームを通じて患者の運動能力を楽しく向上させることができるため、適切な環境を整えて安全にトレーニングを進めることが重要です。
1. Kinectを用いたトレーニングの準備と手順
環境準備
Kinectは、Xboxと一体型のカメラを使い、体の動きを検知することで操作します。以下のポイントを守り、リハビリ環境を整えます。
-
スペースの確保
- 広さ: Kinectはカメラで体全体の動きを捉える必要があるため、プレイエリアとして最低でも2メートル四方のスペースが必要です。
- 背景: Kinectは人の動きを認識するため、カメラの前に動きを遮る物や光が反射するものを置かないようにします。
-
デバイスのセットアップ
- Xbox本体: Xbox本体にKinectカメラを接続し、テレビやモニターに映像を映します。電源と接続ケーブルが正しく接続されているか確認します。
- 高さと角度: Kinectカメラは、床から1〜1.5メートルの高さに設置し、患者全体が画面に映るようにカメラの角度を調整します。
-
利用者の準備
- 動きやすい服装: 体の動きが認識されやすいように、患者には動きやすい服装を着用してもらいます。
- 姿勢確認: トレーニング前に、患者が画面に映り、Kinectが全身をしっかり認識しているかを確認します。
手順
-
電源を入れる
- Xbox本体の電源を入れ、Kinectカメラの動作を確認します。
-
Kinect対応ゲームを選ぶ
- リハビリに適したKinect対応のゲームを選び、起動します。リハビリ目的のゲームとしては、「Kinect Sports」や「Kinect Adventures」などが人気です。
-
ゲームの開始
- ゲームが始まると、Kinectが患者の体の動きをトラッキングします。患者は、画面に表示される指示に従いながら運動を開始します。ゲームの中でバランスを取ったり、腕や脚を動かすことで、自然にトレーニングが進行します。
2. Wii Fitを用いたトレーニングの準備と手順
環境準備
Wii Fitは、専用のバランスボードとWii本体を使用し、主に体幹バランスや下肢のトレーニングに役立つゲームです。準備には以下の点を確認します。
-
スペースの確保
- 広さ: Wii Fitのバランスボードを使うために、2メートル四方のスペースがあれば十分です。動きを妨げないよう、周囲を整理します。
-
デバイスのセットアップ
- Wii本体: Wii本体にバランスボードを接続し、テレビやモニターに映像を表示します。Wiiリモコンとバランスボードが正しく接続されているか確認します。
- バランスボードの準備: バランスボードは平らで滑りにくい床の上に置き、安定して使用できるようにします。
-
利用者の準備
- 安全な服装と姿勢: バランスボードを使用する際には、滑りにくい靴下や運動靴を履くことを推奨します。足元が不安定な患者の場合は、スタッフがそばでサポートする必要があります。
手順
-
電源を入れる
- Wii本体の電源を入れ、リモコンとバランスボードが正しく接続されているか確認します。バランスボードはリモコンのボタンを押すことで同期させます。
-
Wii Fitソフトを起動
- Wii Fitのソフトを起動し、患者の名前や体重などの設定を行います。初回のみ、ボード上で立ち姿勢や重心の測定が行われます。
-
ゲームの選択
- 画面上のメニューからリハビリ目的に応じたゲームを選択します。例えば、「バランスゲーム」や「筋力トレーニング」を選ぶことで、体幹や下肢のバランス訓練が行えます。
-
ゲームの開始
- 画面に表示される指示に従って、患者はバランスボード上で体重移動を行います。体幹のバランスや下肢の筋力を鍛えるゲームでは、正しい姿勢を保ちながら行うことが重要です。場合によっては、理学療法士が補助しながら患者の動きを支援します。
共通の注意点
- 転倒防止: KinectやWii Fitを使ったトレーニング中は、患者がバランスを崩したり転倒するリスクがあるため、必ず補助を行うスタッフが近くに待機します。特にバランスボードを使う際には、転倒しないように注意が必要です。
- 段階的な負荷調整: 初めてトレーニングを行う場合は、無理のない動作から始め、徐々に負荷を上げていくことが大切です。
- モチベーションの維持: ゲーム内のフィードバックを活用して、患者のモチベーションを維持することができます。進捗や達成感を感じられるよう、ゲーム内容を工夫します。
これらの手順を踏むことで、KinectやWii Fitを使った片麻痺患者のリハビリテーションを安全かつ効果的に行うことができます。
その他の有効なデバイス:Meta Quest、Nintendo Switchなど
ゲーム性があり、脳卒中患者のリハビリに活用できる安価なデバイスには、家庭で使用可能な一般的なものがいくつかあります。これらのデバイスは、手軽に楽しみながら運動機能の回復をサポートでき、特にモチベーション向上に役立ちます。
1. Nintendo Switch with Ring Fit Adventure
画像引用元:任天堂
概要: Nintendo Switchの「Ring Fit Adventure」は、ジョイコンを使ったフィットネスゲームで、楽しく運動できるゲーム性があります。特に全身の筋力強化やバランス感覚の向上に役立つ要素が多く含まれています。
特徴:
- リングコンとレッグバンドを使って、全身運動を行う。
- ゲーム内での冒険を通じて、スクワットや腕のトレーニングが自然に行える。
- 体幹やバランスのトレーニングに効果的で、リハビリを楽しく継続できる。
コスト: 比較的手頃な価格で、ゲームのコンソールとソフトが揃えられる。
2. VRヘッドセット(Meta Questなど)
画像引用元:Meta
概要: Meta Quest などのVRヘッドセットを利用したゲームは、脳卒中患者のリハビリにも活用可能です。特に、VRを使ったバランス感覚や動作トレーニングが可能なゲームは、リハビリのモチベーション向上に役立ちます。
特徴:
- VRゲームを通して、体を動かすアクティブなトレーニングができる。
- リハビリ専用のアプリではなくても、自然な動きを促すゲームが多い(例: Beat Saber, Superhot VRなど)。
- 自宅で手軽にVRを楽しみながら運動できる。
コスト: 他の専用リハビリデバイスに比べると安価で、ゲームソフト次第で様々なトレーニングが可能。
3. PlayStation Move with Sports Champions
概要: PlayStationの「Move」コントローラーを使用した「Sports Champions」などのスポーツゲームは、リハビリに役立つ動きを取り入れています。モーションコントロールを使って体を動かすことが、運動機能の回復を促進します。
特徴:
- テニスやアーチェリー、卓球などのスポーツゲームを通じて、手足の動きを訓練。
- 繰り返しの動作が自然に行われ、動作の再学習に役立つ。
- プレイする中でフィードバックを受け、改善点に気づくことができる。
コスト: PlayStationのハードウェアを使用するため、比較的手頃な価格で楽しめる。
4. スマートフォン向けのフィットネスアプリ(Zombies, Run! など)
概要: スマートフォン用のフィットネスアプリも手軽にリハビリに取り入れることができます。たとえば「Zombies, Run!」は、歩行や軽いジョギングを楽しみながら行えるアプリで、リハビリの動機づけに優れています。
特徴:
- ストーリー仕立てのアプリで、ウォーキングやジョギングを楽しめる。
- リハビリにおける歩行トレーニングに組み込みやすい。
- スマートフォンさえあれば利用できるため、コストは低い。
コスト: アプリのダウンロードは無料や低価格のものが多く、非常に安価。
5. FitbitやApple Watchなどのフィットネストラッカー
概要: FitbitやApple Watchなどのウェアラブルデバイスも、ゲーム性のある運動をサポートします。リハビリ中の歩数や運動量を記録し、目標達成に応じてフィードバックを得られるため、モチベーションが向上します。
特徴:
- 運動データをリアルタイムで追跡し、日々の進歩が確認できる。
- 目標達成に応じてフィードバックや通知があり、ゲーム感覚で運動を続けられる。
- 心拍数や消費カロリーなどの情報も追跡可能で、リハビリプログラムの調整に役立つ。
コスト: スマートウォッチ自体の価格は手頃で、長期的な運動習慣をサポートする点でコスパが高い。
より高価な病院・施設向けのデバイスも多数存在します。これらのデバイスは、特に運動再学習や神経可塑性の促進を目的として開発されており、患者のモチベーション向上や自立的なリハビリ活動の支援に役立ちます。代表的なものをいくつか紹介します。
1. Armeo®(Hocoma社)
概要: Armeoは、上肢麻痺のある患者に特化したロボットアシストデバイスです。エクソスケルトンを装着することで、患者の運動をサポートし、力の弱い患者でも自然な動作を行えるように設計されています。
特徴:
- リアルタイムのバイオフィードバックが得られ、モチベーションを維持しやすい。
- 3D仮想環境でのリハビリが可能で、ゲームの要素を取り入れることで、楽しみながらトレーニングができる。
- デバイスは個々の患者の能力に応じて負荷を調整できるため、段階的な回復を促進。
2. ReoGo®(Motorika社)
概要: ReoGoは上肢リハビリテーションを支援するロボットデバイスで、特に肩、肘、手首の運動を改善するために設計されています。
特徴:
- 自然な上肢運動パターンを再学習できる。
- 動作の軌跡やスピードを調整することで、個々の患者に適した訓練が可能。
- リアルタイムフィードバックを提供するインタラクティブな訓練プログラム。
3. HAL®(Hybrid Assistive Limb, サイバーダイン社)
概要: HALは、脳卒中患者などの下肢麻痺に対して、電気信号を用いたサポートを行うロボットスーツです。
特徴:
- 使用者の筋電位(EMG)を読み取り、動作に応じて補助力を提供。
- 運動を意識して行うことで、神経と筋肉の再連携を促進し、神経可塑性を高める。
- 歩行訓練や、立ち上がり、座る動作など、日常動作に特化したトレーニングが可能。
4. Neofect Smart Glove®
概要: Neofect Smart Gloveは、センサーを内蔵した手袋型のデバイスで、上肢の機能改善を目指すリハビリ用ツールです。
特徴:
- リハビリゲームを通して手指や手首の運動を訓練。
- 患者の運動パフォーマンスを追跡し、フィードバックを提供。
- 神経可塑性を促進するために繰り返し運動を行うことを奨励する。
5. BalanceTutor®(MediTouch社)
概要: BalanceTutorは、バランスと歩行訓練を目的としたデバイスで、独自のランダムベルトスライド技術を用いて、歩行中に突発的な揺れや不安定さを再現します。
特徴:
- 突然の外的力を模倣し、反射的な姿勢制御を促す。
- 失調性歩行や平衡障害のある患者に有効なトレーニング。
- バランスと反射反応を鍛えることで、転倒リスクの低減に貢献。
6. GRAIL®(Motek社)
概要: GRAILはバーチャルリアリティ(VR)技術を用いた歩行訓練システムで、運動機能回復に向けた総合的なリハビリテーションを提供します。
特徴:
- 歩行動作を3Dモーションキャプチャで評価し、患者の動作解析が可能。
- リアルタイムでフィードバックを受けながら、歩行やバランスの改善を目指す。
- リアルな環境シミュレーションが、日常生活での適応力を強化する。
退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)