vol.398:脳卒中後のmotor imagery能力の変化 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
脳卒中後のmotor imagery能力の変化
Recovery of Motor Imagery Ability in Stroke Patients PubMed Sjoerd de Vries et al.(2011)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・運動イメージ、運動錯覚などの臨床応用に興味があり本論文に至る。
内 容
背景・目的
・近年、幾人かの研究者が脳卒中者および他の運動機能障害患者の運動回復を促進するためのmental practice の使用を提案している。
・Mental practiceは、運動能力を向上させることを目的として、実際には動かずに動きの想像を使う訓練方法です。mental practiceはある動きを改善するという特定の目的を持ち、その特定の動きを細かく想像・リハーサルをします。
・脳内の運動制御構造において、実際の運動の実行中とほぼ同様に活性化されるので、mental practiceが有効であることが示唆されています。
・健常者を対象とした研究では、motor imageryと実際の行動がいくつかの顕著な類似点を有していることが示されている。例えば「線に沿って歩く」などの動作を実行し、同じ動作を想像するように要求された場合、実際の歩行動作を完了するのに要する時間は、想像上の歩行動作を完了するのに必要な時間と同様。
・さらに、neuroimaging研究は、motor imageryの間、同じ脳領域が実際の運動の間と同じように活動的であることを示した。したがって、脳卒中者においても運動機能とmotor imagery能力との間に関係があると思われる。
・今までのところ、リハビリ期間中のmotor imageryと運動機能の回復過程を並行して調べた研究はない。
1)motor imagery の能力が脳卒中者で回復するかどうかを調査すること。
2)異なる種類のイメージと脳卒中後の運動機能間にどのような関係があるかを調査することであった。
方法
・12人の脳卒中片麻痺患者(女性4人、平均年齢= 59.75歳、左利き1人)に対して3回の mental imagery課題を脳卒中発症後の3週間と6週間で実施・測定した。また、年齢が一致した健常者(N = 10)を対象群として含めた。
・Motor imagery能力は、その測定におけるその臨床的価値で知られているmental rotation task(様々な角度の手の写真に対し「右手または左手」と答える課題)によって測定された。
・被験者は2つのボタンのうちの1つ(L / R)を押すことによって、コンピュータ画面上の手の写真が左手か右手かをできるだけ速く判断しなければなりませんでした。この課題は明示せずにMotor imagery能力を測定する課題です。
・明示するmotor imagery課題と明示しない課題では異なる成分を測定するので、我々はまた患者の明示的なmotor imagery能力を測定するmotor imagery課題を実施した。
・明示的なmotor imagery課題では、被験者は自分の手足を特定の方法で動かすことをイメージするように求められました。(たとえば、「あなたの脇の下を90度曲げることを想像してください」)。指示の後、被験者は、上肢と手で構成された4つの写真から正しい手の位置を選ぶことにより、自分の想像した手の位置がどれであるかを示さなければなりませんでした。
・4択の1つが正しい位置の写真を含みました。他のすべては偽の写真でした。明示的な運動イメージタスクは12項目から構成されていました。すべての答えが正しければ、合計最大12点に達する可能性があります。
・上肢・手機能は、the Utrecht Arm-Hand taskとBrunnstrom stage・ Fugl-Meyer Scaleを用いて評価した。
結果
・明示的な motor imagery能力および明示しない motor imagery能力は、脳卒中後3週間と比較して6週間で有意に改善した。
・運動機能とmotor imagery能力の測定値との関係に関する結果では、 運動機能は3週間後に有意に改善したが、運動機能の尺度とmental imageryの尺度との間の相関は低く、脳卒中後3週間で有意でなく、脳卒中後6週間でさらに相関は低下した。
・我々の研究はmotor imageryが脳卒中後の最初の数週間で回復することができることを示しています。これは、motor imagery trainingを受けることが出来ていない発症初期患者が後のリハビリプロセスで練習に参加出来る事を示しています。
・脳卒中者にmotor imagery trainingを処方する前に、motor imagery能力を測定することが重要です。mental imagery法は、個々の患者によって、または時間の経過ともに異なる影響を受ける可能性があります。
私見・明日への臨床アイデア
・Cohenらは心的回転課題を行っている被験者の脳活動をfMRIによって計測し、両側の後部頭頂葉や運動前野、前頭前野などに活動が見られたことを報告している。
・また、mental rotationは学習効果がある。motor imagery、mental rotation機能の低下を来している場合、運動の提示はより相手にmental rotationをさせない教示方法(3次元での体の向きを合わせて教示する等)が相手の理解を得るのに推奨されると考えられる。
氏名 shuichi kakusho
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)