vol.161:咬合と姿勢の関係性とは? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
咬合と姿勢の関係性とは?Effects of different jaw relations on postural stability in human subjects?pubmedへ P. Bracco et al.(2004)
本論文を読むに至った思考・経緯
•PT視点からSTと議論が出来るようになるために本論文に至る。
論文内容
論文背景
•先行研究は、固有感覚・視覚および姿勢の安定化における三叉神経および歯の咬合の役割が示されています。さらに顎関節症や口腔咽頭関連の疾患と姿勢の関連性が検討されています。
研究目的
•異なる顎関節の状態が姿勢に及ぼす影響を調査することを目的とした。
『末梢レベル』
•95人(男性23人女性72人、18歳〜52歳)の被験者が参加した。
•試験は3つの下顎の位置で行われた。
•開眼、閉眼で行われた。
•コンピュータ化されたフットボードを使用して姿勢動揺と安定性の分析を受けた。
1)ICP:中心咬合位 下顎(下の歯)が上の歯と完全に咬合される最も閉鎖された静止位置
2)REST:安静位 常習的ないつも通りの位置
3)MYO:筋中心位 経皮的電気神経刺激(TENS)法によって得られた筋を中心にバランスを整えた位置
すなわち、歯の咬合、安静時、筋肉をそれぞれ中心に考え位置させた状態である。
研究結果
•姿勢の平均非対称性指標値は、中心咬合位では6.7±5.5、安静位では6.3±4.8、筋中心位では5.3±4.5であった。
•中心咬合位の平均x(左右)距離値は6.7±5.3mm、安静位は5.9±4.6mm、筋中心位は5.3±4.2mmであった。
•中心咬合位の平均y(前後)距離値は215.1±15.2 mm、安静位は216.9±14.8 mm、筋中心位は216.2±15.0 mmであった。
•下顎が筋中心位の状態が、他の下顎の位置と比較して前額面状の姿勢バランスを改善させた。矢状面上では姿勢は改善しなかった。
•咀嚼筋と頭頸部筋のバランスが良いことは、姿勢の安定性の重要な要因であると考えられます。
興味深かった内容
•三叉神経の知覚および固有感覚の変化が姿勢連鎖により全体の不均衡を引き起こし、最終的に姿勢の変化を引き起こす可能性がある。
•咬合療法は咀嚼筋の再平衡を誘導することができるので、この再平衡は下行性連鎖で全身の姿勢筋に影響を及ぼし、姿勢が改善される可能性がある。
私見・明日への臨床アイデア
•顎は前額面の姿勢に関わることが分かった。
•顎に関わる筋への介入にて下行性の姿勢変化が望める。
•顎周囲の筋の左右バランスの不均衡は臨床でも多く見受けられ、左右で顔を分けるとだいぶ左右差のある方も見受ける。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)