vol.154:顎と姿勢制御の関係とは 脳卒中/ 脳梗塞リハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
顎と姿勢制御の関係とは?Effect of three different jaw positions on postural stability during standing?PMCへ Ahmad H. Alghadir et al.(2015)
本論文を読むに至った思考・経緯
•顎関節~肩へ問題を抱える患者を担当しており、その学習の一助として本論文に至る。
論文内容
論文背景
•先行研究では、顎関節および頭頚部が解剖学的、生体力学的および神経学的に関連していることが示されている。また、顎関節および頚部~肩の複合体は協調的に働くことが観察されている。
•自発的に歯を食いしばる事は、様々な運動課題のパフォーマンスを高める、手のグリップなど他部位の筋活動を増加させることが示されている。
研究目的
•研究目的は、健康な成人において顎関節の状態を変化させることで姿勢制御がどのような影響を受けるのか効果を研究することであった。
研究方法
•健常男性116名(年齢平均31歳)が研究に参加した。
i) resting jaw : 安静時、指示が出されていない自然な状態
ii) open jaw : 口を少し開いた状態
iii)clenched jaw: 口が閉じられ、歯を少し食いしばった状態
の3つの試験位置で行われた。その間、50×50×15cmの発泡体の上で静止立位を取り重心位置(COG)速度を比較した。
開眼・閉眼の条件も付加されている。
研究結果
•「clenched jaw 歯を食いしばった状態」のCOG速度は、open jawおよびresting jawと比較して有意に減少した。これは、顎の感覚運動システムが姿勢機構を調節できることを示唆している。
• 開眼状態では、安静時と比較してopen jawにおいてCOG速度が9%減少し、clenched jawでは16%減少した。
• 閉眼状態では、安静時と比較してopen jawにおいてCOG速度が14%減少し、clenched jawでは25%減少した。
結論
•本研究はclenching(食いしばり)は視覚入力の有無に関わらず不安定面に立つ際の姿勢の安定性を高めることが出来、姿勢不安定患者の治療およびリハビリにおいて「顎」について考慮すべきであると結論する。
興味深い内容
• オクルーザルスプリントを装着することで姿勢を変えることができ、咬合治療によって咀嚼筋の再平衡が誘導され、身体姿勢が改善されることが報告されている(Bracco et al .2004) 。
• 歯の咬合は、ヒラメ筋および前脛骨筋のH反射を促進し、H反射の促進の程度と咬筋の筋電図活動の程度との間に正の関係が報告されている(Takada et al.2000)。
私見・明日への臨床アイデア
• 本研究では、clenched jawだけでなく、open jawでも安静時より姿勢をコントロール出来ている。open jawも顎周囲の筋活動が得られている状態である。「顎」の感覚運動系が姿勢制御に重要な役割を果たすことを示唆している。
• 三叉神経、舌、顎-頭頚部-肩の複合体は姿勢制御に関与していると報告されている。より継続的に理解を深めていきたい。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)