vol.408:パーキンソン病における運動誘発性の効果量とは?システマティックレビューとメタアナリシス
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カテゴリー
神経系
タイトル
パーキンソン病における運動誘発性の脳由来神経栄養因子の増加:システマティックレビューとメタアナリシス
Exercise-induced increase in brain-derived neurotrophic factor in human Parkinson’s disease: a systematic review and metaanalysis. Mark A. Hirsch et al.(2018)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・ISPRM 2019(第13回国際リハビリテーション医学会世界会議)での口演 “Neuroplasticity, Exercise and Parkinson Disease: from Bench Research to Clinical Application” を拝聴した際に紹介されていたので詳細を知りたいと思った。
内 容
・運動の生理学的効果はシナプス形成、血管形成、神経形成など、パーキンソン病(PD)の脳において可塑性に関連する事象に影響を与える可能性がある。
・自発運動による脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生はラットで示されており、神経変性疾患患者のリハビリテーション介入の神経可塑性効果に重要な役割を果たすと考えられている。
・運動誘発性のBDNF変化の根底にある生理学的メカニズムは、PDではよく理解されていないが、長期増強および長期抑制メカニズムを含む可能性がある
・PDにおけるBDNF血中濃度に対する運動誘発効果に関する個々の研究の効果量をまとめたレビューはない。
方 法
・開始から2017年6月まで、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Library、PsycINFO、PubMedを検索した。
・適応基準
1)PDと診断された人が参加者であること
2)対照群の有無にかかわらず前向きの介入デザインを使用している
3)運動トレーニングまたは運動介入の要素を含んでいる
4)神経栄養因子を評価している
5)英語で書かれていること
6)査読付きのジャーナルに掲載されていること
・文献抽出の結果は図1の通り
結 果
・6件すべての研究においてBDNF血中濃度レベルの改善が認められた。
・2件のRCTから統合したBDNFレベルの変化スコアは、有意な効果量が得られた(標準平差2.06、95%CI 1.36〜2.76)
・2件のRCTから統合したUPDRS – PARTIII運動項目について有意な効果量を示した(標準平差 − 5.53、95%CI −10.42〜 − 0.64)
・エクササイズの方法は理学療法、作業療法、レジスタンストレーニング、トレッドミルトレーニング、エリプティカル(クロストレーナー)、Wii System Fit、stabilometric platformなど研究によって多様であった。
・1件を除いてほかのすべての研究で、理学療法士による運動介入が報告されている。
私見・明日への臨床アイデア
・パーキンソニズム患者の血清BDNFレベルと線条体ドーパミントランスポーター(DAT)には正の相関がある。BDNFレベル増加は、PD患者のDATに対する保護効果を有することが示唆されている。
パーキンソン病患者に運動習慣をつけてもらうためのエビデンスとして提示できる内容である。
氏名 Satoshi Ohwa
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)